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22 きっかけはオレだけど…!!


 二十二話  きっかけはオレだけど…!!



 西園寺希を攻略した次の日の放課後。 オレは西園寺といじめられっ子・結城を図工室前に呼び出した。



「あの、福田くん? なんで私と結城さんをこんなところへ?」



 西園寺が困惑めいた表情をオレに向ける。

 結城は……相変わらず西園寺に怯えているなぁ。 オレに助けを求めるような視線を送ってきている。



「2人にここに来てもらったのには訳があるんだ」



 オレは周囲に人がいないことを再確認した後、西園寺の後方に回りこみ後ろから腕を回してロック。

 西園寺の体を結城に向けた。



「な、何するの!?」


「黙れ。 音声に映像を流されたくなかったらな」


「ーー……!!!」



 オレの囁きに西園寺は反応。 最初こそ少し抵抗していたのだが、諦めたのかあっさりと全身の力を抜いた。



「よーし、いい子だ」



 オレは一言かけた後に結城に視線を移して早速本題へと入る。



「結城さん、西園寺を殴りな」


「ーー……え?」



 結城が動揺しながら一歩下がる。



「ちょ、ちょっと! 何言ってるの福田くん!! 結城さんが私を殴る? なにおかしなこと言ってるの!!!」


「おだまり西園寺」


「ーー……!」


「結城さん、今までこいつに色々やられてきたんでしょ? 今こいつ殴っても、なーんにも問題にならないからさ、復讐の気持ちも込めて一発やっちゃいなよ」



 オレは結城に優しく話しかける。

 しかし結城の中では西園寺がまだ圧倒的に恐怖なのだろう。 「で、でも……」と言いながらオレと話している最中も西園寺の方をチラチラと気にしている。



「ゆ、結城さん! あなたもし私に手を出したらどうなるか分かって……!!!」


「何も言わないよねぇ西園寺さん? 言ったら最後。 秘密がみんなに知れ渡ってパパやママにも迷惑かけちゃうかもしれないもんねぇ」


「くっ、卑怯者……!!」


「お互い様な? ただほんのちょっとだけオレの方がずる賢かっただけの話さ。 恨むなら自分の低脳を恨むんだな」


「ーー……っ!」



 オレの言葉に西園寺は完全に諦めたのか、俯いて黙り込む。

 覚悟が出来たんだろうな。 表情こそ少しは不貞腐れてはいるものの、いつ殴られてもいいように瞳を閉じている。



「さ、結城さんやっちゃおっか。 それか殴りたい人他にいる?」



 オレの問いかけに結城は全力で首を左右に振る。

 その後声を震わせながらも小さく口を開けた。

 

「ううん、今までのいじめは全部西園寺さん……だった」



 結城がゆっくりと体を西園寺の方へと向ける。



「私のランドセルを傷つけようって言い出したのも西園寺さん。 私にこんなパンツ似合わないからって脱がしてどこかに捨てたのも西園寺さん。 上履きに泥が入ってたことを先生がみんなに話してた時、笑ってたのも西園寺さんだし、私を叩くように皆に命令してたのも西園寺さんだった…。 痛かった……」



 なんとも悲痛な叫び。 目に大量の涙を溜めた結城が拳を強く握りしめながら西園寺を睨みつけている。

 そしてその時はとうとうやってきた。



「辛かったんだから!!!」



 ボゴッ!!



 女の子の攻撃ってビンタのイメージしかなかったのだがまさかのグーパン。

 結城の一撃は西園寺の鼻に直撃し、そんな西園寺の鼻からはポタポタと血が垂れ始める。

 

 

「ーー……ったい」



 それにしてもすげぇ威力だな。 オレはロックを解除し、西園寺の顔をオレに向けさせる。



「あー、こりゃすごいな。保健室行くか?」


「ーー……いい」


「え?」



 泣き叫ぶもんだと思ってたけど案外冷静だな。


 西園寺は結城を睨みつけることなく廊下に落ちた自分の鼻血を眺めている。

 それからしばらく経ってからだろうか。 西園寺は血を見つめたまま小さく呟いた。



「たった一発なのにこんな痛かったんだ…」


「いやそりゃあな、あんな強そうなの食らったら血くらい出るさ」


「知らなかった。 私、生まれて一度も叩かれたことなかったから」



 おいおい今時そんなあまちゃん存在するのかよ。

 アニメやゲームの世界だけかと思ってたぜ。



「今まで私はこんなことを毎日結城さんにしてたんだね……」



 西園寺は力なく視線を結城の方へと向ける。

 おそらくは結城に謝る流れなのだろう……そう思っていたオレだったのだが……


 

「ご、ごめんなさい西園寺さん!!!」



「ーー……え?」

「エ」



 まさかの展開。

 なぜか仕返しをした結城の方が先に西園寺に頭を下げているではないか。



「ゆ、結城さん? なんで私に謝るの?」


「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」



 結城が大粒の涙を流しながら西園寺に抱きつく。

 西園寺は意味が分からないのか「一体どうして……泣きたいのは私の方なのに」と言いながら鼻血を結城につけないようにするためだろう……左腕で鼻下をワイルドに拭った。



「ごめんなさいごめんなさい……」


「だから結城さん、なんでそんなに私に謝るの?」


 

 西園寺が一歩引いて結城の顔を覗き込むと、涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃになった顔の結城が思い切り首を横にふる。



「え? 結城さん?」

 

「私……西園寺さんのこと本気で叩いちゃったから!」


「そこは謝るなら私の方でしょ! あなたが引っ越してきてから今までずっといじめてたのは私なんだし……」



 そう言うと西園寺はゆっくりと結城に頭を下げる。



「その……私の方こそ、ごめんなさい。 こんなに痛いとは思わなかったし、それ以上のことをしてしまって。 気の済むまで叩いてくれていいからその……許してほしい」


「西園寺さん……」



 ーー……お? なんだこれ。 まさかの仲直り展開か??


 流石のオレもこの2人の空気を壊すようなことはできず、ただただ2人の言葉に耳を傾けることに。

 それからおよそ10分くらいだろうか。 結果、結城は西園寺を許し和解。 今後は友達として接していくことを決めたようでーー……



「ありがとうね福田くん、こんな機会を作ってくれて。 もう私こんなことしない。 あ、でももちろん今後福田くんの言うことにはちゃんと従うつもりだから」


「その福田……くん。 あ、ありがとう」



 西園寺と結城が晴れ晴れした表情をオレに向ける。



「ーー……へ?」


「それじゃあ私たちはこれで」

「その……バイバイ」



 2人はきっかけを与えたオレに感謝の言葉を述べた後、手を繋ぎながら下駄箱の方へと消えていく。

 うん、これは確かに「めでたしめでたし」なんだけど……



「ちょっと待てーーーい西園寺!!! お前がいじめをやめたらオレをみんなの前でいじめさせること出来なくなって……オレの動物園も閉園やないかーーい!!!!」


 

 誰もいない図工室前の廊下。

 そこにはオレの悲しみの声だけが響いていた。


 


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