224 強行突破!?
二百二十四話 強行突破!?
「よし、今だ三好!」
「う、うん! くらえ、美波直伝のアレーー!!」
校舎裏口へと向かっている途中、相手校の男1人と出くわしたオレたちは仕方なく応戦することに。
オレが一瞬の隙をついて敵男に懐に潜り込み、そのままズボンに手をかけて一気に引き上げると、すかさず三好が浮かび上がった弱点に強烈なデコピンを打ち込む。
「ギョエアアアアアアア!!!!」
敵男は喉が引き裂けそうな甲高い声を出しながら倒れこみ、その場で下半身のあたりを抑えながらぐるぐると転げ回る。
どこに当たったんだろうネ! あれかな、足の付け根に大きなニキビでも出来てたのカナ!
「ひやああああ!! ぎもぢわるいーーー!!」
三好が敵の弱点を弾いた指を、まるで感触を忘れさせようとしているかのように全力で振り払っている。
オレはそんな三好をスルーして敵男の野ざらし状態のハンカチをゲットしたのであった。
「よっし! ハンカチゲットーー! いい攻撃だったぞ三好!」
オレは奪ったばかりのハンカチをヒラヒラと扇ぎながら三好に見せつける。
「ちょっとなんで私がデコピン役なわけ!? 普通は逆でしょ逆ーー!!」
三好が顔を真っ赤にしながらオレに訴えてくる。
「いやオレは無理だ」
「なんでさ!」
「なんだかんだで同情しちゃって手加減するかもだからな。 それに三好にされる方がこいつも本望だろ」
「はぁ!? なんで私にされると本望なわけ!?」
「だってほら、どうせなら女の子にして欲しいって思うだろ普通」
「わかんないよこの変態!!!」
◆◇◆◇
無事校舎裏から再び中へと侵入に成功したオレたちが真っ先に向かったのは1階にある女子トイレ。
誰も周囲にいないのを確認し、そこで時間を潰すことにしたのだった。
スマートフォンを取り出し、時間を確認してみると時刻はもうすぐ12時30分。
この競技もラスト30分か……。
「今どっちが勝ってんだろうね」
三好がオレのスマートフォンの画面を覗き込みながら小さく呟く。
「本当にな。 ここに来るまでにチラホラ生徒は見かけたけど、味方もいれば敵もいただろ……でも数は最初ほど多くはない。 ぶっちゃけいい勝負してんじゃねえか?」
「なのかな。 とりあえず私は早く終わって欲しいよ」
「はぁー……」と深いため息をついた三好が隣でしゃがみ込んでいるオレの肩にもたれかかる。
「おいオレも疲れてんだぞ」
「え、あぁ……ごめん。 ちょっと安心しちゃってた」
オレの声を聞いた三好はハッと我に返り少し焦った様子で元の体勢に戻す。
まったく……緊張感のないやつだな。
オレは呆れながらフと三好の脚に目線を向けると、三好の右足太ももに数センチ程度の切り傷を発見する。
「ーー……ん?」
どこで切ったんだろう……そこから僅かに血が滲み出ていた。
オレの反応に気づいた三好が「どうしたの福田」とオレに尋ねてくる。
「え、あぁ……お前ほらここ、怪我してるぞ」
オレは三好の切り傷を指差しながら教える。
「あーこれね、うん」
「どこで切ったんだ?」
「これさっきだよ。 私がその……ほら、デコピンしたとき」
三好の話では、この傷を負ったのは三好が敵男の弱点を指で弾いた後のこと。 敵男が手で弱点を抑えようとした時に指先が当たってしまったらしい。
「お前なんですぐ言わねーんだよ」
「言ったって意味ないじゃん」
「いや、水で流さないとバイ菌入るだろ。 それにオレ……ちゃんと絆創膏常備してんだよ」
オレはスマートフォンからカバーを外し、そこに挟んでいた絆創膏を三好に渡す。
「ほれ」
「え、ありがとう。 福田……女子力あんじゃん」
「まぁな」
実は今朝、優香が『もしもの時のために持ってて』と無理やりオレに持たせただけなんだけどな。
なんだかんだで心配してたし。
「とりあえずほら、それ貼る前に水で流そうぜ。 ちょうどここトイレだし、この個室出たらそこに水道あるしさ」
オレはゆっくりと立ち上がってドアに手をかける。
「え、待って福田」
「なに?」
「でも今外に出たら……見つかっちゃうかもよ?
三好が「だったら時間終了まで我慢出来るし、このままジッとしてようよ」とオレを見上げる。
「よし、じゃあ三好。 今からオレが二択を出すから選べ」
「え?」
三好が頭上にはてなマークを浮かべながら首をかしげるも、オレはそれをスルーして話を続けた。
「1つ。 このままジッとしてると安全かもしれないけど、その間、その傷口から三好の体内にあの男の雑菌が入り込んでいく」
「ーー……え」
「2つ。 見つかるリスクはあるかもしれないけど、早くあの男の雑菌を洗い流す。 ちなみにそこで見つかってもお前のせいにはしない」
「ーー……」
三好はゆっくりと視線を自身の太もも……傷口へ。
まるで気持ち悪いものを見るような目をそこに向けている。
「で、どうする」
オレが尋ねると、三好は「うーーん」と唸りながら再び視線をオレへ。
「福田ならどうする?」と逆にオレに聞き返してきた。
「まぁオレなら迷わず洗い流してほしいけどな」
「なんで?」
「だって気持ち悪いだろ。 あんな男の雑菌が今も入って来てると思うと」
「ーー……確かに」
「じゃあ決まりだな。 いくぞ」
オレは三好の腕を引っ張り立ち上がらせると、そのまま外の警戒もせずに入り口付近の手洗い場へと誘導。 蛇口を捻り水が出るのを確認した後に「ほら、脚上げろ」と手を差し出す。
「はぁ!? ここであげんの!?」
「うん。 なんで」
「だって結構な高さだし……ここまであげたらパンツ見えるじゃん!!」
三好が顔を真っ赤にしながらスカートの上から股間部分を手で押さえている。
「あのなぁ三好、確かにそうだけど今は……」
「恥ずかしいもん!」
「そんな駄々こねんなって。 ほらさっさとしないと敵が来るかもしれないだろ、急げって」
「むーり!! だったら終了時間まで我慢する!! だからほら福田、戻ろ!」
三好がオレの腕を掴んで先ほどまでいた個室に体を向ける。
だあああああ!!! 面倒くせなあああああ!!!!
「もう!! 我儘言うな! ほらその脚よこせ!!」
オレは三好の手を振り払うと三好の右脚を両腕でロックし、無理やり水道の方へと引きずっていく。
「やーーだ!! 離してパンツ見えるってーー!!」
「安心しろオレが見たくないのはブスのパンツだけだ! だから気兼ねなく足を上げろほら!」
「意味分かんないって! それって結局見たいってことじゃん!!」
「あぁ見たい!! 出来ることなら0距離で鼻先を付けながらガン見したいくらいだ!! でもそれはまた今度させてもらうから、とりあえず早く傷口洗うぞ!」
「だから何それーー!! って、ひゃああああああ!!!!」
オレは力づくで三好の右脚を持ち上げると、そのまま水を出している蛇口の下へ。
勢いのある水流が三好の傷口にバシャリとかかる。
「みゃあああああ!!! ちゅめたいーーー!!!!」
「よし、これで大丈夫だ三好、あとはこれで拭けば問題ない!」
オレはスカートの中から見え隠れする三好のパンツをチラ見しながらも、今日まだ1度も使っていないハンカチで三好の濡れた太ももを拭いていく。
ーー……なるほど、今日は純白か。 最高じゃないか!!
「う……うぅ、ありがと」
「手のかかるやつだな。 ほら、さっき渡した絆創膏貸せ。 貼ってやるから」
「ーー……はい」
オレは三好から受け取った絆創膏を傷口の上からピタリと貼り付ける。
うん、絆創膏を貼るという行為上、仕方なく触ってはいるが……いい細さで張りもあって素晴らしい太ももだな。
少しの間夢中になって触っていると「ねぇ福田」と言う三好からの言葉で我に返る。
「え、あぁすまん」
「絆創膏貼ってくれたのは嬉しいけどさ、そんな触る?」
「ちゃ、ちゃんと水気取れてるか確かめてただけだ気にするな」
「ほんと?」
三好が冷たい視線をオレに向けている。
「ほんとだって! ほら、何事もなく終わったことだし、またトイレに隠れて時間をーー……」
「あーー、さっきの2人みーつけた」
「「!!!」」
最悪なタイミングだ。 声のした方に視線を向けると女子トイレの入り口からさっきの女の子……綾小路恵子が口に手を当てながら笑みを浮かべていた。
「ーー……ねぇ福田」
「あぁ、やばいな」
綾小路を見てみるとスマートフォンを取り出して通話を開始している……おそらくあれだ、武藤たちに連絡を入れているのだろう。
「ーー……三好、走るぞ」
「え」
「あいつは今武藤たちを呼んでる。 てことは、まだこの近くにあいつらがいないってことだ」
「なるほど」
「綾小路1人だけなら、追ってきたらやり返せばいいし、追ってこないならそのまま逃げる……いいな」
「うん!」
オレと三好は互いに頷きあった後再び視線を綾小路へ。
「じゃあ……いくぞ」
「おっけー!!」
オレたちは同時に女子トイレを抜け出して階段のある方角へ。
しかしそれと同時に後方から武藤たちの汚い叫び声が聞こえて来る。
「やっば!! 福田、あいつらすぐそこにいたっぽいよ!」
「あぁ、反対方向に走らなくて正解だったな! てか三好、脚大丈夫か!?」
「うん平気! もう空気も触れてないから痛みあんまないよ!」
「そうか、じゃあこのまま振り切るぞ!」
「うん!」
オレは進路先を見ながら次の選択を考える。
右に曲がると2階へと続く階段があり、左に曲がると正面玄関へと続く廊下……どっちに進むべきか。
「あぁ!! 福田、前見て!!」
「ん……えぇ!?!?」
三好の指差した先の光景を見たオレは思わず声を上げる。
なんという度重なるバッドタイミングなんだ……左右どちらにも相手校の生徒がいるじゃねえかああああ!!!!!
「どうするの福田ーー!!」
「仕方ない!! このまま突っ込む!!」
うまくいけばオレは捕まるとしても、三好だけは逃がしてやれるかもしれない。
そう考えたオレはスピードを落とさず……あわよくば敵が少しでも怯んでくれることを期待して全速力で突っ込んだ。
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