200 プレゼント☆シンキング!
二百話 プレゼント☆シンキング!
「ーー……え、優香さん、明日誕生日なの?」
晩御飯を終えて優香がお風呂に入ってる時間、オレはこっそりと結城に明日が優香の誕生日だということを教える。
「そう。 だから明日はお姉ちゃんの誕生日会をやろうと思ってたんだ」
「そう……なんだ」
結城が少し暗い表情で俯く。
「ーー……ん? 結城さん?」
「その……私がいて……いいのかな」
「え?」
結城が申し訳なさそうな表情をしながらオレを見上げる。
「えっと……なんで?」
「だって、私なんかがいて……邪魔じゃ……ない?」
おいおいそこも引っ込み思案かよ!! まぁ可愛いし、結城らしいって言ったら結城らしいけどよぉ!!
「いやいやそんなそんな! むしろオレ的にもお姉ちゃん的にも、結城さんにはいてほしいよ」
「ーー……そうなのかな」
「うん!! だってほら、別にオレとお姉ちゃんだけで誕生会やるってわけでもないんだしさ! 明日には星さんも来るし!」
「え、そうなの?」
「そうそう! 星さんも結城さんのこと好きだし、人数も多い方が盛り上がるでしょ?」
「ーー……うん」
結城は小さく頷くと、オレに向かってニコリと微笑む。
ーー……よかった。 マイエンジェルに暗い顔は似合わないぜ。
オレがホッと胸をなで下ろしていると、結城が「ねぇ、福田……くん?」とオレの手を可愛く引っ張る。
「え、なに?」
「その……相談があるんだけど」
ーー……相談?
◆◇◆◇
「ーー……え、結城さんもお姉ちゃんに何かプレゼントしたい?」
オレの言葉に結城は「うん」を頷く。
「だってせっかくなら私も……優香さんに何か渡したい」
オレの部屋の中。 結城が優香の部屋の方向を見つめながら指をモジモジさせる。
「それは嬉しいけど……何プレゼントするの?」
「えっと……だからそれを福田……くんに相談しようと思って。 私、今まで誕生日会に呼ばれたこととか……ないから」
「なるほどね」
オレは「うーん」と唸りながら何かないかを考える。
まぁ考えてはいるものの、実際オレも生まれてこのかた誕生日会に行ったことなかったしなぁ。
それがバイトのできる年齢なら何か適当なものを選んでプレゼントすればいいと思うのだが、オレたちは小学生……出来ることが限られているのだ。
「まぁ……ありきたりなものだと、【肩叩き券】みたいなものを作る……とか?」
これは子供が親にプレゼントする王道っぽいものかもしれないが、とりあえず結城に提案をしてみる。
「【肩叩き券】……?」
「うん。 まぁ【肩叩き】ではないにしても、その相手がしてほしそうなことをしてあげるって言うのもいいんじゃないかな」
「してほしそうなこと……」
結城が床にペタリと座りながら「うーん」と考える。
「ちなみにさ、福田……くんなら、私に何してほしい?」
「え!?」
結城がオレに純粋な視線を向けてきている。
「お、オレが……結城さんに!?」
「うん」
「え、じゃあお嫁さ……ゲフンゲフン!! じゃなくて、添い寝……ゲフンゲフン!! でもなくて、一緒にお風呂……ゲフンゲフん!! うーーん、ごめん。 たくさんありすぎて纏まらないや」
オレはキョトンと首を傾げている結城を見ながら「アハハハーー」と勢いで誤魔化す。
「た、たくさんあるの?」
「うん、そりゃああるよ。 オレでこんなにあるんだから、お姉ちゃんも結城さんにしてほしいことなんてたくさんあると思うよ?」
「そ、そうなんだ」
結城が少し頬を赤らめながら少し恥ずかしそうに微笑む。
「そうそう。 あ、そうだ! ほら、お姉ちゃん前に結城さんとお買い物に行くの楽しいって言ってたしさ、多分お姉ちゃん、結城さんみたいな妹がいたら嬉しいんじゃないかなー」
「ーー……! それ、いいね」
結城が前のめりになりながらオレに顔を近づけてくる。
「それ?」
「私……【この家にいる間は、優香さんの妹券】を作る!」
「ーー……え?」
「だからさ、ちょっと私が妹をちゃんと出来てるか、福田……くん、ちょっと見てて」
そう言うと結城は可愛く咳払いをした後にゆっくりと立ち上がる。
「ゆ、結城さん?」
「えっとその……お、お兄ちゃん、一緒に……その、あそんで?」
キュイイイイイイインッ……ドゴオオオオオオオン!!!
結城の背後に待機していた恋のキューピッドが弓矢ではなくフルチャージしたレーザービームを発射。 オレの心全てを打ち貫く。
お……お兄ちゃんんんんんんんん!?!?!?!?
可愛いすぎて尊すぎてこれは威力エゲつねぇぞおおおおおおおお!!!!
あまりの可愛さマックスの攻撃に言葉を失ったオレは、口をパクパクとさせながら結城をただただ見上げる。
「お……お兄ちゃん?」
「え……あ……その……、何して……遊ぼっか?」
「えっと……おままごと、とか?」
「おままごと!?!?!?」
結城がオレとおままごとをしたがっている……これはもうオレに結婚してくれと遠回しにお願いしてるようなもんだよなあああああ!?!?
そう考えると急に恥ずかしくなったオレはその場で横になり、真っ赤に染まった顔を両手で覆う。
「あの、お兄ちゃん……?」
「お、お兄ちゃんは寝まシタ」
オレは照れ隠しでゲーム風の感情のない声を再現しながら指の隙間から結城をチラ見する。
「そ、そうなの? お兄ちゃん……寝ちゃうの?」
結城が少し残念そうな顔をしながらオレを見ている。
ーー……すまん結城!! 恥ずかしすぎてこれ以上付き合ってられんのだ!!
「はい。 お兄ちゃんは眠いので寝ちゃいマス……」
「じゃあ私……じゃなくて、桜子も……お兄ちゃんと一緒に、寝る」
「!?!?!?」
そう言うと結城はオレの目の前で横になり、顔を覆っている手を剥がして握りしめる。
なので当然オレは目の前の結城の顔を見てしまうわけで……。
「お兄ちゃん……ちゃんと、桜子のこと、見てほしいな」
近距離で結城が可愛く呟く。
ドゴオオオオオオオン!!!!
これによりオレの心は完全崩壊。
オレは声を震わせながら、最後に結城にこう言ったのだった。
「多分お姉ちゃん……めちゃくちゃ喜ぶと……思うよ」
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