216 そういうお年頃!!
二百十六話 そういうお年頃!!
新学期。 外のひんやりした空気を肌に感じながら学校へ到着すると、廊下の窓から外の景色を眺めていた美香を見つける。
美香……皆は覚えてくれているだろうか。
一応説明しておくと、名前は【与田 美香】。 反対から読むと【かみ だよ】ということで、前のオレがくしゃみで死んだ際、エロ本付録のイチゴパンツと引き換えにこの体に転生させてくれた神様だ。
今はこの女子の姿を創造して人間界を楽しんでいるようだが……。
「おー美香。 あけましておめでとう」
学校で初めて挨拶をする相手が神様なんてかなり縁起がいいぜ。
オレは美香の肩を後ろから叩きながら話しかける。
「おーダイキか。 あけおめなのじゃ」
オレが「素に戻ってるぞ」と声をかけると、美香は「そうじゃった」と無表情のまま舌を出す。
やはりかなり長い年数神様やってると、そう簡単に口調は治らないものなのかな。
「どうしたんだ美香。 なんか今日は雰囲気が明るくないか?」
「む、ダイキ、美香のことよく見てる」
美香がオレに親指を立ててメガネをキランと光らせる。
「何かいいことでもあったのか?」
「うん。 初詣のおかげで美香、かなり満たされている」
「えっと……どういうことだ?」
オレが頭上にはてなマークを浮かび上がらせていると、美香が「ダイキには特別に教えてあげる」と言いながら自身の下腹部を優しく撫でる。
どうしてそんなところを撫でてるんだ? と考えていたのだが、その理由を美香がオレに説明し出した。
「ダイキ。 美香が神様なのは分かる?」
「うん」
「霊体って、どうやってお腹いっぱいにするか分かる?」
ーー……お腹いっぱい?
「そりゃあもちろんご飯……だけど食べられないもんな。 えっとでも……お供え物とか?」
オレが人差し指を立てながら尋ねると、美香は小さく首を振る。
「半分正解。 だけど、半分は不正解」
「え?」
「答えは、想いの力」
「想いの……力?」
「そう。 例えば普通の幽霊で例えると……お供え物は嬉しいけど、お腹は満たされない。 それらのお腹を満たすには日々のお祈り。 お祈りの気持ちが強いほど霊はお腹が満たされて、輪廻転生……つまり生まれ変わりへの道をより早く元気に進むことができる」
美香がゆっくりと目をつぶり、静かに手を胸の前で合掌させる。
「な、なるほど」
「だけど神様は輪廻転生なんかしない。 神様は皆の繁栄に力を注ぐから常にお腹が空いている。 だから定期的なお祭りや初詣はたくさんの人が来てお参りしてくれるから、そこでお腹が満たされていく」
「あぁ、だから美香はそのお参りのおかげで元気だと?」
「そう」
何やら興味深い話だな。
「え、でも美香って今は人間の体だろ? 給食とか普通に食べてるじゃん。 それでは満たされないってことか?」
「味はするけどそこまで満たされない。 ていうかダイキ、それ以上は禁則事項」
美香が指を唇に当て、オレを見ながら「しー」と棒読みで注意する。
いやいや自分から話し振ってきたんじゃねーか。
オレはまだ聞きたいことが色々とあったのだが、後ろの方から三好たちの「福田ぁー」という、オレの名を呼ぶ声。
それに反応したオレが三好たちの方を振り返って再び美香のいた場所に視線を戻すと、その一瞬の隙に美香の姿は消えていたのだった。
ーー……まさに神出鬼没だな。
◆◇◆◇
「へぇー。福田も参加するんだ」
教室に着くと、クラス内のほとんどが隣町の小学校との競技会の話で盛り上がっている。
耳を傾けた限り、参加と不参加の割合は半々といったところだろうか。
やっぱり我が子に怪我のリスクがあると分かって参加させる親はあまりいないんだろうな。
オレはそれが一番の正解だよと思いながらも、オレの席の目の前で盛り上がっている三好たちを見上げる。
てかこいつら……とうとう人目を気にせずにオレに絡んでくるようになったよな。
「そういや佳奈は参加すんの?」
ドSの女王・小畑がオレの机の上に腰掛け、足をぶらつかせながら三好に尋ねる。
ーー……今年もありがとうございます。 後で机に残った体温堪能させていただきます。
「そりゃあ出るよー」
「なんで?」
「とりあえずさ、私はどんなヤンキーがいるのかこの目で見ておきたいんだよね。 これで本当にヤバい奴がいたなら親に頼んで私立受験しよっかなーって」
「いやいや佳奈の学力じゃ無理でしょ」
「なーーっ!?!?」
小畑の華麗なツッコミに三好が「なにをーー!?」とワチャワチャと戯れ始める。
女子小学生……JS同士の絡みってどうしてこんなに尊いのだろう。
「いやいや佳奈、冗談だって。 それで、麻由香は?」
小畑が三好と絡みながらも多田に視線を移す。
「うーん、ウチは出たくても出れないかな。 ママがそんなお金の心配なんかしてないで、そんな時間があるのなら勉強しなさいって」
多田の返答に三好が「麻由香は大変だねぇ」と同情の目を向ける。
確かに……。 多田、ちゃんと定期的にマッサージをしていろんな意味で発散するんだぞ!!!
「まぁウチは仕方ないとして……美波は出るの?」
多田の質問に小畑はニヤリとドSな笑みを浮かべながら「うん」と答えた。
「え、美波……なにその笑み」
「いやさ、佳奈もさっき言ってたけど、6年生からは同じ学校で、公立に進むんだったらそのまま同じ中学になるわけじゃん? だからまぁ私の場合は可愛さでライバルになりそうな子が……いないとは思うけど、一応目星つけとこうかなーって思ってさ」
あー、なるほど。 ライバル視察ってことか。
まぁ小畑はこのまま大きくなったら絶世の美人になることは間違いないと思うし……別にそんな視察とかする必要ないと思うんだけどなぁ。
しかしあれだ、もしそのライバルが小畑を潰すために嫌がらせを始めてみろ……その時がおそらくその子の最期だろうな。
◆◇◆◇
放課後。 一応どれだけの参加者がいるのかを把握するために多田に情報収集を頼んでおいたのだが、5年生全体の人数が120名に対して、参加人数は大体90名くらいとのこと。 案外いたな。
そして他のモブたちを除いてオレの知ってる参加者は以下の通りとなっていた。
【参加】
オレ・三好・小畑・水島・エマ・西園寺・美香・結城
「ーー……って、ええええええ!?!?!? 結城さん出るのおおおおおお!?!?!?」
多田から教えてもらった参加者リストの中に結城の名前を発見したオレは驚きの声を上げる。
「あー福田もびっくりした? ウチも驚いたよ。 あんなおとなしい子が参加するなんてね」
「な、ななななんで!?!?」
「なんかこれは4組の子の情報なんだけど、結城さん、ママを楽させてあげたいから……とか言ってたらしいよ」
「!!!!」
そうだ。 結城はまだ母親が家を空けて何処かへ行ってしまったことを知らないんだ。
一応優香が「お母様、なんか急用でしばらく家を空けることになったらしいから」とだけは伝えてはいたが……
うぅ……結城ぃ!! 不憫だよぉ健気だよぉなんとかしてあげたいよぉ!!!!
この結城の気持ち、何としてでもあのババァに届けさせてやりたいものだ。
オレは一刻も早い結城と結城母との関係修復を心から願ったのだった。
あ、ちなみに水島は最初は参加しないつもりだったらしいんだけど、エマや西園寺が参加するって聞いた途端に目の色変えて「花ちゃんも参加するー!」って言ってたらしいぞ。
エマも最初は参加しない意志でいたっぽいんだが、友達に誘われれて断れなかったんだとさ。
友達想いのエマらしいといえば、エマらしいよな。
◆◇◆◇
帰り道。 偶然タイミングが重なったことによりエマと2人で下校していると、エマが「ダイキも参加するらしいわね」と競技会の話題を振ってくる。
「まぁな」
「あ、それでね。 エマ、知らなかったんだけど、エマのクラスにずっと空いてる席があったのよ」
「うん」
「でね、ずっとさ、なんであるのかなーって思ってたんだけど……2年くらい不登校の子の席だったのよ。 びっくりしない?」
ーー……なんだ突然。
オレが少し困惑した表情を向けていると、エマが「あ、そうだった。 これを先に話すべきだった」と言いながら手をパンと鳴らした。
「なんか、クラスの子が話してたんだけど……その子も競技会に参加するらしくてさ」
エマが「なんで学校こないのに参加するのかしらね」とオレを見ながら小さく肩をあげる。
「もしかしてあれじゃないか? そいつもヤンキー気質で、そういうバチバチしたものに目がないとか」
「どうなんだろ。 でも別にみんな怯えてなかったからそんなんじゃないって思うんだけど……」
「なるほどなー」
怖い感じの男じゃなかったらどうでもいいわと思いながらボーッと空を見上げると、エマが「あ、そう言えばさ……」とオレの腕をツンツンとつついてくる。
「なんだ? まだその不登校の話か?」
「ううん、桜子の話」
「……結城?」
「うん。 桜子ってしばらくの間、ダイキの家に泊まることになったのよね?」
エマが少し首を傾げながら尋ねてくる。
「え、そうだけど。 それが?」
「桜子、一緒じゃないの?」
「あ、うん。 結城は自分の家に荷物取りに行ってるよ。 結構持ってくるもの多そうだから、ウチの担任が車出してくれてる」
「なるほどね。 じゃあさ、その間はずっとダイキの部屋が桜子の部屋になるってこと?」
「そうなるかな」
別にオレ的には結城も安心できるようだし、部屋の中が結城の香りで満たされていくからオレ的には大歓迎なのだが……まぁギャルJK星の下着上下セットをそろそろ堪能したい時期にはきているぜ。
「でもどうした急にそんなこと聞いてきて」
「いやね、だったらエマの家に桜子の部屋用意してもいいんだけどなって思ったのよ」
「え」
オレは即座のエマの顔を見る。
「だってエマの家って2人しかいない割に間取りちょっと多くてさ、部屋余ってんのよ」
「……そうなのか?」
「えぇ。 ただ流石にそこまで仕送りとかもらってるわけじゃないからさ、ご飯とかは殆どダイキの家で過ごしてもらうことにはなるんだけど、お風呂とか簡単なものはエマの方で引き受けてもいいかなって」
エマが「どうする?」と言いながらオレに尋ねてくる。
「まぁ……それは結城がそうしたいならオレは何も言わないが。 いいのか?」
「なにカッコつけてんのよ。 アンタだって1人の空間がないと結構困るんじゃないの?」
エマがニヤリと笑いながら一瞬視線をオレの下半身へと向ける。
「ーー……どういう意味だ?」
「言わすな変態。 エマがその場を確保させたげるって言ってんの」
「とりあえず優香と結城に話してからになるとは思うんだけど、それでいいか?」
「構わないわよ」
エマ……お前は色々と悪い女だと思っていたけど、いい女じゃないか!!!
「なんか今のでめっちゃエマのこと好きになったわ」
「ふふ、単純ね。 でも言ったはずよ?」
「なにが?」
「エマに惚れんなよ」
エマはニシシと無邪気に笑うとオレの額に軽くデコピン。
「そうと決まれば一応掃除しなきゃだから、ダイキも部屋の掃除手伝いなさい」と囁きながら顔を近づけ、駆け足でオレとエマの家のあるマンションへと向かったのだった。
そういやマンションの階段を登ってる時に引越し業者の人たちがせっせと荷物を運んでいってたけど、誰か引っ越してきたのだろうか。
◆◇◆◇
「ーー……ちょっと待ってくれ」
オレはエマ宅の空き部屋の掃除をしていると、とある重要なことに気づいてしまう。
これから結城はここ、エマの家でお風呂に入ることになる……ということは今後もう結城の脱ぎたてパンツを拝める回数がなくなるってことじゃないか!?
「ーー……マジか」
オレはガクリと肩を落としながら深いため息をつく。
「どうしたのよダイキ」
エマが少し心配した表情でオレを覗き込んでくる。
あぁエマ……お前ならこのオレの悩みを少しでも汲み取ってくれるだろうか。
オレはエマに視線を向けると、心の声を少しだけ伝えてみることにした。
「エマ……」
「な、なによ」
「パンツ……見たい」
「な、なななに急に変なこと言ってんのよ変態!!
エマの華麗なツッコミが綺麗な角度でオレの頭に触れ、バシィと気持ちのいい音がなる。
「オレも……オレもたまにでいいからさ、一緒にお風呂に入りたいよおおおおおエマああああああああ!!!!!」
「ちょっと気持ち悪いっての! 離れなさい!」
「いいじゃんエマはなんだかんだで中身は18歳だろ!? 小5のオレの裸なんか見てもなんとも思わないはずじゃん! なぁ、癒してくれよおおおお!!!」
「だあああああもう!!! なんでそんな話になってんのよ!! そんな妄想するくらいなら手ェ動かしなさいよ手ェ!!」
こうしてオレとエマはギャーギャー叫び声を上げながら部屋の掃除を完了。
その後結城よりも先に優香が家に帰って来たので、その件を優香にも説明することにしたのだが……
「え、いいのエマちゃん」
「はい、それに人数多い方がエルシィも喜ぶでしょうし」
優香が「じゃあもし桜子が望んだ時はよろしくね」とエマの手を優しく握り込む。
「助け合いましょうよ優香さん。 エマにできることがあったらなんでも言ってください」
「うんありがとう。 実は私さ、ちょっと心配してたんだよね」
優香がオレをチラ見しながらエマに微笑む。
「心配……ですか?」
「うん。 ダイキもお年頃だしさ、ずっと自分の部屋がないままだったら色々と困るかなって」
「あー分かります! エマもダイキのそれ心配してたんですよ」
「だよね!」
「です!」
2人はなぜか意気投合。 「あははは」とお互いを見ながら笑いあっていたのだが……
「……えっと優香さん。 すみませんがその、色々ってどの色々ですか?」
「……えっとエマちゃん、ごめんだけどどの、色々ってどの色々なのかな」
2人が同時に同じ質問を互いに尋ねる。
「「え?」」
「言わすんですか!?」
「言わすの!?」
その後しばらくの沈黙。
顔を赤らめた2人は「た、多分あのことですよね」「……うん」と恥ずかしそうに笑いながら互いに頷きあう。
素敵で尊くもエロい光景。 この景色をずっと見ていたいところなのだが、やはりここでジッとしていられないのがオレ……ダイキです!! 2人にはもう少し恥ずかしい気持ちでいっぱいになってもらうと致しましょう!!
「ねぇお姉ちゃん、エマ。 色々ってなに?」
「「え!?」」
「色々って? 例えば?」
2人の視線がオレの体の一箇所へと向けられているのがわかる。
「えっと……オレのここがどうかした?」
「もうダイキ! エマたちを弄らないの!!」
「やあああああああああん!!!!」
ニヤァ!!!
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さぁ次回!! 競技会予定!!




