136 黒歴史!?【挿絵有】
百三十六話 黒歴史!?
「ーー……こう? 優香さん」
「そうそう、その調子でもうちょっとだけ混ぜようか」
「うんっ」
夕方・オレの家。
優香の隣で三好が料理の指導を受けている。
結局あの後三好は速攻で家に帰り私服に着替え、本当に今日、うちに泊まりに来たのだ。
なんというかその行動力は流石というか……。
特にやることのないオレは2人の料理の姿をボーッと眺める。
でもまぁ……なんだかんだで絵になるよな。
まるで姉に料理を教えてもらっている妹のようだ。
オレ的には優香と結城にカップリングのほうが個人的には好きなのだが……。
「できた! こんな感じでいいかな!」
「うん、佳奈ちゃんセンスあるね。 じゃあそれはこっちに置いといて、次はこれやろっか」
それにしても優香もなんだかんだで楽しそうだ。
オレもある程度できるようになったらあんな感じで和気藹々とできるのだろうかな。
そう思ったオレはスマートフォンを取り出し【簡単 誰でもできる料理】で検索を入れる。
ーー……なになに、【炒めるだけの簡単鶏肉料理】?
簡単という言葉につられたオレはそのレシピ・工程に目を通して行く。
しかし……。
「ーー……オワタ。 意味わからん」
なんだよ、鶏肉を中まで火が通るまで炒めた後にーー……って下りは。
どうやって中に火が通ってるのを確認するんだ?
あれだな、やはりこういったサイトや料理本は完全初心者には優しくないよな。
オレは小さくため息をついてスマートフォンの電源を切ったのだった。
◆◇◆◇
「えぇ、三好くん、佳奈ちゃんにそんな酷いこと言ったの!?」
夕食時。
三好の「お兄に嫁の貰い手がないって言われた」に対して優香が大きく目を見開きながら三好を見る。
「そーだよ! ねぇ優香さん、お兄酷くない!?」
「うん、それは言っちゃダメな言葉だよね!」
「でしょー!? あーよかった、優香さんにそう言ってもらってやっとちょっとスッキリしたー」
三好は満足そうに優香に微笑む。
「いやでもさ、流石にそのテストの点数19点はやばくないか?」
優香と盛り上がっていて少し嫉妬したオレは2人の会話に口を挟む。
「えー、それはまだ小学生だしよくない? それに私、別に私立の中学とか行こうとも思ってないし」
「あー、まぁ確かにそれはそうだけど……」
オレだってちゃんと勉強しだしたのって高校2年生からだったもんな。
ぶっちゃけいい中学や高校行ったところでその先幸せになれるって保証もないわけだし……中学時代の同級生の話だが、頑張って勉強して有名な高校に進学したらしいのだが、周りとの差をマジマジと見せつけられて退学した、ということを風の噂で聞いたっけ。
ーー……て、あれ? オレもしかして三好に言いくるめられた?
「ちなみに優香さんは私ぐらいの時とかテストの点数どうだったの?」
「えっ!」
突然の三好に振りに優香は一瞬体をビクつかせる。
「おい、流石にそれはお姉ちゃんに失礼だろ。 三好なんかよりも遥かにいい点数とってるに決まってるぞ」
「うん、だったら私も勉強するし! 私、優香さんみたいな人になりたいんだよねー」
三好が尊敬の眼差しを優香に向ける。
「えっと……私みたいに?」
「うんっ!」
「なんで?」
「だって優香さん完璧じゃん! 料理とか家事も出来ておしとやかで大人びてて……それにお兄と学校一緒ってことは頭もいいってことでしょ!?」
「あぁーー……」
ーー……ん、なんだ? なんか優香の返答にキレがないような。
「その……さ、佳奈ちゃん、確かに今は勉強とかちゃんとしてるから……テストも普通だよ?」
「そうなんだ! それで、私くらいの時はどうだった!?」
三好が優香に詰め寄る。
「えっと……うーん、どうだろうね」
優香の視線が宙を泳ぐ。
「えー教えてよ優香さんー」
「んーー、あははははは」
優香が愛想笑いで誤魔化していると突然インターホンが鳴る。
「あ、誰か来たみたい! ごめんね佳奈ちゃん、私ちょっと出てくるよ」
優香は助かったという表情で席を立ち玄関へ。
そして玄関の扉を開けると同時にテンションの高い声が聞こえてくる。
「やほーい、差し入れ来ちゃったよーん!」
そう、その声はギャルJK星。
優香の驚く声とともに一緒にリビングへと入ってくる。
「ありゃ、もうご飯食べちゃってたか、タイミング逃したわぁー!」
オレたちの食事風景を見たギャルJK星がおでこに手を当てる。
「どうしたの星さん」
「いやさ、バイト先の近くにピザ屋さんあるんだけどね、そこでバイトしてる子が研修で作ったピザをくれたのさ。 だからあげようかなーって」
「ピザーー!?!?」
ギャルJK星の声を聞いた三好の目が一気に輝き出す。
「お、ダイキのお友達?」
「うん! 三好佳奈ですっ!」
三好が元気よくギャルJK星に自己紹介をする。
「へぇー、ダイキ、ちゃんと男の子の友達も作りなよ」
それを聞いたギャルJK星がオレに小さく耳打ち。
「ーー……はい」
こうしてギャルJK星も夕食に参加……先ほどよりも賑やかになったのだが……。
「てかご飯中にお邪魔して悪かったね、アタシ来るまで何の話してたの?」
「ーー……!!」
ギャルJK星の急な話題振りに食事中の優香がむせる。
「あ、そうだった思い出した! 優香さんのテストの点数聞いてたんだった!」
三好が思い出したように手を叩く。
「え、ゆーちゃんの点数? 別に悪くないよねゆーちゃん」
ギャルJK星が頭上にはてなマークを浮かべながら優香に尋ねる。
「あ……あははははは」
「違うの、私が聞きたいのは、優香さんが私くらいの時の点数なの」
「あーね、そっちね。 確か小学校の時ってゆーちゃん成績激ヤバだったって中学の時に言ってなかった?」
「ーー……!」
「え、そうなの優香さん!」
三好が興味津々で優香に顔を近づける。
「えっとその……昔の話だよ?」
優香は少し諦めたような……しかしあまり触れられたくないような表情を三好に向ける。
「懐かしいなー。 中2くらいまでだったかな、ゆーちゃんもアタシみたいな感じのギャルしてたんだべ?」
ーー……え?
「「えええええええええ!?!?!?!?」」
オレと三好の声が重なる。
「ほへ? ダイキは知ってるんじゃな……あ、そうか、なんでもないわ、ごめんごめん」
ギャルJK星がオレに謝りながら優香に視線を向ける。
おそらくギャルJK星は優香から事前にオレがあの出来事以前の記憶がないことを聞いていたのだろう。
やはり親友ーー……あ、なるほど。
オレの中で1つ不思議だったことが腑に落ちる。
清楚な優香とギャルな星……何が接点でそんなに仲良くなったんだろうって密かに疑問だったんだ。
なるほどね、過去にギャル同士なら仲がいいのも分かる気がする。
ーー……ていうか優香がギャルか。
オレと三好の視線が優香に集まる。
「もおお美咲!! なんでそんな簡単に言っちゃうの!? 私の黒歴史なのにー!!」
優香が顔を真っ赤にしながら頬を膨らませる。
「いいじゃんいいじゃん、減るもんでもないし。 ちなみにその時に写真あるけど2人とも見ーー……」
「みーさーきーー!!」
ここからは優香が無理矢理に話題を変えて普通のドラマなどの話へ。
そのまま優香の話題が掘り起こされることもなく夕食タイムは幕を下ろしたのだった。
優香のギャル時代の写真……あとで見せてもらおう。
夕食が終わりギャルJK星は帰宅。
優香も期限のある課題がまだあるということで先にお風呂に入って自室で課題中。
そして先ほど三好がお風呂へと向かったのだがーー……
うん、わかってるさみんな。
オレはみんなの期待を裏切らない男・福田ダイキ!
みんなの期待を背中に背負い……いざ、飛び立ちます!!
ぴょーーん!!!!
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