表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/733

208 NOOOOO!!!


 二百八話  NOOOOO!!!



 それはオレが結城とコンビニまでお菓子を買いに出かけ、幸せを噛み締めながら帰宅している時のことだった。



「あ、福田……くん。 あれ」


「ん?」



 結城が指差した先に視線を向けると、そこにはうちの学校の校長と、数名の教師たち。 

 皆神妙な面持ちで近くの喫茶店から出て行っている。

 そしてそこにはうちの担任や東北旅行に同行してくれた高槻さんの姿も。



「あー、先生たちだね」


「みんな暗い顔だね……どうしたのかな」



 少しの間立ち止まって教師たちに視線を向けていると、オレたちの視線に気づいたのか高槻さんと目が合った。

 ーー……あぁ、なんだろう。 嫌な予感がするぜ。


 本能で彼らに関わっては面倒なことになると感じたオレは、結城に「早く帰ろっか」と声をかける。



「福田くん、結城さんー」



 ちくしょう!! そこは軽くスルーしといてくれよ!!!

 高槻さんが小走りで小さく手を振りながらこちらに向かってくる。 そして何故かその後ろにはオレのクラスの担任も。



「おお福田、そして……4組の結城か。 なんだ、お前らまだ冬なのに青春してるじゃないか」


「?」



 頭上のはてなマークを浮かべている結城の前で担任が「あははは」と愉快そうに笑う。



「ちょ、先生。 別にオレたちそう言う間柄じゃ……!」



 このまま勘違いされるのは大歓迎なのだが、そういう言葉は結城がいないときにかけてほしいものだぜ。

 オレはとりあえず結城のためにも否定する形をとる。



「お、なんだー福田。 照れてんのか!?」



 そう言うと担任はオレの肩に手を回し、結城から距離を少し遠ざけながら顔を近くに持ってきた。

 うぇえ……タバコくせぇ。



「あぁ、知ってるさ。 ありがとうな福田」



 担任がオレに耳元で小さく呟く。



「え?」



 一体何を言っているんだろうと担任の顔を見ると、いたってその表情は真面目そのもの。



「えっとあの……それはどういう?」


「あれだろ、結城の親御さんから匿ってあげてるんだろ」


「!!」



 突然確信めいたことを言われたオレは体をビクンと反応させる。



「ーー……知ってるんですか?」


「あぁ、前に結城を心配した4組の担任が放課後、結城の後を尾行してな。 福田のお姉さんらしき人物と楽しそうに家に入っていく姿を見たって言ってたんだ。 これを知ってるのは……今は5年生の担任と校長・教頭だけだけどな」



 この担任……高槻さんにも聞こえないように注意して話している。

 てことは担任の言っていることは本当で、高槻さんはそのことについては全く知らない……ということなのか。



「実は結城のご近所さんからそういう電話を何件かもらってるんだ」


「そういう電話……?」


「あぁ。 お前はもう知ってると思うけど、連休になると結城を外に追いやったり……あとはこれもご近所さん情報なんだけどな、外で鼻をグーで叩かれて、鼻血を出していたところも発見されているんだ」


 

 ーー……!!



「鼻を……グーで、ですか」



 それは知らなかった情報だな。

 オレが驚きの表情を顔に出していると、担任が「……あれ、もしかしてそこまで知らなかったか?」と少し言いすぎた感を出しながら自らの口を手で覆う。



「え、でも結城さん……今まで顔を腫らしてたことはないんですけど」


「まぁ鼻はな。 軽い衝撃でも血ィ出るから……アザとかそういったものが表れにくいんだ。 だから結城の親はそれを分かってやってるんだろうが……」



 なんか色々と繋がっちまったぞ。

 そういや結城を初めて外で見つけた時、「警察に相談しないの?」的なことを聞いたら『そしたらママ、私のこと叩く……』とか言ってたな。

 あの時は体にアザとかなかったから頭パシン程度なのかな……と思ってたけど。


 あとはあれだ、オレが暴君だった西園寺を攻略した後……結城を呼んで西園寺に仕返しさせようとした時もだ。

 なんであんなにおとなしい結城がビンタじゃなくてグーで鼻を狙ったのか……あの時は結城もやる時はやるんだなって思ってたけど、今までババァにそういうことをやられ続けてたからこそ……体が勝手にそこ目掛けて攻撃してしまったのかもしれない。

 

 これがまだ結城と出会って最初の方なら、なんで教えてくれないんだ結城……と悲しい気持ちになっていたのかもしれないが、今ならハッキリと分かる。 結城はオレたちに心配をかけさせたくないんだろうな。

 

 オレが色々と考え込んでいると、担任が「福田?」と声をかける。



「え、あぁすみません。 色々と考え込んでました」


「それで、福田は今、結城を泊めてあげてるんだよな」


「まぁ……はい。 といっても色々やってくれてるのはお姉ちゃんですけど」


「いつまでだ?」


「とりあえず、冬休みの期間中はずっといてもらおうかな……とは思ってます」


「そうか……すまないが頼むな。 何か困りごとがあったらいつでも連絡してくれて構わないから」


「ありがとうございます」



 オレと担任が同時に結城へと視線を向けると、ちょうど結城と話をしていた高槻さんと目が合う。

 


「あの……どうしましょう」



 高槻さんが担任に視線を向けて、困った様子で尋ねる。



「どうしました、高槻先生」


「結城さんが、『どうして先生たちみんな暗い顔してたの?』って聞いてきてるんですけど……これ、言っちゃってもいいやつなんですかね」



 ーー……ん、なんの話だ?


 高槻さんから担任へと視線を移すと、担任が「んーーー」と唸っている。



「え、先生どうしました」



 気になったオレが尋ねると、担任は高槻さんにアイコンタクト。 その後オレと結城を手招きして「これ、内緒にしてくれな」と小声で念を入れた。



「実はな、隣町の小学校が人数少なくて来年からうちの学校に吸収されるんだ」


「そうなんですね。 あ、それで向こうの生徒の顔とか覚えるのが大変だから困ってたんですか?」


 

 オレが尋ねると担任は「いや、そうじゃない」と首を横に振る。



「じゃあなんで……?」


「それでな、その隣町の校長とウチの校長が揉めてるんだ……どちらの制服のデザインを採用するか」



「ーー……は?」



 担任の話を簡潔に説明すると、隣町の校長はブレザー派。 ウチの校長はワンピース型で、セーラーの襟が欠かせないらしい。

 そこで話し合いの席を設けたところ、お互いに主張を1歩も曲げずにバトルが勃発。

 その結果、お互いの学校で人数が近い学年同士を競わせて、それで勝った方の学校の校長が今後の方針を全て決めることができるという誓約を立ててしまったとのことだった。

 ちなみに、まだその競わせる方法は未定のようだが……



「あの……その人数が似ている学年ってどこなんです?」



 オレは半ば嫌な予感を感じながらも担任の尋ねる。



「似てる人数なのは、1年生と5年生でな。 それでどちらの学年を選ぶのかをさっきまで話し合っていたんだ」



 ーー……はい、きたよ。



「それでその話し合いの結果を聞いても……?」


「残念だが、5年生に決定してしまった」


「マジですか。 で、でもあれですよね。 競うって言っても勉強とかですよね」


「いや……お隣さんの生徒が少ないのは、色々と結構荒れてるからなんだ。 成績もあんまり良くないようだし……おそらくは体育系になるんじゃないか?」



 ノオオオオオオオオオオオオオ!!!!!



お読みいただきましてありがとうございます!! 結城ちゃんのまた新たな情報が解禁されましたね!

下の方に☆マークがあるので評価していってくれると励みになります!

感想やブックマークもお待ちしております!!!


果たしてどんな方法で競うことになるのか……!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ