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158 清楚テスト!!


 百五十八話  清楚テスト!!




 「な……なるほど」



 優香の補足を加えた、ギャルJK星がこの見た目へと変わった経緯はこうだ。



 ある日、ギャルJK星が商業施設のエスカレーターでスマートフォンを落としたところを丁度後ろにいたサラリーマン風のスーツを着た男性が地面に落ちる寸前のところでキャッチ。

 スマートフォンを最新の機種に乗り換えたばかりだったギャルJK星はそれに感激してご飯にお誘い……そのまま話しているうちに大人の魅力にやられてしまった……ということだった。

 

 ギャルってヤンキーっぽい奴としかくっつかないって思ってたぜ。



 「その……だから黒髪に?」


 

 オレが尋ねるとギャルJK星は少しはにかんだ表情で「うん」と答える。


 

 「だってほら、大人の男性ってさ、清楚な女の人が好きじゃん?」


 「ーー……そうなの?」


 「例えばさ、女の子のアイドルグループで人気を手にしてる子って大体が清楚な子だべ?」


 「あーー、そうなのかな」



 アイドルはあんまり分からないけど、ギャルJK星の言ってることもわからないこともない。

 オレはよく青年誌を買ってたから分かるんだが、基本そこでも人気の出てるグラビアモデルさんは黒髪清楚って感じの子が多かったもんな。

 はいはい、なるほど。 そうだよね、大人の男ほど清楚を求める……なかなかに真理をついている気がする。



 ーー……だからオレは優香や結城にキュンってしやすいのだろうか。



 オレが1人納得していると優香はどうやら学校の課題が結構あるらしく、少し慌てた様子でキッチンへ。

 忙しいならデリバリーでもいいよと言いたいところだが、宿泊学習の日の夜に美香が言ってた言葉を思い出す。


 ……今の優香はオレを心の支えとして生きている。

 確かオレが優香の行為全てに遠慮してたら少しずつストレスが溜まっていって非行に走ってたって言ってよな。


 ならばオレはデリバリーも好きだけど、優香の手料理の方が食べたい!

 その行為に全力で甘えることにしよう!!



 「あ、そうだ!!」



 優香がキッチンに向かってすぐ。

 ギャルJK星が両手をパンと鳴らしてオレを見る。


 

 「え、なに?」


 「ねぇダイキ! 今からダイキが男の人役してさ、アタシが清楚出来てるかちょっとテストしてみてよ!」


 「ーー……テスト?」


 「そそ! アタシとりま週末にその人と会う約束はしてるんだけどさ、どう接していいかまだよく分からないんだよね」


 

 ギャルJK星が少し肩をあげてモジモジと体を捻りながら前髪をいじる。


 おいおい連絡先ちゃんと聞いてんのかよ!

 さすがはギャルJK……行動力が半端ねぇぜ。


 オレはギャルJK星の行動力に羨望の眼差しを送りながらもしばらく考える。


 それにしても、テストか……確かにそれをするとなると、オレが一番適任だろうな。 だって中身はオレの方がギャルJK星よりも年上なわけだし。

 あぁ……でもなぁ。 ギャルJK星が仮にもしその男性と付き合うことになってみろ……もう今後絶対にパンツやブラを手に入れることは出来なくなるし、連絡も気軽に取りづらくなるんだよなぁ。



 「ん? どしたダイキ。 黙り込んじゃって」



 ギャルJK星がオレの顔を覗き込む。



 「あー、いや、ちょっと考え事してた」


 「考え事? どんな?」


 「うん、星さんがその男の人と付き合っちゃったら、それは嬉しいことなんだけどなんかちょっとムカつくなって」


 「へ? ムカつく? ダイキが? なんで?」



 ギャルJK星は驚いた表情で首をかしげる。



 「だってそうじゃん。 もしそうなっちゃったら、もうオレ、星さんと連絡とか取りにくくなっちゃう」

 


 オレはスマートフォンに表示されたままの、ギャルJKからの着信通知を見せながら答える。

 するとギャルJK星はオレのスマートフォンの画面を見た後にオレの顔へと視線を戻して優しくオレの手を握る。



 「え……ダイキ」


 「?」


 

 オレは意味が分からずギャルJK星とその手を交互に眺めていると……


 

 「なにそれめっちゃ可愛いじゃんーーっ!!」



 そう言うとギャルJK星は無理やりオレを自身の方へと引き寄せてギュッと抱きしめる。

 


 「おわっ!!」



 もちろんオレの顔は、どことは言わないが全人類の男が夢見るあの聖地へ。

 素晴らしい柔らかさ、振動がオレの顔全体を優しく包み込む。



 うおおおおおおおお!!!! 久々に帰ってきましたただいまあああああ!!!!



 どさくさに紛れて鼻から空気を勢いよく吸うと、制服に染み込んだギャルJK星の香りが一気にオレの体内を駆け回る。

 脳もこの香りに敏感に察知。

 『これこれこの香りだぜええええええ!!』とハイテンションになりながらオレの心拍数を爆上げさせていく。


 

 「ちょっと美咲、ダイキをあんまりからかわないでよー?」


 

 料理中の優香が苦笑いしながらギャルJK星に声をかける。



 「ゆーちゃん、ダイキはいい子だね!!」


 「そりゃあそうだよー。 なんたって私の弟なんだから」


 

 そこからギャルJK星はオレの顔を聖地で当てて抱え込んだまま優香と少し雑談。

 オレはその間ギャルJKテーマパークを思う存分楽しんでいたのだが……



 「あれ、ていうか美咲、ダイキになにか頼みごとしてなかった?」



 優香のその言葉にギャルJK星は「あっ、忘れてた」と声を出して反応。 聖地満喫中のオレの顔を剥がして元の位置で座らせる。

 

 

 「ごめんごめんダイキ。 ちょっとゆーちゃんとの話が盛り上がっちゃってさ」


 「ううんいいよ。 それでえっと……話し相手の練習だよね。 いいよ」


 

 素晴らしいものを味合わせてもらったことだし、そのお礼ってことで。


 オレは体をギャルJK星の方へと向けた。

 その……両手はしばらくの間、股の辺りに置かせてもらうけどな。

 


 ◆◇◆◇



 こうしてギャルJK星の清楚な会話テストがスタート。



 「えっとじゃあ……こんにちは」


 「こんにちは」



 何を話せばいいか分からないオレはとりあえず挨拶。

 するとギャルJK星は急にさっきまでの態度を一変させて、清楚JK星となりやわらかく頭を下げる。


 ほほう……これはこれで。


 それにしても1回あっただけの女の子に何を話せばいいんだろうか。

 オレは少し照れながらも脳を回転させる。

 こんな状況味わったことなかったからなぁ……とりあえずこれに近い状況は……。



 「……!」



 あった、あったぞ1回だけ!

 相手は残念ながら女の子ではなかったが、大学時代の友達・工藤!


 オレはあいつと初対面で話した時の結構盛り上がった話題を思い出す。

 これならきっと……


 オレはコホンと咳払いをした後ギャルJKならぬ清楚JK星を見つめる。



 「えっと……好きなゲームとかってありますか?」



 オレはキランと目を輝かせながら清楚JK星に質問。

 するとキッチンにいる優香が「ぷふっ」っと声を漏らす。



 「え、お姉ちゃん?」


 「ちょ、ちょっとダイキ、流石に女の子への質問の第一声が『好きなゲーム』はないんじゃないかな」


 

 優香の方を振り返ると、優香はお腹に手を当て、小刻みに震えながら笑っている。

 

 ーー……え、何? オレそんな変な質問した!?


 オレが無言のまま優香を見つめていると優香は「ごめんごめん」と謝りながら息を整える。



 「えっと……あれだよダイキ。 今後ダイキが気になった女の子と話す時、相手がゲームするのが好きだって分かってたらそう言うのもアリだとは思うけど、あまり知らない女の子相手だったら絶対にやめときなよ?」



 優香は「あー面白かった」と小さく呟くと再び料理の作業へと戻る。



 ナ……ナンダッテエエエエエエ!?!?!?



 ゲームの話題がアウト!?

 え、でも工藤と話した時はそれで盛り上がったんだけど……それは男限定ってことなのか!?

 じゃ……じゃあ女の子と初対面で話す時ってどうすれば……。



 オレは今絡んでいる三好たちと同接点を持ったかを思い出す。



 三好:いじめ

 多田:いじめ

 小畑:いじめ

 結城:いじめの身代わり

 西園寺:いじめ

 エマ:いじめの救済

 


 「ーー……」



 オレはその結果に愕然とする。


 どれも……どれも自然に話していて仲良くなったって子がいないじゃねえかあああああああ!!!!

 


 「えっとその……星さん、ごめんなさい。 オレじゃあちょっと役不足かも」



 そう声をかけると清楚JK星はフルフルとお淑やかに首を横に振る。



 「ーー……え、星さん?」


 「うん、そうだなー、私の好きなゲームは……ちょっと昔のになるけど、『魔獣ハンター』かな」

 

 「ま、魔獣……ハンター?」



 オレが聞き返すと清楚JK星は「うん」と微笑みながら頷く。



 「ま、まままマジですか!」



 オレは前のめりになりながら清楚JK星を見上げる。

 それもそのはず。 清楚JK星の話していた『魔獣ハンター』とは、子供から大人までを巻き込んだ、オレが大学生の時に一斉を風靡したゲームで、最大4人で魔獣を力を合わせて倒すといった内容なのだ。

 オレがやってたのは最新作の1・2個前だけど、よく大学で工藤と一狩りいってたものだ。


 オレが1人で興奮していると、キッチンの方から優香が「懐かしいね」と声を出す。



 「え、えぇ!? お姉ちゃんもやってたの!?」


 「そうだよ。 ダイキは忘れちゃってるかもしれないけどさ、田舎のおじいちゃん達が私とダイキにゲーム機とそのソフトをプレゼントしてくれてね。 ダイキはあんまりハマってなかったけど、当時の私はめちゃめちゃハマって美咲を誘ってやってたんだよ」


 「ち、ちなみにそれはいつくらい……」


 「んー、私と美咲がまだ中学1年だったから……3年前かな」


 

 お…おおおお。

 皆さん、朗報ですね。 3年前といえばおそらく優香もまだギャルだった時期。

 そんなギャルがプライベートでギャル友とゲームをしていたなんて……。

 

 あれかな、「捕獲するべー」「おけー」みたいな会話してたのかな!!!

 うわああああああその光景めちゃめちゃ見たいよおおおおおおお!!!!



 オレが脳内でハイテンション絶叫していると清楚JK星がクイッとオレの腕を引っ張る。


 

 「え、星さん?」


 「ダイキ、練習」


 

 清楚JK星が少し頬を膨らませながらオレを見つめる。

 ち……ちくしょう、その顔でその表情は反則だってのおおおおお!!!!



 こうしてオレは清楚JKとの清楚テストを再開。

 その後しばらく簡単な受け答えをしていたのだが……



 「えっと……星さん、ちょっといい?」



 オレはテストを中断して清楚JK星に尋ねる。



 「なに?」


 「言いにくいんだけどその……星さん、雰囲気とかお姉ちゃんの真似してない?」


 「ギクッ!!」



 清楚JK……いや、ギャルJK星の体がビクンと動く。

 そう、オレの会話との相槌の取り方とか、何気なく前髪を触る仕草が全て優香と似ていたのだ。



 「あとは話し方とかも……」


 「ギクギクッ!!」



 ギャルJK星は「アハハハ」と髪を掻きながらオレを見る。



 「な、ナニ言ってんのカナー。 このダイキくんは!」


 

 いや図星かよ。

 オレが静かに見つめているとギャルJK星は誤魔化しきれない感じたのか「うわあああああ」と絶叫。



 「だってしょうがないじゃん! 清楚って言ったらゆーちゃんでしょ!? だったらゆーちゃんになりきるくらいしか思いつかなかったんだもんーー!!!」



 ギャルJK星は立ち上がるとパタパタと優香のもとへ駆け寄り後ろからバックハグ。

 「なんでゆーちゃんはそんなに清楚なんだよー」とかブツブツ優香に話しかけている。



 あーそれにしても優香の真似か。

 思い返せばあれだよな。 

 玄関前でオレの頭を撫でた時も、お茶を出した時も……オレがどこか心惹かれてたのって優香と近いものを感じてたからなのかもしれないな。

 

 そんなことを脳内で考察していると、突然ギャルJK星が「決めた!」と発言。

 オレと優香が視線をギャルJKへと向ける。



 「美咲? どうしたの?」


 「アタシ、今日ここ泊まる!! んでもって、今日はずっとゆーちゃんに張り付いて『清楚』勉強しますっ!!」



 ギャルJK星はビシッと優香に向かって敬礼。

 優香はそんなギャルJK星を目をパチクリさせながら見つめる。



 「えっと……美咲? 私、今日課題あるんだけど……」


 「じゃあお皿洗いやお風呂掃除、洗濯はアタシがやる! その間にゆーちゃんは課題やってておくれ!!」


 「でもその、いつ終わるか分かんないよ?」


 「大丈夫!! それまでダイキと絡んでるから!! 気にしないで課題に集中してちょうだい!!」



 そう言うとギャルJK星は「お風呂入れてきまぁす!」と優香に最敬礼しお風呂場へ。



 オレはそんなギャルJK星の姿を見送った後に優香に視線を移す。



 「えっと……お姉ちゃん、大丈夫なの?」


 「うん、私は平気だよ。 お皿洗いとかやってくれるんだったらその分早く課題に手をつけれるし」


 「そ、そうなんだ」


 「うん。 だからそれまでダイキ、美咲のことよろしくね」



 あぁ……当初の予定なら、今夜は部屋にこもって写真を眺めながらマッサージタイムと考えていたのだが……。

 優香の頼みごとなら仕方ない。

 オレは「わかった」と優香に返事。 

 その後、念のためベッドの下に隠していたエロ本たちを引き出しの奥へと移動させに向かったのだった。



今回もお読みいただきありがとうございます! 

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次回、ムフフ!?

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[一言] もはやメタモルフォーゼ
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