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204 弾丸ガールズトーク!!


二百四話  弾丸ガールズトーク!!




「えーと……あの駅前であってんだよな」


 

 なんだかんだで小畑を待たせてはいけないと思ったオレは家を早めに出て集合場所になった駅前へと向かう。

 目的地が見えてくると見慣れた顔が2人……三好と多田だ。



「福田ー、やほー」

「メリクリー」


 

 到着すると2人が軽いノリで声をかけてくる。



「あ、うん。 てか今日は4人なんだな」


「え、なにその言い方ー! 私ら邪魔みたいなー!」



 オレの発言に三好が反応。

 その隣で多田が「確かに」と三好の言葉に同意し、ウンウンと頷く。



「いや、そういう意味で言ったんじゃないんだ」


「じゃあなんなのさー!」



 ったく、仕方ねーだろ! こっちはデートだと思って盛り上がってたんだからよー!

 オレのデート初体験がまた先延ばしになってしまったぜ!!


 そんなことを心の中で思いながらも、「あーほら、あれだよ。 やっぱりその3人は仲がいいなって思ってさー」と笑ってその場をなんとかやり過ごそうと試みる。

 するとそのタイミングで多田がポツリ。



「あ、もしかして福田……美波と2人きりが良かったとか?」



「ーー……は?」

「えええええええええ!?!?」



 オレが反応するよりも先に三好が反応。

「そうなの福田! 美波と2人で出かけたかったの!?」と声を荒げながらオレに顔を近づけてくる。



「ち、ちげーよ、なんでそうなるんだよ!」


「ほんと!?」


「ほんとだって!!」



 くそ! こういう察知能力は、流石は女子……といったところなのだろうか。

 女子ってそういうところ妙に敏感だよな。 男の浮気がすぐにバレるのも納得できるぞ。


 

「でもあれだよね。 ウチ思ったんだけど、なんで美波……ウチらよりも先に福田を誘ったんだろ」



 多田が口元に手を当てながら首をかしげる。



「確かに」

「でしょ?」



 三好と多田の視線がオレに向けられる。



「ーー……え、美波ってさ、福田のことライクくらいだって思ってたんだけど……もしかしてラブなの?」



 三好が困惑しながら多田に尋ねる。



「うーーん、そんな感じには見えなかったんだけどなぁ。 でもあれじゃない? 宿泊学習の班決めの時とか美波、真っ先に福田のところいったじゃん? そういうところ考えたらそうなのかな」


「ーー……」



「おい三好、なんでそんな冷めた視線をオレに向ける。 オレなにもやましいことしてないぞ?」



 そう声をかけると三好は「はぁーーーっ」と深いため息をつきながら首を左右に振る。

 おいなんだよ、ため息をつきたいのはオレの方なんですけど。


 そんなやりとりをしているうちに気づけば集合時刻。

 ほぼ時間通りだろうか……ドSの女王・小畑が「お待たせー」と軽く手を上げながらオレたちのもとへ駆け寄ってきた。



 ◆◇◆◇



「うんうん、福田、ちゃんと私を待たせることなく来れたね偉い偉い」


 

 小畑が満足げな表情を浮かべながらオレに微笑む。

 


「あ、うん」


 

 てかあれだな、罵られるのも嬉しいけど、女王様に褒められるのもこれはこれでいいもんだよな。

 オレが見えない尻尾を振っていると、三好が小畑の肩をたたく。



「ねぇ美波、なんで美波は福田を誘ったの?」


「直球だね佳奈」



 多田が隣で小さく突っ込む。



「え、佳奈どうしたの」



 小畑が目をパチクリさせながら三好を見る。



「だって気になるじゃんー。 しかも私らより先に福田誘ったんでしょ?」


「まぁそうだね。 先に福田に聞いたよ」


「なんで福田なのー!?」



 三好がピョンピョン跳ねながらオレを指差す。



「え、それは当たり前でしょ」



「「当たり前??」」



 小畑の言葉に三好と多田が同時に聞き返す。



「だって私らが映画に出られたのってさ、そもそもは福田のおかげじゃん? だったら先に予定聞いとくのも普通じゃないかなーって思って」


「「ーー……」」



 小畑の考えを聞いた三好と多田はお互いに顔を合わせて黙り込む。



「え、なに? どうした2人とも」



「ーー……いや、ごめん美波。 私が勝手に変に解釈してただけだった」


「ウチも。 そうだね、もとはといえばオーディション成功したのも福田のおかげだったもんね」



 三好と多田がゆっくりと視線をオレに向ける。


 え、なに!? そんなこと思ってくれてたわけ!?

 なんかめちゃくちゃ嬉しいんですけどおおおおおおお!!!!!



 これはあれだな、三好・多田・小畑はもう完全に味方サイドだ。

 今後何かあったときのために、オレも前のダイキの書いた【いじめノート】ならぬ【味方ノート】でも記録しておくか。



 こうしてオレたちは電車に乗り映画館へ。

 ラブカツ映画のチケットを買い、上映時間まで近くの喫茶店で時間を潰すことにしたのだった。



 ◆◇◆◇



「それにしても麻由香、よく今日映画来れたよね」



 三好が多田を見ながら声をかける。



「え、なんで?」


「だって麻由香、冬休みもほとんど塾で冬季講習なんでしょ? よくママ許してくれたよね、今日休むの」



 三好の言葉に小畑も「確かに」と頷く。



「あーうん、ウチも半分諦めながら聞いてみたんだけどさ、『流石に今日くらいは良いよ』って許してくれたんだよね」


「そっか、今日クリスマスだからか」


「うん」



 三好・多田の会話を聞いていた小畑が「あー、今日クリスマスだったんだ」と呟きながら周囲を見渡す。



「てか周りカップルだらけじゃん」


「いいよねー、ウチも中学くらいで彼氏とか作りたいなー」



 小畑の声に反応した多田が、目を輝かせながら喫茶店の窓から見える……外を歩くカップルたちを眺め始める。



「わかる!! まぁ私は絶対に事務所に入ってサニーズのイケメンと付き合うんだもんね!」



 小畑は拳を強く握りしめている……やはりこの女、ガチだ。

 その目標を聞いた三好が、小畑に「ちなみに誰か狙ってる人いるの?」と軽く尋ねた。



「そりゃあニューシーの小芝くん一択でしょ!!!」



 小畑がテンション高めに……前のめりになりながら三好に答える。



「そ、即答じゃん美波」


「もちろんだよ! 小芝くんは私の永遠の王子様なんだから!!」



 そういやエマが精神的過労だったかで倒れて入院した時も、小芝くんって人が好きってエマと話してたな。 エマは確か手毬くん担だったか?

 オレが当時のことを思い出していると、多田が「てか小芝くんって何歳なの?」と小畑に尋ねる。



「確か今年で36だったかな」


 

 な、なんだってええええええ!?!?!?

 オレがその小芝くんの年齢に驚いていると、ほぼ同じタイミングで三好と多田が「「36!?!?」」と聞き返しながら小畑に視線を向けている。

 

 

「えええ、流石にそれは年の差すぎん!?」



 三好が少し困惑の表情を浮かべながら小畑に尋ねる。



「いやいや、佳奈はまだお子ちゃまだねー。 愛の年の差なんて関係ないんだって」



 この小畑の感じからして、どうやら冗談ではないらしい。

 えっと、ということは小畑が今11歳くらいだから……その小芝くんとは25歳差ということになる。 それでも構わないって……これは夢が広がるってもんだぜ!!!

 

 オレが1人でニヤニヤしているとそれに気づいた三好が「え、なに福田笑ってんの?」と冷たい視線を向けながらツッコミを入れてくる。



「あー、いや。 なんでもない。 『好き』ってすごいんだなーって思ってさ」



 オレがそう誤魔化しながら答えると、三好の頭上にびっくりマークが浮かび上がる。



「そうだ! 『好き』って言えばさー、私びっくりしたなー! もしかして美波、福田のこと好きなんじゃないかって思ったよ!」



 三好がグラスに入ったオレンジジュースをストローでチューっと吸いながら小畑に話を振る。

 ……今更だけどあれだな。 これがガールズトーク……まったく会話が途切れない。



「私が福田を? なんで?」



 小畑がオレに視線を向けながら首をかしげる。



「ウチも思ってたんだよね。 ほら、宿泊学習の時とかさ、美波、福田に優しかったじゃん」



 多田の発言に三好も「だよねぇ」と頷きながら同意。 「そこのところどうだったの?」と改めて小畑に尋ねた。

 すると小畑の口から衝撃的な言葉が。


 

「まぁ実際にそうだしね」



 ーー!?!?!?



「ぶーーーーーーっ!!!」



 この小畑の発言に三好が口に含んでいたオレンジシュースを噴射。 ちょうど目の前に座っていたオレの顔に綺麗に命中する。

 待ってくれ三好に小畑……オレはどっちを先にリアクションすれば良いんだ!?

 オレは顔面に滴るオレンジジュースを感じながら、先ほどの小畑の発言に心臓をバクつかせる。



「うわあああああ福田、ごめんごめんーー!!!」



 三好が軽く咳き込みながらオレに謝る。



「いや、構わん。 トイレで顔洗えば問題ない」



 ……まぁそこで全部舐めとるんだけどなグヘヘへへ。

 今オレの顔についているのはただのオレンジジュースではない。 三好が口に含んでいた……三好成分がもろに含まれた超希少なオレンジシュースなのだ!

 きっと素敵な味がするんだろうなぁ。


 欲望で顔がニヤつきそうになるのを必死に我慢しながら立ち上がろうとすると、三好が「ちょい待って」とオレを止める。



「なに?」


「ほら、とりあえずこれでサッと拭きなよ」



 差し出されたのは丁寧に畳まれたオレンジ色のハンカチ。

 妖精なのかな……可愛い柄が刺繍されている。


 でもなぁ、そしたら舐めれる量が減っちゃうんだよなぁ。

 ここはありがたいけど断るしかないか……。



「いや、大丈夫。 多分それで拭いたらシミになるぞ」


「そんなのいいから! だって私のせいなんだし」


「いやー、でも」


「あーもう! じゃあ私が拭くから! だったら問題ないっしょ!?」


「え」



 そう言うと三好はオレの隣へと移動。 ハンカチをオレの顔に軽く押さえつけるようにしながら丁寧に拭き取り始める。


 うわあああ、オレの舐める予定だったオレンジジュースがぁ……。

 そんなことを思いながら軽く落ち込んでいたオレだったが、三好のハンカチが鼻の近くまで来た時、あることに気づいてしまったのだ。


 待ってくれ。 今三好が拭いてくれているこのハンカチ……さっきまで三好のスカートのポケットに入っていたからなのかほんのり温かく、三好の香りもほんのり染み込んでいる。



 それだけじゃない!!



 スカートのポケットに入れていたということはつまり、パンツとも距離が近かったということ!!

 それすなわちこの香りは三好の……ゲフンゲフン!!!!


 や、やべぇ。 そう考えたら興奮してきたぜ。


 本音を言うとこの香りを1日中嗅いでいたい……しかしここで興奮ゲージを最大にまであげてしまったら後が大変だ。

 場所も悪いしな。



「三好、もういい。 大丈夫だ」



 これ以上やられると興奮やら恥ずかしさ諸々で立てなくなってしまうと感じたオレは三好の腕を掴んで首を左右に振る。



「大丈夫くないって。 ほら、まだ首のとことかついてるし」


「だあああああちょっと! 太もも乗ってくんなって!」


「仕方ないじゃん、こうしないと反対側見えないんだから」



 オレたちがそんな言い合いを繰り広げていると、小畑が静かに呟く。



「お似合いじゃね?」



「「え」」



 オレと三好が同時に反応。 視線を小畑へと向ける。



「あ、それウチも思った」



「「は?」」



 理解できていないオレたちを無視して小畑と多田が「だよねー」と盛り上がり始める。



「ちょちょちょっと待ってよ麻由香、美波! 私と福田がお似合い!? なんで!?」


 

 三好が顔を真っ赤にさせながら小畑たちに尋ねる。

 ーー……いいから足の上からどけ。 パンツの感触が素敵すぎてどうにかなっちまいそうだぜ。



「え? 見てそう思っただけで、別にそんな深い意味はないけど」


 

 小畑がストローを加えながら軽く答える。



「はあああああ!?」



 三好の焦り具合が面白かったんだろうな。 小畑が「え、佳奈もしかして照れてんの?」と口元に手を当てながらニヤリと笑う。

 くううううう!!! 久々に拝めたぜこの小畑の表情。

 このイジれる獲物に狙いを定めたこの感じ……うわああああああ女王さまあああああ!!!!



「ちょっと待って! 時を戻そうよ! 元はと言えば、美波が福田のこと好きって言ったのが発端なのであって……! だから私は福田の顔を拭いてるだけで……!」



 三好がハンカチを強く握りしめながらオレを指差す。



「うん、言ったね」


「じゃあお似合いとか言ったらダメでしょ! 美波、福田のこと好きなんでしょ!?」


「まぁでも私の福田への好きってあれだし。 別にラブにまで到達してないし」



 小畑が「ははっ」と笑いながらオレに視線を向ける。


 は……はっきり言いよったあああああ!!!! !!!!



「そ、そうなの!?」


「うん。 だってほら、佳奈たち知ってるでしょ? 私のタイプ」



 小畑が三好と多田を交互に見る。



「あ」

「そっか」



 2人が急に納得。 哀れみの視線をオレに向けてくる。



「え、なに?」



 オレが首を傾げていると小畑がゆっくりと口を開いた。



「まぁ……これ別に福田の悪口を言ってるわけじゃないんだけどさ、私ってイケメンが好きなのね。 最低でも小芝くん似の」



 グサアアアアアアア!!!!



 小畑の言葉の刃がオレの心に突き刺さる。

 それって遠回しにオレのことカッコよくないって言ってるのと同じじゃねえかああああああ!!!!



「だから佳奈、福田のこと狙ってもいいよん」


「なんでそうなるの!?」


「あははは、佳奈、めっちゃ必死じゃん!!!」


「そりゃあ必死にもなるよ、なんでこうなるのおおおおお!!!!」



 その後も映画の上映が始まるギリギリまで3人の弾丸ガールズトークは続き、三好は小畑の餌食となってしまっていたのだった。

 羨ましいぞ三好、そのポジションを代われコノヤローーーー!!!!

 


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女子たちの会話は癒し!!

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[良い点] やっぱ三好ちゃんが一番最初に出会ったヒロインで思い入れある
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