166 最終的にオレの土下座事案!?
百六十六話 最終的にオレの土下座事案!?
「きゃああああああっ!!!」
!!
それは目覚ましが鳴るにはまだかなり早く、外も真っ暗な時間帯。
オレは突然の悲鳴によって飛び起きる。
「お……おぉ!?」
オレが上半身を起こしてすぐ……部屋の扉が勢いよく開かれ、優香が中へ。
「お……お姉ちゃん!?」
「み、見てダイキ……起きたら枕元にダイキが買ってくれたブレスレット……が……!」
優香は顔を真っ赤にさせながらオレにブレスレットを見せつける。
その後まだ治りきっていないのだろう、足の力が一気に抜けたようでその場でフラーっと倒れこむ。
「ちょ、ちょちょちょちょ!! お姉ちゃん!!」
慌てて駆け寄り身体を支えるとまだ優香の身体は結構熱い。
「大丈夫?」と声をかけながら顔を覗き込むと、優香がぐすりと泣き出した。
「え!?」
「ごめん……ごめんなさいダイキ……。 嫌いにならないで……」
優香が目から涙を流しながらオレの胸に顔を埋める。
「その、えっと……どうして?」
「だってお姉ちゃん……ダイキの前であんな姿……!」
あー、昨日のあれか。
確かに最初はめちゃくちゃびっくりしたぜ。
昨日の件を思い出しながら優香の手元に視線を移すと、優香はブレスレットをギュッと握りしめている。
……これはガチで気にしてるパターンっぽいぞ。
とりあえず安心させてあげた方がいいのかもしれないな。
「いや、お姉ちゃん、オレ別にそこまで気にしてないよ」
オレは「それがどうしたの?」的な軽さで優香に声をかける。
すると優香はゆっくりとオレの顔を見上げる。
「なんていうかな……その、むしろカッコよかったなって思ったけど」
「ーー……え?」
優香は目から溢れる涙を指で拭うと「ほんと?」と弱々しく尋ねる。
「本当だよ本当。 なんでそんなことでオレがいちいち嘘つかなくちゃいけないのさ」
オレが優香に笑いかけたところで背中がブルっと震える。
なんだかんだでまだ太陽も出ておらず気温も低い……優香が触れてる箇所はかなり温かいがそこ以外は極寒だ。
このままじゃ優香の症状が余計に悪化しちゃうかもしれないぞ。
オレは未だオレの顔をじっと見つめている優香にとりあえず部屋に戻ってベッドに行こうと提案。
足元のおぼつかない身体を支えながら優香の部屋へと向かった。
ーー……てかあれだな。
優香、1日お風呂に入ってないのになんでこんなにも甘い香りが持続するんだ?
もしかすると優香に限らず、女子はみんなそうなのだろうか。
◆◇◆◇
優香をベッドに寝かせると、オレは「ちょっと待ってて」と言い残して昨夜ギャルJK星が買ってきてくれた今の優香に一番最適な風邪薬と水を持ってきてそれを渡す。
「はいこれ」
「あ、ありがとダイキ」
優香はそれを受け取って飲むと、再び視線をオレの方へ。
未だ不安そうな顔で見つめてくるなぁ。
「えっと……お姉ちゃん、どうしたのさっきから。 らしくないよ?」
オレが声をかけると優香は「あぁ……ごめんなさい」と少し慌てて目を逸らす。
しかしやはりまだ気になるのか再びチラ見。 その後小さく呟いた。
「この際だし……お姉ちゃんね、ダイキに謝りたいことがあるんだ」
「謝りたいこと?」
「ーー……」
オレが聞き返すと優香は口を紡いで黙り込む。
「お姉ちゃん?」
「その……今からお姉ちゃんの話を聞いても、お姉ちゃんのこと嫌いにならないでね」
「え? うん」
オレがそう答えると、優香は少し安心した表情で小さく頷くと、ゆっくりと口を開く。
「ダイキは覚えてないかもしれないんだけどさ、お姉ちゃんね、ダイキからずっと避けられてたんだよ」
「え?」
優香が謝りたいことって過去のことなのか?
そしてオレが覚えていないということはおそらくオレの魂が入る前の……元のダイキの時の話なのだろう。
優香はオレの手を両手で優しく握りしめ、当時のことを語り出す。
「あのね、昔の……中学の時のお姉ちゃんはダイキが昨日見たような感じで……いつもなにかと面倒臭くてさ。 ダイキのことも結構突き放してたんだ」
「へ、へぇー」
「それでね、お姉ちゃんその時結構モテてたし、ネット上だけどファンも多かったからさ。 だから余計にその当時今よりもっと暗かったダイキに負い目を感じてたんだよね」
優香が「ごめんね」と言いながら小さく頭を下げる。
「う、うん」
「そんな時かな。 急にパパとママが亡く……いなくなっちゃって、私にはダイキだけになっちゃってさ。 その時結構お姉ちゃん精神的に追い込まれてたからダイキに話しかけてみたの。 そしたらダイキ、どうしたと思う?」
優香がオレを見つめる。
「え、えっと……なんだろ」
「話しかけただけなのにビクってなっちゃってさ、そそくさとお姉ちゃんから逃げるように離れていったんだよ。 あれはショックだったなー」
余程辛かったのだろう。
オレの手を握っている優香の手が若干震えている。
ーー……流石にこの震えでダーク優香が出るなんてことは……ないよな、うんそうだよな。
「それでね、お姉ちゃん、なんとかダイキと距離を縮めようと色々頑張ったんだよ?」
「そ、そうなの?」
「うん」
優香は優しくオレに微笑みながら頷く。
「男の子って胃袋を掴まれたら虜になるって聞いてたからさ、お姉ちゃん慣れない料理を頑張って覚えたの。 でもダイキの反応はあんまりで……」
そうだったのか。
ちょっと慣れてない優香の料理とか食べてみたくはあるけどな。
オレが料理下手な優香を想像していると、優香が「そんな時だったかな……」と天井を見上げながら呟く。
「お姉ちゃんね、ダイキがいない間に部屋に入って掃除機かけてたの。 そしたら机の下にプリントが落ちててさ。 拾って見たら裏面に『しね』って書かれてあって……あぁ、ダイキイジメられてたんだって」
そのプリントは見たことないな。
どんな感じだったのか尋ねてみると、女の子っぽい字だったとのこと。
てことは水島か?
オレが犯人を推測していると優香が「それでね、」と更に続ける。
「お姉ちゃん、そのプリントを見てからどうしようって考えながらお風呂入ってたの」
「うん」
「その時に偶然鏡に映った自分を見たらさ、まぁちょっと怖い感じだったんだよね。 でね、思ったの。 ダイキは家でも学校でも怖い思いをしてるんじゃないかって」
「なるほど」
「それで心機一転見た目を明るく変えてダイキに話かけてみたらさ、ようやくダイキが返事してくれたんだ。 あれは嬉しかったなぁー」
優香の顔に笑みが溢れる。
おいおい、なんかオレまで嬉しく感じてしまうじゃないか。
オレの心も明るくなってきた途端、優香がポソリと呟く。
「でもね、そんな上手く行こうとしてる時にあんなことが……」
おそらくはそう、前のダイキがイジメに耐えきれなくなって歩道橋からだったかな、飛び降りた時のことだ。
「お姉ちゃんね、これでダイキまで居なくなっちゃったらどうしようって……目が覚めた時には涙が出るほど嬉しかったんだよ」
「お、お姉ちゃん」
実際に泣いていた気もするが、なんだろう……優香、愛おしすぎるぞ!!!
「まぁでも……昨日の件はきっと罰が当たったんだね」
優香はオレのプレゼントしたブレスレットを再び眺める。
「罰?」
「ダイキが目を覚ました時に、それまでの記憶があんまりなかったでしょ?」
優香がそっとオレの頭に手を添える。
「う、うん」
「私それを知ってさ、心配もちょっとあったんだけど、これはやり直せるチャンスじゃないかなって思っちゃったんだ」
「ーー……チャンス?」
「だってダイキ、お姉ちゃんを全然怖がってなかったんだもん。 むしろスキンシップしてくれてたっていうか」
優香が少し顔を赤らめる。
あの時はJKとの同棲生活に激しくテンションが上がっておりました。 すみませんでした!!!!
「それでね、その時に決めたんだ。 ダイキが今までのことあんまり覚えてないんだったら、このまま頼れる優しいお姉ちゃんでいようって。 だから昨日の件はお姉ちゃんがダイキを騙し続けてたことに対しての神様からの罰。 今まで騙しててその……ごめん、ね」
優香がブレスレットを両手で握りしめながら涙を流す。
「あーー、えっとその……オレもなんか気を使わせちゃってたみたいでごめんなさい」
やっと理解したぜ。
だから優香はオレのことを異常なまでに過保護にしてたのか。
それに美香……神様が言ってた『オレが優香の心の支え』……なるほどな。 確かにもう一度やり直せるチャンスができたのにオレが全く懐かなかったらそりゃあ人生どうにでもなれってなってしまうわな。
しかし優香もあれだな、自分の芯を出さずにずっとお姉ちゃんを演じてたのは辛い時もあっただろうに……たまには優香もオレに甘えてくれてもいいんじゃないか?
ということでオレは目の前で泣いている優香にこんな提案をしてみることにする。
「ねぇお姉ちゃん」
「な……なに?」
「できればお姉ちゃん、今度からたまにでもいいからオレにワガママとか言って甘えてほしいな」
「え」
優香が目を大きくに開いてオレを見つめる。
「え……でも……」
「いいから。 オレだってお姉ちゃんのこと大事なんだからさ!」
「ダイキ!!」
優香が嬉しそうに体を乗り出してオレに抱きつく。
うん、グッドスメルにグッド感触!
「その……なんでもワガママ言っていいの?」
優香がちょっとためらいながらもオレをチラ見。
「うん。 なんか早速あるの?」
「あのね、無理だったら別にいいんだけどさ……」
優香は左右の人差し指の先をツンツンと突きながら恥ずかしそうにオレを見上げる。
「なに?」
「あの……えっとね」
そこから優香の口から出た言葉……それは……
「1人じゃ寂しいから、今日ダイキ学校休んでずっと一緒にいてほしいな……なんて。 へへ」
ズッキューーーーーン!!! バッコーーーーーン!!! ドッカーーーーン!!!
オレは速攻で部屋に戻りスマートフォンを起動。
まだ電話するには早すぎる時間だったので三好にメールを送る。
【送信・三好】すまん今日は休む。 先生に言っといて
よし。
「お姉ちゃん! メールで連絡した! 今日オレ休む!!」
「えぇ!?」
「これで今日はずっとお姉ちゃんといられる!!」
そう言うとオレは優香の寝ている布団にダイブして潜り込む。
思ったより熱が篭ってて熱かったけど、これも優香の体温と考えたらそんなのご褒美さ!!
オレが隣で寝転がると優香が少し焦りながら声をかける。
「だ、ダイキ、嬉しいけどその……部屋まで一緒にいなくていいよ? 風邪が移っちゃう」
「ふ……お姉ちゃんの風邪なら大歓迎さ」
オレはキランと目を光らせながら返答。
「もっと言うとお姉ちゃんの飲みかけの水も飲めちゃいます」
そう言うとオレはドヤ顔で優香の飲みかけの水をゴクゴクと飲みほす。
あ、もちろん優香が口をつけた箇所でね!
ヤミーヤミー!!!
こうしてオレは優香を無理やり寝かせ、布団を肩まで掛けて一緒に就寝。
その後優香はオレをまるで抱き枕のようにして抱きしめながら眠りについたのだった。
ーー……のだが。
ま、待ってくれ。
これはやばいぞ。
オレは真横で熟睡している優香をガン見する。
顔の距離はわずか数センチ……オレが唇を本気で伸ばせば届く距離!!
と……とりあえず舐めて……みるか?
ペロリ
ふえあああああああああああ!!!!
流石に唇を舐める勇気はなかったか鼻先を舐めてみたけど最高だよおおおおおお!!!!
あと熱の影響か吐息がめちゃめちゃエロい!!! 優香が呼吸をするたびに吐いた息がオレの首筋にダイレクトアタックを決めてくる!!
それでいてオレを抱きしめているから男の夢もダイレクトアタック!!
そして何よりやばいのが、優香は足も絡めてきてるので内太ももが……
内太ももがあああああああああ!!!!
内太ももということで独特の柔らかさ!! そして熱も相待って絶妙な温度になっているのでこんなもの当たってたらオレは耐え切れるはずもなく……
ハックション!! ハックション!! ハーーックション!!!
ーー……優香が目を覚ましたら土下座しよう。
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熱のある優香……エロい(確信)