131 エマのため!
百三十一話 エマのため!
「それで……さ、なにこの豪華さ」
エマの入院している病室内。
エマは半ば顔を引きつりながら周囲を見渡す。
「いや、これは仕方ねぇよ。 なんかオレが放課後お見舞いに行くって言ったらみんなついてきちゃったんだ」
「それにしても……多すぎない?」
エマの部屋の中にはオレとエマを除いて6人……エルシィちゃん・結城・西園寺・三好・多田・小畑。 なのでこの病室内に8人の子供で埋め尽くされている。
ーー……工藤がいたら嬉しすぎて死ぬんじゃないか?
「それにしてもなんで2組の子達まで? エマ、カナちゃん以外と話したことあったっけ」
エマが不思議そうに多田と小畑に視線を向ける。
そっか、エマは三好とは接点あったんだ……優香が修学旅行に行ってた時に一緒に泊まったんだったぜ。
「それは私もだよー。 でも福田の話を聞いた美波がどうしてもエマと話したいって」
「ーー……ミナミ?」
「じゃーん私だよー」
ドSの女王小畑が待ってましたと言わんばかりに前に出てベッドに腰掛ける。
「え、なんで?」
「隣のクラスの子から聞いたんだけどさ、エマって手毬担なんだよね」
手毬担ーー……あぁ、アイドル事務所サニーズのニューシーってグループのメンバーな。
「うん、それがどうかした?」
「私もサニーズ担で小柴担なんだよね!! だから話したいなーって思ってたの!」
珍しくドS行為以外で小畑が目をキラキラと光らせている。
あー、そいうや小畑がアイドルになりたい理由ってサニーズのイケメンと付き合う……だったもんな。
「へぇ、ミナミちゃん小柴担なんだ! 小柴くん足長くてかっこよくてエマも好きだよ」
「ええええ分かってるじゃんエマーー!!!」
まさかのサニーズがきっかけでここまで仲良くなるなんて。
ある程度話せた小畑は満足したようでかなりご機嫌だ。 オレを見てもいじりにも来ない……少し残念だけどな。
それからしばらくの間皆でわいわいしていたのだが、そろそろ帰らなければいけない時間に。
オレは帰る寸前にエマに耳打ちをする。
「あまり今日は話せなかったからまた夜にメールか電話入れるわ。 ちょっと気になったこととかあるし」
「気になったこと? うん、いいよ。電話前にメールお願いね。 看護師さんにバレたら怒られちゃうから」
「おけおけ。 じゃあまたな」
◆◇◆◇
「エッチー、きょーは、ユウカとねうー!」
元気なエマを見て安心したのかエルシィちゃんは帰ってからもご機嫌モード。
今日は優香と一緒にお風呂に入り、その後も一緒に寝る宣言だ。
「うん分かった。 じゃあオレは部屋でやることがあるから……先におやすみお姉ちゃん、エルシィちゃん」
「あ、うんおやすみダイキ」
「だいき、おやしゅみー!」
オレはリビングでくつろぐ2人に見送られながら部屋へと戻り、スマートフォンを取り出しエマに連絡を入れる。
「ーー……あ、エマ。 今大丈夫っぽいな」
『うん。 さっき巡回終わったからある程度は大丈夫だと思う。 それでーー……なに? ダイキが気になってたことって』
「あぁ、大したことじゃないんだけどさ、なんでエマはエルシィちゃんのことをそのまま名前で呼んでたのかなーって思ってさ」
『ーー……どういうこと?』
ああーー、なんて説明すればいいかなぁ。
「ほら、外国だとさ、名前を愛称で呼ぶこととかあるらしいじゃん? 例えばエリザベスだったら『エリス』とか『ベス』とかさ」
『そうなの? エマ、日本人だから分かんないかな』
「だよなぁ」
『それがどうかした?』
「いやな、もしエルシィちゃんが本来のエマに別の呼び方されてたらバレちゃうんじゃないのかなーとか心配になっただけなんだ。 深い意味はない」
『なるほどね。 うん、でもエルシィ別に不審がってないし大丈夫なんじゃないかな。 エマが書いてた日記にもエルシィのことは『エルシィ』って書いてたし』
なるほどな、そこから呼び方を決めた……ということか。
『ーー……え、別にエルシィがなんか言ってたとかじゃないのよね?』
少しの無言で心配させてしまったのかエマが少し緊張しながらオレに尋ねてくる。
「あぁうん。 違う。 そこは安心してくれ」
『良かったぁー。 エルシィがそれでエマから離れて行ったら、エマ、もう生きてく意味ないからね』
もしかしてエルシィちゃん、それを感じてエマを姉として接しているのだろうか。
「ーー……そこまでか。 まぁそうだよな、エルシィちゃん天使だもんな」
『ほんと天使だよ。 エマ、外国のこの体に入って最初は心閉ざしてたんだけど、その心の扉を開いてくれたのはエルシィだもん。 エルシィのためだったらなんだってできるよ! だってエマ、もう1回死んでるんだし』
うむ、そこは同感だ。
オレだって1回死んでるんだ……優香に何かがあったらオレも迷わず助けに向かうだろうさ。
「じゃああれだなエマ、もう倒れられねえな」
『そだねー、確かにエマ、エルシィのために動きすぎてたかもってのはあるよ。 ストレスとか発散しないとダメだよねー』
電話越しでもわかるくらいにエマは大きくため息を吐く。
「いや、ストレス発散は結構してるだろ。 露出とかノーパンとか」
『ほんっと分かってないなぁダイキは。 それはエマの三大欲求の性欲を満たしてるだけなの』
「ーー……エマの三大欲求? じゃあまだあんのか」
えっと人間の三大欲求が確か【食欲・性欲・睡眠欲】だったっけか。
それに対してエマの三大欲求って……?
『もちろんだよ! エマの残り2つは睡眠欲と物欲だよ!』
「うん、睡眠欲はわかるわ。 ーー……物欲?」
何か欲しいものでもあんのか?
『そそ物欲。 だってダイキ、ほら考えてみてよ。 このエマの体に入る前の小山楓だった頃、JKだったんだよ!?』
「うん」
『友達と洋服とか買いに行きたいし、コスメとかもわちゃわちゃ情報交換しながら選びたいし、あとほら、恋だってしてみたい!』
「ーー……恋って物欲なのか?」
『物欲でしょ! 女子とか言うじゃない、「彼氏欲しいー」って。 欲しいって言ってるくらいだから物欲のなかに入ってんの!』
「そんなもんなんだ」
『そう、そんなもん! だからそうだなぁー、欲を言っちゃえば優香さんとショッピングとか行きたいけど、結構ダイキの世話やたまにエマたちのお世話もしてくれてるじゃん? だからこれ以上お願い事し辛いんだよね』
エマが少し残念そうに話す。
「あー、それわかるわ」
『でしょ!? でも、かと言って同学年の子たちと買い物行ったとしても多分話が合わなさそうだしさ』
「やっぱそこはJKじゃないとあれか」
『そだねー。 やっぱエマも中身はピチピチのJKだからねー』
うむ……中身20代後半のオレがその買い物に付き合ってやってもいいが残念なことにオレはそっち系の知識は0に近いからな。
なんとか力になってやりたいがこればっかりはーー……
「ーー……ん?」
とある考えが思い浮かんだオレは思わず口から声を漏らす。
『え? どうしたのダイキ』
いるじゃないか。 優香以外にも現役のJKが……しかも優香よりも陽キャで服やらコスメ系にも明らかに強そうな人材が!!
「エマ、そのショッピング系、もしかしたらオレが叶えてやれるかもしれない」
『ーー……え、どういうこと?』
「とりあえず続報を待て。 近々またその件について進展があれば連絡する」
オレはエマとの通話を終えるとすぐにその人材……ギャルJK星に連絡を入れる。
【送信・星美咲】星さん、一緒に買い物行く日って決まってる?
【受信・星美咲】休みとかならいつでもいいよー! え、どうしたのノリ気!?
【送信・星美咲】1階上に住んでる外国出身の女子がお洒落な高校生と買い物とか行きたいって言っててさ、星さんならどうかなーって
【受信・星美咲】あーその子知ってるかも、ゆーちゃんが言ってた! フランスの子なんだっけ?
さすがは優香の親友。 話が早いぜ。
【送信・星美咲】そうそう。 あれだったら一緒に連れて行ってあげたいなって思ったんだけど……ダメかな
【受信・星美咲】んー、どうしよっかなー。 アタシ、ダイキとデートするつもりだったからなぁーー
「ーー……?!?!?!?!?」
なんだってエエエエエ!?!?!?!?
あまりにも突然の告白に動揺しているとすぐさまもう1通のメールが届く。
【受信・星美咲】冗談だよーん。 焦った?笑 じゃあその子も予定空いてる土日あったら連絡してちょ
冗談なんかーーい!!!
なんとなくそうだとは思ってはいたけどやはり少しは悲しいぜオレも男だし。
しかしあれだな、これでエマの三大欲求の1つ【物欲】も解消されるわけだ。
【睡眠欲】は眠れば済む話。 オレにできるのは残りの1つ【性欲】の解消だが……
言ってもエマも相当な変態だ。
近々なんかあいつが喜びそうなシチュエーションを考えてやるか……変態脳なら負けてないからな。
ニヤニヤ。
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