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205 レッツ☆スクリーム!!


 二百五話  レッツ☆スクリーム!!



「おぉ……」



 ラブカツの映画終了後、素晴らしかった出来に思わず声が漏れる。

 作品自体はもちろん最高だったのだが、なんと言っても今回の目玉はそう……三好・多田・小畑の声の出演だ。

 

 いつ流れるのかなーと思っていたら、それはまさかのエンドロール!

 基本映画のエンドロールって、その映画内で流れたアニメーションをダイジェストで流しながらやってるだろ?

 しかし流石はラブカツ! 劇場版ラブカツの最後は一味も二味も違ったのだ。


 エンドロールの流れるバックで映されていたのはラブカツオーディションでの合格者グループの映像。 

 あぁ……懐かしいなぁと思い眺めていると、その後突然ミニアニメが始まったのだ。


 

『はーい、では今日はこのオーディションに合格したアイドル候補生たちのお話を聞きたいと思いまーす♪』



 ラブカツの主役キャラ・月宮メロンちゃんがバーンと画面上に登場。 そこには他の合格者たちなのだろう……2次元化した三好たちの姿も見受けられた。

 それからメロンちゃんと合格者たちの掛け合いがスタートし、オーディションに受かったと聞かされた時の感想や、今後の将来の目標を聞いて映画は幕を下ろしたのだった。

 


 ◆◇◆◇




「いや、私これブルーレイ出たらママに頼んで10枚買うわ」



 映画館から出た小畑が満足げな笑みを浮かべながら外に貼ってあったラブカツポスターを見上げる。

 ーー……知ってるか小畑。 ブルーレイだと大体約6000円。 それが10枚だとエゲツない金額になるぞ。



「えぇ、美波それは多すぎじゃない!?」



 三好がそれに突っ込むも、小畑は「いや、それでも少ないくらいだよ」と首を左右に振る。



「そうなの?」


「だって言ってみたらこれが私のデビュー作なんだからね! それにアイドルになりたい私がアイドルアニメの映画に出演……これ、今後私がアイドルのオーディションに出るとき絶対使えるエピソードトークになるわ」


「おお……確かに。 流石美波」


 

 小畑の将来への見据え方に感心した三好と多田がパチパチと小畑に賞賛の拍手を送る。



「それで、これからどーする? 帰る?」


 

 一通り満足感を味わった小畑がくるりと体を回転させてオレたちに尋ねる。



「福田的にはどう?」


「えぇ、オレ!?」


「うん」



 なんか隣から「あー、また福田の意見先に聞くんだー!!」と三好がゴネているが……まぁいいか。



「オレは別に今日予定ないし、みんなに合わせようと思ってたんだけど」


「そっかぁー。 じゃあ適当にぶらついて、良さげなとこあったらそこ入ろっか」



 こうしてオレたちは行く当てもない……ただただ興味を惹かれる店を探す旅を始めたのだが、それはなんの前触れもなく訪れた。




「あ、なんかそこをまっすぐ行ったところに古本屋があるらしいよ」



 途中ベンチで休憩していると、スマートフォンで周辺の店舗を調べていた多田が一つの方向を指差す。



「へぇー、古本屋だと面白そうな本とかありそうだしいいじゃん!」



 ほう……小畑は乗り気だな。 さて、三好はどうだろう。



「えー、麻由香地図分かるんだ。 凄いねー。 私スマホで地図調べても向きが分からないから使えないんだよねー」



 はい、そうでしたー! 三好はおバカちゃんでしたー!!

 いやいや矢印の先が向いた方が進行方向だし、ぶっちゃけ周囲に見える大きな建物を目印にすれば問題ないだろうよ。

 ……と、そんなことを心の中で突っ込んでいると、多田が皆に「行く?」と尋ねる。



「うん行く行く」

「じゃあ私もー! 地図分かんないから道案内はよろしくー!」

「じゃ、じゃあオレも賛成で」



 というわけで早速出発。 オレは最後尾でスマートフォンを取り出して今の時刻を確かめる。

 時間的にもうすぐ夕方……おそらくその古本屋で今日はラストだろうな。




 ◆◇◆◇




「あ、あれだ」



 大体15分くらい歩いただろうか……多田が呼びさした方角に視線を向けると、他の店の密集地とは離れた場所にポツンと目的の古本屋を発見。

 外が結構冷えていたこともあり、オレたちは足早に店内へと駆け込んだ。



「ーー……え、誰もいなくない?」



 店内に入ってすぐ、三好が周囲を見渡しながら呟く。

 


「この店、開いてるよね?」



 三好がそう不安がるのもおかしくはない。

 先ほど三好が言っていた通り、店内には客の姿が1人も見えず、レジカウンターらしきところにも店員さんの影すら見当たらないのだ。



「まぁいいじゃん、もう閉めてるとかだったら教えてくれるっしょー」



 小畑はそう言うとまっすぐファッション雑誌の置いてあるコーナーへ。

 やはりそこらへん気になるんだろうな、三好も多田も迷わずに小畑の後に続き、「この服の感じ好き」やら「このモデルの子可愛くない?」やらとワイワイと盛り上がり始める。



「それじゃあオレは……」



 オレは別にファッションにはあまり興味がないため店内を散策することに。

 するとレジカウンター前に置いてあった雑誌サイズの小さな立て看板を見つける。



【隣のボタンを押すと裏から店員が出てきますのでご用の際にはご使用ください】



 なるほど、おそらくこのお店は普段から人の出入りがあまりないんだろうな。 だから店員さんもずっとレジ前にいるのも時間の無駄なので裏で別の作業でもしているのだろう。

 これを見ると脳のない中学生くらいの子達は『万引きし放題じゃん』と思うかもしれないのだが、出口を見るとそこには万引き防止用の機械が設置してある。 やはりちゃんと対策してるんだな。

 


「えええ、私これーー!!」



 雑誌エリアから三好の馬鹿でかい声が聞こえたので向かってみると、雑誌のとあるページを開いた三好たちが爆笑しながらガールズトークに花を咲かせていた。

 後ろから覗き込んで見てみると、そこは10代女子にあげたら喜ぶ冬のプレゼントランキングの特集ページ。



 えっとなになに、ちなみに1位がマフラーで、その次がネックレスや香水、手袋……。



 おぉ、水島の言っていた『女子の好感度の上がる定番プレゼントがマフラーや手袋』ってやつ、本当だったのかよ。 

 ギャルゲー知識も捨てたもんじゃないな。



「えー、佳奈、ネックレスがいいの!?」



 小畑が笑いながら三好にツッコミを入れている。



「だってそうじゃん! ネックレスだと付ける時に毎回プレゼントしてもらった時のこととか思い出すんだよ? 恋って感じがしない?」



 三好がうっとりしながら小畑と多田にその素晴らしさを語る。



「いやー、私はボディクリームみたいな消耗品がいいかなー。 なんかさ、物だと重くない?」


「重くないって! 美波が大人な考えなだけだって!」


「そうかなー。 佳奈がお子ちゃまなだけじゃないのー?」


「えーー!?」



 うむ、これは勉強になるな。

 人によって物の受け取った時の気持ちがこうも違うとは……。


 オレはいつくるかも分からない……将来の彼女にプレゼントをあげる時のために、三好たちのプレゼントトークに必死に耳を傾けることにした。

 


「え、麻由香はどっち派!?」



 三好と小畑が多田に尋ねる。



「やっぱネックレスみたいな身に着ける物だよね?」

「消耗品が良くない?」



「うーーん、ウチはこのランキングの中だと欲しいのはポーチかな」


「「ポーチ?」」



 どうしてポーチなのだろう。

 そんなことを考えていると、そこはさすが三好! 「なんでポーチなの?」と、オレの思っていることをそのまま多田に質問する。



「うん、実はさ、これまだママにしか言ってないんだけど……」



 誰も周囲にいないのに、多田は目を細めながら三好と小畑に顔を近づける。

 ママにしか言ってないこと? それとプレゼントに何の関係が……?



「実はウチ、最近初めて女の子の日ってやつきたんだよね。 だからそれ対策でナプキンとか入れときたいかなって」



「「えええええ!!!!」」



 な、なんだってえええええええ!?!?


 これは男が聞いてはいけない話だと悟ったオレは存在感を消したまま近くの本棚に身を潜める。



「ちょ、麻由香、生理きたの!?」



 三好が目をパチクリさせながら多田に尋ねる。



「うん。 ウチ初めてだったけど結構痛いんだねあれ。 でもママが言ってたんだけど、痛い人は涙出るくらい痛いんだって」



 小畑に視線を向けると、小畑は「うんうん」と同情の目を多田に向けている。



「え、頷いてるってことはウチだけじゃなく……美波もなってるの?」


「そだよー。 私はいつだったかな……ほら、昼休み終わってからの5時間目の授業に行かなかった時のこと覚えてる?」


「あ、うん。 ウチあの時どうしたのかなって思ってたけど……もしかしてあの時なってたの?」


「そそ。 私の場合はもう立つこと自体出来なかったもん」



 小畑が下腹部あたりをさすりながら「あの時は絶望だったわぁー」と小さくため息をつく。

 まぁ確かにな。 あれがオレの見た最初で最後の小畑の涙だったぞ。



「そうだったんだ。 確かあの時福田が何故か遅れて授業来てたから、てっきり美波に蹴られてたのかとばっかり思ってたよ」


「違う違う。 福田が立てなかった私を見つけてくれて、1組のエマと保健室まで運んでくれたんだよ」


「えええええ!?!?!?」



 多田が目を大きくさせながら驚きの声を上げる。



「ねね、佳奈はその話知ってた!?」


「あ、まぁー、ちょっとだけ」



 ……なんかめちゃくちゃオレが聞いてたらマズい内容だな。

 3人の話は気にはなるのだが、オレは空気を読んでその場を退散。 出来るだけ離れたところでボーッとしてましたアピールをするために三好たちとは真逆の方向へと向かったのだが……



「な……なんてことだ」



 反対側に到着したオレの目の前には白い文字で【ONLY OVER18】と書かれた赤い暖簾。

 【ONLY OVER 18】……いわゆる18禁か。

 その先からはビデオも売っているのだろうな……微かに男の心を刺激する魅惑の音声が向こう側から聞こえているぞ。

 


 ーー……ゴクリ。



 ぶっちゃけオレの欲望は優香やギャルJKのパンツで充分間に合ってはいるものの、久しぶりにそういったビデオも見たり聞いたりしたいのも事実。

 さすがにこの先に入るとバレた時に面倒なので、オレはその手前で目をつぶり……奥から聞こえてくる音声に耳を集中することにした。



 ーー……うん、いいぞ、いいぞ、いいぞおおおおおおお!!!!!



 年月で言えば1年も満たないのだが、オレからすれば砂漠の中を彷徨っている最中にやっと見つけたありがたきオアシス!!

 この背筋がゾクゾクするような甲高い声……堪んないぜええええええ!!!!



「あ、こんなとこにいたんだ福田ー」



 ビクウウウウウウウウ!!!!!



 突然話しかけられたオレは大きく体を反応させながら後ろを振り返る。



「な、なんだよ三好かよ、びっくりしたじゃねえか!!」



 オレが息を乱しながら突っ込むと、三好の後ろには多田と小畑の姿も。



「もう帰ろうかって話になったんだけどさ、福田何してたの?」



 三好が純粋な視線をオレに向けてくる。



「いや、ちょっと眠かったから目を閉じてただけ……」

「ていうかあの赤い暖簾なに?」



 オレの言葉を遮った三好が禁断の扉への入り口となる暖簾を指差す。



「英語じゃん。 【18】しか読めないや」



 そっか、英語は中学からだもんな。



「福田、あれなんて書いてるかわかる?」


「さ、さぁ」



 オレが首を左右に振ると、「麻由香と美波は?」と三好が振り返りながら2人に尋ねる。



「ううん」


「ウチの訳があってるかは分かんないんだけど、【18以上のみ】って書いてるんだと思う」



 ほう、塾で英語もやってるのかな? 多田が暖簾に書かれている文字を指でなぞりながら口に出す。



「18以上のみ……ってなに?」


「「さぁ」」



 三好の再度の質問に多田も小畑も首を振る。

 そしてその結果出た答えが……



「分からないし行ってみよーー!!!」


「「おーー!!!」」



 なああああああにいいいいいいいい!?!?!?!?



 オレが驚いている間に何も知らない三好たちが禁断の暖簾をくぐってその奥へ。

 


「ちょ、ちょっと待って3人とも……!」


「いや、福田も気になるでしょ、おいでって」



 最後尾を歩いていた小畑が「一緒に中へ行こう」とオレの腕を引っ張る。

 あぁ……これは仕方ない。 仕方ないことなんだああああああ!!!!!!



 いざ☆新世界へ!!



 ◆◇◆◇



 あれから何があったのか……それをオレの口から説明することはかなり難しいことなのだが、これだけはハッキリと言える。



 ……その先の世界で見た3人の表情・反応。 オレの脳裏から離れることは一生ないだろう。



 おっと! でもそれだけでは、ただオレがハッピーな思いをしただけで……皆はその思いを共感できないままになってしまうよな。

 だからここで……オレの耳に残っている、【あくまで本日全体を通しての】3人の感想を伝えて終わろうと思う!!



 三好『やっば……なんかムズムズした』


 多田『ウチもあんなに叫ぶのかな』


 小畑『てかさ、私が想像してた形じゃなかったんだけど!』



 ーー……ね? やばくね?

 ラブカツの映画本編が始まる前に、別のホラー映画の予告でもあったのカナ?


 オレはそれを聞いた時、心の中でスクリーム……叫んじまったよ。



お読みいただきありがとうございます!

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感想やブックマーク・レビューもお待ちしております♪


ガールズトークには夢がありますなぁ!


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