171 結構重症!?
百七十一話 結構重症!?
ベッドに染み付いたJK2人の香りを嗅いでいると枕元に置いていたスマートフォンのアラームが鳴る。
「ーー……え、もうそんな時間?」
一応病院へ行くために目覚ましをセットしていたのだが……あまりにも早すぎないか?
体感では10分くらいだったのだが実際は優香たちが家を出てから2時間程が経過している。
「仕方ない……行くか」
オレは少し重たい体をゆっくりと起こし、近くの総合病院へと足を運んだ。
◆◇◆◇
目的の病院は家から徒歩で10分程。
大した距離ではないのに結構足が震えているあたり、やはり熱があるんだなと実感させられる。
オレは受付に行き診察カードを渡すと、空いてる席を見つけたのでそこへ着席。
名前を呼ばれるまでゆっくりしておこうと一息ついた……その時だった。
「コホ、コホッ」
隣の席から割と大変そうな咳をしている人が。
ーー……しんどそうだな。
「コホッ、コホコホコホッ」
「ーー……」
「コホホホホホッ」
おおおおい、大丈夫かああああああ!?
流石に気になったオレは隣にいる人に視線を向ける。
するとーー……
「ーー……え、エマ?」
「あ、はい。 ーー……え、ダイキ?」
「「なんでここに?」」
◆◇◆◇
「え、なにエマ、お前も風邪ひいたのか」
オレの問いかけにエマは咳をしながら「そうみたい」と答える。
「もしかして……昨日のお姉ちゃんの風邪が移ったとか?」
「多分違う……と思う」
「なんで?」
「だって、優香さん……咳してなかったでしょ?」
「あー。 確かに」
「原因なら分かってるの」
エマがやっちまった的な表情をしながらガクリと肩を落として額に手を当てる。
「原因? なんなんだ?」
「エマとしたことが不覚だったわ。 まさかお風呂で寝ちゃうなんて……」
「ええええ……?」
聞くところによると、エマは昨日入浴中に珍しくウトウトしてしまいその場でしばらくの間熟睡。
エマの入浴タイムが長いことを不思議に思ったエルシィちゃんが覗きに来て眠っているエマを発見したらしい。
「まぁでも風邪で済んでよかったな。 エルシィちゃんが見つけてくれてなかったらお前最悪の場合溺れてたんじゃないか?」
「ありえるから怖いわね。 しばらくはエルシィの好きな食べ物を作ってあげることにするわ」
オレがエマの考えに「それがいいな」と同調していると、エマが「アンタは原因なんなの?」と尋ねてくる。
「いや、オレはほら、昨日も風邪だったから」
「嘘言わないの。 明らかに昨日よりもしんどそうじゃない。 差し詰め昨日は優香さんが心配だったから休んだんじゃないの?」
エマが「ふふっ」と笑いながらオレの顔を覗き込む。
「エマお前……勘がいいな」
「アンタが分かりやすい性格してるだけよ。 このシスコン」
「お前が言うな」
「ふふ……確かに」
心なしか1人でじっとしているよりも気が紛れるからありがたいぜ。
オレはその後もエマと名前が呼ばれるまで他愛のない話で盛り上がっていたのだが……
「うぅぅ……さむっ!」
突然悪寒を感じたオレはブルブルと身震いをする。
「ダイキ、大丈夫?」
エマがそんなオレの背中をさすりながら心配そうに尋ねる。
「あ……あぁ。 一瞬ゾクゾクしただけだ。 問題ない」
「いや問題ありまくりでしょ」
「なんでだよ」
「ダイキ、自分では気づいてないかもしれないけどさ、さっきからかなり身体が震えてるわよ」
「え……あ、本当だ」
エマに言われてやっと気づく。
オレの身体、かなり細かく振動しているぞ。
「熱上がってるんじゃないの?」
そう言いながらエマがオレの額に手を当てる。
「……うわ、すでに結構熱いじゃない。 よくそんな普通に座っていられるわね」
「まぁあれだ……エマが美人だからそこに焦点が行くからな。 視界が固定されてるから体もブレないんだろう」
「んむむ、やっぱり熱ヤバそうね。 アンタ自分が何言ってるのか分かってんの?」
「え、オレ今なんか言ったっけ」
「はぁ……まったくこのお子ちゃまは」
エマは小さくため息をつくとオレの体をグイッと自身の方へと寄りかからせる。
「んあ? エマ?」
「名前呼ばれたら教えてあげるから、それまではエマにもたれ掛かって寝てなさい。 先にエマが呼ばれた場合はゴメンだけどちょっと我慢してるのよ」
「え……あ、はい」
今のオレの脳ではあんまりエマが何言ってるのか理解が追いつかないが、とりあえずはこのままでいいってことだよな?
オレはそのままエマの肩にもたれながらゆっくりと目を瞑る。
あぁ……さっきまでJK2人の香りを嗅いでいたからよく分かる……エマはエマ独特の安らぎの香りがするなぁ。
こうしてオレの意識はエマの香りに包まれながら遠のいていったのだった。
それからどれくらい経ったのだろう。
オレはエマに体を揺すられて目を覚ます。
「ダイキ、呼ばれたわよ」
「え、あぁ……うん」
「大丈夫? 歩ける? あれだったらエマもついてってあげようか?」
「あぁ……うん」
その後のことはあまり覚えてはいない。
オレはエマの付き添いで診察や薬局での薬の受け渡しを済ませたらしく、気づいた時にはマンションの目の前に立っていた。
「ーー……あれ、いつの間にオレ」
「アンタ本当に覚えてないのね」
「え」
「タクシーでここまで帰ってきたの」
「そ、そうか」
「そう。 てかダイキ、1人で平気なの?」
エマが心配そうな表情で再びオレのおでこに手を添えて「あっつ」と呟く。
「どうする? 優香さんに連絡しよっか?」
「ーー……いや、いい」
「なんでよ」
「1人で……大丈夫。 てか、エマは平気なのか?」
オレが尋ねるとエマは「もちろんよ」と言いながら腰に手を添える。
「エマは咳が多めの微熱だったからね。 薬飲んだら一気に楽になっちゃった」
「そうか……じゃあオレも……」
そう言いながらオレはオレの腕にぶら下げられていた薬の入った袋を漁る。
「うわあああ、ダイキ、だめ! まーて!!」
突然エマがオレの腕を掴んで薬の袋を奪い取る。
「な……何すんだよ」
「もうタクシーが来るまでの間にダイキも飲んでんの!」
「え」
「だから次飲むのは早くても4時間後!」
「ーー……なるほど」
その後もオレはフラフラしたままだったのでエマの介護のもとなんとか家の玄関の前までたどり着く。
「すまん、助かったぞエマ。 ここでいい」
「もう、ベッドまで連れてってあげるから変にカッコつけないの!」
オレはエマに連れられながら自室のベッドに横になる。
「とりあえず飲み物とコップはここに置いてるから。 それとーー……」
何かエマが色々と言ってるな。
頑張ってエマの声に全神経を研ぎ澄ますと、なんとか最後のエマの言葉だけが耳に入ってくる。
「それで……あとエマにやっといてほしいこととかある?」
「やってほしい……こと?」
「そうそう」
やってほしいことか……そうだな。
オレはほとんど動きを止めた脳を必死に動かして考える。
そしてでてきた答えがこれだった。
「なぁエマ……」
「なに?」
「巫女服着てくれ」
「ーー……は?」
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エマちゃん!! 巫女服!! 前回が簡単がきだったこともあるので、次回ガチ描きしますよ!!
作者頑張るっ!!




