167 たまに出てくるあいつ【挿絵有】
百六十七話 たまに出てくるアイツ
急遽学校をズル休みすることになり優香の隣でいつの間にか眠りに落ちていたオレは僅かな振動を感じて目を覚ます。
「あ、ダイキ……ごめん、起こしちゃった?」
視線を向けると隣で優香がしゃがみ込んでこちらを見ている。
「?」
一体どうしたのだろうと感じながら優香を見ていると、何故か優香視線はオレの下半身へ。
「その……シャワーでも浴びてきたら?」
「え?」
オレはゆっくりと優香の指差した先を視線で追っていく。
そして……
「あ」
◆◇◆◇
「本当に申し訳ありませんでしたぁ!!」
ベッドから降りたオレは床に頭をつけて優香に土下座をする。
そうだった……オレ、優香の内太ももやら何やらの刺激を受けてクシャミしたまま眠ってしまったんだった。
優香のガッチリホールドから抜け出せなくて仕方なくそのまま寝ることにしたんだけど、やはり……やはりバレてしまったかああああああ!!!!
「もう、そんなに謝らなくて大丈夫だから」
オレがドスドスと床に頭をたたきつけて謝罪していると優香がオレの土下座を制止してくる。
「いや、でもその……臭いとか!」
そう、優香の布団からは優香の甘い香りよりもオレのクシャミの臭いが充満……これは謝っても謝りきれねえよ!!
オレは優香の制止を振り切って再び頭を下げようと試みる。
「だから大丈夫だって。 ちょうどお姉ちゃんも結構汗かいちゃってたからシーツごと洗おうと思ってたし」
「ーー……え、汗?」
「うん汗。 え、どうしたの?」
優香が首を傾げながら純粋な視線をオレに向ける。
ーー……ハッ!!
そうだよな、『汗』って普通その『汗』だよなアハハハ!!
オレとしたことが西園寺や多田のせいで勘違いしてしまっていたぜ。
オレは何とか笑って誤魔化しながら優香の部屋を出て脱衣所へ。
パジャマやパンツを一気に洗濯機の中へとぶち込み不快な匂いをシャワーで洗い流したのだった。
それにしてもあれだな。 優香、薬が効いたみたいで元気そうだった。
シンプルに安心したぜ。
◆◇◆◇
シャワーを浴び終えてすぐ。
「あれ、パンツないな」
もしかしてリビングに畳んだままだったのかな的なことを考えていると、そんなタイミングでインターホンが鳴る。
「あ、お姉ちゃん。 オレ行くから」
そう優香に声をかけたオレはパンツを履かないままジャージに着替えてそのまま玄関へ。
一体誰だろうと思いながら玄関の扉を開けた。
「は!? ちょっとダイキ、何でアンタまだ部屋着なのよ」
そこにいたのは金髪姉妹のエマとエルシィちゃん。
エマが信じられないといった表情をしながらオレの姿をマジマジと見る。
「だいき、はーよぉー♪」
金髪天使エルシィちゃんが癒しマックスの微笑みをオレに向けながら元気よく両手を上げる。
「おはようエルシィちゃん」
「じゃないでしょ!! 早く着替えなさいよ! 遅刻するわよ!?」
オレとエルシィちゃんの間に割って入ったエマがスマートフォンを取り出して時間を確認。
「待っててあげるから急げ」とオレを急かし出す。
あー、そういやエマには言ってなかったな。
「あのなエマ、今日オレは休む」
「はぁ!?」
エマが目をパチクリさせながら口を開く。
「なんで? 風邪?」
「まぁそんなところだ」
「優香さんは?」
「お姉ちゃんはオレより風邪だ。 だから2人で休む!」
オレは腕を組みながら堂々と胸を張る。
「いや、アンタめちゃめちゃ元気じゃないのよ。 それで優香さんは……大丈夫なの?」
エマは心配そうな顔でオレの後ろを覗き込む。
「え、なに心配してくれてんの?」
「優香さんはね。 だって優香さん、エマが倒れた時に色々よくしてくれてたし……。 あれだったらエマ、学校休んででも優香さんの看病を……!」
エマが「ちょっとどいて」とオレの体を押しながら中へ。
オレはそれを必死で防ぐ。
だってほら、優香の部屋の臭いが今は……!
「ちょっとどきなさいよダイキ」
「いやいやエマ、マジでお前まで移っちゃったらどうすんだよ」
「その時はその時よ。 優香さんが良くなるならエマは……」
「そしたらエルシィちゃんにも移るかもしれないぞ?」
「あっ……」
オレの言葉にエマは「そうかエルシィ……」と呟きながら動きを止め、おとなしく玄関の外へ。
「ーー……てことだからエマ。 あ、休むことは三好に伝えてるからそこは大丈夫だ」
「はぁ……。 分かったわ。 帰りになにか食べやすいものでも買ってきてあげる。 また連絡するわね」
「うんありがとう」
そう言うとエマは「ゆっくり休むのよ」と言い残しエルシィちゃんの手を繋ぎながら学校へ向かおうと体の向きを変えた……その時だった。
「だいきー、ここ、なに入れてうー?」
エルシィちゃんがオレの下半身を指差したのでオレはそれを視線で追っていく。
するとその先には……
「ハッ!!」
なんと言うことでしょう。
何も卑猥なことは起きてはいませんが、『興奮のオーラ』というオレのスキルが展開されているではありませんか。
おそらくはあれだ……エマが中に入ろうとしてきた時に身体が当たってきてたのが原因なのだろう。
「ちょ……ダイキアンタ!!!」
エマが顔を真っ赤にさせながらオレを見る。
や、やべえぞ!! このまま変なことをエルシィちゃんに言ったら確実に殺される!!!
「え、えっとエルシィちゃん。 スマホ! スマホが入ってるんだよ!!」
オレは額から大量の汗をかきながらエルシィちゃんに説明する。
そうだよな、オレからしたらスマートフォン並みになくては困るもの……『スキル』だし、あながち間違ってはいない!
エマもエルシィちゃんの隣で「そうそうスマホ、スマホよね」と、くどい程にオレの説明に同調して頷いている。
「ふーん、しゅまほー?」
エルシィちゃんは「ほへー」と納得したのかオレのスマホの入った下半身を凝視。
そしてそこで終わらないのが無垢な天使だった。
「いーなー、しゅまほ! エマおねーたん、エッチーも、しゅまほ、ほしいなー!」
そう言うとエルシィちゃんはエマを見上げながらオレのスマホをポンポン叩く。
「「!?!?!?」」
それはまさにシンクロ。
寒さのせいカナ? オレが盛大ににクシャミをすると同時にエマの鉄拳がオレの顔面に飛んでくる。
「ぶべあっ!!」
「だ、ダイキアンタ……変態!! ほら、早く行かないと遅刻するよエルシィ!」
「しゅまほー」
エマはオレを睨みつけた後にエルシィちゃんを抱きかかえながらその場を後に。
そしてこれは階段の方から聞こえてきた声なのだが……
「エマおねーたん」
「なに?」
「エッチーの手、なんかついてる。 ほらぁ」
「いいいやああああああああ!!!!」
エマ……すまんっ!!
◆◇◆◇
「エマちゃんたち、大丈夫だった?」
再び脱衣所へ向かおうとしていると優香の部屋から声が。
オレはとりあえずそのまま優香の部屋へ。
「って、ええええええ!?」
中に入るとオレは絶叫。
だってそこには……
「えへへ……その、どうかな」
そこには昨日オレがチョイスした服に身を包んだ優香の姿。
それではお披露目するとしましょう!
オレが選んだ優香の衣装を!!
オレが優香のために選んだ服……それは黄色生地の猫ちゃんフードパーカーだったのだ!!
しかもちゃんと耳と尻尾の付いている贅沢な一品!!
一度こういったものを着てる姿を見てみたかったんだよな。
やはり思った通り……可愛い!!
ていうか……ムムッ!!
オレの視線はすぐに胸元へ。
優香よ、まだ風邪であまり脳が働いていないんだな。
胸元のファスナーが上がりきっておらず胸元の下の方で止まっている。 なので貴重な優香のブラ姿が目の前に。
これは……最高だぜええええええ!!!
おそらくこれでまたオレのスキルが発動したんだろうな。
優香の視線が少し下へと降ろされて「あっ」と少し顔を赤らめながらファスナーを上まで上げる。
「ていうかダイキ、またやっちゃったの?」
優香が驚きの表情をオレに向ける。
うん、クシャミをね。
いやー寒くてかなわんよ。
「本当に申し訳ございませんでした。 洗濯はまとめてやっておきます」
オレは少し前かがみになりながら優香にお辞儀。
すると優香が「そういえば……」と唇に指を当てる。
「あのさダイキ、パンツあった?」
「え、いや。 なかったから今履いてないんだけど」
そう答えると優香は「あちゃー」と額に手を当てる。
「どうしたの?」
「あのね、ダイキのパンツ、結構使い込んでて薄くなってたから一昨日にほとんど捨てちゃったんだよね」
え
「だからさ、洗濯して乾かさないともうないの」
え
「じゃ……じゃあどうすれば……」
オレが声を震わせながら優香に尋ねると、優香が「あ、そうだ」と両手を叩く。
「ダイキ、あったじゃないまだ……パンツ!」
「え? それは一体……」
「ダイキがシャワー浴びてる間に脱衣所置いとくよ」
「あ、はい。 お願いします」
オレは再度シャワーへ。
そしてシャワー後オレの視界に入ってきたものは……
「いや、なんとなくそう思ってたけどお前かよ!!!」
たまに出てくるよなぁお前……白鳥パンツ!!
今回もお読みいただきありがとうございます!
下の方に☆マークがありますのでよろしければ評価していってくださると嬉しいです!
感想やブックマークもお待ちしております♪
このところ冷え込んできましたが、皆さんはクシャミ……大丈夫ですか?笑
エルシィちゃんのポンポン……ニヤァ!!