153 天国・地獄の小畑式再び!!
百五十三話 天国・地獄の小畑式再び!!
「あれ、水島さん大丈夫? なんか顔色悪くない?」
宝探しイベント終了後、どんよりオーラを纏った水島に気づいたモブ女子たちが水島のもとに集まりだす。
「あ、うん大丈夫。 ちょっと歩き疲れたのかも、あははは」
「どうする? 部屋に戻って休んでる?」
「うん……そうしようかな」
「わかった、私一緒に行ってあげるね」
「ありがとう……」
ホテル内へと戻る水島を後ろから眺めていると近くから「はぁーー……」といった重たいため息が3つ重なって聞こえてくる。
それは三好・多田・小畑によるもの。
結局景品は見つからなかったからな。 どうやら三好たちはガチでオレが景品を見つけるのでは……と思い気楽に構えていたらしい。
「ちょっと福田、なんで見つけてくれないのさー!」
三好が悔しそうに『置き勉1学期許す権』を見つけた生徒を軽く睨んでいる。
「ウチも見つけて欲しかったなー」
「もーー!! こんな結果になるんだったら花江に福田渡すんじゃなかったーー!!」
多田の隣で小畑がホテルへと戻る水島に向かって「ベーっ」と舌を出す。
……いやいや小畑たちよ、もしオレが同行してたとしても、おそらく他の人が見つけてたと思うぞ?
残すは1時間程の自由時間のみ。
その後はバスに乗って学校へと戻る予定となっているのだが……
オレは僅かな希望を抱きながらエマのもとへ向かう。
「な、なぁエマ」
「なに?」
「その……リップの話なんですが……」
「え? でもダイキ、エマの欲しかった景品見つけられなかったじゃない」
「そうなんですが……エマ様の無償の愛でお恵み頂けないですかね」
「いやダメに決まってるでしょ」
ち……ちくしょおおおおおおおお!!!!
オレはこのどうしようもない感情……心の叫びを誰にぶつければいいんだあああ!!
水島は部屋に戻っていて手出しが出来ない……かと言って小畑に蹴ってもらおうにも場所が場所だ、蹴ってもらえる死角がない。
あぁ神様、どうかオレに、この感情をぶつけれるタイミングを与えてください!!!!
◆◇◆◇
それは帰りのバス車内。
帰りもグループ代表のじゃんけんで席順を決めることになったのだがーー……
「うぇえええーー……きもぢわるい」
意気揚々と戦いに挑んだ三好は再び敗北。
結果オレたちの席は行きと同じ……バスの最後部となり、オレの隣では三好が「ウーウー」と呻いている。
本来ならオレが三好を昨日と同じく脚の上に乗せてフィーバーするところなのだが……
「な……なんでオレまで……」
昨日の寝不足が祟ったのだろう、バスが出発して数分でまさかのオレも車酔いに。
くそ!! せっかくのチャンスなのにくそ!!!!
後悔しながら口を手で押さえていると多田が顔を覗き込んでくる。
「大丈夫福田ー」
「え、今日は大丈夫なの?」
「うん、なんでだろうね。 今日はウチ平気みたい」
昨日あんなに気持ち悪そうにしていた多田がピンピンしている。
だから多田のやつ、窓際を小畑に譲ったんだな。
しっかし小畑のやつ、気持ち良さそうに眠ってやがるぜ……可愛いけどよ。
「どうする? ウチの脚乗せたげよっか?」
「ーー……!!」
オレはその多田の言葉に反応。
即座に多田の顔を凝視する。
「い……いいのか?」
「うんいいよー。 ウチもその辛さ分かるもん」
多田は「はい、どうぞ」と言わんばかりに体をオレの方へ向けて両手を小さく広げる。
オレの視線の先には魅惑の黒タイツーー……今からオレはこの上に乗れるのか!?
それは最高に最強なシチュエーションじゃないかああああ!!!!
オレは「じゃあよろしく」と言いながら多田の太ももに手を乗せる。
ムニィ
うお……うおおおおおおお!!!!
これぞ……これぞ最高品質!! この肌触りにこの弾力、たまりませんわああああああ!!!
オレは胸を高鳴らせながらそのまま多田の上に乗ろうとした……のだが。
パシッ
「え」
反対側に座っていた三好がオレの脚を掴む。
「な、なんだ?」
「福田、麻由香の脚……私に譲って」
三好が顔色をかなり青くさせながらオレに頭を下げる。
「え、いやでも……えぇ!?」
「じゃないと私……福田にかける」
「ちょ……なんだってええええええ!?!?!?」
もし今ここで三好にかけられてみろ……それが引き金となっておそらくオレも大爆発だ。
それだけは避けなければならない!!!
サヨウナラ……黒タイツJSチェアー。
オレは泣く泣く三好に多田の脚を譲渡。
その後しばらく1人で悲しく車酔いと戦っていたのだが……
「ーー……ん、あれ、寝てた」
バスが小さな段差を乗り越えた小さな衝撃で小畑が目を覚ます。
「ってあれ、どうしたの福田。 めっちゃ気持ち悪そうじゃん」
「あー、うん。 なんでだろうね」
「ごめんね福田ー。 私の方が福田よりもヤバかったからさ」
多田の脚の上に乗った三好がオレに両手を合わせて「テヘッ」と笑う。
いいさ……これくらいの苦難、帰ったら優香に会えるんだ。 その時にめちゃめちゃ甘えて今日の感情をプラスにして終わるんだ。
オレは心の中で大きく頷き、これから数時間の車酔いとの戦いに覚悟を決めた……そんな時だった。
「え、じゃあ私の脚乗ればいいじゃん」
「え」
見てみると小畑がオレを見ながらクイクイと手招きをしている。
「い……いいの?」
「いいよー。 福田には何かあの時のお礼したいって思ってたし。 だからほら、おいで」
小畑が自分の太ももをパンパン叩く。
ま、マジか……マジかあああああああ!!!!
1時間ほど前に水島を犬扱いしていたオレが、今は飼い主に名前を呼ばれて喜んで向かう犬のように尻尾を振りながら小畑のもとへと向かっている。
これが格の違い……女王の威厳だと言うのだろうか。
「それじゃああの……失礼します」
「んー」
小畑の上に跨ったオレはゆっくりと腰を下ろし、オレのお尻が小畑の太ももに触れる。
ムニニィ
ピャ……ピャアアアアアアアアア!!!!!
触れた箇所全てが柔らかくて心地よい!! しかも少し揺れるたびにエロい弾力をしている!!
これは味わったら帰れなくなっちまうぞおおおおお!?!?
やはりエロの力は偉大!! オレは一瞬で気持ち悪さを忘れ、しばらくの間わざと体を揺らしたりして小畑の太ももの弾力を楽しんでいたのだが……
「ちょっと福田、さっきから揺れすぎじゃない? バランス感覚なさすぎかって」
そう言うと小畑は後ろから手を回してオレの体を支えようとロック。
もちろんその時は小畑の体とも密着するので男の大好きなものも背中へダイレクトに当たっているわけでーー……
ふぉ……ふぉわああああああああああ!!!!
まるで……まるで全身を柔らかく包むマシュマロチェアーやああああ!!!!
この夢のような天国の感触にやられたオレは余計にバランス感覚をなくしてふにゃふにゃと揺れ始め、そのため小畑の脚が少しずつ開いていく。
そう……ここで、オレはここでピシッとしていれば天国のままで済んだのだ。
しかしオレはそれができなかったため天国から一気に落ちることとなる。
「もう福田、ちょっとはジッとできないの? 私の脚ちょっとずつ開いてっちゃうからこのままだと福田、落っこちちゃうよ!?」
そうオレに伝えた小畑は無理やりその脚をギュッと閉じる。
「ーー……!?!?!?!?!?」
ぎゃああああああああああ!!!!
その瞬間腹部に激痛が走る。
そう、挟んでしまったのだ……何をとは言わないけど!!
これは独り言になるんだが、あれだ、無限大の記号ってあるだろ!? あれ、左右から押しつぶされたらめちゃめちゃ痛そうだよな!!
た、大した意味はないんだけど、そんなことをふと考えてしまったよ!
結果、分かる人には分かる激痛がオレを襲い、オレは一気に天国から地獄へと転落。
「ぐ……うぉおお……おおっ!!」
「なに福田変な声出して。 てかあれ、なんか太ももの間に当たってるけど……福田、後ろのポケットになんか入れてんの?」
「あーー……うん、確か丸い消しゴムを2個くらい入れてたかな。 筆箱に直すの面倒くさくて……あはははは」
「そうなんだー。 一瞬変なもの想像しちゃったじゃんかーもう!」
小畑が何を想像しちゃっていたのかは分からないが、オレはそれから学校に到着するまでの間、この世のものとは思えない苦痛を味わい続けたのだった。
これならまだ車酔いとの戦いを続けていた方が断然マシだったぜ……。
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女子があの激痛をわかってくれる日は来るのだろうか……




