218 合法ナイスゥーー!!
二百十八話 合法ナイスゥーー!!
さて、相手側の女子グループがオレの潜む女子トイレに入って来て大体10分が経ちました!
入って来た女子たちの人数は3名。
ちなみにそいつらが中に入って来てからの流れは……まぁオレの想定通りって感じだったな。
「あ、このトイレだけ壊れてるっぽいよー」
「マジー? じゃあそれ以外の隣の3つに1人ずつ入ってダベろーよ」
「いいねー! 鍵は全部壊れてるっぽいけど、ゆーてここなら安全っぽいし」
そういうと敵女子たちは各々オレが潜んでいる『使用中止』と書かれた紙を貼られた個室以外の扉を開けて中へと入っていき、それからはまさに呑気なガールズトークを始めだし、今に至る……ということだ。
まぁガールズトークというのは名ばかりで、『ちょっと態度にムカついたから次は誰を虐めるか……』といった作戦会議だったんだけどな。
どこの学校も大変だぜ。
オレは敵の女子たちのガールズトークを聴きながらタイミングを待っていたのだが、ついにその時がやって来た。
「あ、なんかトイレしたくなったかも。 ちょっと2人でダベっててよ」
「え、じゃあ私もー」
「私もー」
キターーーー!!!!
隣の個室から和を連想させるような音が流れ出す。
ーー……なんだろうね、パンツを脱ぐ音なのかなそれとも別の音かな!?
しかしながら間違いないトイレタイム!! この時を待っていたああああああ!!!!!
オレはまるで蜘蛛のように扉から抜け出すと、手始めに隣の個室の扉を勢いよく開ける。
「あーごめん、入ってまーす。 って…うぇえええええええええ!?!?!?」
敵の女子がこちらに振り返るなり目を大きく開いて叫び声をあげる。
「くくく……残念だったな」
敵女子は絶賛トイレ中。 しかもそれが和式のため、無防備にもオレの目の前には腰に下げたハンカチがぶら下がっているのだ!!
オレはすかさず手を伸ばして敵女子のハンカチをゲット!!
「え、どうしたの!?」
「虫でも出たー?」
ふははは此の期に及んで呑気だなぁ敵JSどもおおおお!!!!
オレはすぐに隣2つの扉を開けて先ほどと同じように、目の前で無防備にぶら下がっていたハンカチをスルリと抜き取っていく。
「えぇ!?」
「男ぉー!?!?」
残り2人も後ろを振り返りながら驚きの表情。
「ちょっとここ女子トイレなんだけど!! 変態か!?」
敵女子の1人がキッとオレを睨みつける。
「は? でもお互いのトイレに隠れることって違反とは言ってなかっただろ? セーフなんだよセーフぅ!!!」
オレはニヤリと笑みを浮かべ、睨みつけてきている敵女子を最高の角度から見下す。
「ちょっと!! 見んなよ!!!」
「おいおいダメだぞー? ハンカチ盗られたら大声は厳禁。 味方にオレの位置を知らせてるって見なされて失格になっちゃうよー?」
「ーー……くっ!!」
「あっははははは!! 女子トイレだと思って油断したかどんまいだねぇ!!」
「ひ……卑怯じゃん!!」
「卑怯上等!! オレにはここまでしてでも勝たなきゃならん理由があるんだよ。 はいはい、トイレ終わったら静かにプールサイドへ移動してくだちゃいねぇー」
敵女子たちのトイレタイム終了を確認したオレは、小さく手を振りながら彼女たちを女子トイレから見送る。
「ーー……6年になったら覚悟しなよ」
敵女子の1人が舌打ちをしながらオレに悪態をつく。
「かもんかもん。 ただその時はお前らのトイレ中の音、みんなに教えるからそのつもりでいろよな? 特にお前」
オレは敵女子3人の中で一番目付きの悪い女を指差す。
「な……なにさ」
「流石に音大きすぎな? 一瞬ここに強烈なあの下から勢いよく出る水が完備されてんのかと勘違いしたぜぇ」
「ーー……!!!!!!」
「それでもいいなら6年で相見えることを楽しみにしておりましょう」
こうして敵女子3人は悔しさと恥ずかしさで満ちあふれた表情をしながら静かにプールサイドへ。
その後もオレはこの女子トイレに訪れる敵女子たちのハンカチを片っ端から奪いに奪っていく。
「セーイ!!」
「きゃああああああ!!!」
「オレ、参上!!」
「はああああああ!?!?!?」
「おいお前めっちゃセクシーなパンツ履いてんな」
「ぎゃああああああ!!!!」
くくく……、あーーっはははは!!!!!
どうでしょう!! これぞオレの考えた不意打ち&合法作戦!!!
ハンカチを奪い取るという目的を達成させるまでの間に、その女子の奏でる音色を聴きながらパンツまで見れる!!!
怖い……この作戦を思いついたオレの変態脳が怖いぞおおおおお!!!!!
こうしてオレは開始約1時間の間に合計8枚のハンカチを楽々ゲット。
また次の餌食となるであろう女子たちの会話が聞こえたので「ニヒヒ」と笑みを浮かべながら再び『使用禁止』の個室の扉の裏へと隠れると、次はどんな敵女子が入ってくるのだろうかと半ば興奮しながらその時を待ち望んだ。
「いやー、私ら結構いけてんじゃない?」
「くふふ……あー、この感覚久しぶりーー!!」
ーー……え、待って?
聞こえてきた声を聞いたオレは一瞬で背筋を凍らせる。
まさか……いや、でもこの声、聞き間違えるはずが……!!!
声的に人数は2人。 その女子たちが楽しそうに会話をしながらトイレの中へと入ってくる。
オレは生唾をごくりと飲み込みながら、自分の予想が的中していないことを心から願った。
「あ、良かった誰もいないっぽいよ美波ー」
「やっぱ3階って下にしか逃げ道ないし、みんな嫌ってんだって」
オーーマイガァーーーーーーーー!!!!!
オレの当たって欲しくない予想は大的中!!
そう……その声の主は三好とドSの女王・小畑のもの!!
そうだった……敵女子のことばかり考えてて、味方の女子が入ってくることは想定外だったあああああ!!!
もしオレが女子トイレに隠れていることが三好や小畑にバレたらどうする……!?
案外内緒にしてくれたり……いや、女子ネットワークを侮ってはいけない!! このことは身近なやつから身近なやつへと少しずつ広がっていき、最終的には結城の耳にも届いてしまうかもしれないじゃないか!!
そうなれば今後生まれる可能性のある結城との恋愛フラグが完全になくなってしまう可能性だってある!!!
避けねば……それだけは絶対に避けなければああああああ!!!!
「ーー……ん? 使用禁止?」
オレの隠れている個室の便座に貼ってある張り紙を見たのであろう小畑が小さく口に出す。
「どうしたの美波」
「いやさ、なんでわざわざ便器に貼ってんのかなって」
ーー……え?
「どういうこと?」
三好の純粋な質問が小畑へと投げかけられる。
「だってさ、普通使用禁止になってるなら扉を閉めて……その扉の前に張り紙してるもんじゃないの?」
!!!!!!
小畑の疑問に三好は「ほんとだ、なんでだろー」と納得している様子。
……た、確かにそうだ!! 入っても意味ないのなら便器にわざわざ貼らずに扉の前にドンと貼り付けてた方が効果ありそうだよな。
そこまでは考えつかなかったぁ……!!
オレが1人静かに反省していると、小畑の口から衝撃の1言が放たれる。
「もしかして……なんかの罠……だったりして。 誰かどこかに隠れてるとかありそうじゃない?」
ドキィ!!!
「えっと……美波? なんで?」
「例えば私なら……この個室をわざと開けっ放しにして近くの掃除用具入れとかに隠れたりして、敵が奥の張り紙に注意を奪われてる隙に奇襲をかけるかなって」
あー、なるほどぉ。 そういう手もあんのか。
三好もオレと同じ感想だったらしく、「さすが美波だねぇ」と感心の声を上げている。
「まぁでもさ、流石にそれはないんじゃないかな。 美波みたいなキャラ、向こうにはいなさそうだし」
「だよねぇー。 とっととトイレ済ませてまた単独行動してる奴らを追い詰めよ!」
「おけー!」
2人は控えめに盛り上がりながら最奥とその隣の個室へ。
今からトイレタイムに入るらしく、同時にパタンと扉を閉めた……その時だった。
「ぎゃはははははは!! それ最高!! トイレで待ち伏せ思いつくとか最高ぢゃん!!!」
「だっしょ!? それでハンカチ獲るついでに一緒に蹴ったらさ、トイレの水で汚れてる格好見れんじゃない!?」
「それおもろいーー!!!!」
ーー……!!!
三好たちが個室に入ったタイミングでギャハハうるさい女子たちの声が聞こえてくる。
この声は三好たちにも聞こえたようで、一瞬でトイレ内が静寂に包まれる。
「え、ちょっと美波、今の声聞こえた?」
「う、うん。 流石にここからじゃ逃げられそうにないし……とりあえず佳奈、まだパンツ下ろしてない?」
小畑が冷静に三好に語りかけている。
「うん。 まだ座ろうとしたところ」
「じゃあさ、静かにそのまま立って、扉の裏になる場所に立って隠れよう。 んで、あいつらがこの中に入ってきたのを見計らってハンカチを逆に奪う。 おっけ?」
「わ、わかった!」
小畑は「逆にこっちから蹴り返してあげるっての……」と静かに笑い、その後息を潜める。
これは小畑……ナイスな判断だな。 果たしてこれで敵女子と味方女子……どっちが勝つか。
敵女子たちがトイレ内へと入ってくる。
オレが先にバレてしまえば、敵女子に『ここにまだ誰か潜んでいるかも』と警戒されて三好たちもおしまいだ。
……何としてもバレるわけにはいかないな。
小畑、今回の獲物はお前に譲ろう。
オレはこのターンは【待機】を選択。 小畑の作戦が上手くいきますようにと心から願ったのだった。
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