150 告白?【挿絵有】
2020/11/18 挿絵描いて入れました!!
百五十話 告白?
「ごめん、お待たせ」
宝探しイベント途中、ホテル敷地内に設置された公衆トイレから出てきたオレは外で待っていた水島のもとへ駆け足で向かう。
「ううん、大丈夫だよ」
「それで水島さん、どこから回るの?」
「そうだね……ここなんてどうかな」
水島がプリントに記された地図のとある場所を指差す。
そこは……小さな雑木林っぽいところのようだけど。
「ーー……ちょっと遠くないかな」
そう、そこは開始地点から一番離れたところにあり、向かうには小さな噴水広場を抜けてその先にあるバラ庭園をさらに越えなければならない。
どちらかといえば近場で無造作に探したほうが効率はいいと思うのだが……。
「ううん、こういうのは人がすぐに集まらなさそうな場所にいいお宝があるはずなんだって」
「そういうものなの?」
「うん、そういうものなの。 それに人が多いとその分こっちが見つけられる可能性が減るからね」
水島はオレの答えを待つことなく「それじゃあ行こうよ」とオレの腕を掴む。
流石は学年のマドンナ……水島がオレの腕を掴んだ途端に近くにいた女子グループたちが「きゃあ」と桃色の声を上げる。
中には「なんであのインキャと?」って言ってるモブ女子もいたのだが……あいつは今度バレない程度のセクハラをしてやろう。
ちなみに水島のことが大好きな杉浦は「うわあああああああ!」と絶叫。 一緒に宝探しをしていた仲間を突き飛ばし、滝のような涙を流しながらどこかへと走り去って行ってしまった。
ーー……杉浦、すまない。
しかしそんなお前の姿……実に滑稽だっだぜ!!
◆◇◆◇
目的地である雑木林に向かう途中にある噴水広場。
そこでは噴水の中に何か隠されているのではないかと考えた生徒たちが水の中へ手を突っ込み一心不乱にパシャパシャと水音を立てながら探していた。
「あ、ダイキー!!」
オレと水島がそのエリアを通り抜けようとしていると誰かがオレの名を呼ぶ。
といってもオレのことを「ダイキ」呼びする人なんて限られてるからな。
それはもちろん……
「あ、エマ」
エマが噴水のある場所からこちらに向かって小走りで向かってくる。
「ーー……あれ? ダイキ、この子は?」
エマがオレの隣に立つ水島に視線を移す。
「あー、この人は……」
「初めましてエマさん。 私は福田くんと同じクラスの水島花江。 よろしくね」
水島はエマにニコリと微笑みかける。
エマは水島に「あーうんよろしく!」と軽く挨拶を返すと視線をすぐにオレの方へ……オレの制服のポケットのある部分をポンポンと叩いていく。
「ええええ、なになになに!?」
「むぅーー。 ダイキもまだ景品見つけてないみたいね」
エマが少し頬を膨らませながら残念そうな表情でオレを見上げる。
……あぁエマ! もう少し踏み込んだところまで叩いてくれよ!!
「ーー……ダイキ?」
エマが何かを察したのか目を細めながらオレに顔を近づける。
「な、なんだよ」
「今変なこと考えてなかった?」
「か、考えてないよ何言ってんだよ!』
ーー……なんでバレたんだ?
「ていうかエマ、さっき景品がなんとかって……どうして?」
「エマさ、これが欲しいんだよねー」
そう言うとエマはポケットから取り出したプリントの景品欄を指差しながらオレに見せつける。
「えっと……なになに? 『1日欠席無効権』?」
どうやら名前の通り1日休んでも休んだことにならない夢のような景品のようだけど……。
いいのか? 学校が勝手にそんなことをして。
「そう! エマこれどうしても欲しくてさ! だってこれあったらみんなが勉強してる時に家で罪悪感なくのんびりできるんだよ!? 最高じゃない!?」
エマが瞳を輝かせながらオレに顔を近づける。
「そ、そうだな」
「それでさ、ダイキ、耳かして耳!」
「?」
オレはエマに言われるがままに耳をエマの方に傾けるとエマは水島には聞こえないくらいの小声で囁く。
「もしダイキが見つけてそれエマに譲ってくれたらさ、エマが目の前で使った後のリップあげるよ?」
「ーー……!!!!」
オレの目がガッと大きく開く。
「エマ……それは誠か?」
「ふふふ……勿論だよ。 エマ、休みのためならなんだってするんだから」
「エマ、お主も悪よのう」
「ダイキこそ」
「ふふふ……」
「うふふふふ……」
こうしてオレとエマの交渉が成立。
オレはエマと固い握手を交わしてその場を解散したのだが……
「ねぇ福田くん」
「なに水島さん」
「福田くんってさ、エマさんと付き合ってるの?」
「いやいや付き合ってないよ」
「ふーん」
◆◇◆◇
噴水広場を抜けた先のバラ庭園。
そこでオレの目に入ってきたものは……
「あ、福田……くん」
そこにいたのはオレのドラフト1位・結城。
結城がちょこんとしゃがみながら地面に落ちたバラの花びらを両手に乗せている。
「結城さん、何してるの?」
「見て」
そう言うと結城はゆっくりと立ち上がり、その両手いっぱいの花びらをフワッと上へと放り投げる。
結城の手から離れた花びらが風に乗りながら華麗に宙を舞う。
「ほら……綺麗」
結城はうっとりとした目でその花びらたちを眺めているが……
いやいやいやいや!! 綺麗なのは花びらを纏った結城!! 君だから!!!
しかしあれだな、昨夜美香に結城にはまだデスゾーンが何度もあると聞いたからなのだろうか……舞い落ちる花びらの演出がこれからの結城の今後を示唆しているようで心の底から「かわいいよおおおお!!!」と叫ぶことができない。
てか美香のやつ、神様なんだから今後結城に起こりうる災厄も知ってるわけだろ? だったら事前に教えてくれれば少しは安全に防げるかもしれないのに……今度あいつに聞いてみるとするか。
「ねぇ福田くん、そろそろ行こ?」
あ、やべ。 水島のこと忘れてたぜ。
水島が先に歩き出したのでオレは結城に「またね」と挨拶。 結城も「バイバイ」とオレに小さく手を振ってくれたのだった。
正直、少しは水島と一緒にいることに対して疑問を投げかけて欲しかったぜ。
嫉妬とかしてくれたらうれしかったのにな……はぁ。
そこから再びしばらく歩き、ようやく到着した小さな雑木林エリア。
やはり距離があるからだろう……周囲を見渡しても生徒の姿はどこにも見えない。
「それじゃあ探そっか、福田くん」
水島がその場でしゃがみ込み、地面に落ちている葉を掻き分けながら景品を探し始める。
オレもエマのリップのために水島と同様景品を探し始めたのだが……
「ねぇ福田くん」
水島のすぐ近くで探していると、水島がオレの名を呼ぶ。
「なに?」
「福田くんさ、私と付き合わない?」
「ーー……」
オレが水島に視線を向けると、水島は指を下唇に当て……顔を少し赤らめながら上目遣い気味でこちらを見つめていた。
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うわああ花びら演出の結城ちゃん!!挿絵描きたいのに時間がない!!
もし描けた場合はまた報告しますね!!