146 いちご柄パンツのオカルト少女【挿絵有】
百四十六話 いちご柄パンツのオカルト少女
ホテルに着いたオレたちは荷物を置くためにあらかじめ割り振られていた部屋へ。
3人部屋だったのだが同じルームメンバーはモブAとモブB……助かったぜ。
◆◇◆◇
用意された昼食を済ませ、ホテルの中庭に集合させられたオレたち。
全員整列したのを確認した学年主任が前に出てきて手をパンパンと叩く。
「はい、今から日が沈む夕方まで、写生大会をしまーす! 場所はこのホテル中庭、各自自由に場所を選んで写生してくださーい!!」
ーー……毎回思うんだが、【写生大会】って言葉どうにかならないものかね。
絶対勘違いしたり、別のこと想像してる人いるはずだぞ……エマとかエマとかエマとか。
「はっくちょんっ」
近くでクラスメイトといたエマが可愛くクシャミをする。
「エマちゃん大丈夫?」
「ううん、大丈夫大丈夫。 ここ山の方だしちょっと冷えただけだと思う」
ーー……。
◆◇◆◇
さて……どこにしようか。
出来るだけ人混みを避けたいオレは人の密集している方向とは逆方向へと向かう。
パッと見た感じ、生徒たちの一番人気の場所は紅葉の景色が広がっている山の方向……天気も快晴だし、まぁ絵になるっちゃあ絵になるんだが……
「絶対描くのしんどいぞ」
オレはぽつりと呟きながら自分にとってのベストプレイスを探す。
「おっ」
適当に歩いていると少し先に大きな木を発見。
その奥に大体畳6〜8畳分くらいの大きさの池がある。
さらにその奥には紅葉の木が1本……中々に侘び寂びを感じさせてくれる場所じゃないか。
あそこにしようと決めたオレは筆箱から鉛筆を取り出しながら目印の大木へ。
「ーー……あ」
大木に近づくと声がしたのでオレはその方向へと視線を向ける。
するとそこには先客の女の子。
大木にもたれて座りながらこちらを見上げている。
「君、福田ダイキ」
「え」
向こうはオレのことを知っているようだが、オレは見たことのない顔ーー……うちのクラスの女子ではないな。
少し赤茶の入った三つ編みに赤い縁のメガネで茶色がかったタイツ……この子は不用心なのだろうか、こちらに体を向けていることにより、タイツの奥に透けているパンツがこんにちはしている。
小さないちご柄……素晴らしいじゃないか。 ただなんかちょっとそのパンツに違和感を覚えるが……まぁタイツのせいだろう。
「えっと……ごめん、ここにしようと思ってたけど別のところにするよ」
オレは周囲を見渡して他に人がいなさそうな場所を探す。
「え、他のとこ行く?」
女の子がオレに声をかける。
「いやでも君いるじゃん。 それにオレ絵が下手だからあんまり人に見られたくないんだよね」
「でも福田ダイキ、君はこの場所を見つけた。 ここを見つけるのはいいセンス」
女の子が持っている鉛筆の先をオレに向ける。
てかなんでさっきからフルネームなんだよ!
「ここで描くといいと思う」
「ーー……そう?」
ーー……にしても無表情な子だな。
見た感じ大人しそうだし、オレの絵を見ても誰にも言いふらしたりはしないだろうと思ったオレはその子のお言葉に甘え、女の子の隣……大木にもたれかかるように座りこんだ。
「じゃあ描くわ。 出来るだけオレの見ないでね」
「うん。 美香、君の絵見ない」
なるほど、この子は美香っていうのか。
こうしてオレたちは無言のまま目の前の風景……池とその奥の紅葉の木を鉛筆でささっと書き出したのだが……。
「ーー……なぁ、ちょっといいか」
途中で少し気になることがあったオレは女の子……美香に話しかける。
「なに?」
「なんでオレの名前知ってたの?」
そう、この美香は今までオレと関わったことがないにも関わらずオレの名前を知っていた。
まぁ同学年だし知ってるのが当たり前なのかもしれないのだが……。
「それ、重要?」
「そりゃあそうだろ。 君の名前は?」
話した感覚的に可能性は低そうだけど、もしかしたら謎の手紙の犯人っていう可能性もある。
こいつのフルネームくらいは知っておいたほうがいいだろう。
「美香の?」
「うん」
オレが頷くと、美香は「わかった」と答え、筆を止めて静かにオレに体を向けた。
「美香の名前は、与田 美香」
「よだ……みか?」
「そう。 3組」
「そ、そうか」
「うん」
淡々と喋る子だな……。
念のためにカーディガンの隙間から見えら名札を確認してみるも、そこにもちゃんと【与田】と書かれている。
どうやら嘘はついていないようだ。
「ーー……で、なんで美香……いや、与田さんはオレの名前知ってたんだ?」
そう尋ねると美香は静かに視線を紅葉へと戻しながら答える。
「美香はなんでも知っている」
「は? なんでも?」
「なんでも」
ーー……え、こいつが犯人なの?
「もしかして前に女子トイレにいたのって……与田さんだったりする?」
「女子トイレは行く。 女子だから。 なんで?」
「え、あ、いや。 なんでもない」
あれ、違うのか?
意味がわからなくなったオレが考え込んでいると、次は美香の方から話しかけてきた。
「福田ダイキは……」
「ダイキでいいよ」
「そう。 ダイキは知ってる? この辺りの噂」
「ーー……噂?」
何を言ってんだこいつは。
「いや知らないけど、なんで?」
「このホテルの建っている山は神様の世界と一番近いところにあるらしい」
「ーー……そうなの?」
「そう。 宿泊客の中には夢の中で神様と話したことがあるって人もいるらしい」
「へ……へぇ」
なんでその話をオレにした?
「もしかして与田さん……そういうオカルト好きなの?」
「ーー……詳しいだけ。 そこまで好きではない」
「そ、そうなんだ」
「そう」
なんだか読めないやつだな。
ただまぁさっきから視線を斜めに落とせばタイツ越しのいちごパンツを眺めることができるからすぐにここから離れたいとはならないんだが……。
「ーー……なに?」
「え、あ、いや、なんでもない」
やっぱりこの与田美香って子、不思議な感じがするぞ。
どう説明したらいいのかな……目を合わせるとこう、魂がフワフワするっていうか……。
こういう時はさっさと終わらせて情報収集だ。
とりあえず三好たちにこの与田って子の情報を色々と聞くとしよう!
そう決めたオレはパパッと終わらせ美香に挨拶。
少し駆け足気味でその場から去り、三好たちを探しに行ったのだった。
◆◇◆◇
「え? 3組の与田さん?」
三好が眉を寄せながら首をかしげる。
「うん。 三好ならそいつがどんなやつなのか知ってるかなーって思ってさ」
「あーー、そういえばそんな子いたようないなかったような」
「ーー……え」
「ねぇ麻由香、美波、3組の与田美香って子知ってる?」
三好が隣で筆を走らせていた多田と小畑に尋ねる。
「ううん、ウチも名前くらいしか知らないなー」
「私知らなーい。 てか興味ないから5年生のみんなの名前わかんなーい」
「だって福田。 でもどうして?」
「いや、知らないならいいんだ。 ありがとう」
この後オレは西園寺にも聞いたのだが、結果は三好たちと同じで名前くらいしか知らないといった程度。
いやいやあれだけ濃いキャラしといてそれはおかしいだろ。
とりあえず与田はまだ謎の手紙の犯人の可能性も大いにあるし、念のため要注意人物に設定しておいたほうがいいだろう。
「オレのことをなんでも知ってる」ってワードがかなり引っかかるしな。
その後時間になったオレたちは描いた絵を各担任に提出。
夕食をとった後は決められた入浴時間まで各部屋で自由に過ごすことになったのだった。
◆◇◆◇
ーー……にしてもやることねぇえええ!!!
モブAモブBも誰かの部屋に遊びに行っちゃったし……まぁ変に気を使わなくて済むからそれはそれでいいけどよおお……。
何もすることがなくベッドの上でぼーっとしていると、ポケットに入れていたスマートフォンが振動する。
中身を確認するとどうやらメール……優香からのようだ。
【受信・お姉ちゃん】 ダイキ、元気にしてるー? 今日はお姉ちゃんはエルシィちゃんと外食です♪
画面を下の方にスクロールしていくと添付ファイルが。
開いてみるとファミレスでピザを美味しそうに頬張るエルシィちゃんと眩しい癒しの微笑みを浮かべてる優香のツーショット写真。
あぁ……見てるだけで幸せな空気が伝わってくるぜ。
オレは送られてきた写真を保存して待ち受け画面に設定。
2人の癒しの画像をニヤニヤして眺めながら順に回ってくる入浴時間を待ったのだった。
今回もお読みいただきありがとうございます!
下の方に☆マークがありますのでよろしければ評価していってくださると嬉しいです!
感想やブックマークもお待ちしております♪
果たしてこのオカルト少女は一体何者なのか!!
敵? 味方? どちらでしょう!
ーー……とりあえず背景頑張りました 笑




