表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/733

149 もしかして好き!?【挿絵有】


 百四十九話  もしかして好き!?




 朝、モブたちのいびきでイライラの限界を感じたオレは部屋を脱出してトイレへ。

 その帰りに多田とすれ違う。



 「あ、福田ー。 おはよー」


 

 多田がヒラヒラとオレに向かって手を振る。



 「多田」



 オレが多田の名前を呼ぶとすれ違った多田が足を止めてオレの方へと振り返る。



 「ん? どしたの福田」


 

 感情ってすごいよな。

 今まで普通だった多田が、昨日の悪夢、昨日の美香の話を聞いた途端に愛おしく思ってしまうんだから。

 あ、もちろん恋愛感情とは別のものだけど。


 オレゆっくりと多田に近づいてそのまま抱きしめる。



 「え!? ちょっと……福田!? なに!?」


 「いや……何というかさ、よかったなお前」


 

 オレは多田の耳元でしみじみと囁く。



 「はぁ!? なにが!?」


 「あれだ、多田……お前1人でストレス解消する方法編み出したじゃないか」


 「えぇ!? なに言ってんの!?」


 「だからほら、毎晩やってるんだろ……あれを」


 「ーー……!!!!」



 多田の顔が一気に赤くなりオレをキッと睨みつける。



 「ちょ……なんで知ってんの!?」


 「え」


 「佳奈にも美波にも言ってないのに……! え、もしかしてそういう臭いする!?」



 多田は体を捻りオレから離れると自分の指の臭いを確かめ始める。

 あ、どうして指の臭いなのかは詮索しないでくれよ? そりゃあ自分で『マッサージ』するんだ。 指は使うだろう?



 「ウチさ、福田に話した後……あれからネットで調べたんだよね。 アレがなんで気持ちよかったのか」


 「うん」


 「そしたらアレ、人に言ったら恥ずかしいやつだったんだって!! なんて言うんだったかな、確かオ……」

 「うわあああああああい!!!!」



 オレは多田の声をかき消して口を塞ぐ。



 「ちょっと何すんのさ!」


 「いや、今お前恥ずかしいやつって言ったじゃん!! どうしてその恥ずかしいやつの名前叫ぶんだよ!!」


 「ーー……あ、そっか。 ウチ危なかったね、えへへ」



 多田が舌をちょこんと出してクシャッと笑う。

 ーー……可愛い。


 

 「と、とりあえず福田、なんでウチが毎晩やってるのを知ってたのかは分かんないけどさ、みんなには内緒にしといてよね」



 多田が人差し指を立てて口元に当てながら去っていく。

 

 うん……本当に『マッサージ』覚えてよかったな多田。

 オレは温かい目で多田がいなくなるまでその後ろ姿を見守る。



 ーー……ん? ちょっと待てよ?

 

 オレはさっきの多田の行動に気になる点を見つける。

 さっき多田のやつ、「臭ったりするの?」って言いながら自分の指嗅いでたよな……てことは昨夜も!?

 それも3〜4人の相部屋で!?


 えええええええええええええ!?!?!?


 

 ……あの指握っとけばよかったぜ。



 それから朝食時、オレは三好たちとも会話をしたのだが、やはり多田の場合は映像でちゃんと見たから……というのもあるのだろうな。

 多田みたいにに愛しく思えるほどには至らなかったようだ。

 まぁ好きだけどね。 みんな。


 

 ◆◇◆◇




 朝食が終わるとオレたちはホテル中庭へと集合させられる。


 何をするのだろうかと話している生徒たちの前に引率の教師たちが揃って横に並びだす。



 「はーい、今から宝探しイベントをやります!」



 ーー……は? 宝探し?



 教師たちの話によると、どうやら早朝から担任たちが近くの雑木林に入ってお宝を隠したという。


 いやいや流石にそんなしょうもないイベントでオレが動くわけがないだろうとオレは心の中でバカにしていたのだが……



 「そのお宝の中には1週間宿題免除権もありまーす!!」



 ーー……ムムッ!?



 その後皆に配られた地図の載ったプリントの端には『置き勉1学期許す権』や『給食残り物優先権』、『3回限定授業中スマホいじりが見つかっても許される権』といった夢のような景品がずらりと記されている。

 どうやら見つけた人だけでなく、そのグループの人もその恩恵に授かることが出来るらしい。


 これは……これは手に入れなければなるまい!!


 オレが密かに意気込んでいると誰かがオレの肩を叩く。


 

 「ん?」



 振り向くとそこには小畑。



 「ど、どうしたの?」


 「ねぇ福田、私さ、『スマホいじり免除』のやつ欲しいんだけど、一緒に見つけに行かない?」


 「ーー……え」



 突然の小畑の言葉にオレは言葉を失う。



 「えー、美波、そこは『置き勉1学期間許す権』じゃない!?」


 「いやいや、ウチ的には『宿題1週間免除』の方がありがたいんだけどー!」



 おいおいなんだ、3人とも欲望がめちゃめちゃ表に出ているぞ!?



 それから宝探し開始時刻までの間、しばらくの休憩タイム。

 3人の話し合いの結果、みんなでまとまって探すよりもバラバラに散って探し回る……という作戦になったのだ。

 しかしなんだろうな、何故か三好たち3人の視線がオレに向けているのだが……。



 「えっと……みんなどうしたの? 揃ってオレを見て」


 「いや、なんかさ、福田がついた方が見つかりやすい気がするんだよね。 なんでかは分からないけどさ」


 

 三好が先ほど配られた地図付きプリントに書かれた商品一覧を指差す。



 「あ、その気持ちウチも分かるかも。 なんか福田と適当に歩いてたら偶然見つかりそうだよね」


 「えー、それなら福田、私と探そーよー」



 多田の隣で小畑がピョンピョン跳ねる。

 ーー……跳ねるたびに小畑のツインテールが揺れてて最高だぜ。



 「「「で、誰と行くの!?」」」



 「ちょ、ちょっと待ってよ3人とも……ってうわあああ!!」



 三好たち3人に詰められたオレはバランスを崩してその場で尻餅をつく。

 


 「もちろん福田は私とだよね」


 「いやいやウチでしょ」


 「はー? ねぇ福田、私についてきたら前みたいに靴下触らせてあげるけど」



 ーー……ムムッ!!



 オレの顔が小畑の方へと向く。



 「ちょっと美波、それはズルくない!?」


 「そうだよ!! だったらウチだって、福田に何かあげるもん!」


 

 ーー……なんだろうこれが贅沢な悩みというやつなのだろうか。


 3人がオレの強運目当てでオレの取り合いをしているのを座ったまま見上げていると、1人の女子が3人のもとに近づいてくる。



 「佳奈ちゃんたち、どうしたの?」


 

 黒髪ロングの清楚系女子。

 前のダイキが好意を寄せていたクラスのマドンナ的存在・水島花江だ。



挿絵(By みてみん)



 水島には当初杉浦を見せしめとして出席停止にまで追い込むのにお世話になったぜ……といってもこの子は別に何もしてないんだけどな。

 てか醸し出してる雰囲気も流石はマドンナって感じだよな。

 まぁ美人さで言ったらエマや西園寺も負けてはいないと思うが……。

 


 「あ、花江」


 「なんか盛り上がってたね」


 「そうかな」


 「うん」



 「それで花ちゃんなんか用?」



  三好が水島と話していると小畑がその会話に割って入る。 

 


 「あーうん、私たちのグループはみんなバラバラになって探そうってことになってさ。 作戦会議も何もないから暇になっちゃって来ちゃった」


 「ふーん。 私らと一緒だね」


 「そうなの?」


 「うん。 私も佳奈も麻由香も欲しい景品違うからさ、私らも花ちゃんとこのグルと一緒でバラバラ作戦なんだよ」



 するとそんな小畑の言葉を聞いた水島は「それじゃあ……」と言いながらオレに視線を向ける。


 ーー……なんだ?

 


 「じゃあ福田くん、私と一緒に回らない?」



 ーー……。



 「え?」



 「「「えええええええええ!?!?!?」



 思いもしない水島の誘いにオレを含めた三好・多田・小畑も絶叫。

 少し離れたところでは水島のことを愛してやまない杉浦がこちらを見ながら膝から崩れ落ちている。


 ーー……杉浦の奴、もうオレに手出ししなくなっててよかったな。

 これ、もしまだ荒れてたらホテルの一室でリンチ事件とかになってたんじゃないか?



 「それでさ、どうかな」



 水島が座り込んでいるオレに手を差し伸べながら優しく微笑む。

 あぁ……前のダイキはこの優しさに堕ちたんだな。


 そう思いながらオレも手を差し出そうとすると小畑が「ダメダメ!!」と言いながらオレと水島の間に立ちふさがる。



 「え? 美波ちゃん?」


 「福田は私と行くのーー!!」


 「えっと……なんで?」



 水島が不思議そうに小畑を見つめる。



 ま……まさかこれが!?


 オレの脳内で以前エマと三好が【女の子の気持ち】に関して話していた時のことが再生される。

 まさか小畑……オレのことが好きなのか!?

 だからあんなに水島の誘いを……

 

 そう考えたら一気にドSの女王・小畑美波が可愛く思えてきてしまう。

 さぁ小畑、水島の問いにどう答えるんだ!?


 まさかのここで告白パターン!?


 オレはドキドキしながら小畑の返事を待つ。

 すると小畑は一瞬視線をオレに移した後すぐに水島へと戻し、ゆっくりと口を開いた。



 「だってどうしても『スマホ免除権』欲しいんだもん!!」



 ーー……え?



 小畑は唇を尖らせながら水島を軽く睨みつけている……その表情からは照れ隠しといった表情は一切見受けられない。

 


 「あ、美波ちゃんはその景品が欲しいんだ」


 「そう! だから福田と探すの!」


 

 小畑がムスっとしながらオレを指差す。


 オレが理想の言葉じゃなかったことに呆然としていると、水島は「なるほどね」と頷きながら小畑を見る。



 「じゃあさ、美波ちゃんが欲しいその景品を見つけた場合はそれ譲るよ。 それだったらいい?」



 水島がプリントに書かれた『スマホ免除権』を指差しながら尋ねる。



 「え、いいの!?」


 「うんっ」


 「えええ、やったー!! じゃあいいよ、私福田もういいや!」



 えええええええ!?!?!?



 「えーずるい!! じゃあさ、私はこれを……」

 

 「ウチもこれ見つけて譲ってくれるんだったら福田いらないんだけど」



 小畑を羨ましいと思った三好と多田が自分の欲しい景品を水島に教え始める。



 「あ、うん。 分かったいいよ、どれも私が欲しい景品じゃないし」



 「「やったーー!!!」」



 ええええええええ!?!?!?



 三好たちはもう自分で探す手間が省けたと思ったのだろう……「じゃあ頑張って探して来てね福田ー」とオレに伝えると楽しそうに話しながらどこかへと行ってしまった。


 お……オレの価値って??



 1人絶望に悲しんでいると水島が再びオレに手を差し伸べる。



 「……ってわけだから、一緒に行こ?」



 こうなったら意地でもオレが見つけて……三好たちにはオレの出す交換条件を受けない限りは渡さないようにしよう。

 もし条件を飲めない場合はオレの好感度を少しでもあげるために結城に……クフフ。



 それからすぐに宝探しイベントがスタート。

 オレは水島と2人で景品の捜索へと向かったのだった。

 


 てか水島はオレに何の用なんだ?

 まさか水島がオレのことを好きとか……いや、小畑もそうじゃなかったんだ。

 女の子の気持ちって難しい……。




今回もお読みいただきありがとうございます! 

いやぁ……まさかマドンナ水島ちゃんの挿絵を今まで入れていなかったとは。

書いてる途中で「ん?」て思って序盤の話確認したら描いてなくて戦慄しました 笑


下の方に☆マークがありますのでよろしければ評価していってくださると嬉しいです!

感想やブックマークもお待ちしております♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 連載開始から4か月間、クラスのマドンナを放置プレイした作者の鬼畜ぶり!
[良い点] 多田ちゃん……よかったよぉ!! 思わずオ……を叫ぶところだったなぁ!! おしい!! ダイキの取り合いになってるけど……残念だったな。 ダイキ、まだまだ恋愛成就とはいかないようだぞぉ!…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ