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211 やはり裏あり!!


 二百十一話  やはり裏あり!!



 ダーク優香が降臨した翌日の朝。

 オレはインターホンという最悪な目覚ましのせいで、ソファーの上で重い瞼を開ける。



「ーー……なんだ今日もか? 三好のやろう邪魔しやがって」



 ゆっくりと立ち上がろうとすると、ちょうど朝食を作っていた優香と目が合う。



「あ、おはようダイキ」


「んん、おはよう」


「ごめんね、お姉ちゃん油を今使ってるから……代わりに出てくれる?」



 キッチンからは芳ばしいソーセージの香り。 これぞ朝食……起きたばかりだというのに胃が『何か入れろ』とグーグー喚きだしたぜ。

 オレは「わかった」と優香に伝え、リビングを出て玄関へ。

 そのまま扉を開けると、そこには担任がかなり疲弊した表情で立っていた。

 昨日も来たのに……?



「え、先生……またお姉ちゃんとお話ですか?」


「あ、あぁ……それもあるんだが、今朝から急遽、担当クラスの家々を伺ってるんだ。 ちょっと伝えなければならない事が出来てな」


「伝えなければならない事?」



 ◆◇◆◇




「ーー……え、制服が変わるかもしれない?」



 朝食作りを結城とバトンタッチした優香がオレの隣に座りながら、対面にいる担任の話を聞く。



「はい、福田くんには昨日それとなく話はしたんですが、来期……4月から隣町の小学校の生徒を吸収することとなりましてね。 それで校長同士がどちらの制服を採用するかで話し合ってまして」


「ーー……はぁ。 それでその結果はいつ頃に決まるんですか?」


「早くて3学期が始まってすぐ……ですね」


「そうなんですか」



 優香の言葉に担任が「はい」と申し訳なさそうに頷く。

 担任ってのも可哀想だよな。 今から同じ話をクラスの皆の家々に回って話さないといけないんだろ?



「実は3学期が始まってすぐ、お互いの学校の交流を兼ねて合同競技会……つまりは簡単な運動会的なものが開かれることになったんですよ」


「な、なるほど」



 担任の話を聞いた優香は「それで……?」といった感じで首を傾げている。



「なので……ほら、お姉さんは知りませんか? お隣の小学校の事情を」


「あー、荒れてる子が多いんですよね」


「はい。 なのでもしかしたらその競技会で怪我をする子も出てくると思いますので、日程が決まり次第こちらからまたプリントを配布するのですが……その日は自由参加型にしますので、別に登校しなくても出席扱いにはしますよ……といったお話です」



「えーー! それめっちゃいいじゃないですか!」



 オレが少しテンションを上げながら優香と担任の話に割り込む。

 だってそうだろ? 無理して体を動かさなくても出席扱い……夢のようじゃないか!!


 オレが「そうでしょお姉ちゃん」と尋ねると、優香は未だに首を少し傾げている。



「ーー……え、お姉ちゃん?」


「あの、先生? 先ほど先生は『別に登校しなくても出席扱いにはしますよ』と仰られましたが、それだとほとんどの生徒が参加しないのでは? てことは参加した生徒にのみ何か特典が与えられる……ということですか?」



 優香の推理を聞いた担任の目が大きく開く。

 ーー……え、なにその反応。


 

「さすが高校生ともなると、推理力が違いますね」



 は?



「やっぱり何かラッキーがあるんですね?」


「はい、もうこれを聞かれたお姉さんには話しますが……校長はどうしても勝利を望んでおられるので、参加してくれた場合には6年生で行われる修学旅行の代金を全額校長が払うとのことです」



「「ええええええ!?!?!?」」



 オレと優香の声が重なる。



「せ、先生。 それって本当なんですか?」



 優香の問いかけに担任は頷きながら「本当らしいです」と頷く。



「じゃ、じゃあ……それで勝っちゃった場合はどうなるんでしょう」


「はい、それで勝っちゃった場合ですが……」



 ーー……ゴクリ。



 担任はオレと優香を交互に見た後、ゆっくりと口を開いた。



「その場合はこれも参加者のみにはなりますが、中学に上がる際の初期費用・約10万円を校長が奢ります!!」



「「ええええええええ!?!?!?」」



 再びリビング内にオレと優香の声が反響。

 てかどんだけワンピース型の制服に命賭けてんだよ校長先生よおおおおお!!!!

 これがこだわりへの究極の『愛』の形なのか!?


 オレが校長の『愛』をリスペクトしていると、優香がオレの肩にポンと手を置く。



「ん、お姉ちゃん?」


「じゃあダイキは大丈夫だね。 その日はゆっくり寝てればいいだけだし」


「え」


「だってダイキ、出るつもりないんでしょ?」



 優香が安心しきった顔でオレに尋ねる。


 いや、でもなぁ。 そんな豪華な特典ちらつかされたら心も揺らぐってもんだよなぁ。

 参加するだけで修学旅行代免除で、勝利したら中学初期費用免除だろ? これでオレがガチの子供だったら、別に自分がお金もらえるわけでもないので喜んで休んでいただろう。


 しかしオレは一度社会人を経験した思慮深い子供!! 


 合計金額的には大体12万くらいだろうか……そんなお金があったら優香の欲しいブランド物のバッグとかあったら買えるかもしれないじゃないか!!!

 だから優香の問いに対するオレの答えは……こうだ!!



「やっぱり出よっかなー」



「「えぇ!?!?」」



 オレの言葉に優香と担任が驚きの声を上げる。



「ええええ、ダイキ!? なんで!?」

「そ、そうだぞ! そういう危険性のある競技はそういった奴らにだけやらせておけばいいんだ!」



 優香と担任が必死の形相でオレに詰め寄ってくる。



「ええええ、めっちゃ反対してくるじゃんお姉ちゃん! 参加するだけでも修学旅行代免除なんだよ!?」


「ダイキはそんなこと考えなくていいの! 家のお金はお姉ちゃんが上手くやり繰りするから!」



 優香がオレの両肩を掴んで前後に揺らす。

 まぁ確かに優香に任せておけばお金には困らずに済みそうだけど……



「じゃあさ……最近お姉ちゃん、自分の欲しいもの何買った?」


「え?」



 優香の体がピタリと止まる。

 ぶっちゃけ前々から気づいてはいたのだが……結城が連休などで泊まりにくるようになると、優香の個人的なお買い物がピタリと止まるのだ。 まぁそんなことなくても自分のものをあまり買ってる印象ないんだけどさ……。



「そ、それはほら、ゲーム機買ったよ?」



 優香が少しぎこちなくオレを見ながら答える。



「でもそれってオレたちと一緒にやる為でしょ? そうじゃなくてこう……ほらあるじゃん、女子高生だったら大半の子が欲しがるようなブランド物とか……」


「ーー……」



 オレの言葉に優香が視線を少し逸らす。

 ーー……やはりな。



「だ、ダイキ、どうしたの急にそんなこと言い出して」


「オレさ、その浮いたお金でお姉ちゃんに好きなもの買って欲しいって思ったんだよね」


「ーー……え」



 優香の表情から強張りが消える。



「ダイキ……?」


「オレさ、いつもお姉ちゃんにして貰ってばかりだから……だからさっきの話を聞いて、これならお姉ちゃんの為に頑張れるかなって思ったんだよ」


「!!!」



 優香の目に涙が一気に溢れ出す。



「ダイキ!!!」

「福田ああ!!!」



 !?!?!?!?

 なんでそうなる!?!?


 優香が抱きついてくるのはなんとなく分かる……しかし担任、なんでアンタまで!?!?

 ていうかタバコ臭えんじゃあああああああ!!!!


 

 こうしてオレの言葉に感動した優香はオレの参加を承諾。

 「危険だと感じたらすぐに降参すること」を条件に参加を許して貰ったのだった。



 そしてそれは担任が帰る時のこと。

 


「あの、お姉さん。 ちょっといいですか?」



 オレには極力聞かれないようになのか、担任が小声で優香に話しかける。



「はい、なんでしょう」


「昨日の件なのですが……何かされたんですか?」


「え? なんのことでしょう」


「結城の母親の彼氏さんが捕まったようなのですが……」



 うええええええ!?!? 捕まった!?!? マジか!!!



 驚きながら優香を見上げると、優香は「さぁ。 私は知りません」と自然に答えている。

 ……嘘だ。 絶対に昨日見たアレだ。

 てことは昨日の警察官たちも【優香国の民たち】ということか。




「先生? どうされました?」


「い、いえ……なななんでもありません。 それでは失礼します」



 担任は少し震えながら玄関の扉を閉めて次の生徒宅へ。


 しかしそうか、結城を嫌ってたっぽいあのババァの彼氏が捕まったか!! これはめでたい!!!

 オレは優香姫の偉大さを改めて思い知らされたのであった。



「じゃあダイキ、ご飯食べて『魔獣ハンター』やろっか♪」



 先ほどの担任の話を聞いてから、よりご機嫌になった優香が満面の笑みをオレに向ける。

 ほんと優香には頭があがらないぜ!!

 


「分かった! じゃあお姉ちゃんが満足するまで、ずっと付き合うよ!!!」



 ちなみにその日、オレは寝落ちするまで優香のゲームに付き合わされたのだった。


お読みいただきましてありがとうございます!

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