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145 天国・地獄の小畑式!


 百四十五話  天国・地獄の小畑式!




 宿泊学習初日。

 学校からバスに乗って約3時間くらいだろうか……山の麓に佇んでいる割とおとなし目のホテルの駐車場へと到着する。


 

 や……やっと着いた。



 オレはフラフラになりながらバスから降りる。

 さて、どうしてオレがバスにただ乗っていただけでここまで疲弊しているのか疑問に思う人もいることだろう。

 それはバスが学校から出発したあたりに遡るーー……。



 ◆◇◆◇



 バスの席は先週決めたグループごと。

 各グループの代表者同士がじゃんけんをして、勝ったグループから座りたい場所を選んでいくということになったのだが……




 「うぇええーー。 ぎもぢわるいーー」



 オレの隣で三好がウーウー呻く。

 そう、オレたちの班はじゃんけんで最後まで負け続け、結果一番人気のない最後部となってしまっていたのだ。

 窓が他より小さかったりでちょっと景色は悪いけど、最後部なので席は真ん中で分けられていることなく一列そのまま。

 「他のグループよりも1席分広いじゃん」ということで多田や小畑は気にしている様子はなかったのだが……。 

 


 「なんでよりにもよって一番後ろなのさ……私車酔いしやすい体質なのに」



 三好が口元に手を抑えながらじゃんけん勝ち組のグループたちを軽く睨む。

 いや、お前が負けたのが原因なんだけどな。



 「まぁバスとか一番後ろって酔いやすいっていうもんな。 酔い止めとか持ってきてねーの?」


 「持ってくるわけないじゃん。 もともとじゃんけんで席順決めるって知ってたから勝つ気でいたし」


 「いやいや負けた時のことも考えとけよ」


 「は? だったら福田、あんたが私の代わりにじゃんけんしといてよ……って、うぇえええーーー」



 てかなんでオレが三好の介抱しなきゃならんのだ。


 座っている順番は前から見ると左から多田・小畑・オレ・三好の順。

 オレは助けを求めるような目を多田に向ける。



 「あーごめんね福田。 ウチも乗り物酔いするタイプだからさ……視線を出来るだけ窓の外の景色に向けてたいんだよね」


 

 多田が若干顔を青ざめた状態でオレをチラ見してすぐに窓の外へと視線を戻す。


 なるほど……それなら仕方ない。

 では小畑はどうだ? とオレは小畑に視線を移す。

 すると……



 「ーー……!!!」



 なん……だと。

 オレは目の前で起こっている光景に目を疑う。


 

 「大丈夫ー? 麻由香ーー」



 小畑が……ドSの女王でもあるあの小畑美波が……さりげなく多田の背中をさすってあげているではないか!!



 「ーー……ん? どうしたの福田」


 

 オレの視線に気づいた小畑がこちらに視線を向ける。


 

 「え、あ、いや。 小畑さんは車酔いとか大丈夫なんだね」


 「まぁね。 ほら私って将来アイドルになるためにバレェとか週1だけどやってるからさ、三半規管強いんだよね」


 「そ……そうなんだ」



 ーー……そういうもんなのか?



 「うぅ……ありがとう美波ー」



 多田が力のない笑みを小畑に向ける。



 「いいから麻由香、外の景色見てなー。 ほら、背中さすってたらちょっとは気が紛れない?」


 「うん……ありがとう」



 小畑にもこんな一面があったなんて……。

 それともあれか? 前の女の子の日の時にエマの介抱を受けて愛が生まれた……とかそういうやつなのか!?


 ーー……ドSもドSなだけじゃないんだな。


 そう感心していると、隣の三好が限界そうな顔をしながらオレの腕を引っ張る。



 「な、なんだよ」


 「福田……私の背中もさすって……」



 そう言うと三好はゆっくりと体の向きを変えて背中をオレに向ける。



 「え……でもいいのか?」



 その……背中のあたりに浮かんでいるのではないですか?

 子供用のブラジャーとでも言うんでしょうか……。


 

 オレは恐る恐る三好の背中に手を伸ばす。



 「いいに決まってんじゃん……だって福田、前にお風呂で私の背中……」

 「おけおけ、三好、もう黙れ」



 あまりの気持ち悪さに正常な判断ができていないようだ。

 近くには小畑や多田……前の席には他のクラスメイトもいるんだ……こんなとこで爆弾発言を投下されたらたまったもんじゃない。

 それにあの謎の手紙の犯人がいるかもしれないんだからな。


 オレは三好の言葉を遮りながらカーディガンの中に手を入れて制服の上から背中を上下にさすりだす。

 あぁ、カーディガンと制服の間の空間……三好の体温が籠っていて心地いい。



 「ーー……どうだ? 気が紛れるか?」


 「んん……気持ちちょっと楽かも」


 「そうか」


 「このまま……ごめんだけどお願い」


 「へいへい」



 こうしてオレはしばらくの間三好の背中をさすり続けることになったのだが……



 「ーー……」



 やばいぞ……無性に興奮してきたぞ。


 たかが段差……されど段差。

 手がブラジャーの上を通過するたびにオレの心が「よっしゃあああ!!!!」と叫ぶ。


 だってそうだろう……ブラジャーとは女子しか身につけない男にとっては夢のような物。

 外しているブラならば今のオレには優香がいる……いくらでも触れることは可能だ。 


 しかし!! 装着しているブラは違う!!


 まあ百歩譲って優香ならば、弟の権利を最大限に生かせば1回だけなら偶然の事故を装って装着中のブラに触れることもできるかもしれないが……同年代の女子は別だ!!


 小五といえば少しずつ性に関して興味を持ち始めるお年頃……それに加えて小五になって初めてブラを着ける子も多いと聞く。

 てことはそんな女子たちにとってのブラジャーとは、もしかしたらパンツ以上に敏感なアイテムになっている可能性も大いにあるだろう!?

 そしてそれを今オレは服の上からだが触れて……堪能できているんだああああ!!!



 人生、楽しいいいいいいいい!!!!


 

 そんなことを心の中で叫びながら三好の背中をさすり続けていると、突然小畑が「あっ」と声を上げたので視線を三好の背中から小畑へと向ける。



 「ねぇ麻由香、いいこと思いついたんだけど」



 小畑が多田の背中をさすりながら多田に顔を近づける。



 「な……何かな」


 「あのさ、バスの後ろの方の席で酔うのって、曲がったりするときには後ろが一番大きく揺れるし、それだけじゃなくてエンジンの振動とかも後ろに一番くるからなんだって」


 「ーー……うん」


 「でさ、テレビで言ってたんだけど、頭の上に何かを乗せてそれに集中してたら酔いが楽になるらしいよ」



 小畑がドヤ顔で多田に話しかける。



 「そ、そうなの?」


 「そそ! てことは、要はバランス取ればいいわけじゃん?」


 「ーー……うん」


 「だから麻由香、私の上に座っちゃえばいいんだよ。 それで私の足から落ちないようにバランスとってたら最強じゃない?」


 「ーー……え?」


 

 多田が信じられないといった表情を小畑に向ける。



 「ねぇ美波、それほんと?」


 「それは分かんない。 だって足の上に乗るのは今私が考案したんだから」


 「えええ……」


 「物は試しじゃん? ほら麻由香こっちー!」



 そう言うと小畑は後ろから多田のお腹に手を回してよいしょと持ち上げ、自らの太ももの上に跨らせるように座らせる。



 「ちょ、ちょっと美波!?」


 「ほら麻由香、よそ見しないで! バランス取らないと落ちちゃうよ」


 「う……うぅ……、分かったよ」



 こうして多田は謎の小畑式酔い止め対策を実行することになり、オレはそれを同情の目で見ていたのだが、その数分後ーー……



 「えっ……なんかほんとに楽になったんだけど」



 多田が驚いた表情で小畑の方を振り返る。



 「まじ!?」


 「うん……落ちないようにバランスとってるのもあるんだとは思うんだけど、下からの振動も美波が吸収してくれてるからなのかな、あんまりウチの体にまで響いてこないし……これすごいね」


 「へへーー! でしょーー!」


 「うん、ねぇ美波、このまま着くまでこうしてていい?」


 「いいよー! 美波ちゃんの高級チェアー使っちゃいな!」


 「ありがとう美波」



 おいおいマジかよ!!

 なんでそんな羨ましい方法で治っちゃうんだ!?

 オレは小畑と多田を見ながら無言で突っ込む。

 

 しかし【美波ちゃんの高級チェアー】か……1度でいいから体験してみたいものだ。

 オレは視線を落として小畑の脚へ。

 いいなぁ多田……さぞかし良い感じに引き締まっててふわふわなんだろうなぁ。


 そんなことを考えていると背中を向けたままの三好がノールックでオレのさすっている手を掴む。



 ーー……なんか嫌な予感がするんですが。



 「ねぇ……福田」


 「な、なに?」


 「私も美波と麻由香がやってるやつ……やる」



 ーー……ほらね。 やっぱりそうきたよ。



 「あのな三好、それをオレとやるのは流石にまずい気が」


 「なんで……?」


 「え、だってそりゃあもう……なぁ」


 「う、うるさい……やるったらやんの……」



 そう言うと三好はヨロヨロと上半身を起こし、靴を脱ぐと四つん這いになりながらゆっくりとオレの足の上に跨ってくる。


 オレの目の前には三好のお尻部分。

 スカートの布はオレの鼻に当たるほどに近く、許されるならそのまま前に顔を埋めたいほどだ。

 

 完全にオレの上を両膝で跨いでいる三好はそのままゆっくりと腰を下ろしていく。


 

 おい、マジか三好、マジなのかああああああ!?!?!?



 三好がオレの足まであと少し……オレがドキドキしながらその後ろ姿を見ていると、途中で力が抜けたのだろう。

 ストンと三好の腰が落ち、バランスを失った三好のお尻部分がオレの胸部分に当たり、そのまま下へと滑り落ちていく。

 そしてーー……



 ポスンッ



 おおーーーぅふ!!!



 「あぁ……ごめん……福田、今体勢整えるから」



 三好は足を前に出してオレの上に完全に着席。

 そこから早く酔いを軽くするために真剣にバランスを取り始める。



 「ねぇ麻由香、これやり始めて、どんくらいで楽になりだした?」


 

 オレの上に乗った三好が隣の多田に話しかける。



 「んんー、だいたい5分くらいかな。 バランスとるのに集中してたからすぐだったよ」


 「そ……そう、じゃあ頑張る……」



 バスが揺れるたびに三好のポニーテールが左右に揺れてオレの顔にファサファサと当たる。

 うわああぁ、シャンプーやリンスのいい香りがするんじゃあああ……。


 これだけでも至高の喜びなのに……本当にいいのだろうか。


 三好は見ての通りオレの上で座ってバランスをとっているのだが……分かる! 三好のお尻がどこから左右に分かれているのか分かるぞおおおおお!!!


 オレは心の中で大きくガッツポーズを決める。


 え、どうして分かるかって? それはあれさ、あれなんだ。

 分かる人だけ分かってくれればそれでいいんだ。

 そして今から呟く心の声は、今起こっていることとは全く関係がないんだが……


 ホットドッグのパンにウインナー挟みてぇな。


 そう、ただお腹が少し空いたからそんなことを思ってしまっただけなんだ、深い意味はない!



 結果三好も多田と同じく、この小畑式酔い止め対策が功を成して5分程で顔色も良くなり普通に喋れるようにまで復活。

 まぁその後もここから降りたらまた酔っちゃうということで、到着するまでの間はオレの上にいることになったのだが……



 「ん、あれ? 福田、ポケットになんか入れてる?」



 三好が不思議そうに振り返りながらオレを見る。



 「ーー……なんで?」


 「いや、なんかさっきからお尻に当たってるなって思ってさ。 スマホかな……取る?」


 「あ、あぁ多分スマホだ。 今は使わないからその……いいかな」


 「そう? だったらまぁ私的にはそっちの方がありがたいけど」



 そう言うと三好は再び前を向き、バランスよりに集中し始める。



 「ーー……え、なんでありがたいの?」


 「だってスマホがちょうどお尻の真ん中らへんに当たってるからさ、バランス取りやすいんだよね」


 「あーー……なるほど」



 それから三好はバランスを取りながらも多田や小畑と楽しそうに会話を始めたのだが、それから約15分くらいだろうか……。



 ーー……やっべぇ。



 決して気持ち悪いとかそんなのじゃないんだが、オレもこのままだと色々とやっちゃいそうだ。


 改めてオレは今自分の置かれている状況を確認する。

 目の前には甘い香り漂う三好のポニーテール、足の上には三好のお尻から太ももまでの感覚、そして足全体に伝わる三好の体温……。



 これはやべえぞおおおおおおおお!!!!


 

 「ちょ……ちょっと三好、もういいんじゃないか? 元気になったようだし」


 「えー、いいじゃんこのままで。 福田も嬉しいでしょ? 女の子に足の上乗ってもらってさ」


 「えぇええ……」


 「てかさっきから腰動かすのやめてくんない? バランス取りにくいんだけど」



 そう……さっきからオレは軽く腰を動かしたりして三好の圧迫から逃れようと試行錯誤していたのだが、かえってそれが逆効果となりオレの限界はすぐそばにまで達していたのだ。

 その、あれだぞ? 体力がな。


 

 「なぁ三好……少しだけ、少しだけでいいから!」


 「はぁ!? 少しだけってどう言う意味? あ、もしかして私が重いって言いたいの!?」


 「そ、そんなことじゃなくて……」



 くっ……ここは耐えるしか……耐えるしかないのかあああああ!!!!

 この天国のような柔らかさをここまで憎らしいと思ったことはないぜええええ!!!


 

 ガタンッ



 バスが何かを踏み、車内が軽く揺れる。



 「うわぁっと……!」



 バランスを少し崩した三好がオレにもたれかかり、三好の背中がオレの顔に。



 うおおおおおおお!!!!

 カーディガンに染み込んだ三好の香りがオレを刺激するぅうううう!!!

 それに三好の体重の全てが三好のお尻へと集中してそれが直接的に……。



 あぎゃああああああ!! 耐えろ……耐えるんだあああああああ!!!

 


 ◆◇◆◇




 と、こんなことがあり、オレは心身ともに疲れ果てたと言うわけさ。

 まぁ酔いの限界に達した三好の被害に遭うよりはマシだと思うが、そんなことよりも…… 

 

 バスを降りてホテルへと向かっている途中、オレはさりげなく自分の下半身へと視線を移す。



 ーー……制服の生地が濡れてもあんまり分からないような色で助かった。

 三好が長時間乗ってたからだろう……めちゃめちゃ汗かいててもうビッチャビチャだ。


 

 「あれ、どしたの佳奈。 お尻触っちゃって」



 オレの近くで三好が首を傾げながらお尻の辺りを触っているのを見た小畑が声をかける。



 「んー、なんかこのあたりがちょっと湿ってる感じするんだよね」

 

 「あれじゃない? ずっと福田の上に乗ってたんだから汗かいただけじゃない?」


 「まぁそうなんだろうけど……なーんか変な違和感が」


 「そうなの? ちょっと触らせてー」



 この後、何も知らない2人はその手でスマートフォンをいじっていた。

 てことはその汗の成分が彼女たちのスマホに染み込んだことになる……。



 イェス! イェス!! イェス!!!



 

今回もお読みいただきありがとうございます! 

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次回、何か起こりそうな予感?

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― 新着の感想 ―
[良い点] これはヤバい。 ヤバい。えちえちだぁ!! 小畑ちゃんが優しくなっててにやけます。 そして、ダイキ……それは、それは……いけないんじゃぁ!!! ダイレクトに感覚が伝わる……! なんとか耐えれ…
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