172 まさに神の遣い!【挿絵有】
百七十二話 まさに神の遣い!
「ーー……あ、起きた?」
目を覚ますとそこにはエマの姿。
どうやらあれからオレは知らない間に眠ってしまっていたらしい。
ていうか……
「なんでお前巫女服なわけ?」
オレは冷静に巫女服を着たエマを指差す。
「ーー……」
「ーー……」
お互いに無言の時間がしばらく続く。
そしてーー……
「はあああああああああ!?!?」
こめかみ付近にイライラマークをたくさん付けたエマが大声を上げながらオレに顔を近づける。
「な、なんだよ」
「アンタが言ったからわざわざエマ、この格好してあげてるんでしょうがあああああ!!!!」
「え……えええええええ?」
エマには申し訳ないがまったくと言っていいほどに記憶がない。
まぁでもエマが自ら進んでわざわざオレの前で着るなんて考えられないし……ということは実際そうなのだろう。
オレは1人で納得した後に巫女服姿のエマの全身を舐め回すように観察する。
「な……なによ」
「いや、やっぱエマは巫女服似合ってんなーって」
「べべ別に嬉しくなんかないわよっ」
エマが少し顔を赤らめながら「ふんっ」とオレから目を逸らす。
まったく可愛いやつだぜ。
オレはそんなエマを微笑ましく思いながらもゆっくりと体を起こす。
「ん? どうしたの? 寝てないとダメじゃない」
「いや、トイレに」
「そう」
少しは寝て体力が回復したからなのだろうか……病院の待合室で座っていた時よりも体の調子が楽だ。
オレはそっと足をベッドから下ろし、腹筋に力を入れて立ち上がる。
しかし……
「うおおおっと……!」
自分的には結構回復したと思っていたのだが立とうとしてみて分かる……全然治ってねぇ!!
足にまったく踏ん張りが利かず、膝の力がガクンと抜ける。
「ちょ……ちょっとダイキっ」
すかさず側にいたエマがオレを支える。
「うわ……マジか」
「それはこっちのセリフよ。 ほら、トイレでしょ? 連れてってあげるから少しは自分で足を動かしなさい」
「す……すまない」
ちくしょう……トイレすらも1人で行けないとは。
オレはエマに支えられながらトイレまでの距離をいつもの4分の1程の歩幅でゆっくりと歩いて向かった。
「ほら、ついたわよ」
「あぁ……ありがとう」
オレは取っ手を下げてドアを開き中へと入る。
これは立ったままでは難しそうだな。 とりあえず座ってから……。
オレは崩れ落ちるかのように便座の上の座り込んで一息つく。
さて、ここでズボンを下ろしてすれば……。
そう思い自らのズボンに手をかけて一気に下ろそうと試みる。
「ーー……あれ」
なんということでしょう。
自らの体重が邪魔をしてズボンを脱ぐことができないではありませんか。
一瞬腰を浮かして脱げばいいと思う人もいるかもしれないが、今のオレにはそれをする踏ん張り力がない。
一体どうしたものか……。
「うーむ」
しばらく考え込んでいるとトイレの扉が数回叩かれる。
「ダイキ、終わった?」
エマだ。
エマが僅かに扉を開いてオレに声をかけてくる。
「いや、やっぱトイレいいわ」
「なんでよ」
「服が脱げねぇ」
「は?」
エマが扉の隙間からゆっくりと顔を覗かせる。
「え、アンタずっとそのまま座ってたの?」
「うん」
「なんでよ」
「だって脱げなくてさ。 どうしようか考えてたんだよ」
「だったら呼びなさいよまったく……」
エマは「はぁ……っ」と深いため息をつくとオレの目の前でしゃがみこむ。
「ーー……なんだ?」
「ほら、エマに抱きつくようにもたれかかりなさい」
「あ、はい」
オレは言われた通りにエマの首に腕を回して上から抱きつくように覆いかぶさる。
「立つわよ」
「はい」
ゆっくりとエマが自らの膝に手をついて「よっこいせ」という声とともに立ち上がる。
そしてーー……
「ーー……はい、これでできるでしょ」
「え」
エマの声とともに下半身が一気にスースーし始める。
「え……エマ?」
「もう、早く座りなさいよ! この体勢だと近いのよ!」
そう言うとエマは再びオレを便座び上に座らせる。
一体何が起こったのかと不思議に思ったオレは視線を下へと向けてみる。
「ーー……!!」
まさに下半身のみ脱皮!
ズボンどころかパンツまで一緒に足首まで脱がされているではありませんか!!
オレは訳がわからずエマを見上げると、エマは少し顔を赤らめながら「ふん」と鼻を鳴らしてトイレの外へ。
「終わって流したらまた呼びなさい」
ーー……マジか。
エマが至近距離で……至近距離で……うわあああああああああ!!!!
これによりオレの停止していた脳が一気にフル回転。
10パーセントにも満たない残存エネルギーの全てをとある1点に集中させていく。
どこだろうね、足の付け根カナ? 腹筋カナ?
ていうか……
ま……待ってくれ、脳。
今そうなっちゃったらその……出ないよ!?
脳にお願いした時にはもう遅い。
オレの体内の残存エネルギーは全てとある1点へ。
これによりオレはトイレが不可となり「あぁ、オワタ」状態になってしまう。
そして……
「ダイキ、静かなままだけど、もう終わった? 倒れてるとか勘弁してよね」
エマが軽くノックをして「入るわよ」と言いながら扉をゆっくりと開いて顔を覗き込む。
そしてオレと目が合った後に視線を下に。
「ーー……へ?」
あぁ……オワタ。
「なんでよおおおおおお!!!!」
一体エマが何を見たのか分からないがエマは手の平を下に向けて何かを遮るようにしながらオレに詰め寄ってくる。
……黒い虫でもいたのだろうか。
「ちょっとダイキ! アンタ実は元気でしたとか言わないわよね!?」
「ーー……そんなわけない。 ほら、おでこ触ってみてくれ。 なんだかんだでまたフラフラするぞ」
「じゃあなんでそんな元気なのよ!!!」
「えっと……なにが?」
「とぼけるな変態っ!!」
そう突っ込むとエマは顔をかなり赤らめながらその場でしゃがみこんでズボンやらパンツを一気に上へと押し上げる。
「ちょ……待ってくれエマ。 オレまだやってない……」
「知らないわよもう!!」
「そ……そうか。 分かった、じゃあすまないが頼む」
「……ってその状態でエマに覆いかぶさってこようとするなあああああ!!!」
ピトッ
何かがエマの鼻先に当たる。
……さっきエマが見たのであろう黒い虫かな?
「いーーやああああああああ!!!!!」
条件反射なのだろうな。
何かがエマの鼻先についたと同時にエマの拳がその対象に炸裂。
それにより何故かオレの意識がグラッと揺らぎ、オレはそのまま気を失ってしまったのだった。
◆◇◆◇
目を覚ますとベッドの上。
エマが「あ、起きた?」とオレに声をかける。
何やら変な夢を見ていたような気もするが……よく思い出せないな。
「えっと……あれ、オレは……」
「覚えてないなんて最低ね」
エマの顔が赤い……一体どうしたんだ?
ゆっくりと体を起こすと何故か下半身に激痛が走る。
「ん? んんん??」
「どうしたの?」
「いや……なんかちょっとある場所が痛いなって」
「へ……へぇ」
なんだ? エマの態度がなんか白々しいぞ。
まぁそんなことは置いといて……
「なぁエマ」
「なに?」
「なんでお前、巫女服着てんだ?」
オレが冷静に尋ねるとエマが「またぁ!?」とオレにツッコミを入れながら顔を近づける。
「はぁ……もういいわ。 なんとなく着てるだけよ。 なんとなく」
「そうか」
「そうなの」
「ーー……」
「ーー……」
なんかデジャブだなこの無言。
そんなことを考えているとオレはとあることが気になってしまう。
「なぁエマ」
「なに? トイレなら1人で行きなさいよ?」
「なんでトイレなんだよ、違うよ」
ーー……実際は結構行きたいけど。
エマのやつ、どうしてオレがトイレに行きたいことがわかったんだ?
オレがエマを見つめていると、エマが「それでなに?」と尋ねてくる。
「え、あぁごめん考え事してた。 それでな、エマ、その巫女服なんだけど……」
オレはゆっくりとエマに着ている巫女服を指差す。
「ん? 巫女服がどうしたの?」
「その……巫女服着てる時ってパンツ履いてんの?」
「ーー……は?」
エマが呆れた視線をオレに向けてくる。
「なんでそんなこと……」
「いいじゃないか気になったんだから。 巫女服の下って本来履かないんだっけ? それでどうなんだエマ。 エマは履いてるの履いてないの?」
軽く冗談交じりに尋ねてみるとエマは少し微笑みながら「はぁ……」と息を吐いて小さく呟く。
「まぁ……そうね。 エマだけ見るってのもなんか不公平よね」
「ん? なんか言ったか?」
「ううん、何も。 で、ダイキは知りたいの? エマがこの下にパンツ履いてるかどうか」
「はい」
そう答えるとエマは「ほんとダイキってエロガキよねぇ」と言いながらオレの目の前に立つと巫女服の赤い下半身部分……袴の膝あたりの部分を掴む。
そしてそれをゆっくりとたくし上げていきながら、こう囁いた。
「ほら、ちゃんと見なさいーー……」
巫女……まさに神の遣い。
神々しい姿がそこにあり、それを見たオレの身体は一気に回復したのであった。
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エマの巫女服ガチVERどうでしょう!
作者的にはいい感じに描けたと思うのですが!!