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190 特別編・エマ③ 告白


 百九十話 特別編・エマ③ 告白




「ーー……え、1次審査合格?」



 オーディションを受けたその日の夜、マネージャーからの電話の内容に楓は言葉を失う。



「えっと……何かの手違いではないですよね」


『えぇ! どうやらあなたの表情が一番自然で初々しかったらしくてね! 今度は実際に雑誌に載る衣装を着てるところを撮らせて欲しいらしいわよ!』



 なんということだろう……今日ノーパンで学校に行った日の帰りに直接向かったオーディション。

 審査はクルっと回ってカメラ目線……だったのだが、まさかそれがカメラマンさんたちから絶賛だったなんて。



『それにしてもやったわね! これが決まればこの雑誌の1ページは楓……あなたで独占よ!』



 スマートフォン越しからマネージャーの嬉しそうな声が聞こえてくる。

 こんなにテンションの高いマネージャーの声を聞くのは初めてだ。



「で……出来ますかね。 私に」


『大丈夫よ! だから明日、今日と同じ建物に向かって頂戴! とりあえず着る予定の衣装の画像、メールで添付しておくわね。 それに似合った髪型で来てくれれば問題ないわ』


「わ、わかりました」



 しばらくするとマネージャーからのメールが受信。

 楓はそこに添付されていた画像を開いて明日着て撮影をする衣装を確認する。



「ーー……うっわ、スカート短か」



 今日がこの衣装を着てのオーディションじゃなくてよかった。

 もしこれを着ての撮影だったらクルっと回るだけでスカートが捲れて現場が大騒ぎになるところだったよ……。

 とにかく、せっかく掴み取ったチャンスだ。 もしかしたら今までオーディションで落ちてきたことも無駄ではなかったのかもしれない。


 明日は人見知りをあまり出さないように明るく……全力で撮影に挑もう!!


 楓はスマートフォンを強く握りしめ、そこに表示されている衣装に画像を眺めながら「よし!」と1人で大きく頷き気合いを入れた。



 ◆◇◆◇



「あれ? 楓ちゃん、昨日と全然表情違うよ? どうしたの?」



 前日と同じ撮影部屋。

 カメラマンとその隣にいるアシスタントのおじさんが首を傾げながら楓に問いかける。



「え?」


「ほら、昨日はもっとこう……内から弾けるような表情をしてたじゃない」


「こ……こうですか?」


「違うんだよなー。 あれ、俺たちの見込み違いだったのかな」


「えっと……こ、こうですか!?」


「違う」


「じゃあ……こう!?」


「ーー……はぁ」



 ◆◇◆◇



「どういうこと、楓」



 事務所内。

 眉間にしわを寄せたマネージャーが雑誌を丸めて自身の手の平に当てながら楓を睨みつけている。


 結果は不合格。 別の事務所の女の子が採用されたらしい。



「先方から連絡があったわよ。 見込み違いだった申し訳無かったって」


「ーー……」


「なに? 私を睨みつけたりなんかして」


「ーー……私が、悪かったんですか?」


「だからこういう結果になってるんじゃない」



 確かにそうだ。 そう言われてしまえばなにも言い返せない。

 楓は事務所を出ると「はぁ……」と深いため息をつく。



「やっぱ私……向いてないのかな」



 自分の中では今までで一番いい表情をしていた自身があった……なのに落ちた。



 楓は中学3年間のバスケットボール人生を振り返る。

 バスケットボールは良かった。 練習をする度に成長が実感できたし、それがちゃんと試合にも表れる。

 そしてその成長でみんなも喜んでくれた。


 なのになんだ? このオーディションは。


 頑張った結果、まったく褒められずに怒られて終了。

 なんかもう……やるだけ無駄なのかもしれない。



「はぁ……バスケしよ」



 モデルという華やかな道を諦めた楓は、次の日からマネージャーから送られてくるオーディションのメールを全て無視して部活に集中し始めることとなる。


 やはりバスケットボールは楽しいし素晴らしい。

 私が活躍する度に先輩や同期・後輩が拍手を送り、私が誰かのミスをカバーする度に感謝される。 


 楓はそんな生活を心から楽しみ始め、とうとうマネージャーからの連絡を受信拒否。

 完全に学生生活を謳歌し始めていった。



 そんなある日のこと。

 

 部活終わり、楓が教室へ忘れ物を取りに向かっていると廊下の曲がり角で1人の男子とぶつかる。



「あにゃっ!!」



 その反動で楓はバランスを崩して尻餅。

 「ごめんなさい」と謝りながらぶつかった相手の顔を確認するために視線を上へと上げていく。

 するとそこには見たことはあるが話したことはないあの人。



「ーー……北山、くん」


「あ、小山さん……だっけ」



 え、北山くんが私のこと知ってた?

 楓は自分の中で何かが熱くなっていくのを感じる。

 


「えーと……小山さん? どうかした?」


「あああああ!! ごめんなさい、私教室に数学の問題集忘れちゃって! じゃないと宿題できずに明日先生に怒られちゃうから……! あはははは……」



 今まで感じたことのない感情の波に動揺しながら楓は「それじゃあね、北山くん」と小さく手を振りながら北山の隣を通り過ぎようとする。



「あ、待って小山さん」


「えっ?」


「実は俺も……数学の問題集取りに戻ってたんだよね」



 そう口にした北山が片手に持っていた本をゆっくりと上げて楓に見せる。



「え……北山くんも?」


「うん。 なんかこんな偶然ってあるんだな」


「う……うん」




 まさに共通の話題。

 これがきっかけで楓と北山はお互いに打ち解けあい、部活が終わると途中の分かれ道までの短い道のりを一緒に帰るまでになったのだった。

  

 そして気づけば気温も高くなってきた夏。

 いつものように部活終わりに待ち合わせて、いつものように「また明日」と声を掛け合う。

 そう思っていた楓だったのだがその日は違った。



「あ、あのさ……小山……さん」



 そんないつもの分かれ道。

 楓が「また明日」と声をかけようと北山を見ると、北山が少し俯き気味で楓を見つめている。



「ん、どうしたの北山くん」


「あ、あのさ……小山さんに言いたいことがあるんだ」


「言いたいこと? なに?」



「もし良かったらなんだけど……俺と付き合ってくれないかな」



「ーー……え」



お読みいただきありがとうございます!

いやー、ノーパンモードは強いですね!!笑

この調子だとエマ編は大体⑥くらいだと思いますのでエマの過去、知ってやってください♪


ブクマや評価・感想など、お待ちしております☆

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