表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
219/733

219 炸裂☆パンツ・ロック!!


 二百十九話  炸裂☆パンツ・ロック!!




「あ、ここ【使用禁止】ぽいよ」

「じゃあ他は? 水出んの?」

「あーなんかトイレ来たら尿意きたわ」

「待ってまずは水出んのか確かめてからでしょ」



 ーー……なんてことだ。


 オレはオレの隠れている個室前を通る敵女子たちの人数をみて愕然とする。

 なんとなく会話的に3人だと思っていたのだが、実際は4人。 流石に人数的にも圧倒的不利な状況じゃないか?


 僅かに空いている扉の隙間から様子を伺うと、敵女子たちはオレの隠れている個室以外の3室に視線を向けているようで、「他のトイレは水が出るのかなー」的なことを話し込んでいる。

 この隙間から見えるのは2人が限度……残り2人はどこにいるんだ?



「あーーーーっ!!!」



「!?!?!?」



 突然敵女子のどでかい声が鳴り響き、それを聞いたオレの心臓がドキンと反応する。


 なんだ!? オレはバレていないっぽいけど……もしかして三好か小畑、どちらかがバレた感じか!?!? 

 だとしたら大ピンチ……隙をついてここから猛ダッシュで逃げ出すか? まぁそれも出口に敵がいないことが前提なのだが……。

 オレは出るべきか動かざるべきかの2択を必死に考えていた……そんな時だ。



 ジャアアアアアアア……!



 オレの耳に入ってきたのは隣の個室から水の流れる音。



「ちゃんと水流れるっぽいわ。 よかったぢゃん、トイレ出来んべ」


「まじ? 助かるー」



 出なくてヨカッタアアアアアアアア!!!!!



 オレは即座に決断しなかった自分の脳に全力で感謝しながら小さく息を漏らす。

 しかし安心したのも束の間……すぐに次のピンチがオレたちを襲うこととなった。


 オレの隣の個室で敵女子の1人がトイレタイムを始めるや否や、他の敵女子たちが身の毛もよだつ発言を口にする。



「やっぱアレよな、誰かがトイレ行ったらさ、自分もしたくならん?」

「わかりみ」

「私も」



 ーー……おいまじか。



「え、でも1人入れなくない? 1つ潰れてるんだし」

「だね」

「待って、もう私我慢できないから使えるところ1つ使っていい?」



「いやいやそれはダメだって、私だってしたいんだから」

「私も」

「私もう漏れるって!!」


 

 敵女子の1人が我先にと最奥……おそらく三好の潜んでいる個室へと駆け込む。



「待って早いもん勝ち!? じゃあ私も!!」



 続いてもう1人がその隣……小畑が待ち構えている個室へ。

 残された1人は「ええええ!?!?」とその場で狼狽えているが……



「ひぇ!?」

「はああああああ!?!?!?」



 我先にと駆け込んだ敵女子たちが扉を閉めてすぐ。 その中から敵女子たちの叫び声が響き渡る。



「ちょっとなんでここに……ぐむむむっ!!!」

「えぇ!? 意味わから……きゃあああ!!!」



「「!?!?」」



 おそらく駆け込んだ2人は三好と小畑の手によって沈められたのだろう。 2人の叫び声を聞いた残りの2人に動揺が走る。



「ま、待ってなんかいたの!? ご、ゴキブリとか!?」

「きゃあああ待ってそれヤバイって!! 私まだトイレ中だから絶対こっちに蹴ってこないでよ!!」



 ったく、最初の獲物たちもそうだったが、どうして女子たちってそんなに虫に敏感なのだろうか。

 まぁオレもあまり得意ではないけど、別にそこまで焦る必要なくないか? だって襲ってくるわけでもないんだし。


 オレが1人静かに呆れ返っていると、トイレに駆け込み遅れた女子1人が「ちょ、ちょっと私外で待ってるわ! 終わったら早くきてー!」と棒読みで個室内にいる仲間3人に声をかけながら女子トイレから出て行く。

 それをトイレタイム中の女子が「ちょっと待ってぇー!!!」と必死に呼びかけていたのだが……聞こえていないんだろうな。



 ふふふ……ではここはオレの出番といきましょうか。



 残る1人を排除しようとオレが扉から出ようとすると、トイレタイムを急いで終えたのであろう敵女子がワタワタと焦った表情でトイレから飛び出してくる。


 ーー……ん? なんか走り方ちょっと変じゃないか?


 妙にバランスの悪い走り方をしていたので気になったオレはその子の足元に視線を向けると、オレの心は大興奮!!

 そう……かなり焦っていたんだろうな。 まさかのパンツがちゃんと履けておらず、膝のあたりまでパンツが下がっているではないか!!!

 故にそのパンツ生地の伸縮分の歩幅でしか前に進めていないようだ。

 


「ま……マジかよ」



 思わず心の声が口から漏れる。

 だって仕方ないじゃないか! パンツが膝まで下がっているんだ……だから見えてしまっていたのだよ! パンツ部位の中でも出現率は神レベルといっても過言ではないあの聖域……



 そう、クロッチ内側の部分が!!!



 もちろんそんなオレの声を聞き逃すはずがない。

 パンツをずり下げながら走る敵女子……通称パンツちゃんがその場で止まり、ゆっくりとオレの方へ視線を向ける。



「ーー……え、声?」


「あ、やぁ」



 オレとパンツちゃんの目が合う。

 するとすぐに混乱しだしたのか、パンツちゃんの目がクルクルと回り出した。



「きゃああああああああああああ!!!!!」



 パンツちゃんはオレの姿を見るなり大絶叫。

 オレのハンカチを狙おうともせずにそのまま出口へと体を向けて走り出す。


 いかんそれはヤバイ!! 外には待機している仲間もいる……ここでなんとしてでもハンカチを奪っておかねば!!!


 オレは個室から出るなりパンツちゃんの腰にぶら下げたハンカチに狙いを定めて勢いよくジャンプ。

 目の前でヒラヒラと揺れているハンカチへと思い切り手を伸ばした。



 ガシッ



 獲物を掴んだオレはそのまま地面に落下。 その反動で目の前で逃げていたパンツちゃんも同時に転倒する。


 ーー……ん? なんでパンツちゃんも転んでるんだ?


 オレは不思議に思いながらも掴み取った獲物をグイッと引っ張る。

 しかし何故だろう。 スルッと取れるはずのハンカチが、固定されているのかまったくそこから動かない。

 もしかしてこいつ……ズルしてたんじゃねーよな!?


 オレは再度力を入れて引っ張ってみることにする。



「きゃあああああ待ってええええ!!!」


「え」



 意味がわからず顔を前に向けるとオレの視線の先には全世界の男が夢見る桃源郷。 その上にオレが狙っていたはずのハンカチがヒラリと覆いかぶさっている。



「あれ、なんで?」


「ちょっとそれやめてええええ!!!!」


「え?」



 パンツちゃんの顔に視線を上げると、パンツちゃんが顔を真っ赤にさせながらこちらに向かって叫んでいる。



「あれ、なんで目の前にハンカチあんの? ていうかさっきオレ、ジャンピングキャッチを成功させたはずじゃあ……?」


「いやアンタが掴んでるの私のパンツだからああああああ!!!!」


「え」



 そう言われると、なんとなく手に馴染むような質感&程よい温もりを感じるけど……。

 オレはゆっくりとオレがハンカチだと思った獲物に視線を移した。



「ーー……あ、ほんとだ。 すまん」



 確かにオレが掴んでいたのはパンツちゃんの履きかけのパンツ……しかもちゃんとクロッチ部分の表地裏地を両面から握りしめているではないか!!!

 こ……これは素晴らしい箇所を触ってしまったようだ!!


 事実を知ってしまった変態脳が直接指令を送っているのだろう……パンツちゃん成分を手のひらに少しでも擦り付けようとオレの手がその場でニギニギとパンツをマッサージし始める。



「いやあああああキモいって!!! 早くハンカチとるなら奪っていいからーー!!! 早く離してよおおおおお!!!」


「あ、じゃあ遠慮なく」



 オレはパンツちゃんの桃源郷の上に覆いかぶさっているハンカチをするりと引き抜きバトルに勝利。

 その後しばらくパンツちゃんのパンツを味わいたいところだったのだが、パンツちゃんの叫び声を聞いた仲間が「なんかあったのー?」と入り口前からひょこりと顔を覗かせた。



「ーー……え、男?」



 目が合った瞬間オレの目がギラリと光り、狙いを定める。



 逃ガサヌ!!!



 オレはパンツちゃんのパンツから手を離すとそのまま覗いてきた敵女子めがけてクラウチングスタート!!

 


「ぎゃあああああ変態いいいいいい!!!!」



 敵女子はあまりのオレの迫力に圧倒され体の向きを変えて逃げようとするも、勢いに乗ったオレの猛追から逃れることはできない!!

 

 ふふふ……さっきのパンツちゃんのおかげでいい足止め方法を思いついちまったぜ!

 


 オレは敵女子にある程度近づいたところで再び地面を強く蹴り上げスーパージャンプという名のヘッドスライディング!

 敵女子のスカートからチラチラ見えるパンツを器用に掴むとそのまま勢いよくずり下げる。



「いやあああああああ!!!!」



 パンツが太ももあたりまで下がったことにより敵女子の進める歩幅が急激に減少。 その後なんとかパンツを上に引き上げようと敵女子の動きがピタリと止まった。

 見たか!! これぞ戦いの最中オレが編み出した究極の奥義!!



 その名も【パンツ・ロック】!!!



 オレはこの【パンツ・ロック】で敵女子の動きを封じ、注意をパンツに向けさせている隙に目の前で揺れているハンカチをスマートに抜き去る。



「っしゃああああハンカチゲットおおおおお!!!!!」



 この究極奥義を食らったお前、そしてパンツちゃん、許せ。

 全てはお前らに勝利して、浮かせたお金で少しでも優香に楽をさせるためなんだ!!




「それでは失格者の集うプールサイドへ行ってらっしゃーい!」



 オレは奥義の犠牲者に小さく手を振りながら再び女子トイレへと向かう。

 するとちょうど敵女子からハンカチを奪った小畑たちが、敵女子を連れてトイレの個室から出てきているところだった。



「くっそ最悪……びちょびちょぢゃん」



 敵女子の1人に視線を向けると和式便器の上で尻餅でもついたのだろうか。 スカートのお尻部分から水が滴り落ちている。



「くふふふ、ひひひ……ねぇどうだった? 自分がやるつもりだった水浸し作戦を逆にやられた気持ち」



 小畑がニヤニヤした顔で敵女子に囁きかけている。



「あんたの顔覚えたからな。 6年なったら覚悟しなよ」


「あれー? なんかここトイレ臭くな〜い? ていうか、あぁー!! こんなところにスカートとパンツ濡らした人いるよー! 通りで臭いわけじゃーん!! なに漏らしたの!? トイレさんはさっさと消えてくださーい、臭いでーす」


「くっ……くうううううううう!!!!!!」



 前に三好が言ってたけど、確かに小畑がいればヤンキー多めの中学でも上手くやっていけそうだよな。 小畑が味方サイドでよかったと心から思えるぜ。



 ……それにしても小畑、久々にこんな楽しそうな顔しちゃって。 流石は女王様だぜ。



お読みいただきましてありがとうございます!

下の方に☆マークがあるので、評価していってくれると嬉しいです!!

感想やブクマもお待ちしてます!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ