134 波乱のショッピング!
百三十四話 波乱のショッピング!
「おっ! 待ち合わせ場所に早めに待ってるなんてやるねぇダイキ!」
ある日の土曜日。 今日はギャルJK星とお買い物に行く日だ。
もちろんオレの隣には一緒に連れていくと伝えておいたエマもいる。
「は、はじめまして!! エマ・ベルナールですっ!」
エマは少し緊張した様子で深々と頭を下げる。
「うわあああ!! お人形さんじゃん!! めちゃめちゃ綺麗なんだけど!! あ、アタシは星美咲。 よろー!」
ギャルJK星が持ち前のコミュニケーション能力を発揮しながらエマに近づく。
「エマってさ、日本語結構喋れるの?」
「は、はい! 今はどっちかというとフランス語よりも日本語の方が得意ですっ!」
ーー……まぁフランスと日本では滞在時間が違うからな。
「へぇー、賢いんだね羨ましい! それでエマ、ダイキから聞いたぶんには服とかコスメ系のショッピングしたいんだっけ?」
ギャルJKがオレとのやりとりをしたメールを確認しながらエマに尋ねる。
「あ、はい! よろしくお願いします!!」
「おけまるー。 ちょうどアタシも服とかコスメ見てく予定だったしちょうどいいや。 んじゃ、行こっか」
こうしてオレたちはギャルJK星の先導のもと電車を乗り継いで、かなり大きなショッピングモールへと向かったのだった。
◆◇◆◇
ショッピングモールに着くと早速女子2人のお買い物タイムに入ったわけだがーー……。
「うむむ。 実につまらぬ」
今いる場所……そこは化粧品などの美容グッズが数多く棚に並んでいる雑貨屋さんなのだが、ギャルJK星とエマはただいま化粧品コーナーを拝見中。
「うわああ、これ新作出てたんだ!!」
エマが目を輝かせながら商品を手に取る。
「え、エマってもう化粧してんの!?」
ギャルJK星が少し驚きながらエマに尋ねる。
「あ……えっと、ううん、ネットとかで見てて欲しかっただけ! あはははは……」
おいエマよ、頼むから自爆するのはよしてくれな……後々オレがフォローする未来だけは勘弁してくれ。
「へぇー、エマって結構情報屋さんなんだ!」
「いやいやそんなですよ」
「まぁでもエマの持ってるこれはLJCくらいからでいいと思うべ」
ギャルJK星がエマの取った化粧品を確認しながらエマにアドバイス。
LJCーー……ラストJC……中3ってことか。 ややこしい。
「え、そうかな」
「だべ。 だってエマ、こんなの使わなくたって肌はきめ細かいし、白いしでいうこと無しじゃん」
「あー」
「だからもしやるんだとしたらーー……ちょっと待ってて」
ギャルJK星が口元に手を当てながら化粧品コーナーに一通り目を通し、なにやら金色に輝く細いスティック状の何かを持ってくる。
「アタシ的にはこれがエマにぴったりだと思うよ!」
ギャルJK星からそれを受け取ったエマがそれを確認。
「リップ?」
「そそ、エマは幼顔だけど美人さんだし、これくらいの色が映えるかなーって」
エマがキャップを開けると中から桜色?みたいな色のリップが顔をだす。
「あ、可愛い!」
「だべ!? これするだけでも色気爆上がりっしょ!」
「うん! ありがとう星さん、これにする!」
「いいねー! じゃあ今度はエマにアタシに合ったやつ選んでもらおっかなー」
「いいの!? じゃあエマ的にはねぇー……」
いいなぁ楽しそうだなぁ……。
オレは2人の仲睦まじい光景を後ろから見つめる。
これはエマを連れてきてよかったかもしれない。
「どれがいい?」とか「これ似合ってる?」とか聞かれてもそこらへん鈍感なオレには全くわからないからな。
エマもかなり楽しそうだしこれはお互いにウィンウィンだ。
こうしてお昼休憩を挟んだギャルJK星とエマのショッピングタイムは夕方くらいまで続き、オレはただただ楽しそうな2人の様子をただ見守っていたのだった。
ーー……あ、もちろんエマのショッピング袋はオレが持ってるぞ?
なんだかんだでエマももう元気になったとはいえ病み上がりだしな。
◆◇◆◇
夕方前。 一通りの目的を終えたオレたちはショッピングモールを後にする。
「じゃあ今から帰るけど……買い忘れとかない? 大丈夫?」
ギャルJK星がオレとエマを交互に見る。
「あ、買い忘れとかじゃないけど……エマちょっとおトイレ行ってくる!」
「あいよーん」
エマは小走りで近くに見えるトイレへ。
ーー……ここから見えるだけでも女子トイレは結構並んでるみたいだな。
その間オレはギャルJK星と何気ない会話をしながらエマが戻ってくるのを待っていたのだが……
「ーー……んん?」
突然ギャルJK星が少し離れた先に視線を向ける。
「どうしたの?」
「んにゃ、なーんかあっちの方が騒がしいなって思ってさ。 喧嘩かなぁ?」
「ーー……?」
振り返りギャルJK星の見ていた先に視線を移すと確かに穏やかではない雰囲気。
中高生かな……それくらいの男子数人と、それよりも遥かにに体つきの劣る男子数人がお互いに睨み合いながら言い争っている。
「あの小ちゃい方さ、小学生かなー。 それにしてもあんな自分たちよりも小さい子に突っかかるなんてあの中高生の男の子たちかっこ悪いねぇ」
ギャルJK星がため息交じりに呟く。
確かにそうだけど……言い返してるガキどももバカじゃないか?
自分たちが一番強い……とか勘違いしてるタイプなのだろうか。
それかこの公の場なら自分たちには手出しできないだろう……とか思ってるのかな。
そんなことを考えながらぼーっと見守っているとそれは突然起こった。
中高生の1人がガキ1人に殴りかかり、殴られたガキの鼻から血が滴り落ちる。
あーあ、ほらみろ年上に調子に乗って盾突くからそうなるんだよ。
オレはその光景を見ながら口角を上げる。
距離が離れてるので詳しくは見えないが、それでもあのガキどもも十中八九イジめる側の人間。 いつもそうやって誰かをイジめてきたんだ……ここでその痛さを味わうがいいさ!
そして中高生、お前らはもっとガキどもをバチバチにしてから警察にでも捕まるがいい!!
あの喧嘩がもっと激しくなるようオレが心の中で祈った……その時だった。
「はぁ……仕方ないなぁ、これ以上は見てられないし助けに行っちゃるか」
ギャルJK星が頭を掻きながらゆっくりと彼らの方へ。
「えぇ!? 星さん!?」
「あー、ダイキ、ちょっと待っててね。 アタシが黙らせてくるわ」
いやいやちょっと待ってくれ、今行くのは得策ではないぞギャルJK!
あの中高生を見てみろ、近くを歩く大人にめちゃめちゃ睨みきかせてるじゃないか……今行ったら確実に何かされるぞ!!
ああああああ!! もう!!!
色々とお世話になってるギャルJK星にそんな危険な目に遭わせるわけにはいかない。
オレは駆け足でギャルJKに追いつき腕を掴む。
「なに? どしたダイキ」
「星さん、行ったらだめ。 怪我するかもよ」
「でも行かなきゃあれ止まんなくない?」
「星さんが行くならオレが行きます」
オレはエマの荷物をギャルJK星の手に握らせる。
「え? ダイキが? あははは、冗談でしょ?」
「いやガチだよ。 星さんはお姉ちゃんの大切なお友達だし、オレにとっても大切なお姉ちゃんだもん」
「え……うん、それは嬉しいけど相手はダイキよりも年上だよ? 大丈夫なの? 胸ぐらとか掴まれるかもよ? もしかしたらそれ以上の……」
「多分大丈夫かなー。 あ、でもちょっとお願いが……」
ということでオレはとあることをギャルJK星にお願いした後、1人で喧嘩の現場へ。
ぶっちゃけ怖くないかって言われたら少しは怖いが、所詮はガキ同士の喧嘩……20代後半の大人脳をなめてもらっちゃあ困りますぜ。
それにいじめっ子にはどう対処したら楽に済むかは初期の三好や西園寺たちを攻略したオレが1番分かってるしな。
「はいはい、そこまでにした方がいいですよー」
オレは事前にスマートフォンで撮っておいた写真を彼らに見せ付けながら少し離れた場所に立つ。
「あ? なんだてめ」
中高生の数人が標的をオレに変えて近づいてくる。
「はいストーップ。 それ以上近づくとこのボタン押しまーす。 いいですかー?」
オレが親指を添えている場所……そこはSNSサイトへの投稿ボタン。
ここを押すと一気にこの写真が全世界に向けて発信されるようになっている。
「「ーー……!!!」」
中高生たちの動きが一瞬止まる。
「おい、どうするよ! あれ押されたら俺らやばくねぇか!?」
「いやでもよ、ムカつかね!?」
「確かにガキのくせにムカつくな」
中高生は指をポキポキ鳴らしながら一歩、また一歩とオレの目の前へ。
「いいの? これ押すよ?」
「いいけど押した瞬間がお前の最後だけどいいのな?」
「そのスマホもバキバキにしてやるからな」
「嫌なら早くそれ消去して謝れ」
中高生たちは脅すようにオレを睨みつけながらゆっくりとオレのスマートフォンへと手を伸ばす。
「おとなしく渡せばここでいじめられないで済むぜ?」
中高生の1人がオレに向かってニヤリと微笑む。
ククク……やっぱりガキはガキ……どこまで行ってもいじめる側の人間は低脳が多くて助かるぜ。
あまりにもそれが面白くてオレも思わず笑みがこぼれれる。
「お……おい、こいつ笑ってるぞ」
「構うな、速攻スマホ奪ってデータ消してボコボコにしようぜ」
「そうだな」
「ーー……いいのかな? 本当にそうして」
「「「ーー……!?!?!?」」」
オレの言葉に3人の動きが止まる。
「ど、どういう意味だよ!」
「ククク……周りを見てみろよ」
「周り? ーー……!!!!」
オレの言葉通り周囲に目を向けた中高生たちがの顔が一気に青ざめていく。
それもそのはず……なぜならオレの周囲の大勢の大人たちがこちらにスマートフォンを向けていたのだから。
そう。 これこそがオレがギャルJK星にしたお願い……オレがこいつらのもとへ向かってる間にできるだけ大勢のこいつらの喧嘩を見ていた大人に声をかけ、スマートフォンを向けさせるよう頼んでもらっていたのだ。
「もしここでお前らがオレのスマホを奪って破壊したら、ここにいるみんなが証拠を持っている……すぐにそれを警察に提出して迎えにいくから待ってろよ? それともあれかな、今カメラを向けてる人たちのスマホを1台ずつ壊していくか?」
オレは中高生の1人を見上げニヤリと笑う。
「さぁどうしようね……お前らはオレをここでイジめるつもりだったんだろうけど、やめといた方がいいんじゃないかな? これじゃあ逆にイジメになっちゃうよ?」
「「「ーー……!!!!」」」
オレや周囲の大人たちの視線が集中したことにより中高生たちは舌打ちをしながらその場を退散。
結果オレの完全勝利で幕を下ろしたのだった。
ーー……ふぅ、案外ちょろかったな。
「えええ凄いじゃんダイキーー!!!」
ギャルJK星が後ろからオレを抱きしめる。
「あー、星さん」
「え!? あの子たちに何言ってたかは聞こえなかったけどさ、めっちゃかっこよかったよ!?」
「え、あーいや、それほどでも……でへへ」
よせやい、ギャルJK星のいろんなものが背中に当たって嬉しいんじゃい照れるんじゃい!
「んじゃあ頑張ったダイキには……ご褒美かな!」
「え? ご褒美?」
オレは意味が分からずギャルJK星の方を振り返る。
その時だった。
ちゅっ
「ーー……お」
左頬に後ろからギャルJK星のキス……。
「おおおおおおおお!!!」
全身から湯気が出るんじゃないかというレベルでオレの体温が一気に上昇する。
「ほ……ほほほほほほ星さんんんん!?!?!?」
あああ……ギャルJK星がオレになにか話してるけど、この胸の高鳴りで全く聞こえないんじゃあああ!!!
その後しばらくしてエマが戻ってきたのだが、オレは電車の中でも……はたまた家に着いてからもボーッと夢心地の中にいたのだった。
ギャルJK星の唇……セクシーたまらんかったぜよ。
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さて次回、嬉しくも不安な出来事が?
お楽しみに!!
●近々どこかの最新話で挿絵入れようと計画中です♪