143 女の子の気持ち
百四十三話 女の子の気持ち
ドSの女王小畑が【飴と鞭】を覚えた翌日の朝。
朝のホームルームで教壇の前に立っている担任が手をパンパンと叩く。
「はーい、来週はみんな知ってると思うが1泊2日の宿泊学習だ。 なので今からそこで行動する班分けをしたいと思う!」
「ーー……え」
宿泊学習? そんなことするって言ってたっけか?
オレが戸惑っていると担任は「各自4人グループを作れ」と指示。 皆一斉に席を立ち、各自組みたいメンバーを募っていく。
「はいはい出ましたよ必殺の【グループ作れ】」
オレは小さく呟き、そのまま席に座ったまま窓の外に視線を向ける。
こういう時はただジッとしておいて最後に空いた枠に入れてもらうに限るよな。 だってそうだろう……オレはクラスの中でも一番インキャ。 積極的に動いたとしても誰がオレを入れてくれるというんだ。
「ふーくだ!」
「?」
皆が相方を探し回っている中、突然オレの机の上に座ってきたのはドSの女王・小畑美波。
目の前には美しい小畑のおみ足……尊い。
「お、小畑さん? なに?」
「一緒にグルやろ」
「え」
オレはパチパチと大きく瞬きをしながら小畑を見上げる。
「オレ?」
「うん、そのオレ」
「え、でもオレが入ったとして他の2人は?」
「それは決まってんじゃん。 佳奈と麻由香だよ」
三好と多田……。
2人の方に視線を向けると2人もオレと同じ気持ち……小畑の行動が信じられなかったのだろう。 口をポカンと開けながらオレと小畑を眺めている。
「えっと、それは嬉しいけど……いいの?」
「いいのいいの。 私福田と組みたいんだから」
小畑はクシャッと可愛く笑い「じゃあよろしく」とオレに声をかけると机からピョンと降りて三好たちの方に戻っていく。
ーー……え、マジ?
マジなのかあああああああああ!?!?!?!?
◆◇◆◇
「ねぇ美波、福田となにかあったの?」
放課後。
三好が帰ろうとしていたオレの肩を叩き話しかける。
「ーー……なんで?」
「だって今朝の見たでしょ。 美波、私らに声かけるよりも先に福田のとこ行ったんだよ? 絶対なにかあったでしょ」
「んんー、あったにはあったんだけど、オレは別に何もしてないと言うか……」
オレは頭を掻きながら首をひねる。
普通に心配しただけで、基本小畑の介抱をしていたのはエマだったしなぁ……。
「なにそれ。 意味わかんなくない?」
「うん、オレも意味わからん」
「なーんの話!?」
オレが三好と話していると後ろからエマがオレたちの間に割って入ってくる。
「おぉ、エマ」
「なんか悩んでるように見えたからさ! カナちゃんもどうしたの?」
エマがオレと三好を交互に見る。
「ねぇ聞いてよエマ。 なんか美波が急に福田のこと気に入り出したからさ、なにかあったのかと思って福田に聞いてたんだよね」
「うん」
「でも福田、何もしてないんだって。 普通そんなことなくない?」
三好が不服そうな顔をしながらエマにボヤく。
「あー、もしかしたらあの時かな」
エマが小さく呟きながら視線をオレに。
「あの時?」
三好の頭上にはてなマークが3つほど浮かび上がる。
「そうだよ。 あー……でもこれ言っても良いのかな」
エマはオレと三好を見ながら口元に手を当てて考え出す。
「おいなんだよエマ」
「そーだよ、教えてよー!」
「んーー、ここじゃなんだから、エマん家来る?」
「「え」」
ということでオレたちはそのまま校舎を出てエマの家へ。
もしかしたら手紙の犯人がどこかで聞いているかもしれないから……といったエマなりの配慮だろうか。
さすが中身JK……気の利かせ方が最高だぜ。
◆◇◆◇
エマ家の玄関の扉を開けると金髪天使エルシィちゃんがパタパタと走ってきて、中からお出迎えをしてくれる。
「あ、だいきー、かなー。 エッチーに、会いにきたぁ?」
はい可愛い尊い愛おしい優勝ーー!!!
エルシィちゃんを見てるだけで心が溶けていくような感覚に陥っちまうぜぇ……。
隣にいる三好に視線を向けると三好もオレと同じ気持ちなのだろう……表情をトロンとさせながら柔らかい笑みをエルシィちゃんに向けていた。
◆◇◆◇
「簡単に言うと、ミナミちゃんは初めて女の子の日を経験したんだよ。」
エマの部屋。
エマ独特の甘い香りが充満している部屋の中でエマが回転式の椅子に腰掛けながらあの時どんな感じだったのかをオレたちに教える。
「え、そうだったの!?」
三好が真剣にエマの話に耳を傾ける。
「そうだよ。 だからイライラしてたんじゃないかな。 よく言わない? そういう日ってイライラしやすいとか」
「んー、私まだなったことないから分かんないや。 エマはもうなってるの?」
「ううん、エマもまだだよ」
「そーなんだぁ」
なんかオレも女子にはそういう日があるってのは聞いたことがあったけど、実際よくわからんからなぁ。
だって生まれてこのかた彼女とか出来たことないわけだし、オレが中学や高校の時もそこまで踏み込んだ授業はしてなかったと思う。
それにしても女子って色々と大変なんだなぁ。
オレは最初こそ後学のために2人の話を聞いていたのだが、その話題よりも……
「ーー……」
オレは周囲を見渡す。
ここでエマは寝て、起きて、服を着替えたりしているのか……。
ゴクリ。
この室内に香るエマの香りこそが、エマがこの部屋の主人だと言う証。
あぁ……許されるなら目の前にあるベッドにダイブしてエマの香りを堪能したいものだぜぇ……。
オレはエマと三好の会話を完全にスルーして自分の世界へ。
目を瞑りこの空間でエマが生活している風景を脳内再生する。
シチュエーションはどうしようかな、お風呂入る前に設定しようか。
あれかな、翌日どんなパンツ履いていこうか……とか考えるのかな。
「ーー……イキ」
てかあれだよな、お風呂上がったとして、エマってそういった知識も持ってるわけだし……夜な夜なここで1人でマッサージとかするんだろうか。
となればこの空間にエマの小さな吐息が響き渡っているのか?
くぅうーー!! たまらんぜ!!
「ちょっとダイキ!!」
「え、あ、はい!!」
オレを呼ぶ声が聞こえたのでオレは急いで目を開け、エマを見上げる。
「ちょっと、エマたちの話聞いてた?」
エマが頬をプクーッと膨らませながらオレを可愛く睨む。
「あーすまん、ちょっと眠たくてうとうとしてたかも」
エマのマッサージ風景を想像していたなんて口が裂けても言えない。
健全な『マッサージ』なんだけどネ!
「あれだって。 福田が保健室で美波のことをかなり心配してたのが、美波的に嬉しかったんじゃないかなって話」
三好が聞いてなかったオレに話の内容を端的に伝える。
「あー、そう言えば小畑、それに近いこと言ってたな。 でもさ、心配しただけでそんな好感度って上がるもんなのか?」
そう2人に尋ねると、2人は互いに顔を見合わせて「はぁーっ」と深いため息をつく。
「な、なんだよ」
「ほんっと福田って鈍いよね」
「ちょっとは変態を自重して女の子の気持ちに重きを置いてみたら?」
三好とエマが残念な人を見るような視線をオレに向けてくる。
「ちょ、ちょっと待て。 なんだ? オレが女の人の気持ちをわからないって決めつけてないか!?」
「だからそう言ってんのよ」
エマが椅子から降りてオレの前へ。
腰に手を当てながら前のめりになりオレをジーッと見つめる。
そ……そこまで真剣に見つめられると、もしかしたらそうなのかもって思ってしまうじゃないか。
ーー……ん? てことは……
「なぁ三好」
オレは三好に視線を移す。
「なに?」
「お前さっき、オレは鈍感だって言ったよな」
「うん。 言ったよ」
「てことはさ……お前オレのこと好きなの?」
「ーー……!?!?!?!?」
まぁそんなことはないだろうとは思いながらも一応聞いただけなのだが……なんだ? 三好のやつ顔がめちゃめちゃ赤くなってないか?
「え、三好、ガチ?」
「ば、バカじゃないの!? そんなことあるわけないじゃん!!」
三好は声を震わせながら否定。
オレに「キモい!」と罵声を浴びせながら座った体勢のままゲシゲシと足で蹴ってくる。
「いやダイキ、さすがに今の言葉にはエマも引いたわ」
「え!?」
エマの方を振り向くと、エマがおでこに手を当てながらオレに冷たい視線を送っている。
「なんでだよ! 普通ならそう受け取っちゃうだろ!」
「ならないから!! もう、福田のアホ! 変態!!」
三好のオレを蹴るスピードが格段と増す。
なぁ三好、気づいているか?
力任せに蹴ってるせいでお前のスカートがだんだんと上に上がっていってて……中のパンツ見えてるぞ。
今日のパンツは紺色生地に小さな星型マークかなるほどなるほどニヤァ!!
オレが三好のパンツに視線を集中していると扉が勢いよく開かれる。
「エッチーもしゃべうーー!! エマおねーたんたちだけ、たのちそう、ずういーー!!」
中に入ってきたのはもちろん金髪天使のエルシィちゃん。
エマと同様に赤いほっぺをプクーッと膨らませてエマに抱きつく。
「ねねー、ダイキ、なんのはなし、してたぁー?」
エルシィちゃんがエマの胸元に顔を埋めながら視線をオレに向ける。
「あぁ、このカナちゃんがね、オレのこと好きなんじゃないかって話してたんだよ」
「そかぁー!」
「だから違うって言ってるじゃん!!」
三好がギャーギャー喚きながらオレの言葉を否定する。
「エマおねーたんは、エッチーのことしゅきだもんねー」
エルシィちゃんが超絶的癒しの笑顔をエマへと向ける。
「は……はわぁ!!!」
まさに天使の一撃。
エルシィちゃんの微笑みをダイレクトに受けたエマは腰が抜けてその場で膝から崩れ落ちる。
なんて……なんて幸せそうな顔なんだエマ。
「あ、やばっ。 そろそろ私帰らないと!」
スマートフォンの時間を見た三好が幸せ絶頂中のエマを見ながら慌てて立ち上がる。
「なんだ、なんか用事か?」
「うん、見たいテレビに間に合わなくなるからさ!」
「そうか、じゃあオレも帰るとするかな」
オレも重い腰を上げてよいしょとランドセルを背負う。
「じゃあエマ、また明日ね!」
三好がエマとエルシィちゃんに手を振り部屋を出る。
「あ、はぁーい。 また明日ーー」
「ばばーい!!」
「じゃあオレも帰るわ。 またねエルシィちゃん」
オレもエマたちに挨拶をした後三好の後を追おうとエマの部屋の扉に手をかける。
「だいきー?」
「ん?」
エルシィちゃんがオレを呼んだのでオレは思わず振り返る。
「どうしたのエルシィちゃん」
「エッチーは、だいきのこと、しゅきよぉー?」
ズギャアアアアアン!!!!
まさにキューピッドの矢……いや、キューピッド砲!!
エルシィちゃんの放った甘い言葉が巨大な砲弾となりオレの心を激しく貫く。
エ……エルシィちゃん!! オレもしゅきーー!!!
それで……これは告白と捉えていいのだろうか。
女子の気持ちが分かる方、どうか教えてください。
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