160 それってもうフラグじゃね!?
百六十話 それってもうフラグじゃね!?
興奮のオーラを一瞬で解除することに成功したオレは優香やギャルJK星のいるリビングへと合流して楽しいご飯タイムを満喫。
その後優香は課題を早く終わらせるためにお風呂へ。
なので今リビングにいるのはオレとギャルJK星の2人なのだが……。
「いやー、それにしてもダイキは彼女とか作るの大変かもねー」
お皿を洗っているギャルJK星が突然オレに話しかける。
「え? どうしたの急に」
「だってそうじゃん? ダイキはいつもゆーちゃんにこうして料理とかやってもらってるわけでしょ?」
「うん」
「あんな女子力高い女の子なんてそうそういないぜー?」
ギャルJK星は今優香のいるお風呂場の方へと視線を向ける。
「まぁ……それはなんとなく分かる気がする」
「やっぱ溢れ出る女子力に気づく人は気づくんだね。 ゆーちゃん、最近同じ学年の男子に告白されたし」
「え!?」
ギャルJK星のあまりにも気になる話題にオレは即座に食いつく。
「そ、それ本当!?」
興奮気味のオレの質問にギャルJK星は口に人差し指を当てて「声が大きいぞ」と微笑みながら警告。
オレは一旦お風呂場の方を向いてゴクリと生唾を飲んだ後、小走りでギャルJK星のもとへ向かう。
「それで、ほ、星さん。 お姉ちゃんどうしたの?」
「そりゃあ断ったに決まってんじゃん」
「な、なんで?」
オレが理由を尋ねるとギャルJK星は笑いながら洗い終えたお皿を水滴を垂らした状態で渡してくる。
「ーー……え?」
「続きが聞きたきゃ手伝ってもらおう。 どうする? 聞く?」
ギャルJK星がお皿をオレの前でチラつかせる。
くっ……さすが見た目は清楚になってたとしても中身はギャル……そういう駆け引きはめちゃめちゃ上手いな。
ここは情報を引き出すためだ、仕方ない。
オレはギャルJK星からお皿を受け取り布巾で拭いていく。
「それで星さん。 なんでお姉ちゃん断ったの?」
再度尋ねるとギャルJK星は「うむ」と頷きその理由を語る。
「そりゃあダイキ……可愛い弟のほうが大事だからに決まってるでしょ」
「え」
ギャルJK星の明かした理由にオレは言葉を詰まらせる。
「え、オレ?」
「そだよー。 今回は結構途中までいい感じだったから、アタシ的にはこれ付き合っちゃうんじゃないかなーとか思ってたんだけどね」
ギャルJK星が少し感慨深そうに視線を天井へと向ける。
な……ななな、なんだってええええええ!?!?!?
途中までいい感じだった!?
てことは……てことは甘い雰囲気漂わせてたってことですかぁーー!?!?!?
オレのハイテクな脳が顔も知らない見知らぬ男と優香が一緒にいるところを勝手に想像し始める。
や、やばい。 優香には幸せになってほしいのだが、考えただけでもショックから全身の鳥肌がスタンダップしちまう!
「ちなみにそのいい感じってのは、いつくらいから……」
オレは声を震わせながら恐る恐る尋ねる。
「えっと……いつくらいからだったかな。 確か修学旅行らへんからゆーちゃんへのアピールが始まって……」
ギャルJK星がお皿を洗う手を止めて当時の記憶を遡っていく。
「確かいい雰囲気じゃない?って思い始めたのが……ほらあれだ、佳奈ちゃんって子が泊まりに来てた日だ!」
「三好が泊まりに来てた時……?」
「そうそう! ほら、アタシがゆーちゃんの過去ギャルだったことを暴露した日!」
「ーー……あぁ、ああああああ!!!」
完全に思い出したぜ。
あれだ、三好が1日お嫁さんをしにきた日だ!!
「あの時はアタシもちょっと焦ったなー」
ギャルJK星が苦笑いで小さく呟く。
「……何が?」
「あのー、あれだよ。 ゆーちゃんがギャルだったって話してたときにさ、アタシがダイキたちに『当時のゆーちゃんの写真見せてあげよっか?』って言ったの覚えてる?」
「うん」
それはもちろんめちゃめちゃ見たかったから覚えているさ。
そういえば見せてってお願いすること忘れてたな。
でもそれが今の優香の話題とどう関係が……?
「あの時アタシね、本当にダイキたちにギャルゆーちゃんの写真見せてあげようとして写真フォルダ開いたんだけどさ、そこにちょうどその日に撮ったばかりの例の男の子といい感じのゆーちゃんの写真が表示されてね。 それを見てゆーちゃんが慌ててアタシのスマートフォンを奪い取って画像を消したんだよ」
「ーー……マジですか」
「あの時のゆーちゃんの視線は怖かったなー。 アタシも流石にちょっとビビっちゃってさ、ゆーちゃんがギャルだったっていう話をすることすらも脳から飛んでっちゃってたよね」
ギャルJK星が「あはは」と笑いながら再び食器を洗う手を動かしだす。
なんということだ。
あれは優香がギャルだった時の話をこれ以上深掘りされたくないから無理やり話題を変えたのではなかったというのか。
でも確かにそうだよな……いつものギャルJK星ならいくら優香が話題を変えようとしたところで、いつもの悪ノリで話題をぶり返したりとかしそうだもんな。
あの時ギャルJK星からギャル優香の話題が出なかったのは、そういう理由だったのか。
「ーー……それでその写真は?」
「あー、あれ? もうあの時にゆーちゃんに完全に消されたから残ってないよ」
「ちなみにどんな感じのだったか……とか」
「まぁ遠くからだったんだけどね。 昼休みにゆーちゃんと校庭で楽しそうに話してた写真だべ」
「ーー……!!!!」
昼休み……高校生の男女が2人きりで楽しく談笑……それはもう、完全にフラグじゃねえかあああああ!!!!
「え、それで星さん。 お姉ちゃんが告白されたのっていつ?」
「えっと……それはねーー」
ギャルJK星は「あれは確か……」と言いながら「あの日じゃない、この日じゃない……」と繰り返す。
「正確な日は忘れたんだけどさ、確かゆーちゃん、『来週ダイキが宿泊学習だから寂しいなー』って 言ってたから、そこらへんだと思う」
「ってことはオレが宿泊学習に行く前の週ってことだよね」
「そだね、そうなるね。 そんな話をした後に、ゆーちゃんから相談受けたんだよ」
優香の話をしてる間にお皿洗いを終えたギャルJK星とオレは場所をソファーに移動。
座りながら話の続きを再開する。
「えっと……お姉ちゃんから相談?」
「うん。 今回はゆーちゃんもちょっと考えたんじゃないかな。 告白されて、その場で答えは出さなかったんだって」
「そ、そうなんだ……」
あの時は全然悩んでるとか、そんな素振りなかったように思うけど……。
「なんかめっちゃ張り切った告白だったらしいよー」
ギャルJK星がクスッと笑って「いいなー」と声を出しながらソファーにもたれかかる。
「そうなの?」
「うん、『将来は俺が絶対に幸せにするから、結婚を前提に付き合ってください!』だってさ」
「へ、へぇー。 なんか結婚を前提とか、なんか重いね」
「そう? それくらい愛してくれてんだって思えてキュンと来ないー?」
ギャルJK星はおそらく意中の年上男性にそう言われてるところを想像しているのだろう……「きゃーっ」と手で顔を覆いながらオレの隣で悶絶している。
しかしあれだな、女子はそういう言葉に弱いのか。
「結婚……」
ーー……ん?
オレのハイテク脳がとある日のことを思い出す。
来週オレが宿泊学習があるってことを優香に伝えた日のことだ。
確か優香は結城からそのことを事前に知らされていて必要なものを準備してくれていたんだよな。 それでその時に「結城がいてくれてよかったね」的なことを言った後に……
『ダイキは桜子ちゃんと結婚したら将来安心かもね』
ーー……!!!
そうだ、優香はオレに冗談ぽくそう言ってた気がする。
あの時はなんでそういう話になるんだよ……とか思ってたけど、ギャルJKの話を聞くにおそらくそこらへんで優香は告白されたのだろう。
だから無意識に……かは分からないが、『結婚』という単語が出てきてしまったのではないか!?
うわあああ、そうだよな、優香がオレに冗談を言うことなんてそうそうないもんな。
なんであの時オレは気づけなかったんだあああああああ!!!!
となると疑問が残る。
オレが大事だから告白を断ったとギャルJK星はさっき言っていたが、なにがきっかけで優香はそう答えるに至ったんだ?
最初から弟が大事だからって言って断ってればいい話を優香が答えを先延ばしにした理由……。
「あのー星さん、結局なにが決め手でお姉ちゃんは……」
そうオレがギャルJK星に尋ねようとしたところでリビングの扉が開き、隙間から優香が顔をだす。
「お風呂上がったよー」
「んえぇ!? あ、ゆーちゃん!」
突然の優香の登場にギャルJK星がわかりやすく慌てる。
「ん? どうしたの美咲」
「え、あぁうん、なにも! ゆーちゃん今から課題?」
「うん。 とりあえず出来るだけ急いでやるから、終わったら教えるね」
「あ、あいよー」
そう言うと優香はそのまま課題をしに自室へ。
扉がパタンと閉められるとギャルJK星は「危なかったねー」と冷や汗を拭う。
「それで星さん、さっきの質問なんだけど……」
オレが再度尋ねようとするとギャルJK星はオレの口に指を当ててそれを制止。
「え?」
「続きはお風呂掃除を手伝ってくれたらその時に話してあげよう。 どうせならまたアタシと一緒に入っちゃう?」
ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
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明日挿絵入れまぁす!!




