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203 クリスマスに!?


 二百三話  クリスマスに!?



 それは優香のバースデーパーティー後……ギャルJK星が帰宅し、優香と結城が仲良くお風呂に入っている時だった。

 ソファーにもたれながらボーッと先ほどまでの優香バースデーパーティーの余韻に浸っていると、スマートフォンが振動。 中身を確認する。



「電話……誰からだ?」



 それは電話帳に登録していない相手からの着信のようで、画面には電話番号のみが表示されている。

 市外局番からして携帯からのようだが……



「まぁ名乗らなければ出てもいいよな」



 オレは通話ボタンをタップ。

 スマートフォンに耳を当てた。



「はいもしもし」


『あ、もしもし、福田ー?』


「え」


『私だよ私、小畑美波ー』


「お、小畑さん!?」


『うん。 佳奈に電話番号聞いたの』



 オレは思わず姿勢を正す。

 やっぱり身体は正直なんだな……小畑の声を聞くと、不思議と背筋が伸びるんだ。


 ーー……あぁ、蹴ってほしい。


 そんなことを心の中で願いながらオレは要件を聞くことにする。




「えっと……何かな」


『ほら、終業式の時に私と話したこと覚えてる?』


「えっと……なんだっけ」


『ラブカツの映画の話!!』


「あーうん、したね」


『よし。 じゃあ明日の12時過ぎにファミレス前集合ね』


「え、あ……はい?」



 オレが聞き返すと、小畑は「私を待たせたら分かってるよね?」とだけオレに伝えるとすぐに通話を切る。

 なんか急遽明日映画行くことになったんだけど……。



「これってもしかして……デートじゃね?」



 オレはポツリと呟いた後、すぐさま電話帳をタップしエマに通話をかける。



『もしもしダイキー? どうしたの夜に』


「あのさエマ、JKを経験した恋愛の先輩でもあるエマ様に相談……というか、聞きたいことがあるんですが」


『相談? エマに? うん、いいよなに?』


「例えばね、明日オレが同い年の女の子に映画に誘われるとするでしょ? それってデートになるの?」


『明日映画に誘われたら?』


「うん」



 ドキドキドキドキ


 心臓が早く脈打っているのがわかる。 もしデートなんだとしたら完全に小畑はオレに気がある……という証明にもなるよな。

 うわあああエマ、早く答えを聞かせてくれえええええ!!!!


 オレはいつもよりもスマートフォンを強く握りしめながら耳に押しつけ、エマの見解を待った。



『まぁ……デートなんじゃないの?』


「えぇえ!?!?」



 半ば『それはデートとはいわない』と言われることを予想していたオレは、予想外の言葉に思わず声が裏返る。



『ちょっとどうしたのよ変な声出して。 例えばの話なんでしょ?』



 スピーカー越しからエマの呆れ返った声が聞こえてくる。



「ま、まぁ……そうなんだけど。 え、マジでデートになんの!?」


『うん。 ていうか普通の日ならね、映画だけだとデートとは言わないんだけど、ほら……明日ってクリスマスじゃない? そんな日に男女で出歩いてたらカップルに見られるってことでしょ? そんな日に誘ってくるってことは……エマ的にはそう見られてもいいって思われてるんだと思うんだけど』


「な、なるほど……」



 妙に説得力のあるエマの言葉にオレは感心しながら深く頷く。

 


「おっけーありがとうエマ。 それだけなんだ」


『まぁ……よく分からないけど参考になったのなら良かったわ。 じゃあね』



 エマとの通話を終えたオレは着信通知のページを開いて小畑の携帯の電話番号をジッと眺める。


 そうか、とうとうオレもちゃんとしたデートができるのか。

 このダイキの体に入ってから女子と2人きりでのお出かけはしたことあるけど、どれもデートとは言わない感じだったもんな。

 三好とは優香と三好兄の尾行だったし、褐色少女の陽奈とは、陽奈の行きたいところとかついて行っただけだし。



「ーー……マジか。 マジかあああああああああ!!! よっしゃあああああああ!!!!!」


 

 オレが少しずつこの状況を理解してテンションを上げていると、そのタイミングでリビングの扉が開き、お風呂上がりの優香と結城が入ってくる。



「ダイキー、お風呂空いたよー」


「え! あ、はい!!」



 オレは体をビクリと反応させながら優香たちの方を振り向く。



「どうしたのダイキ。 なんか楽しそうだけど」


「あー、いや、なんでもないなんでもない」



 あまり深く聞かれたくなかったオレは「あはは」と笑いながら優香たちを横切りお風呂場へと向かう。



「あ、そうだダイキ」



 突然優香が手をパンと鳴らしてオレの名を呼ぶ。



「え、なに?」


「明日、桜子とクリスマスプレゼント買いに行くんだけど……ダイキも一緒に来る?」


「ーー……え?」


「ほら、明日ってクリスマスでしょ? だからたまには出かけてお互いにプレゼント買って交換しない?って桜子と話をしててさ」



 優香が「ねー」と結城に尋ねると、結城が可愛く「うん」と頷く。

 ーー……もうガチで姉妹になってんじゃねえか。


 ていうか明日かよ!! なんということだ……優香と結城と出かけられる最高のチャンスなのに、オレはついさっき予定を入れてしまったではないかあああああ!


 これが普通の遊びなら断れたのだが……今回は前のオレの人生でも経験できなかった『デート』なのだ!!! そう簡単に切り捨てられるわけがない!! 

 だから、これだけ叫ばせてくれ……



 タイミングのバカヤロオオオオオオオオオオ!!!!!



 オレは心の中で大絶叫。 その後泣く泣く優香と結城に誘いの断りを入れたのだった。



 ◆◇◆◇



「さてと、それはそれとして……」



 脱衣所内。 扉を閉めたオレはニヤニヤしながら洗濯機の中を漁る。



「お、あったあったグヘヘへ……」



 オレが取り出したのは先ほど脱いだばかりの優香のパンツ。

 実は結城のマッサージで朽ち果ててるのを見た時から狙ってたんだよなぁ!!

 だってほら、見てくれよ……。


 生地を裏返して指でなぞると僅かに湿りが。 やはりマッサージで血行が良くなったんだろうな……優香もちゃんと汗をかいていたみたいだ。

 てことはおそらくギャルJK星も……そうだったんだろうなぁ。



「ーー……くそ、なんで今夜は泊まってってくれなかったんだよ」



 オレは小さく呟きながら優香パンツを鼻に当てる。


 よっしゃああああああ!!! ……相変わらずいい香りで癒されるぜ我が姉よ! そしてこの僅かに感じる湿り具合……最高だああああああ!!! 癒しだけでなく、最強の興奮をオレに与えてくれるぜ!!!



 スーハースーハースーハアアアアア!!!!

 


 オレがそんな激レア優香パンツに夢中になっていると、ポケットに入れてあったスマートフォンが振動する。



「お、なんだ? もしかして小畑からかな? 『緊張してるよー』って電話だったらどうしよう可愛いぞーー!?」



 そんなことを呟きつつも、優香パンツを鼻に押し付けた状態でスマートフォンの電源をつけると、そこに表示されていたのはメールの受信通知。



「ーー……ん? 三好から? なんだ?」



 オレは首を傾げながらも通知をタップ。

 メールの中身を確認した。



【受信・三好佳奈】 美波から誘いあって話してたんだけどさ、福田も行くんだってね。 で、集合場所変更になったから、とりあえず伝えとくね。 ファミレス前じゃなくて、その近くの駅前になったからよろしくー。



「ーー……は?」



 ちなみにその後エマにもう一度通話をかけて確認。

 『クリスマスに誘われたとして、他にメンバーがいた場合もそれはデートになるのか』と聞いたところ、エマの答えはこうだった。



『いやいやむしろ逆でしょ。 恋人と思われたくないから人数増やしてるに決まってるじゃない』



 ーー……だってさ。



 ふっざけんなああああああああああああ!!!!!!



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人生そう簡単に上手くいきませんねぇ!!

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