140 嵐を呼ぶラブレター!
百四十話 嵐を呼ぶラブレター!
三好と多田が泊まりにきた翌日の朝。
学校に着き、靴箱で上履きに手を伸ばすと、上履きの間に何かが挟まっている。
「ん?」
手にとって見てみると、それはクマのキャラクターが描かれたゆるキャラの可愛らしい封筒。おもて面には可愛らしい丸文字で『フクダくんへ』と書かれている。
もしかして……いや、もしかしなくてもこれは……
ラブレターってやつじゃないかあああああああああ!?!?
急いで周囲を見渡すと、ちょうど一緒に登校した三好と多田は話に夢中になっていて気付いていない。
オレはラブレターを素早くポケットに収納する。
「ごめん、我慢の限界だからトイレ寄ってくよ。 先行ってて」
そう2人に言い残したオレは早く中身を確認するため、駆け足で図工室前の男子トイレへと向かった。
◆◇◆◇
「へへ……うへへへ」
男子トイレに着いたオレはニヤケながら奥の個室へ。
扉を閉めると同時にポケットからラブレターを取り出したオレは封をしている可愛らしい猫のシールを器用に剥がしていく。
このシールだってJSの誰かがオレのために貼ってくれたんだ……雑に破って剥がすことはできない!
「ラブレターなんて生まれて初めてだぜぇ……」
爪でカリカリと剥がすと封が開き、中に入っていた2つ折りになっている紙が顔を覗かせる。
「やったぜ……やったぜ!!!」
若干息を荒げながら中身を取り出し開くと赤いパステルカラーでハートの散りばめられた柄の便箋……しかし中身はギッシリとは書かれてはおらず、真ん中あたりに数行だけ文字が書かれている。
率直に「あなたのことが好きでした」と書かれていることを期待したオレは胸を膨らませながらその文字に目を通していくことにした。
えっと……なになに??
====
昨日、三好さんと女子トイレで2人でこっそり話してるの聞いちゃった。
面白くなりそうだね。
====
「ーー……え」
オレは言葉を失う。
あの三好とのやりとりを誰かに聞かれていただと……?
ーー……ってあの時か!!
三好と話している途中に聞こえたような気がしていた扉が閉まる音……あれはやっぱり風のせいとかではなくて……!!
「これは……マズイぞ」
◆◇◆◇
教室に着くと中はいつもと変わらない雰囲気。
しかしオレは周囲に注意深く視線を向けながら席へと向かう。
ーー……誰だ?
この教室内にオレの靴箱にあの手紙を入れたやつがいたとしたら、絶対にオレの反応を見て楽しんでいるはずだ。
何としても見つけ出さないと……。
席に着いた後も教室に入ってくるやつらの顔を横目で観察……全員の視線・表情をチェックしていく。
「モブA……違う。 モブBも……違うか」
そうして犯人探しをしていると多田がさりげなくオレのもとへ。
お、多田か。 なんの用だろう。
多田はオレの後ろに立ち窓を眺めながら小さく呟く。
「福田……ごめん」
「ーー……!?!?!?」
オレは多田の言葉に体を大きく反応。 多田の方を振り返る。
まさか多田が……!? いや、多田は今朝一緒に学校に来たわけだし……でも昨日のうちに入れたとしたらありえるのか!? 一体どうして……!
オレが目を大きく見開いて多田を見上げると多田も驚いた様子でオレをみる。
「た……多田?」
オレが多田に声をかけると多田はオレの声には反応せずにそのまま席へ。
しばらくするとポケットの中に入れてあるオレのスマートフォンが細かく振動する。
ーー……多田からだ。
【受信・多田】ここでは話せないから、休み時間に。
まぁそれはそうか。
だってここには三好もいるわけだもんな……もしかしてオレを脅す気か?
とりあえずまずは多田から話を聞かなければ始まらない。
オレは休み時間になるとすぐに多田にアイコンタクトをとる。
それに気づいた多田が席を立ち教室を出て行ったのでオレも一定の距離を開けながらその後をついて行くことにした。
◆◇◆◇
「ほんっとにごめん!」
図工室前の女子トイレ。
いつもの奥の個室に入るや否や多田がいきなりオレに深く頭を下げる。
やっぱり犯人はこいつなのか……!?
「ーー……なぁ多田」
「な、なにかな」
「そのことは……三好には言ってないよな」
オレは緊張しながらも真剣に尋ねる。
「そのこと? ーー……!」
オレの質問を聞いた多田は一瞬考え込むも、すぐに頷く。
「も、もちろんだよ。 言えるわけないじゃん」
「だよな。 ーー……で、それは昨日やったってことで合ってるか?」
「う……うん。 ごめん」
ーー……ビンゴだ。
多田は申し訳なさそうにシュンと俯く。
しかし顔がちょっと赤いぞ?
目もちょっと潤んでいる……泣かれても困るしここは変に圧をかけない方が良さそうだ。
「えっとその……なんでそれやったんだ?」
「し、仕方なかったの。 自分ではどうしようもすることが出来なかったっていうか……」
「そうなのか?」
「うん。 だって元はと言えば佳奈が……佳奈がウチの……」
多田は顔をより赤くしながらスカートの裾を掴む。
喧嘩でもしてたのか? いやでも昨日の2人を見る限りそんな感じには見えなかったのだが……。
オレがしばらく黙り込んで考えていると、多田がゆっくりと視線を上にあげてオレを見つめる。
「ーー……なんだ?」
「でも……1番の原因は福田なんだけどね」
「ーー……」
思ってもみなかった発言にオレの脳が完全にフリーズする。
昨日あれをやった原因が三好で、1番の原因がオレ!?
なにかやったっけ!?!?
オレは必死に昨日の行動を再生させて行くも、心当たりとなるものが何一つ浮かんでこない。
唯一あるとしたら、黒タイツを履いてきていた多田の脚をエロい目で見ていたことくらいだが……でもそれは三好とあまり関係ないよなぁ。
多田は未だににオレをジッと見つめている。
「ーー……すまない多田、心当たりがないんだけど」
そう多田に声をかけると多田は「え?」とした顔で目を大きく開く。
「ーー……ん? 多田?」
「もしかしてあれ、福田のお姉さんの?」
「ーー…え?」
「「え??」」
お互いに話が噛み合わず、同時に首を傾げる。
「えっと……すまん多田、『オレのお姉ちゃんの』ってどういう意味だ?」
「え? あの白鳥パンツ、福田のじゃなかったら福田のお姉さんのだったのかなって思ったんだけど……」
「は、白鳥パンツ!?」
「う……うん」
多田が再び恥ずかしそうにしながらオレから視線を逸らす。
あーー……、これオレが勘違いしてたやつかもしれないな
「すまない多田。 さっきのオレの発言は勘違いだ、忘れてくれ」
「勘違い?」
「あぁ。 なぁ多田、お前がオレに謝ろうとしてた内容を詳しく話してくれ」
「く、詳しく!?」
多田の赤面レベルがMAXまで上昇。
スカートを掴む力が一層強くなる。
「あぁ。 じゃないと話が読めん。 だから頼む」
「わ、わかった。 ちょっと恥ずかしいけど……言うよ」
多田は深く深呼吸した後に小さく頷き、再びオレをチラッと見上げて口を開く。
「あのさ……ウチ、昨日白鳥パンツのまま佳奈と寝たじゃん?」
「うん」
「あの後さ、佳奈の方が先にぐっすり眠っちゃったんだけど、寝ぼけた佳奈が白鳥の首を掴んでグリグリ回しちゃってさ……」
「うん」
「ウチ……よく分かんないんだけど、それがここら辺に当たって気持ちよくなっちゃってね」
「う、うん??」
「そしたらなんか汗みたいなのたくさん出ちゃったんだよね。 朝起きてすぐ言えばよかったんだけど、佳奈やお姉さんいたから恥ずかしくて……ビチョビチョにしちゃって本当にごめん!!」
多田が再びオレに深く頭を下げる。
ーー……な、なななななな
「なんだってええええええええ!?!?!?!?」
オレはできるだけ小さな声で叫びながら多田の下半身をガン見する。
それはもしかしてももしかしなくても……ゲフンゲフン!!! マジかあああああ!!!!
「本当にごめんって! それで福田が今日家に帰ってから驚かないように言いたかったの。 あれお漏らしじゃないからねって!」
「な……なるほど、そういうことか」
どうりで話が噛み合わないわけだ。
「それで……福田は何のことと勘違いしてたの?」
多田が首を傾げながらオレに尋ねる。
「え、あ、いや。 本当にオレのは別にいいんだ。 気にすんな」
「うん……本当にごめんね」
「あぁ、構わん構わん。 ていうかわざわざありがとうな」
スマートフォンを取り出して時間を確認すると休み時間も後わずか。
オレは多田と少し早歩きで教室に戻る。
「あ、そうだ福田」
「なんだ?」
「汗ってさ、気温が暑かったりとか、激しい運動したとき以外にも出るんだね」
「あ……あぁ、そうだな。 てか多田、今朝も思ったんだけどさ、なんか最近の中ではイキイキしてるよな」
「分かる? 昨日汗かいたからかな。 なんか心の中がスッキリした感じするんだよね」
「そ……そうか」
多田よ……スッキリしたんだな。
これからは三好の手を借りずに、1人で頑張るんだぞ。
何をとは言わないけどな。
その後、手紙の存在を一切忘れてしまったオレは授業中や休み時間、多田を見てはニヤついていたのだった。
帰ったら相棒を労ってやるとしよう。
てかあれか? 潤い保湿状態の相棒を履いた状態でオレも汗をかいたらこれはもう間接的にーー……
ゲフンゲフン!!!!
おそらく多田は三好の寝ぼけたマッサージを受けて代謝が良くなって汗をかいた……白鳥パンツから伝わる三好の『愛』が全身のツボを刺激した結果なのだろうナ!!
いやぁ、汗をかくって素晴らしい!!!!
今回もお読みいただきありがとうございます!
下の方に☆マークがありますのでよろしければ評価していってくださると嬉しいです!
感想やブックマークもお待ちしております♪
さぁあの手紙を書いた犯人とは一体……!




