198 色々と衝撃だよもう!!
百九十八話 色々と衝撃だよもう!!
冬休み初日。 オレは翌日に渡す優香の誕生日プレゼントを選びに水島とショッピングモールへと来ていた。
「ねーね、ご主人様、これどうー?」
雑貨屋に並べられていた、ふわふわのピンク色マフラーを首に巻いた水島がオレに視線を向ける。
「ふむ、マフラーか」
「そうそう。 やっぱり冬の女子高生ってマフラーが似合うと思わないー?」
「ーー……そう……なのか?」
オレが戸惑っていると水島が「あー、そっかぁー」と少し残念そうな表情をしながらマフラーを外して元の場所に戻す。
「な、なんだよ」
「ご主人様、そういうゲームしたことないんだもんね。 かわいそうに」
「ーー……は?」
オレが頭上にはてなマークを浮かべながら水島を見ていると、水島が「ちょっと待ってね」といいながらスマートフォンをいじり始め、「ほら、見てよ」とオレにその画面を見せつけてきた。
「ーー……ん? これがどうした」
オレが見せられている画面はどんな検索ワードで出てきたのかは分からないが、制服姿のJKたちの写真が数多く表示されている。
「あのさ、これ冬服の女子高生の制服コーデなんだけど……ほら、みんなマフラー巻いてるでしょー?」
水島がオレの隣にくっつきながら「これも、これもー」と画面をスクロールしていく。
てかあれだな……今気づいたんだが水島ってラベンダーみたいな香りがするんだな。
オレは一瞬画面を見るのを忘れて水島の香りに集中。 目を閉じて音を立てないように気をつけながら、いつもより多めに鼻から息を吸い込む。
ーー……うん、いい香り。
「ねー、聞いてるご主人様ぁー」
「え」
急いで目を開けると水島がオレを見上げながら僅かに頬を膨らませている。
「せっかく花ちゃん、ご主人様のために教えてあげてるのにぃー」
あれ、その表情めちゃめちゃ可愛いぞ。
てか近いんだよこのやろう!! 意識しちまうだろう!!
オレは僅かに早く鼓動する胸の高鳴りを抑えながらコホンと咳払い。
「仕方ないだろ、昨日は誕生日プレゼントを何にしようか迷って寝られなかったんだから」と、もっともらしい言い訳を水島に語る。
「へぇー、ご主人様ってお姉さんのこと大好きなんだねぇー」
「当たり前だ。 そこにオレは恥じたりしないぞ! オレはお姉ちゃんが大好きだ!」
オレが胸を張りながら水島に宣言すると、水島が「ほへー」と口角を僅かにあげながらオレを見上げる。
「なんだ? バカにするならお仕置きするぞ」
「ううん、花ちゃんもそうだもんー。 バカになんてしないよー」
「そうなのか?」
「うん、だって花ちゃんもお兄ちゃん大好きだもんー。 だからお姉ちゃん大好きなご主人様の気持ち、よく分かるなーって」
水島が少し頬を赤らめて「エヘヘー」と笑いながら頬を指先で掻く。
そういやこいつもお兄ちゃん大好きなんだったな。 そこだけは気が合いそうだ。
オレが僅かに水島に心を開いていると、「それでご主人様、どうする?」と水島がオレに尋ねる。
「ん?」
「だからこのマフラーだよぉー」
「あー、それか。 オレはぶっちゃけどれがいいか分からないんだけど……やっぱ喜ぶもんなのかな」
「そりゃあそうだよ!!」
「お!?」
突然水島が目を光らせながらオレに顔を近づけてくる。
「な、なんだ!?」
「あのね、恋愛ゲームにおいて『プレゼント』ってのは好感度をあげる必須条件の1つなんだけど……冬イベントがある場合は必ずと言っていいほど、主人公の男の子はヒロインにマフラーか手袋をあげるもんなんだよ!?」
「そ……そうなのか?」
オレの質問に水島が「うんっ!」と自信満々に頷く。
まぁオレはそういう恋愛シュミレーションゲームは【アイドル育成系】にしか手を出したことはないが、冬イベントでは手袋を選択した記憶がある。
確かにそのヒロインは喜んでいたな。
「ちなみに……なんだけど、マフラーや手袋以外はないのか?」
オレが素朴な疑問をぶつけると、水島が「うーん」と唇に手を当てながら考え出す。
「これは……ご主人様に言っていいのか分からないんだけどー」
「うん」
「エッチなゲームだったら、何をプレゼントしたのかは分からないんだけど、その後に主人公がヒロインの女の子の初めてをーー……」
「うわあああああああ!!!」
オレは急いで水島の口を押さながら店の外へ。
水島の話を聞いていたのであろう数人が「マジか!」って顔でこっち見てたぞ!!
◆◇◆◇
「もぉー、何すんのご主人様ぁー」
「それはこっちのセリフじゃい!! なに公共の場で言ったらマズい発言してんだよ!!」
オレは先ほどの店からかなり離れたところで水島にガチ説教を始める。
「だってご主人様がマフラーとか以外には何がある?って聞いてきたからぁー」
「それでもダメだろ! てかお前お兄さんとそんなゲームもしてんのかよ!!!」
ちょっと羨ましいなと思いながらオレはそんなゲームをしている水島の姿を想像する。
ーー……いいな。
「してるよー。 お兄ちゃんも最初は恥ずかしがってたけど、今じゃ普通に花ちゃんを足の上に座らせてやってるよー」
水島が嬉しそうに自らの太ももを優しく叩く。
「あ……足の上に乗せてエロゲーを……だと!?」
「うんー。 たまに花ちゃんのお尻に当たって動かしたりとかしてくるんだけど、お兄ちゃん可愛い声出すから面白いんだぁー」
「!?!?!?」
はい、きました衝撃発言!!!
一体何が当たって動かしてくるのか!! ポケットに入れたお兄さんのスマートフォンかな!?
そのスマートフォンが水島のお尻に当たって、偶然お兄さんが可愛い声?を出してるだけなんだよなぁ!?!?
オレの脳内で宿泊学習帰りのバス車内の出来事が再生される。
「なぁ、ちなみにお前はそれが何を意味してるか……とか分かってんだよな?」
「もちろんだよー。 でも別に面白いから別にいいかなーって。 たまに花ちゃんの方から動いてあげたりもするよ?」
水島が少し恥ずかしそうな表情をしながらお尻を僅かに左右に振る。
「再現せんでいい!!!」
あ、勘違いしないでくれよ!!
水島がお尻を動かすのはおそらくあれだ!! 一定の場所で座ったままでいたらお兄さんの足の血の巡りが悪くなっちゃうから、優しさで動いてあげているんだぞ多分!!!!
「水島……お前、将来気をつけろよ」
「大丈夫だってー。 花ちゃん、それはお兄ちゃんにしかやんないからー」
「まぁ、それならいいんだけど」
「もしかしてご主人様も興味あるの?」
「は?」
「花ちゃん、ご主人様の命令だったら別にやってあげなくもないよー?」
「……はぁ!?」
水島がオレにお尻を向けて軽く突き出してくる。
「こんの……隠れビッチがあああああああ!!!!」
オレはそんな水島を無視。 水島の頭にキレのいいツッコミを入れる。
「いやぁーーんっ! ご主人様いたいー!」
「そういうことを気をつけろとオレは言っとるんじゃい!!」
かなり魅力的な提案だったがあれなんだ、今は優香の誕生日プレゼントを買いに来ているんだ!
オレは自分にそう言い聞かせながらなんとか変態欲求を抑制。 「早く他の店見に行くぞ!」と水島の手を強引に引っ張り歩き出す。
「えええ、ご主人様、さっきのマフラー嫌なのー?」
「バカモン!! あんな発言聞かれた店に戻れるわけがないだろう!!」
「そんなのみんな気にしてないってー」
「オレが気にするの!! いいから他に店で選ぶの手伝え!」
「ふぁーい」
こうしてオレはグータラ女子の……いや、隠れビッチの水島を引き連れて他に店舗を多数まわり、なんとか優香が喜んでくれそうな商品をゲットしたのであった。
何を買ったのかって? それはまた明日のお楽しみだぜ!
◆◇◆◇
無事今日のミッションを終えたオレは隠れビッチ水島にお礼を兼ねてご飯をご馳走した後、水島もお兄さんへのクリスマスプレゼントを買いたいとのことだったのでそれに同行。
夕方くらいまでいろんな店を見て無事水島もプレゼントを買えたらしいのだが……それは帰り道のことだった。
「あ、そういやご主人様って4組の結城さんと仲良かったよねー?」
「え!?」
突然出てきた結城の名前にオレは動揺しながら水島に視線を向ける。
「あ、うん。 それがどうした?」
「さっき花ちゃんおトイレ行ってたんだけどさ、ママみたいな人になんかめちゃめちゃ怒られてたけど……そんな悪い事する子じゃないよねー?」
「ーー……は?」
水島が「ちょっとあのママ怖かったなー」と思い出しながら呟いている。
「おい水島、それはどこのトイレだ?」
「え? さっきだから……3階の洋服売り場だったと思うけど。 どうしたのー?」
「ちょっと今から向かうぞ。 とりあえず水島、お前もう1度トイレの中見てこい」
オレは水島の腕を引っ張りながらエレベーターの前へ。
中に入って3階行きのボタンを連打する。
「えぇー? なんでー?」
「いいから見てこい!! まだいたら無理やり結城を連れ出してくるんだ!」
「えぇ!? 花ちゃん、あのママ怖いんだけどー」
「無理ならオレを呼べ! オレがなんとかする!!」
「ぶー、わかったよー」
こうしてオレたちは3階の……先ほど水島が入っていたトイレへと急行。
その後水島を中へ向かわせたのだが、すでにもうどこかへ行ってしまっていた……とのことだった。
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2021/1/1 今年も小五転生をよろしくお願いします!! 作者より