16 目指すは桃源郷!!
十六話 目指すは桃源郷!!
「ーー……よし、流石にこれは高評価たくさんつくでしょ」
放課後の誰もいない階段。 西園寺が少し顔を赤面させて口角をあげながらスマートフォンをいじり出す。
これはもしかして、あれか?
いわゆる都市伝説の……女の子が自分の顔を除いた際どい写真をSNSにアップロードするってやつなのか!?
そういや以前SNSサイトで誰かが拡散していたそれっぽいものを見たことがあるけど……そういう関連のは全部釣られた人たちを騙す詐欺だと思ってたぜ。
とりあえずこれ、撮っとくか。
オレは音の鳴らないようにスピーカー部分を指で全力で押しながら動画撮影を開始。 流石に今見つかると厄介なため僅かな時間ではあったが、西園寺の隠れた趣味?を隠し撮りすることに成功したのだった。
ていうか今の小学生って趣味から何からマセすぎだろ。 オレが小学生の頃は友達とゲームやカードしかしてなかったぞ。
◆◇◆◇
「おかえりダイキ、遅かったね。 大丈夫?」
玄関の扉を開けるとすでに優香は帰宅済み。 心配そうな顔をしながらオレのもとに駆け寄ってくる。
「大丈夫って……なにが?」
「ほら、お姉ちゃんまたダイキがイジメられてたのかなって」
まぁ正解といえば正解だけど、不正解といえば不正解だよな。
向こうはいじめてるつもりなんだろうけど、オレもそれなりに……いや、確実にそれ以上に楽しませてもらったし。
もちろん正直にいうわけにもいかないのでオレは「ううん、ちょっと途中でお腹が痛くなって休んでただけ」と返答。
すると優香もホッとしたのか「そっか」と答えると、「はやくリビングおいで、ジュース入れるね」とオレの背中を押していく。
「うんありがと。 ていうかお姉ちゃんも大丈夫? ちょっと前に体調悪いって言ってなかったっけ」
「あー、うん。 もう大丈夫だよ。 ありがとうダイキ」
優香はあまりそのことをオレに突っ込んでほしくないのか、その話題を華麗にスルー。 オレの頭をワシャワシャと撫で出した。
うおぉ……JKに頭を撫でられるこの感じ、実にたまらん!!
まぁ優香がその話に触れられたくないのなら別に構わん。 それよりももっと撫でてくれ!! オレは世の男が羨むような至福の時間を味わっていたのだが、先ほどまで動物園を開園していたからだろうか。 とある疑問がオレの中に浮かんだ。
「ねぇお姉ちゃん」
「なに、ダイキ」
「オレ、お姉ちゃんと何歳まで一緒にお風呂入ってたっけ」
「え、どうしたの突然」
優香が少し顔を赤らめる。
だってそうだろう? オレはこのダイキの体に入る前のことは知らないんだ。
ダイキの秘密ノートにもそこらへんは全く書かれていなかったし……いじめられたこと以外の内容も少しは書いてて欲しかったぜ。
「えっと、どうだろう。 ダイキがもっと小さかった頃には一緒に入ってた気がするけど……そもそもダイキがお姉ちゃんと一緒にお風呂に入ろうとしなかったもんなぁ」
「そうなんだ」
ぐああああああああ!!!! なんて勿体ないことやってんだダイキよぉ!!
年上の女の子と一緒にお風呂入れるんだぜ!? それをお前は一緒に入ろうとしなかった……だと!?!? ちゃんと性欲あったんかコラアアアア!!!!!
オレが前のダイキの性欲について軽く絶望していると優香が悲しげな表情で「あ、そっか。 ダイキ、入院してから記憶ちょっと曖昧なところあるもんね」とオレの頬に手を添えて優しく囁く。
「あ、うん。 ごめんね変なこと聞いちゃって」
それからオレは心の中で激しく絶叫。
クソオオオオオ!!! そこは『最近まで一緒に入ってたじゃん』って言うと思ってたのによおおおおお!!!
そしたらワンチャンスJK女神のあられもない姿を拝めると思ったのにいいいい!!!
ちなみにこの心の叫びは夕食を食べている時も……そしてその後テレビを見ている時も常にオレの内側で反響されていたのだった。
◆◇◆◇
ーー……えっとですね、優香が「お風呂入ってくるね」と言って浴室に向かってからしばらくが経過したんですわ。
そしてオレはそんな脱衣所の前の扉の前にいます。
瞳を閉じて中の様子を伺うと、シャンプーのフローラルな香りとともにシャワーから勢いよく飛び出している水の音が聞こえてくるんですわ。
うーーん、今は髪を洗っている感じですね。
「もうこの感情を抑えるにはこれしかないんだ」
オレは自分の胸に手を当てる。
鼓動が早い。 なんだ? ビビっているのか?
だがしかしオレは弟……それもまだ小学生なのだ。 なにを恐れることがあるというんだ。
そう心に言い聞かせたオレは脱衣所へのドアノブをガシッと掴んで覚悟を決める。
弟が姉に甘えてなにが悪い!!
オレは行くぞ!! あの場所へ!!!
「ダイキ、いきまああああああす!!!」
オレは勢いよく扉を開けると同時に装備していた服や下着類を全てパージ!!
洗濯機にぶち込むと優香のいる浴室……そう、桃源郷へと飛び立ったのだった。
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