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213 相談相手!!


 二百十三話  相談相手!!



 それは年を越したお正月……1月1日の夕方。

 結城と2人で『魔獣ハンター』をしていたオレが、飲み物を取りにリビングへと向かった時のことだった。



「えぇ!? ちょっと……それは流石に急すぎませんか!?」



 リビングの扉を開けてすぐに聞こえてきたのは焦った様子の優香の声。

 そんな優香に視線を向けるとスマートフォンに耳を当てている……どうやら誰かと通話をしているようだが……。

 しばらくそんな様子を観察していると、オレの気配に気づいたのか優香がこちらに顔を向けた。



「ちょっとすみません、また後ほどこちらからかけ直しますので絶対に出てくださいね!」



 そう言い残してそそくさと通話を切った優香はどうしようもない表情をしながら「ダイキ……」とオレの名を小さく呼んだ。



「どうしたのお姉ちゃん」


「今、桜子の母親から電話があったんだけどね……」


「うん」


「色々あって家を空けるから、3学期が始まってからもしばらくは桜子を預かってくれないかって……」




「ええええええええええ!?!?!?」




 ◆◇◆◇



「とりあえずこのことは桜子には内緒にしといてね」



 優香はそうオレに伝えると、足早に自分の部屋へ。

 一体優香は部屋で何をするのか……実際のところ直接聞きたかったのだが、オレは優香の指先の変化を見逃さなかったのだ。

  

 そう……ごく僅かにだが、細かく震えていたんだよ。



 オレは静かに優香を見送った後、周囲の音に気をつけながら優香の部屋の前へ。 

 中から微かに声が聞こえてきていたので、ゆっくりと扉に耳を当てた。



「ーー……うん、そうなの。 緊急事態。 それでさ、ちょっとその人の今後の行き先とか知っておきたいんだけど……位置情報分かる人いる? ーー……うん、うん。 分かった。 じゃあその件はお願いしてもいいかな」



 これは……優香国の民たちとの会話だろうか。

 しかし優香の民たち……バラエティーに富みすぎだろう!!

 なんだよ警察官に刑事に特殊部隊って!! 他にも医療従事者やバスの運転手、高校の校長、一般の主婦、サラリーマン……ほぼ全ての職業を網羅してるんじゃないか!?


 それに考えてもみてくれ。 今日は1月1日・お正月だぞ!? そんな皆がゆっくりしている日に優香の相談に乗っているんだ……どんだけ人望が厚いんだよ優香姫よおおおおお!!!!


 

 オレはその場を離れてリビングへ。

 冷蔵庫からジュースを取り出して一気飲みをした後に「ふむ……」と手を口元に当てる。



「ーー……結城のことだもんな。 オレも何か力になれないだろうか」



 少し考えて思いついたのは担任に相談することくらい。

 やはり結城の母親……ババァの今後はどうでもいいとしても、結城自身はおそらく母親のことは少なからず好きなのだろう。

 だって去年の夏休みにもお土産を買って帰ってたくらいだしな。


 そんな結城を今後どうしていってあげたらいいのか……これは教師生活の長そうな担任の知恵を聞けば何か糸口が見つかるかもしれない。

 前にオレに電話をかけてきているからオレの着信履歴に電話番号は残っている。 聞こうと思えば今からでも聞けるんだが……



「でも……でもなぁ」



 オレはスマートフォンに表示されている担任の電話番号を見つめながらも、タップして電話をかけることを躊躇する。

 理由はただ1つ。 そう……先ほども少し触れたのだがお正月なのだ。


 おそらくは家族で楽しく過ごしている時間……そんな日に仕事のことを思い出して欲しくはない。

 ……これはオレが社会人経験があるからこそ思うことなんだろうな。



「てことで、相談先はもうこの人しかいないだろう!」



 オレは電話帳をスクロールしてその名前をタップ。

 一応忙しいかもしれないので、メールを打つことにした。



【送信・エマ】時間あったら連絡くれ



 するとそれからすぐだろうか……。

 スマートフォンが震えたので確認してみるとまさかの着信通知。 もちろん電話をかけてきているのはエマからだ。

 メールで送ったんだからメールで返ってくると思っていたのだが……。



「もしも……」

『あ、ダイキ!?』



 エマの焦りに焦った声がオレの言葉を遮る。

 なんだ? 忙しかったかな?



「すまんエマ、また夜にでもこっちから電話す……」

『ちょうどよかった!! ちょっと今すぐウチに来て!!』



「ーー……へ?」



 理由を尋ねようとしたのだが、エマが通話を切ってしまったためそれは叶わず。



「ーー……え、今から行くの? オレが?」



 なんとなく嫌な予感はするが……まぁ仕方ないか。

 何か問題があったならそれをパパッと解決してやって、その後オレの相談を聞いてもらえばいいんだしな。



「うん、行くか」



 ちょっと出かけてくることを結城に伝えに自室へと戻ったのだが、結城はVRゴーグルをつけて『魔獣ハンター』の世界にのめり込んでいる様子。

 邪魔をするのもどうかなと思ったオレは、結城の目の前に「ちょっと出かけてくるね」と置き手紙をして1階上にあるエマ宅へと向かった。



 ◆◇◆◇



 ピンポーン



 エマ宅の前。

 インターホンを鳴らすと「あーい!! だいきー?」と天使の声が扉の向こう側から聞こえてくる。

 うはぁ……やっぱりこの声、癒されるなぁ……。


 耳から伝わる幸せを噛み締めていると扉が開き、その隙間から先ほどの声の主・金髪天使エルシィちゃんがヒョコッと顔を出す。 「あかめー♪」とオレを見上げながら眩しい笑顔を向けた。



「あ……あかめー?」


「んー!! あかめー♪」



 エルシィちゃんが「だいきも、エッチーに、あかめーは?」と聞いてくる。

 ……な、なんなんだその謎の呪文は!!!


 意味は分からないがエルシィちゃんはオレにその言葉を言ってほしい様子。 オレはとりあえず分からないながらも「あ、あかめー!」と言うと、エルシィちゃんはぴょんぴょんと可愛く跳ねながら「あかめー♪」と喜んでいた。

 なんだろう……子供の間で流行ってるアニメとかなのだろうか。



「あかめー、あかめー……あかめー?」



 オレはエルシィちゃんに腕を引かれながらリビングへ。

 その間も謎の呪文「あかめー」の正体を必死に考えていたのだが、次の瞬間……想像もしていなかった人物がオレの視界に入ってきたため「あかめー」という単語はどこかへと吹っ飛んでしまう。



「あら、福田くーーん! ちょっとぶりねーー!!」



「ええええええええ!?!? なんでいるんですかあああああ!?!?!?」



 そこにいたのは顔を真っ赤にさせながらハイテンションモードになっているエルシィちゃんのクラスの担任・高槻舞。

 え、待ってくれ! なんで正月に高槻さんがエマの家にいるんだ!?!?

 目の前にいる高槻さんは完全なる私服モードで片手にはワイングラス、そしてもう片手ではエマがまるでヌイグルミのように抱きかかえられていた。



「お、おいエマ、この状況はなんだ!?」


「それはエマが聞きたいわよ。 実はね……」



 どうやらオレの担任同様……最近高槻さんが学校の制服が変わるかもしれないことを話に来たっぽいのだが、その時にお正月もエマとエルシィちゃんの2人で過ごすことを伝えると、「それは寂しいから先生が一緒にいてあげます!」と大晦日の夜からエマ宅に泊まりに来ているらしい。



「あの……先生は家とか大丈夫なんですか?」



 オレが酔いモードの高槻さんに尋ねると、高槻さんは「もちろんでぇす」と親指を立てる。



「先生、出身が四国なんですけど、今年は帰らないのでどうせ家にいても1人なんですぅー」


「な、なるほど」



 それで本音は寂しいからエマたちに絡みに来たと。

 まぁ防犯面からしたら高槻さんがいた方が安全なのは確かなのだが、酔いつぶれ美人に金髪ロリ姉妹……逆に狙われやすくなってませんかねぇ!!!



「あ、そうだ。 それでエマ、オレに何の用なんだよ」



 危うくこの空気に流されるところだったぜ。

 当初の目的を思い出したオレはエマがオレを呼びつけた理由を問いかける。



「そんなの決まってるじゃない」


「なんだ?」


「エマの身代わりよ」


「え」



 エマはニヤリと笑うと、器用に高槻さんの腕からすり抜けてオレのもとへ。 

 そのままオレの背後に回るとオレの背中を高槻さんのいる方向へポンと突き出した。



「じゃあエマ、夜ご飯の準備しなきゃだから、あとはよろしくねー」


「なあああああにいいいいいいい!?!?!?!?」



 ハメられたと気づいた時にはもう遅い。

 オレの体にはすでに高槻さんの腕が迫ってきておりそのままロック。 身動きを取ろうにも、大人の女性の魅惑的な香りがオレの嗅覚を刺激して体に力が入らない。



「ちょっ……あの、高槻さん!?!?」


「うふふふー♪ 福田くんも先生と一緒に楽しみましょーねー♪」



 くっそおおおおお!!! 普通ならムカつく行為なのに高槻さんが美人すぎてそれでもいいのかなとか考えてしまうじゃねえかああああ!!!

 

 オレはこのままでもいいかな……という揺るぎそうになる心を断ち切るために脳内に結城の姿を思い浮かび上がらせる。



 そうだ……オレがここに来た理由は結城のことをエマに相談するため!! だからオレはこんなところでアヘアヘしてる場合じゃないんだああああああ!!! だからオレを離せ酒乱教師ーーーーー!!!!



 ーー……ん? 酒乱教師……教師?



「あ」



 オレはゆっくりと高槻さんを見上げる。

 そうだよな、この人もなんだかんだで教師……しかもお酒モードに入ってなかったら結構親身になってくれるっぽい先生じゃないか。



「んー? なんですか福田くん。 先生の顔に何か付いてますかぁー?」



 目をトロンとさせた高槻さんが体を左右に揺らしながらオレに尋ねる。



「あの、先生に相談があるんですが……」


「相談ですかー?」



 よし。 まずは高槻さんには申し訳ないが、酔いを覚ましてもらうとするか。

 オレはエマに風呂を入れてもらうようお願いをする。



「え、今からお風呂入れるの?」


「あぁ。 水風呂で」

 


お読みいただきましてあるがとうございます!

下の方に星マークがありますので、評価していってくれると励みになります嬉しいです!

感想やブクマ等もお待ちしております!!


少しずつ結城のために動き出す……!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久々の! エルシィちゃん!!! かわわ!! [一言] 不穏な気配……! 優香国の民たち、強すぎる!
[良い点] おおおおっ!! 怒涛の展開! 降臨したダーク優香に桜子ちゃんの毒親問題、怯える担任に酔っ払い美人女教師襲来!! 胸アツなストーリーに寝ようとしてたのに寝たくない!(寝ますけど) あ…
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