169 天然炸裂やっぱり天使!【挿絵有】
百六十九話 天然炸裂やっぱり天使!
優香と一緒にいるためにズル休みをした夕方。
オレがリビングのソファーでのんびりくつろいでいるとインターホンが1回鳴る。
「ん?」
オレは一体誰だろうと思いながら玄関へと向かい扉を開く。
「ーー……おぉエマ。 それと……結城さん!?」
玄関を開けると大量の食料品を詰め込んだ買い物袋を持っているエマと、その後ろから心配そうにこちらの様子を覗き込んでいる結城の姿。
「なんか連絡するのも面倒だったし、買ってきたわよ」
エマが「はいどうぞ」とオレに買い物袋を差し出す。
「あぁ……ありがとう」
中を覗き込むとスポーツドリンクや果物、ゼリー。
そして……
「ーー……カステラ?」
オレは頭上にはてなマークを浮かべながらカステラの入ったパッケージを取り出す。
「えっとエマ、なんでカステラなんだ?」
「え、知らないんだダイキ」
エマはオレの手からそれを取ると、まるでどこぞの時代劇でよく見る印籠のような持ち方をして「ふふん」と鼻を鳴らす。
「え、結城さんはなんでカステラか分かる?」
「ううん、私も……わからない」
「カステラはね、風邪で弱ってる体に一番効くスーパーフードなの!!」
「「スーパーフード?」」
オレと結城が同時に尋ねるとエマは「そうそう」と自慢げに数回頷く。
「カステラって卵や砂糖をめちゃめちゃ使ってるでしょ? 高タンパクで高カロリー! まさに弱ってる体が欲しがってるもの全部入りなのよ! エマがちっちゃい時に、よくママが買ってきてくれたんだ!」
エマが少し懐かしそうな表情をしてカステラのパッケージを眺める。
「へぇー。 そうなんだ」
「そうよ! ちょっと胃に重たいけど、効果は抜群なんだから!」
そう言うとエマは早速優香のところへ持って行こうと家の中へ。
オレもそれに続く。
「ーー……すごいなぁ」
結城の声がしたので振り返ってみると、結城が口に指を当てながらエマの持つカステラを眺めている。
「結城さん? どうしたの?」
「う、うん。 エマって出身フランスだよね。 その……カステラって和菓子なのに、フランスにも売ってるんだなーって」
ーー……あ。
オレは静かに視線をエマへと移す。
その時のエマの表情はそれはそれは青く、額からは大量の汗を垂れ流していたのだった。
◆◇◆◇
「きゃあああああ!! 優香さん可愛いーーー!!!」
リビングでお皿に乗せたカステラを優香の休んでいるオレの部屋へと持っていったエマが歓喜の雄叫びをあげる。
あ、優香いつの間にか起きてたんだ。
それにしてもクシャミがあんまり飛ばなくて助かったぜ……。
結城と一緒にエマのいるオレの部屋へと向かうと、優香がちょうどエマからカステラを受け取ったところ。
エマはそんな優香の着ている服を目を輝かせながらマジマジと眺めていた。
……ふふ、エマよ。 お前もその服が可愛いと思うんだな。
いい感性してんじゃねえか。
「あー。 優香さんのそんな可愛い服見てたら、なんだかエマもハロウィンの時に着た巫女服また着たくなっちゃったなー」
エマが小さく呟く。
「ーー……!?!?」
なん……だと……!?
オレの熱い視線に気づいたエマがオレの方を振り返る。
「どうしたのダイキ」
「いや……エマ、着たいならまた着ればいいじゃないか」
「なんでそうなるのよ。 別に今はハロウィンってわけでもないんだしさ」
そう言うとエマは小さく息を吐きながら「よっこいせ」と膝に手をついて立ち上がる。
「じゃあ優香さん、お大事に」
「うん、ありがとうねエマちゃん」
優香がヒラヒラとエマに手を振る。
「え、エマ。 もう帰るのか?」
「うん。 ほら、移っちゃうかもよって言ったのダイキじゃない。 それにエマ、エルシィのお世話もあるから」
「あ、そうか。 そうだったな」
「そういうこと。 まぁなんかあったら呼びなさいよ」
「おう、ありがとう」
こうしてエマはすぐに帰宅。
オレはエマを玄関まで見送った後、再び優香と結城のいるオレの部屋へと向かった。
「ーー……あれ、結城さんは?」
部屋に戻ると結城の姿がないことに気づく。
「あ、桜子ちゃん?」
「トイレかな」
そう尋ねると優香は首を左右にふる。
「桜子ちゃんならもうちょっとしたら戻ってくると思うよ」
「え?」
オレは首を傾げながらも、まぁ家の中にいるなら大丈夫かと思い優香の隣へ。
そこで優香からカステラをおすそ分けしてもらい食べていると、廊下からパタパタと足音が聞こえてきた。
「あ、戻ってきたね」
優香が視線を廊下へと向ける。
「一体どこに行ってたんだろ……って、ええええええ!?!?!?」
廊下から現れた結城の姿にオレは驚きのあまり声を出す。
だって仕方ないじゃないか……オレの目の前にいる結城が……結城があああああ!!!!
「うん、やっぱり桜子ちゃん、それ似合ってるね」
優香が優しく微笑みながら結城を眺める。
「そ、そうかな」
「私、桜子ちゃんのその姿みたら癒されてなんか元気出てきたもん」
「だ……だったらよかった」
結城が少し顔を赤らめながらニコリと微笑む。
あ、あぁそうだ、結城がどんな姿をしているか伝えていなかったな。
結城は今している格好、それは……
ザ☆園児服!!
そう、ハロウィンの時に結城が仮装していたものだ!
でも一体なんで急に……。
「なんかエマちゃんの言葉を聞いて桜子ちゃんもまた着たくなったんだって」
オレの考えを予測した優香が後ろから説明する。
「そ、そうなの?」
「うん。 桜子ちゃんあの服似合ってたし、お姉ちゃんもそれ見たら癒されると思ったからさ、保管してた場所教えたんだ」
「な……なるほど」
実に……ナイスです。
オレが見とれていると結城は「それじゃあ……」と呟きながらリビングへ。
「え?」
意味がわからず結城の後をついて行くと結城は園児服のままキッチンに立つ。
「ゆ、結城さん? なんでキッチン?」
そう尋ねると結城はエマが買ってきてくれた食材を一旦冷蔵庫へ。
その後にオレに振り返り小さく口を開く。
「か、風邪の時は、消化のいいもの。 だから私、優香さんと福田くんのご飯作ってから帰るね」
「ーー……え」
結城はその後テキパキと必要そうな材料を取り出して料理を開始する。
「えっと……なんかありがとう」
「ううん、私こそ……いつもお世話になっちゃって、これくらいしかその……出来ないけど。 福田くんも……風邪、なんでしょ? 休んでていいよ?」
あああ!!! 心が!!! 心が痛い!!!
オレはこの通りスーパー元気なのに!!!
ただここで「いや実は元気なんです」とか言った日には結城からの好感度が一気に落ちかねない……ここは大人しくしておくしかなさそうだ。
しかしなんだかんだで園児服VERの結城を見ていたいという欲望も大きかったのでオレはソファーに座りながら結城の料理姿を観察。
キッチンから漂ってくる食欲をそそる香りとともに、ママみ溢れる結城の姿を堪能したのであった。
「じゃあその……私、帰るね」
結城が「お大事に」という言葉とともにリビングを出て玄関へ。
オレはそれを見送っていたのだが……
「あ、あのさ、結城さん」
「?」
靴に履き替えた結城が「どうしたの?」とオレの方を振り返る。
「あの……実に言いにくいのですが……」
「なに?」
「その園児服のままで帰るの?」
「あっ」
な……なんて、なんて可愛い天然ちゃんなんだ結城いいいいい!!!!
可愛すぎるよおおおお!!! 好きじゃあああああああああ!!!!
その後結城はちゃんと制服に着替え、ランドセルを背負いながら帰宅。
オレと優香はそんな結城が作ってくれたご飯を癒されながら食べていると、再び誰かが訪ねてきたのかインターホンが鳴る。
「あれ、またお客さんかな」
優香が視線を玄関へ。
「あ、オレ行くよ」
今度は誰だろうと思い玄関へと向かい扉を開ける。
すると……
「ーー……あ、ダイキ。 お邪魔すんねーー」
「ほ、星さん!? どうしたの!?」
いつもと違いどんよりオーラを全身に纏った制服姿のギャルJK星がオレの頭をポンポンと叩きながらリビングへ。
リビングに入るやいなや「はぁーーー……」と深いため息をつきながらソファーに力なく座り込む。
「み、美咲!? どうしたの!?」
「あーー、ゆーちゃん元気そうだねぇーー。 よかったべーー」
「そんな美咲が元気そうじゃないじゃない! 何かあったの!?」
優香がソファーの上で抜け殻状態のギャルJK星のもとへ駆け寄る。
「いやさー、ほんとならもうちょい早くお見舞い来れたんだけどさー、遅くなってごめんねー」
「用事でも出来た?」
優香の問いかけにギャルJK星が力なく頷く。
「そうさーー。 ちょっと警察署に呼ばれて急遽行ってたのさぁーー」
「「ええええええええええ!?!?!?!?」」
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結城ちゃんの園児服姿は癒されます……。
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