222 突然の大ピンチ!
二百二十二話 突然の大ピンチ!
「ちょっと福田ぁ!! なんで私らがこんな目にあってんのさーーー!!!」
「知るかよそんなのーー!!!」
隠れていた教室から飛び出したオレたちは一目散に階段の方へと向かって走る。
一体何があったのか……それはほんの数分前のことだった。
『ねぇ福田、なんか外の方で音しなかった?』
『音?』
オレは廊下側とは反対方向の窓の方へと視線を移す。
窓の向こう側はちょっとしたベランダとなっており、そこを行き来するための扉もあるのだが……
『え、そんなこと言われたら不安になるだろ。 ちょっと鍵かかってるか見てくるよ』
『うん、ありがと』
オレは立ち上がりベランダに通じる扉へ。
鍵がかかっているかドアノブを回してみた……その時だった。
『ほらやっぱりいたぞ!! 隠れてたんだ!!!』
『うっしゃああああいくぜえええええ!!!』
外の方から下品な声が聞こえたと思うと、カーテンを閉じていた窓がバリンと音をたてて砕け散る。
『ちょっと!! なんで福田、鍵かかってるか目視で確認しなかったのーー!?!?』
『仕方ねーだろドアノブ回した方が確実だったんだから! てか普通ガラス割るかーー!?!?』
幸いガラス片はカーテンをかけていた為さほど飛散せず。
しかし勢いよく割られている為中に入られるのも時間の問題だ。 オレは急いで三好のいる廊下側へと戻ると、三好の腕を掴み、急いで教室から飛び出したのだった。
「ちょ、福田、どこ向かってんの!?」
三好が時折後方を確認しながらオレに尋ねてくる。
「とりあえず1階だ!! さっきまで小畑さんが結構倒してくれてたっぽいから敵の数少なそうだし、何より上に逃げたらそれこそ行き止まりになっちまう!」
「そ、そうだね! うん分かった!」
オレもチラッと後ろを振り返ると、どこから拾ってきたんだろうな。 1人は木製バット、もう1人は教室内を掃除するときによく使っていたホウキを力強く握りしめながらオレたちを追いかけてきている。
「このままじゃ追いつかれるって!! 福田、もっと早く走れないの!?」
「いやだったらお前がオレを引っ張れよ! 誰が引っ張ってると思ってんだ!!」
これは意外だったぞ。 三好、結構足遅かったんだな。
まぁだからこそ、こうしてオレが引っ張って逃げているんだが……
「じゃあこうしよ!? 福田は1階に行って、私は3階に逃げる! そしたらどっちかは助かりそうじゃない!?」
そう言うと三好はオレから腕を振りほどこうと、腕を上下に振り始める。
おいおいこいつは何を考えてんだよ!!
「ちょ……おま三好! やめろそれは却下だ!」
「大丈夫! だってあの2人、よく見たら武藤と三枝じゃん! ちょっと前まで同じ学校だったんだから変なことしてこないって!」
三好が後ろを指差しながらオレに訴える。
「なに!?」
釣られて一瞬後ろを振り返る。
小学生高学年にしては老けた顔の2人……あれが前のダイキをいじめていた元3組の武藤と三枝か。 なるほどな、ヤンキー臭がプンプンするぜ。
「うん、それでもダメだ逃げるぞ」
「なんでさ!」
「バカか! もしお前を追ってきたらどうする!? あいつらあんな武器持ってんだぞ危ねえだろ!」
「えっ……あ、……え?」
三好が突然黙り込む。
「ん? なんだ大人しくなったじゃないか。 理解したのか?」
「う、うん。 まぁ」
「ーー……? まぁいいや、ほら、もうすぐ階段だ! もし小畑さんとかがいたら、どこかに隠れて3人で反撃を狙う……逆に誰もいなかったらこのまま逃げ続ける! いいな!?」
「うん!」
こうして階段の踊り場に辿り着いたオレたちは迷わず一階へ。
階段を下り切ると、なんというベストタイミングなのだろう……オレたちの目の前には一番望んでいた人物の後ろ姿が。
そう……小畑美波! さっきまで対男子用特化奥義で暴れていたドSの女王だ!!
「小畑さん!」
「美波ー!!」
オレと三好が正面玄関へと向かって歩いていた小畑の名を叫びながら駆け寄る。
「小畑さん、後ろから元3組の人が追ってきてるから早くこんな目立つ場所じゃないところに!!」
「そうだよ美波! とりあえず急いで隠れて反撃しよ!」
「ーー……」
オレたちが後方を確認しながら必死に話しかけるも小畑の反応が薄い。
一体どうしたんだろうと考えていると、三好が突然「あっ」と小さく声を漏らした。
「ん? なに?」
「福田、とりあえず下駄箱に隠れよ」
「え?」
「早く!」
オレは三好に背中を押されながらも正面玄関設置された下駄箱の方へ。
意味がわからず眉間にしわを寄せていると、三好が周囲を警戒しながらオレの耳元で小さく囁いた。
「美波、ハンカチ盗られてた」
「ーー……マジ?」
「マジ」
三好がオレの目を見つめながら大きく頷く。
あぁ、だから何も話せなかったってことなのか……敵情報とか教えたら失格だもんな。
オレが「なるほどな」と納得していると、オレたちを追っていた武藤と三枝が下駄箱付近へ。 「どこに行った?」と周囲を見渡しながら舌打ちをしている。
「あとちょっと逃げるの遅れてたら終わってたかもな。 助かったよ三好」
「まぁね。 少しは私のこと見直したでしょ」
「少しはな」
「はぁ?」
オレたちは下駄箱の低い位置からコッソリと覗きながら、武藤たちがどこかへと去っていくのを今か今かと待つ。
しかし何故だろうか。 武藤たちは武器を床にたてて体重をかけながら、その場から一歩も動こうという気配がない。
「ーー……もしかしてオレたちがこの辺に隠れてるって知ってて出てくんの待ってんのかな」
「それはないって。 だって私らに気づいてる感じしないもん」
「だ、だよなぁ」
休憩してるだけだというのなら早くここから立ち去ってくれ……オレがそう心から願っていると、三好が「ねね、福田。 あれ」と言いながらオレの肩を叩く。
「ん?」
「ほら、階段の方の廊下見て」
「廊下?」
三好の指差す先に視線を向けてみると、オレたちと同じ制服を着た……味方の女の子が1人。
窓から差し込む光の反射で顔は確認できないが、呑気に鼻歌なんか口ずさみながらこちらに向かって歩いてきている。
「あの子危なくない?」
三好が心配そうな表情でオレに尋ねる。
「まぁ危ないな」
「どうする? なんとかこっちに気づくよう合図だす?」
「いや、やめとけ」
オレは膝立ちの体勢で手を振ろうとしていた三好の腕を掴み、力づくで下ろさせる。
「え、なんで?」
「もしあの子がこっちに来てるところがバレてみろ。 オレたちまでハンカチ盗られちまうだろうが」
「でも……ほら、結城さんかもよ?」
「それはない。 大丈夫だ」
オレは三好の予想をきっぱりと否定。 首を左右に振り、あれが結城ではないことを断言する。
「へぇ、言い切れるんだ」
「あぁ言い切れる」
「なんで?」
「それは……ちょっとまだここでは言えないな」
「なにそれ」
そう、あれは結城ではない。
そもそも結城は目の前に歩いている女の子ほど足が太くないし、もっと色白だ。
それに結城は今ーー……
「とりあえず、あの子には囮になってもらう」
「はぁ? それ酷くない?」
三好がオレの判断に猛反発。 オレの言葉を無視し、再び手を振って合図を出すためにオレの手を振りほどきにかかる。
「ちょっと離してよ!」
「ダメだ」
「でもあの子襲われちゃうじゃん!」
「それは仕方ない」
「なんで助けないの!?」
「オレは知らない誰かを助けるよりは、知ってる三好の安全を優先させる」
「!!!」
三好の動きがピタリと止まり、顔を少し赤らめながらオレを見つめる。
「ふ、福田……」
「ん、なんだ? どうしても合図を出したいというのなら、その手は封印だ」
オレは三好の腕を自分の股間の方へ。
これ以上変な行動をとらせないよう、三好の腕を左右の太ももでギュッと挟み込む。
……腕の力より足の力の方が断然上! これで三好は勝手な行動はとれないはずだ!!
「ちょ……ちょっとどこで挟んでんのよーーーー!!!」
三好が声にならない声で小さく叫ぶ。
「仕方ないだろ。 じゃないとお前勝手に行動するんだから」
「それにしてもそこはないでしょ! ちょっとキモい! 離して!!」
三好が腕を引っこ抜こうと上下左右に力を入れる。
ーー……あ、これすごい気持ちいいぞ。 どこがとは言わないが、三好の手の甲がグリグリと動かされる度に相応の快感がオレの体を刺激する。
「ーー……なんだろ、さっきよりもっと窮屈になってるような」
三好が頭上にはてなマークを浮かべながらオレの下半身へと視線を向けているが、オレは気にしない。
むしろもっとしてほしいと感じながらも……その女の子には悪いが、早くあいつらに見つかってここから遠ざけてくれと心から願った。
そしてついに女の子の姿が武藤たちの視界に入る。
よしキタアアアアア!!!
武藤たちの視線が同時にその女の子の方へ。
これで隙が出来たらここから脱出だ……!
「合図したら一気にここを抜けて外に逃げるぞ」
「わ、わかった」
武藤たちが女の子のもとへとゆっくりと歩み寄っていく。
女の子のところまであと少し……これで女の子が振り返って逃げたところが勝負だ!!
オレはそのタイミングが来るのを静かに待機。
しかし次の瞬間、オレと三好は理解し難い会話を耳にしてしまったのだ。
「武藤くん三枝くん、調子はどう?」
ーー……え?
一体何が起こっているというのだろうか。 味方のはずの女の子が武藤たちに驚くことなく、気さくに話しかけている。
「あぁ、お前が敵の場所を逐一教えてくれるからイージーゲームだぜ。 まぁさっき逃げられたけどな」
「てかいいのか俺たちの味方して」
「いいの。 アタシが好きでやってんだから。 でも覚えてるよね、アタシが武藤くんたちに手を貸す見返りとして……」
「あぁ分かってる。 西園寺を見つけたらお前に報告すりゃあいいんだろ?」
「でもよ、なんで西園寺なんだ? ぶっちゃけ俺らも西園寺には恨みあるからよ、譲ってほしいくらいなんだけど」
「だめ。 西園寺希……あいつはアタシの獲物なの。 あいつがアタシの人生をぐちゃぐちゃにしたんだから」
「それは俺らも同じ……」
「あ、そっか。 確かお前……」
「復讐してやる」
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