231 まさかのアイツ!?
二百三十一話 まさかのアイツ!?
西園寺が初めて綾小路にやり返した話を聞いたオレは思わず呟く。
「西園寺……それはナイスだな」
「でしょ!?」
「それで綾小路は完全に黙り込んだのか?」
手っ取り早く話を聞きたくなったオレは西園寺に結果を尋ねた。
「ううん、まだあれから数日間は学校きてたかな」
「そうなのか」
「うん。 でも完全に私の勝利だったけどね!!」
西園寺がオレに向けて親指を立てる。
「だろうな。 ちなみにどうやって追い込んだんだ?」
「うーーん、そりゃあもう女子特有のあれだよ」
「ーー……あれ?」
「うん。 まずみんな揃って無視は当たり前でしょ? それから私はキーホルダーを壊されたことまだ許しきれてなかったから、上履きやノート捨てたりとか、身体に傷やアザがつかない程度に痛みつけたりとか」
「ほ、ほう」
なかなかにエグいな。 まぁ自業自得といえばそうなんだが。
「てかあれだよな、よく皆お前の味方してくれたよな」
「うん、あの時は綾小路が悪の元凶って認識だったからね。 クラスの子達も悪者を成敗する感じで一致団結してたような雰囲気になってたし」
「なるほどな。 それであいつ……綾小路の方が耐えきれなくなって不登校になったってわけか」
「そういうことだよ」
西園寺はこくりと頷くと、ジーッとオレを見つめ出す。
「ーー……ん? なんだ?」
「ハァハァ……ねぇ、もういいでしょ?」
「なんだどうした? 息が荒いぞ?」
「う、うん」
西園寺がゆっくりとオレに手を伸ばしてオレの手首を掴む。
「ちゃんと……喋ったよ? だからもう……やってくれるよね、パンツアッパー……」
どんだけやって欲しいんだよこいつはああああああ!!!!!!
オレは「仕方ねぇな」と言いながら視線を西園寺の下半身へ。
「ほら、やってやるからスカートめくれ」
「う、うん!!」
西園寺が裾をつまんでゆっくりと上へと上げていく。
そしてゆっくりと西園寺のパンツ……黒のベーシックパンツが顔を出した。
「よし、じゃあやるぞ」
「う、うん!!!!」
なんだかんだで西園寺の生パンツが見れて、かつ触れるんだからオレもこれは嬉しいことだもんな。
オレは「じゃあ失礼して……」と西園寺のパンツに手をかける。
「ーー……ん、ちょっと待て西園寺」
オレはパンツを引き上げる直前にある疑問が浮かび上がる。
「え、なに?」
「どうせならもう全部聞かせて欲しいんだけどさ」
「うん?」
「そこからなんでお前、いじめのドン……リーダー格にまで上り詰めたんだ?」
「え?」
「あ、それと去年の球技大会の時にオレをいじめてた武藤と三枝を先生に告げ口してくれたって聞いたけど……あれはなんでだ?」
オレの質問を聞いた西園寺が目をパチクリさせながらオレを見つめている。
「ね、ねぇ福田くん」
「ん?」
「それさ、あとでも良くない? ほら、今はもう私と綾小路の話が終わったわけだし……とりあえずパンツアッパーを……」
「ダメだ。 おあずけ」
「キュイイイイイン!!!!」
こうして欲望に負けた西園寺はオレの問いかけに答えることに。
「リーダー格になったのはあれだよ。 私ってほら、最強の味方たちを作れたわけでしょ?」
「うん」
「私、綾小路を倒せたことで興奮しちゃってさ。 あとはお母さんの言いつけでずっと我慢してたところあったから、それが爆発しちゃったって感じなんだよね」
「ーー……爆発?」
「うん。 もう目障りなものや気に食わないものは全部綾小路みたいな目に合わせていったの。 そしたらいつの間にか女子の中ではトップになってたんだ」
あーなるほどね。 そういう背景があったってわけか。
「じゃあなんで西園寺お前、結城さんをいじめてたんだ?」
「え、それは……」
西園寺が唇を尖らせながらオレから視線を外す。
「なんだ? 結城さんの性格から見るに、まったくお前に反抗するような感じじゃなかっただろ? なんでお前は結城さんを……」
「だって……似てたんだもん」
「なにに?」
「昔の私。 全部その時の感情を心の中に押し込めて自分を殺してる感じ……。 あれ見てたら当時の私を見てるようでさ」
「だからいじめてあわよくば不登校にして目の前から消そうと?」
「ーー……ごめんなさい。 あの時は本当にそう思ってた。 でも桜子ってなぜか毎日学校来ててさ、私も負けるわけにはいかないじゃん? だから日に日にエスカレートしていっちゃったんだよね」
西園寺が「桜子のあの我慢強さには驚いたよ」と呟く。
あー、そうか。 西園寺は知らないんだもんな、結城の家の事情。
結城だって絶対に休みたいって思ってたはずなんだ。 でも結城は学校に行くしか選択肢はなかった……あのくそババァに鼻血出るくらいに殴られるよりはマシだから。
それに比べたら西園寺たちのいじめの内容の方がはるかにレベルが低いわけだしな。
早く結城には幸せな毎日を送らせてあげたいもんだぜ……。
「よし、結城さんのことはもういい。 反省してるのは良く知ってるし、お前も結城さんにお返しの顔面パンチ食らったわけだしな。 次は武藤と三枝の件だ」
オレは両手をパンと鳴らして話題を変更。
どうして前のダイキがイジメられていた際、西園寺が担任に告げ口して助けたのかを聞くことにした……のだが。
「あー、あれは簡単だよ」
「簡単?」
オレは頭上にはてなマークを浮かばせながら首をかしげる。
「うん。 あの2人がずっと邪魔だっただけ」
「ーー……え?」
オレは一体なにを言っているんだ的な視線を西園寺に送る。
「だってあの2人、私のいじめに最適な場所をよく先に使ってたんだもん。 ずっとどうにかしたいって思ってたんだ」
「え、あ……それだけ?」
「うん。 なんで?」
西園寺がキョトンとした表情でオレに尋ねる。
おいおいマジかよ!! ちょっとだけ……ほんのちょっとだけだけど、西園寺は実はオレのことが好きで……でも直接言うのは恥ずかしいから先生に言って助けてもらった的なことを言ってくれるものだと期待してたんですが!!!
なのにその理由が自分の邪魔だから?
ふーーざけんなああああああああああああああ!!!!!!
オレは西園寺のパンツを力一杯握りしめる。
「えっ!? 福田くん!? どうしたの急に!?」
「くらえ!! 最強のグリグリムーブ付き・パンツアッパああああああああああああああ!!!!」
「きゃふううううううううううううん!!!!!」
◆◇◆◇
オレのグリグリ・パンツアッパーを味わった西園寺は戦闘不能に。
脚をガクガクさせて動けなくなってしまった西園寺を、オレは仕方なく背負って保健室まで運ぶことにしたのだが……
「あ、そうだ。 ちなみにお前が壊されたキーホルダーってどんな感じのだったんだ?」
保健室へと向かう途中、ふと気になったので西園寺に聞いてみる。
「え?」
「ほら、それだけ思い出が詰まってるなら……当時買った時のものよりは劣るとしてもさ、ネットで同じの買わないのか? それ見て思い出すこともできるわけだし」
「あー、そうだね。 それもいいかも。 でもそこまで有名ってわけでもないから、あるかなぁ」
「どんなキーホルダーだったんだ? キモいって言われるキーホルダーって想像つかないんだけど」
「福田くん、チェリーくんって知ってる?」
「え」
一瞬オレの脳が止まる。
「え、ちょ、待ってくれ。 チェ……チェリーくん!?」
それってあれ……あれだよな。
オレも知ってる……ていうか記憶に新しいぞ、だって……
「なぁ西園寺、それってあれか? お前その旅行って東北の温泉街らへんか?」
「え!? うん!! 福田くん知ってるの!?」
背負われている西園寺がテンション高めに顔を覗かせてくる。
知ってるもなにも、だってあれは……
「いや西園寺、綾小路がキモいって言ってたのはあれは事実かもな」
「なんで!?」
「お前そのとき小3だったんだろ? 今それ見たら多分反応変わると思うけど……」
「えぇ!? あの赤くて丸い顔が可愛いんだよ!?」
ほらやっぱりそこしか見てない。
「西園寺……」
「なに?」
「オレ、最近東北行って、それいくつかお土産用に買ったのは良いけど渡す勇気なくてまだ家にあるんだけどさ……いるか?」
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次回、挿絵入れる……かも!




