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175 完成!?【挿絵有】


 百七十五話 完成!?



 夜、ベッドの上でウトウトしているとスマートフォンが振動。

 確認してみると水島からの着信通知だ。



「あいつメールするって言ってなかったか? なんで電話なんだよ」



 オレはそう呟きながらも通話ボタンをプッシュ。

 水島からの通話を許可してスマートフォンを自身の耳に当てる。



『あ、夜にごめんねご主人様』



 水島の元気そうな声がスマートフォンから聞こえてくる。



「あぁ……ていうか家でその呼び方大丈夫なのかよ」


『なにが?』


「だからそのご主人様ってやつ! 家の人が聞いたらびっくりするぞ?」


『ふふ……大丈夫。 じゃあ小さな声で話すね』



 水島が上品に笑いながら声のトーンを少し下げる。



「それで……なんの用だ?」



 そう水島に尋ねると、水島は『もぉ……言ったじゃない』と言いながら用件を話し出した。



『ほら、私がなんで「清楚」なキャラを演じてるかって話だよ』


「あー……そういやそんな話してたな。 で、なんでだ?」


『うん、実はね……』



 水島はそこからどうして自分が『清楚』キャラを演じるに至ったのかを話し出したのだが、その理由が……。



「お前それ……まじか」



 オレが尋ねるとスピーカー越しに水島が『うん』と答える。


 な……なんてことだ。



「理由がお兄さんのゲームの影響だったなんて……」



 どうやら水島には年の大きく離れた引きこもりのお兄さんがいるらしい。

 ただ水島はそんな兄のことが大好きでよく部屋に遊びに言っては一緒にゲームなどをして遊んでいた。

 そしてそのとき一緒にやっていたゲームに出てきていた女キャラが、こぞって『清楚キャラ』だったから……お兄さんが『清楚キャラ』が好きだったからという理由だ。


 一体どんなゲームを一緒にやってたんでしょうねぇ!!



『お兄ちゃん言ってたよ? 男の人は結局は「清楚」に弱いんだって』


「ま……まぁそうだけどさ、別に真似することなくないか?」


『それはダメ。 だって私もお兄ちゃんみたいなグータラな性格なんだよ? このままだと将来私を養ってくれる人がいないかもしれないじゃない』



 ーー……は?



「や、養ってくれる人?」


『そだよー。 養ってくれる人が出来るまでは「清楚」を演じようって決めてたの。 私ってほら、自分で言うのもアレだけど結構美人な部類でしょ? だからこれで「清楚」を演じてたら無敵かなって』


「ーー……なるほど。 それがきっかけ」


『うん。 それでやってみたら学年のマドンナだよ。 マドンナだったら男子を集められるし私もチヤホヤされるしで嬉しいもん』



 こ、言葉は清楚だけど言ってる内容がクソだああああああ!!!!


 なるほど理由は分かった。

 となるとオレの質問はこれに限る。



「じゃあ水島」


『何?』


「いいのか? 『清楚』をやめたら一気に票がエマたちに移る可能性だってあるんだぞ? そしたらお前の目的、台無しにならないか?」


『うん、大丈夫』


「おいおい即答かよ!!!」



 あまりの返答の早さに思わず突っ込んでしまう。



「えぇと……それは、なんで?」


『私思ったんだよねー。 成功したならそれはそれで嬉しいんだけど、別に小学校で失敗したとしても次……中学があるなって。 できれば私働きたくないし……大学出ると同時に結婚したいから、それまでに相手を見つければいいんだよ』


「お……おう」



 水島よ、気づいているか?

 お前自らの欲望を語っているうちに話し方から『清楚』が消えていっているぞ?



「ん? ちょい待ち水島」



 話を聞いているうちにオレには1つ気になる点が。



『どうしたのご主人様ー』


「じゃあお前、もしオレがあの時お前の告白にオーケーしてたら……将来めちゃめちゃ働かせるつもりだったってことか?」


『えぇ? 違うよー』



 水島が笑いながらオレの予想を否定する。



「じゃあなんでだ?」


『ほら、前にも言ったじゃんー。 ご主人様って今密かにブーム来てるって。 だからちょっと優越感に浸りたかったのと……』



 なんだ、まだあるのか?



『後はあれだよ、ご主人様と私が付き合ったらさ、他に私のこと好きだった男の子がこぞってアピールしに来そうじゃん? だからそのための咬ませ犬だよぉー』



 ……うん、こいつシバく。

 何を堂々とぶっちゃけてるんだこいつは。

 もうこいつマドンナから落ちてもいい……ていうか落ちる方向に持って行ってやろうか。

 オレは一気にやる気が失せたので水島との会話を終わらせにかかる。



「あー。 じゃあとりあえず、お前は明日から素の……何も飾らない水島花江で勝負するんだな?」


『うん。 でもやっぱりちょっとは怖いからさー、ご主人様、明日早めに学校きてくれないかなぁ』


「え、早めに?」


『うん。 できればご主人様の感想聞いてから、そのまま行くか別の方向を探るか考えたいんだよねー』


「まぁ……いいぞ」



 そう答えるとスピーカーから水島の『やったぁ』の声。

 『じゃあまた明日バイバーイ』という言葉とともに通話を終えたのだった。


 さて、確実に明日決行する水島の妹キャラ作戦は諸刃の剣だ。 ぶっちゃけオレも勝率は低いと思っている。

 だから落ちた時は……「オレを見下して告白した罰だ」とか言って落ち込んでる水島の目の前で笑ってやるんだ!! 何のフォローもしてやらないぞ絶対に!!


 オレは心の中で絶対に水島の負けた姿を見ても同情しないことを心に誓ったのだった。

 


 それにしても働きたくなくて楽したいから将来を見据えて『清楚』を演じトップを守る、か。

 なかなかグータラな精神のくせしてガッツのある計画だなーおい。



 ◆◇◆◇



 翌朝、早めに家を出て学校へと向かっていると水島からメールが届く。



【受信・水島花江】先に着いたから教室で待ってるね。



 おいおい早いな。

 何がグータラだ。 起きる時間にしても、このこまめな連絡……思い返すとオレの靴箱に入れていた脅迫文もそうだけど……あいつ実は自分でグータラだと思ってるだけで実はそうではないんじゃないか?

 例えばその引きこもりのお兄さんと一緒にいすぎて性格が自分もそんな感じじゃないのかって勘違いしてたりとか……。



「まぁとりあえず、早く向かわないと」



 オレはスマートフォンをポケットにしまうと少し駆け足で学校へと向かった。




 そして学校。

 上履きに履き替えたオレはまだ誰もいない階段を駆け上がり教室を目指す。



「おー、福田」


「え」



 声をかけられたので振り返るとなぜかそこには杉浦の姿。



「なんで福田そんな早いんだ?」


「す、杉浦くんこそ」


「俺? 俺は朝練ちょっと遅刻したから諦めて教室で寝てようかなって」


「そ、そうなんだ……」



 このままではまずいと思ったオレは杉浦の少し後ろを歩きながらスマートフォンを取り出し水島に電話を鳴らす。

 ーー……しかし。


 くそ!! 出ねえ!! あいつどこか行ってんのか!?

 トイレ中で教室にいないんだったらそれはそれで好都合なんだが……!!!



「ん? どうした福田」


「いや、なんでもない。 なんでもないよ」



 オレは念の為水島にメールも送信して杉浦とともに教室へと向かった。



「いやーでも誰もいない教室で寝れるとか最高だよな! じゃあ福田、先に俺行くわ!!!」


「えっ!」



 突然杉浦が教室まで続く廊下を走り出す。

 スマートフォンを見て確認するも水島からの返事は何もない……もうどうにでもなっちまえ!!



 そう思いながら杉浦の後ろ姿を眺めていると、杉浦が教室前に到着。

 そのまま勢いよく扉を開く。


 ーー……ん、どうしたんだ?


 杉浦の様子がおかしい。

 教室の扉を開けたままその場でジッと固まっている。


 オレが杉浦に声をかけようとした……その時だった。



 ブシュウウウウウウウウウ!!!!



「!?!?!?!?」



 突然杉浦は白目をむき鼻から勢いよく血を噴射。

 そのまま後ろに転倒して気を失ってしまう。



「おいおいおいおい!! なんだああああ!?!?!?」



 オレは急いで杉浦のもとへ。

 顔を確認してみると……なんて幸せそうな顔をしているんだ杉浦。

 杉浦は口角をあげて「ふふふ……」と気味の悪い笑みを浮かべながらピクピクと動いている。

 実に気持ち悪い光景だ。


 

「てかこいつ……何見たんだ?」



 オレは杉浦が凝視していた方向に視線を移す。

 


「ーー……んぁ、寝てた。 あー、ご主人様ー」


「み、水島!?」



 教室内に視線を向けると水島がオレの席の上で座りながら大きくあくびをしている。

 


挿絵(By みてみん)



「どうかな? こんな感じなんだけどー」


「あ、あぁ。 オレは嫌いじゃないぞそう言うの」


「あははー、やったぁー」



 寝ぼけた水島が緩い笑みをオレに向ける。

 あぁ……悔しいけどこれはこれで良いぞ。 パンツも見えてるしどこかだらしない!!

 当初オレの希望は【可愛い&基本1人では何もできなさそうな妹】だったが、今の水島を例えるならそう……【緩い&基本1人では何もしなさそうな妹】ってところだろうか。

 女子人気はなさそうだけど。



「ていうか、ご主人様ー」


「なんだ?」


「なんで杉浦くん、倒れてんのー?」



 ーー……あ、忘れてた。

 


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 基本、媚びなきゃ女子に叩かれることはないんで 干物化は割と悪くない選択かもですねぇ
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