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173 1番になりたいっ!


 百七十三話  1番になりたいっ!



「あ、あの……ご主人様」


「ん?」



 ある日の昼休み。

 オレが1人トイレへと向かっていると学年のマドンナ・水島花江が後ろから話しかけてくる。



「どうした」


「その……ちょっと相談があるんだけど」


「そうか。 なら聞く義理はないな。 じゃあオレはトイレに行きたいからこれで」


「ああああ……ご主人様ぁーー……」



 水島が後ろからオレに抱きついてくる。



「な、なんだよ水島! 離せ!」


「離さない……ご主人様が私の話を聞いてくれるまで離さないーー!!」


「んああああもう!! 面倒くせえなああ!!!」



 オレはそんな水島に体を向けると、水島のポケットに手を入れてスマートフォンを取り出す。



「な、なに!?」


「変に録音とかされてて後々面倒なことになるのは避けたいからな」


「そんなことしないよ! だってそんなことして脅したとしてもご主人様はあの動画を流すんだから!」


「うん……まぁそうだな。 主導権はオレにある。 よくわかってるじゃないか水島」


「う、うん。 ありがとう」



 ーー……なんで感謝するんだよ。



「で、なんだ?」



 オレは水島の顔をまじまじと見ながら尋ねる。



「あの……できればここじゃなくて人の少ないところの方が」


「わかった。 じゃああそこしかないな」



 こうしてオレは水島を連れて図工室前の女子トイレの中・奥の個室へ。

 そこで水島の相談を聞くことにした。




 ◆◇◆◇



 

「ーー……え? お前を勝たせてほしい?」



 オレの言葉に水島はウンウンと何度も頷く。

 


「しょーもねええええ」



 オレは水島の相談を聞いてあまりのしょうもなさにガクリと肩を落とす。

 水島の相談内容、それは……



「そんなに『学年のマドンナ』って地位を奪われたくないのか?」


「そりゃあそうだよ。 だってマドンナだよ? 一番華があるんだよ?」


「まぁそうだけどよぉ……」



 前にも軽く言ったことがあるかと思うが、今までは学年のマドンナ枠は水島一強だった。

 しかし凶暴さの抜けた西園寺と突如転校してきたエマの人気が一気に急上昇。 水島のすぐそばまで迫ってきてる勢いだというのだ。



「このままじゃ私、マドンナ枠どっちかに取られちゃうよおおぉ……」



 水島が頭を抱えながらその場でしゃがみこむ。



「ーー……で、オレにどうしろと?」


「ご主人様」


「なんだ」


「2人の……2人の人気が下がるように力を貸してください!!」



水島が頭を深く下げてオレに手を差し出す。



「むり」


「なんで!?」



 水島がウル目になりながらオレを見上げる。



「だってそれはオレにエマたちの好感度を下げろってことだろ? オレはそんなことはしたくない。 あ、ちなみに水島、お前が2人に何か手を加えた場合もオレはあの動画を流すからな」


「えええ!?」



 水島は動揺のあまりバランスを崩して扉にもたれかかる。



「じゃ、じゃあ福田く……ご主人様」


「なに」


「2人には一切手を出さないから、私をプロデュース……勝てるように育成してください!!」


「え」



 オレはまさかの発言にゴクリと唾を飲み込む。

 プロデュースとか多田たちのラブカツオーディション以来だぜ……。

 しかもその対象が現学年のマドンナだ。 

 これは魅力的でしかない。

 

 オレは水島をじっと見つめる。



「ご、ご主人様?」



 いやでも考えろ。

 こいつはなんだかんだでオレを脅し、三好や多田たちの評判を落とそうとしていた敵側の人間。

 今こそオレの奴隷になってはいるが、そこから勢いを取り戻してオレに反旗を翻すってことも……。


 ーー……仕方ない。

 

 オレはその場でパンパンと手を叩く。

 突然のことで目の前の水島は驚いているがそれは無視。



「美香、いるんだろ」



 そう声を上げると隣の個室からガタンと音がなる。



「ここにいる」


「きゃあっ!!」



 上を見上げると美香が隣の個室からひょっこりと顔を出していた。



「うん、お前のことだからこっそりついて来てると思ったよ」


「そう。 ダイキ、美香のことよくわかってる」



 オレは美香をオレたちのいる個室へと迎え入れ、話を続けることに。



「じゃあ結論を言うぞ水島」



 オレの言葉に水島がコクリと小さく頷く。



「まずだ。 エマたちに被害を及ぼした場合もそうだけど、もしお前がオレを貶めようとしてることを気づいた瞬間にもプロデュースは止める。 その後あの動画を全世界に流す」


「ーー……うん」


「ちなみにコソコソ動いても意味ないからな。 お前の行動は常にここにいる美香が監視してるものだと思っていい」


 

 オレが美香の肩をポンと叩くと美香は無表情のままオレを見上げる。



「なんで? 美香、他にもやりたいこといっぱいある」


「じゃあこうしよう。 美香、もしお前が水島の反逆行為を見つけたとして、その光景を動画に収めることができた暁には、水島のご主人様権限を全てお前に譲ろう」


「!!!」



 オレの言葉を聞いた美香の目がキラリと光る。



「美香、やるっ」


「よし、交渉成立だ」



 オレと美香はお互いに固い握手を交わし、見つめ合いながらコクリと頷く。



「美香、水島花江の行動全部見る。 学校中はもちろん放課後家に帰るまで全部」


「……ってことだ。 いいな水島」



 オレと美香の視線が同時に水島へ。



「ぜ……全部監視するの?」



 水島が顔を青ざめながらオレと美香を交互に見る。



「あぁ。 それくらいまだ信用できてないからな。 それが嫌ならプロデュースの話はナシだ。 お前1人でなんとかするしかないぞ」


「そ……そんな」



 水島はオレたちから視線を逸らすとゆっくりと目を瞑ってしばらく沈黙。

 その後ゆっくりと目を開けて口を開いた。



「ーー……わかった。 それでもいいから、ご主人様、プロデュースお願いします」



 ◆◇◆◇



 その日の放課後、オレと水島は誰もいなくなった教室に集合。

 話し合いをすることに。



「とりあえずだ。 エマと西園寺の魅力をとある人に頼んでいろんな人に聞いてもらったんだが、結果はこれだ」



 オレは学年のみんなが2人について思っている魅力の中で一番声が多かったことを記した紙を水島に渡す。

 それがこれだ。



 ===



 ・エマ:普段はクールなのに、たまに見せる姐御肌が魅力的。 それが女子には頼もしく見え、男子からすると同い年なのにお姉ちゃん的な感じにも見えて甘えたくなる。 そして美人。


 ・西園寺:表情が柔らかくて見てるだけで癒される。 もともとがリーダー気質なため、困った時には助けてくれる姐御肌。 少し前までは近寄りがたい存在だったが今ではそれがなくなり、男女ともに西園寺の魅力にどハマり。 そして美人。



 ===



「これが……2人の魅力」



 水島が紙に視線を向けながら小さく呟く。



「あぁ。 それで2人に共通してるのが『姐御肌』なんだ」


「姐御肌……」


「んで、ちなみにこれが水島に対する皆の声な」



 オレはもう一枚の紙を水島へ渡す。

 


「えっと……私の魅力は、『清楚で美人。 誰にでも優しい』……だけ!?」


「そうだ」


 

 水島は自分への評価がエマたちよりも劣っていることにショックを受けたのかオレの渡した紙をくしゃっと握りつぶして悔しそうに震えだす。



「じゃ、じゃあ私も2人みたいに姐御肌を前面に押し出して……!」


「いや待て水島」



 オレはそんな水島の震える手首を掴む。



「それではただの二番煎じだ。 そんな小技では2人には到底及ばない。 それよりは別の方法で攻め込んだ方がいいと思うんだ」


「別の……方法?」



 水島の言葉にオレは「うむ」と頷く。



「それは一体……」


「水島、あえて逆を行くってのはどうだ?」



 オレは水島の背後に回り込み、肩を回しながら耳元で囁く。



「ぎゃ……逆?」


「あぁ。 しかしそれは賭けだ。 諸刃の剣ともなり得る。 それを選択するかどうかは水島次第となるが……」


「やる! やりたい!! ご主人様……その方法を私に教えて!!」



 水島が両腕で挟むようにオレの腕を抱きしめ、オレを見上げながら必死に懇願する。

 クッソ……押し付けられてる場所がいい柔らかさしてやがるぜ。 どことは言わないけどな!



「わ、わかった。 ただオレはそれをやった結果どうなろうと知らんぞ。 なんたって賭けなんだからな」


「うん! それでも……それでもいいから!」


「よし。 水島、オレの提案する作戦……それは」


「それは?」



 オレは大きく息を吸い込む。



「水島! お前は今までの美人&清楚キャラを全て払拭!!! これからは可愛い&基本1人では何もできない妹キャラで攻めてみるんだあああああ!!!!」



「え……えええええええええ!?!?!?」




今回もお読みいただきありがとうございます! 

下の方に☆マークがありますのでよろしければ評価していってくださると嬉しいです!

感想やブックマークもお待ちしております♪


最近レビューを連続でいただけて乱舞している作者です!

今後も頑張って変態謳歌していくので、応援よろしくお願いしますっ!!

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― 新着の感想 ―
[一言] >可愛い&基本1人では何もできない妹キャラ それ女子からは蛇蝎の如く嫌われるやつゥ!!
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