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197 マドンナプレゼンツ!?


 百九十七話  マドンナプレゼンツ!?



 色々とドタバタだった1泊2日の東北旅行から少し。

 明日から冬休みということで、オレは体育館で校長の長ったらしいお経のような言葉をただただずーっと聞き流していた。


 ーー……そうか、夏休みだけじゃなくて冬休みもあるんだ。 今思うとめちゃめちゃ最高だよな。


 オレがこの学生生活の有り難みをひしひしと感じていると、ポケットの中に入れてあるスマートフォンが数回振動する。

 この振動の回数的に多分メールだ。 あとで確認しないとな。



 ◆◇◆◇



「ねぇー、福田ぁーー」



 終業式が終わり教室で席に座ってボーッとしていると、ドSの女王・小畑がオレの目の前……机の上に横からピョンと飛んで座り込む。

 うわぁ……やっぱり脚綺麗だなぁ。



「えっと……どうしたの小畑さん」


「ねーね、福田は見に行くの?」


「え?」



 ーー……『見に行く?』って何を!?


 オレが脳を必死に回転させていると小畑が「えー、ちょっと流石に忘れてんのはなくない?」とツッコミを入れながらオレの頭を両サイドに持ちながらグルグルと回し始める。



「え、えええええ!?」


「ほら、ラブカツの映画、もうすぐじゃん」



 小畑がオレの耳元にまで顔を近づけて小さく呟く。

 やはりあまり他のクラスメイトたちには聞かれたくないようだな。



「ーー……あ、確かに」


「で、見に行くの?」


「まぁ……それはもちろん」


「じゃあさ、一緒に行こうよ」


「あ、うん」


「うし、んじゃまた日にちとか連絡すんねー」



 小畑が小さく手を振りながら自分の席へと戻っていく。

 オレは「そうか、もうそんな時期なんだ……」と小さく呟きながら時間の早さを実感していたのだが……。



 ーー……え、一緒に行くの!?



 ◆◇◆◇



 小畑の突然の誘いからしばらくして担任が教室へ。

 帰りのホームルームで冬休みの宿題等を配られてその後解散。 オレは『明日から冬休み』という喜びと、『小畑に映画を誘われた』というドキドキが心の中で入り交じった状態で教室を出る。



「あ、そういえば体育館でスマホ震えてたな」


 

 ふと思い出したオレはスマートフォンを取り出して中身を確認する。



「ーー……ん? なんだどうした?」



 スマートフォンの電源をつけるとメールの受信通知。

 受信先は……ギャルJK星からだ。



 【受信・星美咲】あんさ、一応聞いとくんだけど、ゆーちゃんの誕生日とかって覚えてるわけ?



 ーー……ん? 優香の誕生日?

 そういや知らないけど……なんでだ?


 オレは僅かに首を傾げながら返信を打ち込む。



 【送信・星美咲】知らないけど……なんで?


 【受信・星美咲】やっぱそこも覚えてないんだなー。 ちなみクリスマスイブね。 だから何かプレゼントとか買っとくなら今のうちだかんねー!



「ーー……え、マジか」



 えっと……今日は何日だったっけ。

 オレはちょうど通りががった他クラスの黒板を覗き込んで今日の日付を確認する。

 


「えっと、、12月22日……ってもう明日しか猶予ないじゃねえかあああああ!!!!」


「ひっ!!」



 ーー……あ、やっべ。 思わず叫んじまったぜ。

 さっき後ろから聞こえた小さな叫び声……絶対オレの声に反応してたよな。

 オレは恐る恐る後ろを振り返る。



「ん? 水島?」



 そこにいたのはロングツインテールにした現学年のマドンナ・水島花江。

 ーー……とは言っても以前のような頼り甲斐のある風格はもう微塵も感じられないのだが。



「ご……ご主人さまぁー。 びっくりしたよー」



 水島が「ふわぁーー」と胸に手を当てて深く息を吐きながらオレに視線を向ける。



「いや、てかなんでお前オレの後ろにいるんだよ。 さっき別の友達と帰ってなかったか?」


「それなんだけどさぁーー」



 水島が面倒くさそうな表情をしながらオレの後ろに隠れて周囲を見渡す。



「な、何してんだよ」


「さっきから杉浦くんが一緒に遊ぼうって言ってきてしつこいんだよー。 花ちゃん、別に杉浦くんとなんか遊びたくないのにー」


「いや、知らねえよ」



 オレはそう突っぱねるも水島は無視。 「ここじゃあすぐに見つかるから早く移動しようよご主人様ぁー」と言いながらオレの背中をゆっくりと押して進み出す。



「おいこら水島。 お前ご主人様をなんだと思ってんだ。 オレには早く家に帰って考えなきゃならんミッションがあるんだよ」


「ミッション? なーにー?」



 水島がオレの背負っているランドセルにもたれかかりながら尋ねてくる。

 こいつ……自分が奴隷だってこと分かってるよな?



「明後日までに姉の誕生日プレゼントをどうすべきか考えるの! だから早くどけ!」



 オレは背中を大きく動かしてランドセルに体重を乗せていた水島を振り払う。




「誕生日プレゼントーー?」


「そう! だからお前に構ってる暇はないのー!」


「お姉さんってどのくらい年上ー?」


「高校生だよ!! それがどうした!」


「ふむふむー」



 水島はゆっくりと顔を縦に動かしながらオレを見つめる。



「な、なんだよ」


「ご主人様、明日それ買いに行くのー?」


「当たり前だろ。 じゃないと間に合わん」


「花ちゃんが一緒に選んであげよーか!?」



 水島がオレの腕を掴んで自身の身体に寄せ付け、瞳をキラキラと光らせながらオレに顔を近づけてくる。

 うわああああもう!!! なんで冬服なんだよ!!

 夏服だったら感触が素晴らしいはずなのに!!! 色々と!!!


 オレは今の季節を少し後悔しながらも「コホン」と咳払い。

 今の心境とは裏腹の表情……ジトッとした視線を水島へと向ける。



「なんでそうなる。 お前もしかして変なこと考えてないだろうな」


「前も言ったけどさ、しないよそんなことー。 ただ、ちょっとでもご主人様が喜んでくれるならなーって思ってさー」


「……そうなのか?」


「そうそうー。 なんだかんだでまだ花ちゃん、学年のマドンナなんだよー? マドンナって色々とセンスも求められるから、きっとご主人様の役に立てると思うなぁーー」



 ふむ、一理あるな。

 なんだかんだで水島も少し前までは清楚キャラでやってきてたんだし、優香も完璧に清楚……これは清楚繋がりで良い感じのプレゼントが見つかるかもしれない。




「なるほど。 じゃあちょっとお願いし……」

「あーー!! いた!! 水島さああああーーーん!!!」


「ん!?」


 

 オレが水島に同行をお願いしようとしたタイミングで元いじめっ子リーダーの杉浦が登場。

 息を切らせながら「やっと見つけた……」と膝に手をついて水島を見上げる。



「えええええ、しつこいよ杉浦くんーーー!!」


「そこをなんとか……! 明日……本当に明日だけ!! お願い!!」



 杉浦はその場でしゃがみこみ、顔よりも上の位置で手を合わせて水島に頭を下げる。



「むーりー! さっきから言ってるでしょー! 花ちゃん予定あるってー!!!」


「じゃ、じゃあその予定が何なのかだけを教えてくれ!! じゃないとただ俺から避けてるようにしか……」

「ごしゅじ……福田くんとお買い物行く約束してたんだもん!!!」



「「えええええええええ!?」」



 水島は杉浦の話を遮りながら爆弾発言。

 それに対してオレと杉浦が同時に声をあげる。



「もしかしてお前……今さっきの発言をするためだけにオレに近づいただろ」


「!!」



 オレが水島に小声で尋ねると、水島の体がビクッと反応する。 



「ーー……図星かよ」


「ハハハー、なんのことか花ちゃんワカンナイー」



 まったく、だらしなくなったと思ったら……なんだかんだでズル賢い女だよなぁ。

 杉浦は水島の発言を聞いてかなりショックだったんだろう。 全身が燃え尽きて真っ白になってやがるぜ。



「はぁ……まぁいいけどさ、ガチで同行させるからにはめちゃめちゃこき使うぞ?」



 オレは杉浦を無視して水島に念を入れる。

 もし途中で「もう帰りたいー」とか言い出したらもうお仕置きだ!



「いいよー。 女子高生が好きそうなもの選ぶだけでしょー? 簡単だよー」



 水島が「任せてよー」といいながら腰に手を当てて僅かに胸を張る。




「ーー……なんでそう言い切れるんだ?」


「だって花ちゃん、お兄ちゃんと一緒にいっぱいヒロインが女子高生の恋愛ゲームしてたんだよ? なにをプレゼントしたら好感度が上がるか……とか、めちゃめちゃ覚えてるもんー」



 そう言うと水島はオレに向けてピースサイン。

 「だから安心してー」とこれまたユルい笑みをオレに向けた。

 


「なるほど……じゃねえよおおおおおおおおお!!!!!」



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[一言] 落とし神が居れば安心してプレゼント選べますね ただし選択肢もセーブ・ロードもありません
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