138 夜の出来事!
百三十八話 夜の出来事!
これはオレが相棒の白鳥さんの出る夢を見る少し前の出来事だ。
「ねぇダイキ」
夜。 三好がオレの部屋で眠るということでオレはリビングのソファーで横になっていたのだが、優香が部屋から出てきてオレに声をかける。
「どうしたの?」
「お姉ちゃん今から夜食のおやつ買ってこようと思うんだけどさ、ダイキ、何か買ってきて欲しいものとかある?」
「珍しいね。 お姉ちゃんが夜食とか」
「うん、ちょっと課題で行き詰まっちゃったから気分転換に散歩がてらコンビニでも行こうかなって」
「なるほど……じゃあオレも行こうかな」
オレはゆっくりと上半身を起こして優香に体を向ける。
「いや、お姉ちゃん1人で大丈夫だよ。 それにほら、佳奈ちゃんを1人にはできないでしょ?」
「あー」
オレが返事に迷っているとちょうど三好がタイミングよく部屋から出てくる。
「ねね、何の話?」
「あー、お姉ちゃんが今からコンビニにお菓子買いに行くんだって」
「えええ!! 夜にお菓子とかめっちゃ贅沢じゃん! 私も行って良い!?」
◆◇◆◇
ということで3人で私服に着替えて外に出たオレたち。
11月ということで、昼間はまだ少し暖かいが夜は結構空気が冷たい。
ちなみに今は夜の8時過ぎなのでまだ補導される時間ではないぞ?
「佳奈ちゃんは何か食べたいものある?」
「んとね、今はアイスかなー!!」
「この時期に?」
「うんっ! 外が寒い時に食べるアイスって美味しくない!? それに夏じゃないからすぐ溶けたりしないもん!」
「あー、なるほどね。 そう言われたら私もアイス食べたくなってきたかも」
「へへー、でしょー?」
くそ! 三好のやつめ! 優香を独り占めしやがって!!
オレの目の前では優香と手を繋いだ三好が楽しそうに2人で話し合っている。 本来ならその手を繋ぐ相手はオレのはずなのに……くそ!!
オレは嫉妬込めた視線を三好に向けつつも、なんだかんだで街灯に照らされる2人がかなり絵になっていたので写真を撮ったのだった。
「うわぁ、いっぱい買ったね!!」
コンビニの帰り、オレの持つ袋の中を見ながら三好が感嘆の声を漏らす。
「だったら持つか?」
「ダイキ、同い年の女の子にそんなことさせちゃダメだよ?」
優香が笑いながらオレにツッコミを入れる。
「重いんだったらお姉ちゃんが持とうか?」
「いや、お姉ちゃんが持つならオレが持つ」
「えー、なにそれ」
そう、三好には別に持たせても良いのだが、優香は別だ。
こういう時こそ少しでも楽をさせてあげないといけないからな。
そう思いながら歩いていると三好がオレの耳元に顔を近づけてきて小さく呟く。
「さっすがシスコン」
「なっ……! やっぱお前持つか!?」
「わー、優香さーん、福田が怒ったー」
こいつ……夜中覚えてろよ。
オレが今夜の三好いじりプランを考えていると三好の持っていたスマートフォンからメロディが流れ出す。
「あ、麻由香から電話だ」
スマートフォンの通知を確認した三好が画面をオレに見せてくる。
「え、出れば?」
「うん」
三好は通話ボタンをタップ。 スマートフォンを耳に持っていく。
「もしもし麻由香どったの? ーー……うん、……うんうん、……え!? それマジ!? うんうんうん……」
「ねぇダイキ、麻由香ちゃんってあのオーディションにいた子だよね?」
優香が三好に視線を向けながらオレに尋ねる。
「え、うん。そうだよ」
「どっちの子だっけ。 2人いたよね」
「えっと……前髪が短いボブ気味の……緑の衣装来てた方かな」
「あー、あの子ね。 あの3人とも仲がいいんだ」
「まぁ……そうだね」
オレと優香が三好を見ながら話していると三好が困ったような表情をオレに向けてくる。
「ん?」
口パクで『やばい』と言ってるようだけど……。
「あー、麻由香、ちょっと待っててね。 すぐこっちから掛け直すから」
そう言うと三好は通話を切ってオレたちを見る。
「どうしたの佳奈ちゃん」
「優香さん、福田、どうしよう」
「?」
オレと優香の視線が再び三好へと集まる。
「麻由香、今さっき塾終わったっぽいんだけど、家に帰りたくないって……」
ーー……え?
「ええええええええ!?!?!?!?」
オレは重い袋を持ちながら驚きの声を上げる。
優香は目をパチクリさせながら三好を見ているが……
「それで佳奈ちゃん、どうするの?」
「どうしよう優香さん。 私今自分の家にいないから麻由香泊めてあげられないし……てか今日は福田や優香さんの家に泊まるって決めてたからお兄に悪口言って出てきたから今更帰りたくないし……」
おいおい悪態ついてきたんかーい!!
「えっと……その麻由香ちゃんは大丈夫なの? その……お家のご両親とか」
「あー、たまに私ん家には泊まりに来てるからそこらへんは大丈夫だとは思うけど……」
「うーん……、じゃあその麻由香ちゃんさえ良ければうちに泊まる?」
ーー……え?
「いいの!?」
三好が少し目を潤ませながら優香を見上げる。
「いいけどちゃんと麻由香ちゃんのご両親の許可が出たらね」
「うんっ!」
三好は再びスマートフォンの電源をつけるとすぐに多田に電話をかける。
「あ、もしもし麻由香!? ーー……うん、大丈夫なんだけど、私今家にいなくてさ。 麻由香んとこのママが良かったら大丈夫って言ってくれてるんだけど……うん、うんうん、分かった! じゃあまたよろしく!」
通話を終えた三好が安堵の表情でため息をつく。
「どうだったんだ?」
「うん、とりあえず泊まることをママに言ってからメールするって。 ーー……あ、きたきた」
三好がスマートフォンの通知を確認。
どうやら多田からのようでメールの内容を確認する。
「オッケー出たって、ほらっ!」
三好がそのメールの内容をオレと優香に見せる。
「本当だね。 うん、じゃあいいよ。 麻由香ちゃんはウチの場所わかるかな」
「うん、私の家からの地図送りつけるから大丈夫! それに近くまで来たら電話してもらうから!」
「そっか、じゃあ私たちは先に帰ってよっか。 ほら、佳奈ちゃんと一緒に作ったご飯まだ残ってるから麻由香ちゃん用に温めておいてあげないと」
優香……あなたはどんだけ女神なんだ。
もはやあなたを照らしている街灯の明かりが天から降り注ぐ後光のようだぜ。
「え、てかお姉ちゃんそんなことしてて課題大丈夫なの?」
オレはコンビニに行く目的を思い出して優香に尋ねる。
だってこれ優香の課題の息抜きなんだよな? ご飯温めたりとか……そんなことする時間あるのか?
「ご飯温めるだけだからそんな時間かからないから大丈夫だよ、ありがとうダイキ」
優香が柔らかくも暖かい微笑みをオレに向ける。
「ただ……その後のことはダイキ、ごめんだけどお願いしていいいかな」
「その後のこと?」
「うん、お皿洗いとか、お風呂とか。 流石に私もそこまでしてたら課題間に合わないからさ」
「あ、うん分かった。 そこはやっとくよ」
「私もやるっ!」
オレの隣で三好が手を上げる。
「うんありがと。 それじゃあ帰ってお菓子食べつつ準備しよっか」
こうしてオレたちは少し早歩きで帰宅。
優香がご飯を温め直している途中で三好のスマートフォンが着信し、多田が近くについたことを知らせたのだった。
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