174 それそれぇ!!
百七十四話 それそれぇ!!
「ご主人様、こ……こんな感じでいいの?」
オレが水島にアドバイスをした翌日の放課後、誰もいないことを確認した後にそれっぽい格好へとチェンジした水島がオレを見つめる。
「お……おおおお」
黒髪ロングからロングツインテール!
ヘアピンは花模様で両サイドの髪ゴムはウサちゃん!
そして少しカーディガンをゆるく着用……袖からはちゃんと指だけが顔を出している! いわゆる萌え袖ってやつだ!
完全な妹属性……もはや『清楚』なんてどこ行った? と言ってもおかしくない水島の姿が目の前に。
「か、感想欲しいんだけど」
水島が恥ずかしそうにオレを見上げる。
なんだこれ……結構似合ってるくね!?
オレがそんな水島の変わり果てた姿に視線を奪われていると、水島が「ご主人様?」とオレの腕を引っ張る。
「え、ああ! すまない」
オレはコホンと咳払いをした後に気を取り直して水島を見る。
「うん、オレはいいと思うけど」
「そ……そうかな」
「うん。 後はその喋り方だな」
オレはビシッと水島の口を指す。
「喋り方?」
「そうだ。 見た目は変わったけどその喋り方にどうも清楚が残ってるんだよな」
「そ……そんなこと言われても」
水島が少し困ったように視線をそらす。
「ほらそのーー、なんかないか? 妹っぽい喋り方みたいな」
「……うーーん。 そう言うのやったことないからなぁ。 福田く……ご主人様は何かある?」
「オレか? そうだな……」
オレの知りうる限りの妹属性を脳内で再生させる。
今までいろんなアニメを見てきたが……そうだな、どれも水島に合いそうなキャラが見当たらない。
「お兄ちゃんお兄ちゃん♪」といった甘えた感じはなんか違うし……逆にツンデレとかどうだろうと思ってもみたのだが、それはエマっぽいしな。 勝ちたい相手の属性を組み込むというのはまさに無謀だ。
他に誰か……ツンデレのエマやドMの西園寺とは違った……妹キャラに合いそうな、強烈な個性を持った人はいないものか。
オレはよく絡む人たちの属性を考えていく。
まずはJSグループだ。
三好……バカ
多田……実は真面目
小畑……ドS
結城……不運
エルシィちゃん……癒し
美香……ミステリアス
ーー……うむむ。 どれもいいけど水島っぽくはないな。
次はJKグループだ。
優香……過保護
ギャルJK星……結局はギャル
「ーー……」
だめだ、これも違う。
ダイキの帰省先の陽奈は褐色元気娘だし、その姉の愛莉さんは幽霊。
……幽霊っぽい妹ってなんだよ。
オレは1人で突っ込んだ後に、どうしたものか悩みながら水島を見つめながら唸る。
「ご主人様?」
オレの視線を感じた水島が頭上にはてなマークを浮かばせながら首をかしげる。
「うん、やはり『妹&清楚』では弱いな」
「ええええええ!?」
オレの言葉が結構ショックだったのだろう。 水島の瞳に涙がウルウルと浮かび出す。
「じゃ……じゃあマドンナの枠、西園寺さんかエマさんに取られちゃうじゃない……!」
「これはもう仕方ないだろう。 盛者必衰ってやつじゃないか?」
「で……でもぉーー」
水島がしょんぼりと項垂れながら大きくため息をつく。
まぁオレからしたら学年のマドンナになったエマや西園寺の姿を見てみたくもあるけどな。
水島には申し訳ないがこの辺で脱落してもらって……
オレがそう考えていた時、教室内に着信音が鳴り響く。
「あ、私のだ」
水島がポケットからスマートフォンを取り出して通知を確認。
「お母さん?」
そう言うと水島はオレに「ちょっとごめんね」と微笑んだ後に通話ボタンをプッシュ。
その後スマートフォンを耳に当て、母親との会話を始める。
「ーー……え、お母さん? うん、うん。 ええええ、花ちゃん行きたくないー! うん、だってコーチ厳しいんだもんー!」
ーー……は?
オレは目の前の光景に視線を奪われる。
み、水島??
「うん、うん。 え、やだよぉーー! 花ちゃん電話したくないもんっ! お母さん代わりに電話してよぉーー!!」
水島がブルブルと首を左右に振りながらピョンピョン跳ねる。
そして「うん、よろしく!」と母親に伝えると通話をやめてスマートフォンを自身のポケットへ。 その後オレへと視線を向ける。
「あ、ごめんねご主人様。 習い事の時間だったんだけど行ってないのバレちゃった」
水島が少し舌を出しながら「ふふ」と笑う。
「ーー……いや、水島、それなんだ?」
「え、何が?」
「だからそれ……」
「それ? 習い事ならスイミングだったんだけど」
「じゃねーよ! そのママとの会話してた時のお前だよ!!」
オレに言われて気づいた水島が一気に顔を赤く染める。
「ま、待ってご主人様!! 今の忘れて! 完全に素に戻っちゃってた!」
「素……てことは、『清楚』は作り物だったのかよ!!!」
「……あ」
水島が「言っちゃった」的な顔をしながら口元を手で押さえる。
「いやいやもう遅えよ! てかなんでそもそもお前『清楚』で通してたんだ?」
「そ、それはまた今度話すから……」
「なるほど。 じゃあそれはそれとして、それでいこう」
オレは親指を立てて水島に向ける。
「え、それでって?」
「だから、学校でもそのママと話してるような感じで喋るんだよ!!」
オレの言葉を聞いた水島の額にダラダラと冷や汗が垂れ始める。
「えええええ、やだよそんなの! 恥ずかしいもん! それにみんな幻滅するよ!!」
「いや、逆にオレはお前のその話し方に可能性を感じた」
オレがキリッとした視線で水島を見ると水島は動揺してるのか「そ……そんな」と呟きながらその場で膝から崩れ落ち、尻餅をつく。
その時にスカートの中……足の間から水島の履いていたパンツがこんにちはしてきたのだが……
「み、水島……お前」
オレは水島のパンツに顔を近づける。
「きゃああああああ!!! ご主人様、なにいいいいい!?!?!?」
「なんでそんなパンツ履いとるんじゃああああああ!!!!」
オレは水島の履いている少しモコモコっぽいパンツを指差しながら水島を見上げる。
「な、なんで!?」
「全然可愛くねえじゃねえかああ!!!」
「だってもう冬だし寒いから……」
「パンツは己の写し鏡!! 学年のマドンナならそれに相応しいパンツを履くべきなんじゃああああ!!!」
「ええええええ!?!?!?」
水島は両手でパンツを隠しながらオレの発言に驚愕の表情を浮かべる。
「ふ、相応しいパンツって何!?」
「水島あのな、女子のパンツってのはスカートの中に隠された表に出さないファッション……つまり自分自身なんだ」
「パンツが……自分自身?」
水島が意味がわからないといった顔でオレに訴える。
「あぁ。 じゃあ聞くぞ水島。 もしエマや西園寺のスカートの中身が見えたとして、その中がフンドシだったらどう思う!?」
オレは水島にかなり顔を近づけて尋ねる。
「そ、それは……ちょっと残念っていうか、もっと似合うパンツあるのになぁ……とか?」
「そう! それそれぇ!!!」
「え!?」
「エマや西園寺は確かに美人で可愛い……だけどフンドシだと見た目・デザインが2人の美貌に比例していない。 だからお前は残念に思ったんだ」
「!!!!!」
水島の背後に巨大な雷が落ちる。
「そ……そういうこと!?」
「そうだ! なのになんだお前は!!」
オレは水島の股間あたりを指差す。
「現学年のマドンナである『清楚』な水島花江が可愛くもなくセクシーでもないモコモコパンツ!? 呆れちまうぜ!! もしお前のパンチラを見た男子がいたとしたら期待していたパンツとは違った結果に幻滅してるだろうよ!!」
「そ、そんな!! じゃあエマさんたちは冬でも可愛かったりちょっと色っぽいパンツ履いてるの!?」
「履いている!」
「断言!?」
最近オレが風邪を引いた時に見たエマのパンツは可愛いしちょっと小さめでエロかったぞ!!
西園寺は……もしかすると履いてすらいないかもしれないけど!!!
オレの断言を受けた水島はその場でしばらく黙り込む。
何か1人でブツブツと呟いているみたいだが……。
しばらくすると水島はゆっくりと頷いてオレを見上げる。
「なんだ?」
「パンツは己の写し鏡……わかった。 私、次から気をつける」
「よし!」
「他にその……直すべきところあるかな」
水島が自身の体を見つめながらオレに尋ねる。
「そうだな……あの喋り方でいくなら髪の毛はできたら少しふわふわさせた方が妹味が出ていいかもしれないな」
オレがそういうと水島は大きく首を縦に。
「わかった! じゃあ早速明日それで学校行く!」
「え、早速か」
「うん! 少しでも早くマドンナの座を完全なものにしたいからっ!」
水島がフンと鼻息を鳴らしながら小さく拳を握りしめる。
「お、おう。 じゃあ頑張れよ」
「わかった! とりあえず今夜メールするね!」
こうしてこの日はこれで解散。
もしこれで水島の人気が上がらなかったら……少しは扱いを優しくしてあげることにするか。
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次回……挿絵描きます!!