162 お姉ちゃん!!
百六十二話 お姉ちゃん!!
ギャルJK星が優香から清楚を学ぶべく急遽ウチに泊まることになった翌日の朝。
オレは大きなあくびをしながらリビングの扉を開ける。
「あ、おはよーダイキ」
寝ぼけた視界に入ってきたのはすでに制服に着替え、ソファーで足を組んで座っているギャルJK星。
相変わらず見た目は清楚だぜ……見た目はな。
「あれ、お姉ちゃんは?」
「ゆーちゃんなら今ちょうど着替えに行ったよーん」
「そっか」
「てかダイキ、めっちゃ眠そうじゃん。 大丈夫ー?」
ギャルJK星はソファーから立ち上がるとオレの背中を押しながらテーブル席へと誘導。
「はいどうぞー」と入れたてのココアを目の前に置く。
「ありがとう星さん」
ギャルな一面の中にもこういう優しいところがあるからオレはギャルJKにハマるんだろうな。
そう思いながらコップに口をつけるとギャルJK星がオレの耳元で小さく囁く。
「昨日お風呂場であんなに出したんだもんね。 そりゃあ疲れるってもんかな」
「ブーーーーーーッ!!!!」
口に含んだココアが勢いよく噴射。
茶色の霧が目の前に広がる。
幸いにも目の前には何も置かれていないようで助かったぜ。
「ちょ……ちょっと星さん!?」
オレは軽く咳き込みながらギャルJK星を見上げる。
「だってそうだべ? 出したら疲れるんしょ?」
うん、くしゃみをね!
爆発級のくしゃみって1回するだけでも腹筋にかなり負担がかかるらしいぞ!
それが連続で起きた時にはもうヘトヘトになるってもんだ!!
ちくしょうギャルJK……!
いい感じに脳が寝ぼけて忘れていたのにまたあの時の光景が蘇ってくるじゃないか!!
オレは息を整えながらも脳内では昨夜、ギャルJKとお振りに入った時のことを思い出す。
するとーー……
……ムム!?
「あ、あのさ星さん」
オレは隣に立つギャルJKの腕を軽くたたく。
「どした?」
「星さんさ、昨日オレが顔にかけちゃった時、『顔は初めて』って言ってたよね」
「うん」
「てことは……顔以外はあるってこと?」
「!?」
オレの問いかけにギャルJK星がビクッと体を動かせる。
おいおいマジかよ図星かよーー!!
今の姿になる前まで、確かに見た目が完全なギャルJKだったからそうなんじゃないかなーとは思ってたんだけどさ!!
でもそうだよな、オレの裸見てもなんとも思ってなさそうだったし……結局ビッチかよ!!
オレは心の中で「ちくしょう!!」と叫びながら地面をバシバシ叩く。
「まってダイキ! ちょっと勘違いしてないかな!?」
ギャルJK星が慌てた様子でオレの手を握りしめ、その場でしゃがみ込んでオレに視線を合わす。
「勘違い?」
「先に言っとくけど……アタシ、まだ新品よ!?」
え!?
まさかのカミングアウト。
ギャルJK星が少し顔を赤らめながらオレを見る。
「確かにアタシ、今は違うけど髪は金であんな見た目してたから遊びまわってるように見えるけど……まぁ実際に遊んでんだけどね、一線は越えてないわけよ!」
ギャルJK星は言葉に熱を入れながら真剣に話す。
「いや……でもじゃあ、なんで『顔は初めて』なんて」
「そりゃああれさ、電車とか乗ってたら知らない間にスカートに付いてることとかよくあるじゃん!?」
そう言うとギャルJKは立ち上がってオレに背を向け、お尻の辺りをポンポンと叩く。
ーー……え? ええええええええ!?!?
「え、あれって本当にそんなことあるの!?」
オレが尋ねるとギャルJK星はコクリと頷く。
「そりゃあるよー。 アタシって電車通学だし」
「ええええ……」
なんということだ。
電車内でギャルJK星のお尻めがけてハックションしてるなんて……ツバが飛んで汚いね!!
聞くところによると満員電車でギュウギュウの時には足に付いていたこともあるらしい。
それでも周囲にたくさん人がいるから感覚が鈍るんだとよ。
「それにしてもあぁいうのってさ、アタシみたいな派手子じゃなくて大人しめな子にするもんなんだよね?」
ギャルJK星が「違う?」とオレに尋ねる。
「い、いや。 オレしたことないからわかんないよ!」
まぁでもエロ漫画とかだと基本はそうだな、標的となっているのは大人しめの女の子だ。
オレが知らないと答えるとギャルJK星は「そっかー」と言いながら視線を優香の部屋へ。
「それにしてもさ、ゆーちゃんは歩きでよかったね」
「なんで?」
「もし電車通学だったらさ、ゆーちゃんこそ真っ先に狙われそうじゃない?」
「ーー……確かに」
◆◇◆◇
それからしばらく。 ギャルJK星と話していると、用意を済ませた優香がかばんを持ってリビングに入ってくる。
「なんか盛り上がってたみたいだけど、なんの話してたの?」
優香がギャルJK星に視線を向ける。
「痴漢って本当にいるんだよーって」
「あー、そういや美咲、最近までよくされてたって言ってたね」
いや、よくされてたのかよ!!
それって最早完全に狙われてるのでは……そんなことを聞くと優香は徒歩ではあるが大丈夫なのだろうか。
ほら、痴漢にも色々あるだろ?
例えばその……露出狂とか。
「お姉ちゃんは学校までの道、大丈夫?」
オレはかなり心配そうな声色で優香に尋ねる。
「え、なにが?」
「だからその……痴漢」
「あ、うん。 まったくないよ」
優香は首をフルフルと左右に振る。
「あー、よかったー」
オレは安堵からか椅子の背もたれに全体重を乗せてもたれかかり、大きく息を吐く。
「どうしたのダイキ」
「いや、お姉ちゃん可愛いし、そういう標的にされてたらどうしようって思ったから」
安心したオレは残ったココアを一気飲み。
制服に着替えるため席を立つ。
「ーー……え、可愛い?」
謎の時間差。
優香がキョトンとした顔でオレに尋ねる。
「ん? お姉ちゃん?」
「ダイキ、お姉ちゃん可愛いの?」
「うん。 そりゃあもちろんだよ。 可愛いかどうかで聞かれたらほぼ全員が可愛いっていうと思うよ。 実際そうだし」
オレは「それが何か?」といった表情で優香を見つめる。
するとーー……
「やぁーだーー! もう朝からやめてよダイキーー!!」
「!?」
優香は突然目をトロンとさせて両頬に手を当てながらクネクネと体を捻り出す。
な……なんだああああああ!?!?
「お、お姉ちゃん!?」
「ダイキから可愛いなんて……初めて言われちゃったあーー!!」
優香はご機嫌な鼻歌を歌いながらキッチンへ。
ニマニマとした表情で朝食を作り出したのだった。
◆◇◆◇
その日の昼休み。
ギャルJK星の言う通り昨夜の連続くしゃみの影響なのだろうか。 あまり気力の起きないオレは静かな場所……ということで図書室の隅で小さく座ってボーっとしていた。
「ん?」
ポケット内に入れてあるスマートフォンが振動したのでオレは中身を確認する。
すると優香からのメール。
【受信・お姉ちゃん】ダイキ、もしよかったらなんだけど、学校終わったら一緒にお買い物行かない?
お、なんだ?
優香からのそういったお誘いって珍しいな。
やることのないオレはそこから優香とのやりとりを開始する。
【送信・お姉ちゃん】いいけど、何か買うの?
【受信・お姉ちゃん】うん。 美咲が落ち着いた服が欲しいって言ってさ、一緒に選んであげることになったんだけど……どうせならお姉ちゃんも服買おうかなって。 だからダイキ、お姉ちゃんの服選んでよ。
お……おおおおおおお!!!!
それって……それってオレの好みの服を優香が来てくれるってことだよなあ!!
今まで無気力だった体が一瞬で覚醒モードへと変わる。
熱い展開だぜええええええ!!!!
オレはもちろん「行く」と返事。
学校が終わると光の速さで教室を出て、後の優香とのメールのやりとりで記載されていた待ち合わせ場所へとスーパーダッシュで向かったのだった。
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次回、挿絵かけたら入れる予定です!!