163 姉と弟、そして清楚!【挿絵有】
百六十三話 姉と弟、そして清楚!
待ち合わせ場所はオレの小学校の最寄りの駅から数駅行った先……優香やギャルJKの通っている高校の最寄り駅だ。
電車から降りて駆け足で向かうと改札付近でそれらしき2人を発見。 オレに気づいた優香が嬉しそうに手を振ってきた。
「ごめん、待たせちゃった!」
オレは切符を改札に入れて少し息を切らしながら優香たちのもとへと到着。
「お、ダイキ、ちゃんと待たせないように走ってくるとは紳士だねー!!」
ギャルJK星が軽快に笑いながらオレの背中をバシバシ叩く。
オレはそんなギャルJK星からのスキンシップを味わいながら視線を優香へ向ける。
ーー……ん?
なんだろう。 優香の顔が若干赤いような……気のせいか?
「ねぇお姉ちゃん」
「なにダイキ」
優香が少しふわふわした感じでオレに微笑みかける。
「なんかいつもと感じ違うけど……どうしたの?」
オレが少し心配そうに尋ねるも、優香は頭上にはてなマークを浮かべながら首をかしげて視線をギャルJK星へ。
「ねぇ美咲、私いつもと違うかな」
優香の問いかけを受けたギャルJK星は「んー?」と声に出しながら優香の顔をまじまじと観察。 その後に「あっ」と指を立ててオレに視線を移す。
「もしかしてあれじゃね!?」
「「あれ?」」
そう言うとギャルJK星はオレの後ろに周ってしゃがみ込み、オレの肩に手を置きながら優香を見上げる。
「多分だけどさ、ゆーちゃん今朝ダイキに可愛いって言われて浮ついてるんだよー!」
「え?」
オレは「いやいやそれはないでしょ」と小さくツッコミを入れながら優香に「そんなことないよね」と同意を求める。
すると……
「ーー……っ!!」
「え」
優香の顔を見ると優香はパッと見てわかるほどに赤面。 オレと目があうや否や「きゃーっ」と控えめに叫びながら頬に手を添える。
「えええええ、お姉ちゃん、マジ!?」
オレは思わず優香に突っ込む。
だってそうだろう? 今朝も結構喜んでたのは知ってるけど、あれからもう時間たってるぞ?
そこまで喜びの感情って持続するものなのか!?
「だって……だってダイキ、初めてだよ? 私のこと可愛いって言ってくれたの。 そりゃあ浮ついちゃうよ」
優香は軽く上目遣いでオレを見ると、照れ隠しなのか「もぉー、美咲ーー!!」と言いながら後ろにいたギャルJKのもとへ。
「ダイキに変なこと教え込まないでー!」
優香がギャルJK星の二の腕あたりをポカポカと叩く。
「あははは、ごめんごめん。 でもそんな態度とるってことはそうだべ? 仲が良くていいことじゃないの」
「でも……でも恥ずかしいもんーーっ」
ーー……か、可愛い!!!!
◆◇◆◇
「えっと……ゆーちゃん、こんな感じのどうかな」
駅から少し歩いたところにある中型規模のショッピングモール。
ギャルJK星が手に取った服を体に重ねながら優香に尋ねる。
「うーーん、それは清楚とは言わないんじゃないかな」
優香がギャルJK星の持つ服をまじまじと見ながら首を横に振る。
「えーー。 可愛くない?」
「いや、可愛いのは可愛いけど、どっちかと言えば派手だよね」
「そうかなー」
ギャルJK星が選んでいた服を元の場所へと戻しながら「ぶーっ」と唇を尖らす。
「じゃあさ、ゆーちゃん的はどれが清楚だと思う?」
「私的に? うーーん、そうだなーー」
優香はギャルJK星をチラチラと確認しながら店内を物色。
隣につくギャルJK星が持つ買い物かごの中へと次々と入れていった。
そして……
「はい、こんな感じかな」
優香が腰に手を当てて「ふん」と満足げな息をつく。
「すごいねゆーちゃん。 これはアタシ1人だったら絶対に選んでないわ」
ちょっと気になったので中身を覗き込んでみると、カゴの中には明るめの茶色のコートに白いニット生地の上着、そして膝上くらいの丈だろうか……濃い緑色をしたチェック柄のスカートが入っていた。
あんまりまだ想像できないけど、似合っているのだろう……うん。
「あとは黒っぽい帽子と白い靴下、暗めの色のブーツで完成かな」
「え、じゃあちょっと試着してくるわ!」
ギャルJK星は買い物かごを両手で抱えながら試着室へ。
一体どんな感じに仕上がるのだろうとオレは試着したギャルJK星の姿を楽しみにしていたのだが……
「じゃあダイキ、今度はダイキの番ねっ」
優香がオレの前でしゃがみこみ、目をキラキラさせながらオレを見つめる。
「え」
「あんまり高いのはあれだけど、上着だけでもいいからさ、お姉ちゃんに似合いそうなもの選んでほしいな」
「うん、それはいいんだけどさ……」
オレはチラッとギャルJK星が入っていった試着室へと視線を向ける。
優香の服を選ぶのは大いに嬉しいのだが、それはできればギャルJK星の試着姿を見届けてからにしたい。
しかし優香のオレに向けているこの期待に満ち溢れた顔……。
仕方ない。
オレからしたら優香の方が大事だ。 ここはオレの希望よりも優香の希望を優先するとしよう。
「じゃ、じゃあ見てくるね。 見つかったら電話するよ」
「うん! よろしくねダイキ!」
こうしてオレはその場を離れて他の系統の服も見てみたくなったオレは優香たちのいる服屋を後にし、別の服屋へと足を運んだ。
ーー……のだが。
「ーー……やべぇ」
オレは1人小さく呟く。
やってしまった。
今まで女の子の服を選んだことなんて人生で1回もなかったんだった。
唯一あるとすれば、それは少し前にあったハロウィンの時……優香たちに着てもらうためのコスプレ衣装をネットでポチったくらいだ。
オレはギャルJK星の服を選んでいた時の優香の言葉を思い出す。
確か選んでる最中、優香は『組み合わせってやっぱり大事だよね』って話していた気がする。
組み合わせ……これは一体どう考えれば……。
ムムッ!?!?
何かヒントがないかと周囲を見渡してみると、オレの視界が捉えたのは子供服売り場に貼ってあったポスター。
それはあの大人気アイドルアニメ『ラブカツ』のものだ。
近くに寄ってみてみるとそれは映画の告知……端の方に『ラブカツオーディション受賞者も声で出演しています!!』と書かれている。
「お……おおおおおお!!!」
そういや夏にオレがダイキの実家に帰省している時、打ち合わせからの声も入れたんだっけな。
ちくしょう……映画公開が待ち遠しいぜ!!
ーー……ん? ラブカツ?
ラブカツって楽曲やそのコンセプトに合わせた衣装やアクセサリーを組み合わせてライブをするんだよな。
ってことは優香の服も何かコンセプトを決めてラブカツ風に考えたら……
「こ……これだああああああああ!!!!」
オレはやればできる男・福田ダイキ。
優香のコンセプトを決めた途端に店内の景色が一転、優香に合いそうな服だけが光り輝いて写り出す。
これなら……一瞬だ!!!
そこからオレは凄まじいスピードで周囲の店内をチェック。
その中でも特に光り輝いていた服をピックアップして優香に電話をかけたのだった。
◆◇◆◇
優香の服を購入後、ギャルJK星は一緒に化粧品を買ってくるということでオレたちはショッピングモールの外で温かい飲み物を買って飲みながら待つ。
ちなみに優香の服はなかなかのものだぞ?
優香は一瞬「え?」って感じの顔をしていたけど、オレの感性の鋭さに驚いたんだなきっと!!
くくっ……自分の才能が怖いぜ。
オレが1人でニヤついているとそれに気づいた優香が「どうしたの?」とオレの顔を覗き込む。
「べ、別になんでもないよ。 ーー……あっ」
そこでオレはとあることを思い出す。
実は優香に合った服を見つけて電話した後、優香がオレのところに来るまでの間にサプライズを用意しておいたのだ。
それは小さなブレスレット。
雑貨の中でもオレのお小遣いで買えるくらいの安価なものだったのだが、オレはそれが優香に似合うと思ってな。 日頃の感謝の意味も込めての贈り物だ。
家に帰ってから渡そうと思っていたのだが、2人きりの時に渡すと考えたらやっぱり恥ずかしいからな。
ならばまだ周囲に人がいてガヤガヤしてるこの時に渡した方が恥ずかしさも減るってもんだ。
「えっと……お姉ちゃん、これ」
オレはポケットに入れておいた……ブレスレットの入った小さな袋を優香に差し出す。
優香は「え?」と言いながら視線をその袋へ。
「それ……なに?」
「なんて言ったらいいのか分かんないんだけどさ、いつもお世話になってるお姉ちゃんにオレからプレゼント」
「ーー……!!!」
オレの言葉を聞いた途端、優香の目が大きく開かれる。
「だ……ダイキ、これ、お姉ちゃんに?」
「うん」
「あ……ありがとう」
優香は細かく震えた手でそれを受け取ると「開けていい?」と言いながらその場で袋をゆっくりと開封……慎重に中身を取り出す。
「あ……可愛い」
「その……オレのお小遣いで買えるものってたかが知れてるけどさ。 オレが見た中ではこれが一番お姉ちゃんに似合うって思ったんだ」
「ダイキ!! ありがとう!!!」
「うわっ!!」
涙を浮かべた優香が突然オレを抱きしめる。
「ちょ……お姉ちゃん!?」
「可愛いよ! 大切にするね!! お姉ちゃん、ダイキのこと大好き!!」
おいおいなんだよ照れるじゃねーか。
それにしてもこんなに喜んでくれるなんてな……オレも優香のこと好きだぜこのやろう!!
ーー……あぁ、いい香り。
それから優香は早速オレのプレゼントしたブレスレットを手首につけて満足そうにニコニコ。
オレはそんな優香の隣でギャルJK星が戻ってくるのを待っていたのだが……
「お待たせ! ゆーちゃん、ダイキー!!」
近くで声がしたのでオレはその方角に支援を移す。
すると……
「じゃじゃーん!! どう!?」
そこには先ほどの制服姿とは違い、優香チョイスの服を身にまとったギャルJK星の姿。
「お……おおおおお!!!!」
オレはあの時似合うのかわからないと言っていた自分を殴り飛ばしたい気分だぜ。
だって……だってオレの目の前にいるギャルJK星は……
「あ、着替えたんだ。 おかえり美咲ー」
「ただいまゆーちゃん。 あれ、なんかニヤニヤしてるけどどうしたの?」
「えへへへへーー」
「んー、よく分かんないけど幸せそうだね。 で、ダイキ、これどう? 似合ってるべ!?」
ギャルJK星が左右に角度をつけながらオレに姿を見せつける。
そんなの……そんなの感想はこれしかないじゃないか!
「うん、めちゃめちゃ清楚で似合ってる。 そこらへんのモデルにも負けてないと思うよ」
そう答えるとギャルJK星はコート左右の襟部分をちょこんと掴んで軽く広げる。
「ふふん。 アタシを誰だと思ってんの? 美咲さんだぞ?」
その後ギャルJK星はバイトがあるとのことで途中で解散。
オレは優香と仲良く買い物袋を持ちながら駅へと向かったのだった。
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「アタシを誰だと思ってんの? 美咲さんだぞ?」
可愛いぞおおおおお!!!




