168 冬なのに心霊現象!?
百六十八話 冬なのに心霊現象!?
ズル休みをした日のお昼前。
白鳥パンツを履いたオレは優香の目の前に立ち、こう宣言する。
「お姉ちゃん! 今日は全部オレがやるから、お姉ちゃんは何もしなくて大丈夫!!」
これを優香に言うに至った経緯がこちら!
===
「ダイキ、朝ごはん作るけど何食べたい?」
え。
「ダイキ、お姉ちゃん洗濯物干してくるからお湯が沸いたら教えて」
あの。
「ダイキ、今から窓開けて掃除機かけるから部屋に戻ってた方がいいよ」
えっと……。
「ダイキ、お昼ご飯ーー……」
うわあああああああ!!!!
===
オレの宣言を受けた優香が目をパチクリさせながらオレを見つめる。
「えっとダイキ、なんで?」
「いやいやお姉ちゃん、なんでじゃないよ。 お姉ちゃん今朝に飲んだ薬が効いてるだけで病人なんだから。 だから部屋で……いや、シーツとか今洗ってるのはオレが悪かったけど、オレの部屋のベッドでいいから休んでてよ」
「ダイキ……」
「オレはお姉ちゃんに早く元気になってもらいたいの! お昼ご飯は適当に食べとくからさ。 だってお姉ちゃん、お昼ご飯作っても食欲ないからお姉ちゃん食べないんでしょ?」
オレの問いかけに優香は「……うん」と小さく頷く。
「だったらさ、ほら。 オレのことしてくれるのは嬉しいけど、それはお姉ちゃんが元気になってからがいいな!」
「え、でもダイキ……」
「そうだ! じゃあ今日お姉ちゃんはオレの妹ね!!」
オレはドヤ顔で優香を指差す。
「い、妹!? お姉ちゃんが!?」
「そうそう妹! 今日はオレがお兄ちゃんだから、妹で風邪のお姉ちゃんはオレの部屋で寝とくの! いい!?」
「ーー……うん」
こうしてオレは優香の背中を押しながらオレの部屋へと誘導。
優香をベッドに寝かせると上から優しく布団をかける。
「よしっ」
これで優香がゆっくりしてくれるぜ。
安心したオレはとりあえずカップラーメンでも食べようかなとリビングへと体を向ける。
「だ、ダイキ」
「ん?」
ベッドから優香が名前を呼んだので振り返る。
「どうしたの?」
「その……そのさ」
「?」
「お昼食べ終わったら……一緒にいてね」
尊死。
◆◇◆◇
優香の要望通りに速攻でお昼を食べて部屋に戻ってきたオレはベッドにもたれるように座り込む。
「ダイキ……中、入る?」
優香が布団を開けてオレを誘う。
「いや……遠慮しとこうかな」
「なんで!?」
あーーもう!! そのウルっとした目、可愛いなぁ!!
オレだって本心はめちゃめちゃ入りたいよ!!
だけど……だけどおおおおお!!!!
「だってお姉ちゃん、オレ今これだよ?」
オレは履いているパンツからそそり立つ相棒の顔を指差す。
「え、いいじゃないそのパンツでも。 お姉ちゃんは当たっても気にしないよ?」
「いえ、オレがやばいのです!」
「!!」
オレの相棒・白鳥ヘッドと目が合った優香の顔が一気に赤く染まり出す。
「だ……ダイキ、大丈夫だよ。 ほら、だってもうダイキは朝にお姉ちゃんのベッドで……あと、シャワー1回目浴びてからも出しちゃってたじゃない!」
クシャミをね。
「そういうのってほら、お姉ちゃん詳しくは分からないけど……出すたびに疲れちゃうんでしょ!?」
うん、クシャミってめっちゃ筋肉使うからね。
ちなみにオレ、なんとなく調べてみたんだけど、クシャミって『呼吸筋』ってところから『喉頭筋』ってところを通って『顔面筋』ってところに伝わって起こるらしいぞ!
ていうか優香……どれだけオレと一緒に寝たいんだよ。
うん、本来ならオレだってもうクシャミが起こるとは思わないさ。
しかし……しかしだな。
「お姉ちゃん」
「ダイキ?」
「お姉ちゃんが可愛いすぎるからオレはもしかしたらまた……」
「!!」
オレの相棒・白鳥ヘッドの目がギラリと光る。
「だからお姉ちゃん、残念だけど今回は……」
「ーー……そうなの?」
「うん」
「でもダイキ」
「なに?」
「お姉ちゃん、今、ダイキの妹なんだよね?」
優香が寝そべった状態でオレをウルウルとした瞳で見つめる。
「そ、そうだけど。 それがなにか?」
オレがそんな優香の瞳に釘付けになったその瞬間、衝撃の一言が優香の口から放たれた。
「お兄ちゃん、ゆーちゃんが寝るまででいいから隣で一緒に寝てほしいな」
!?!?!?!?!?!?
ゴロゴロゴロ!!! ドオーーーーン!!! バキバキバキ!!! パオーーーーン!!!
まさに天変地異!!!
あの表情であの甘えたボイス……からのそこから布団を上げて誘ってくる行為!!
ついに……ついに完全に優香が心の底からデレた瞬間だああああああ!!
こんなこと……こんなことされたらオレは……オレはああああああ!!!!
「いっきまああーーーすっ!!!」
理性!? そんなもの知らんなぁ!!
オレは優香めがけてベッドにローリングダイブ!
優香の待つ楽園へ……いざ入場!!!
こうしてオレは優香が眠りにつくまでという条件で、優香の隣で再び天国を味わうこととなったのだが……
「ちょ……やん、ダイキ。 白鳥さん動かさないでよ」
優香がくすぐったそうに笑いながらオレに顔を近づける。
「え?」
「ダイキのパンツの白鳥さんがお姉ちゃんのパーカーを下から捲ってくるの。 あ、ほらまたー」
優香は「いたずらしないでよー」と笑っているが、違う……違うぞ。
オレは下半身なんぞ動かしてはいない。
一体なぜ。
ーー……ハッ!!
そう言われてみればと自分の下半身の違和感に気づく。
あれ、白鳥の感覚なくね!?
意味がわからず優香の方に向けている体を一旦逆へ。
ベッドの下を覗き込んでみる。
「!?!?!?」
なんということでしょう!!
ベッドの下にはさっきまで履いていたオレの相棒……は白鳥パンツがいるではありませんか!!
もしかして……優香のところにローリングダイブした時に白鳥の首が引っかかって脱げた!?
てことはさっき優香のパーカーを捲っていたのは……
ゴクリ。
「ダイキ、どうしたの?」
優香が甘えた声でオレの背中を優しく摩る。
「え、あ、いや。 なんでもない」
これは……これは優香にベッドの下を見られるわけにはいかない!!
オレは急いで体を反転。
再び優香に正面を向ける。
「きゃあっ! だからもうダイキ、捲っちゃダメだってー。 白鳥さんがパンツに当たってるからー」
ーー……!!
ま……まったく、心霊現象って冬にも起きるもんなんだな。
白鳥パンツがないのに優香のパーカーは捲られ、それだけで終わらずにパンツにまで当たっているなんて。
白鳥さんのの亡霊なのカナ!?
それにしてもあれだ。
布団の外は寒くて布団の中は色々とかなり熱い……なんかムズムズしてきたぞ、寒暖差アレルギーなのだろうか。
「あー、もうダイキ、お姉ちゃんがそこまで言っても続けちゃうんだー。 だったらお姉ちゃんにも考えがあるもんねー」
優香が小さく唇を尖らせながらオレの頬を突く。
そして……
「言うことを聞かない白鳥さんはこうしてやるー!」
そう言うと優香は突然足を開き、腰を少し前に突き出すと亡霊を更に奥へと誘導。
亡霊が足の間に迷い込んで来たあたりで素早く足を閉じ、柔らかくも温かな太ももの間でそれを封じ込める。
ヒィイイイイイアアアアアアアア!!!!
まさにこれは闇属性の亡霊の弱点とも言える光属性の攻撃!!
亡霊がオレに憑依しているとでもいうのだろうか!
優香の太ももに挟まれたヤツの感情がオレの脳へと直接リンク! 声にならない叫びが脳内で大音量で響き渡る。
優香は「ふふん、これでもういたずらできないでしょー」と優越感に浸りながら笑いかけていたが……
ハーーックション!!!
ーー……あ、なんか除霊されたっぽいぞ。
光属性……おそるべし。
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姉弟の愛……それは闇をも光に葬り去る!!