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13 次のターゲット


 十三話  次のターゲット



「福田ぁ、朝からキモい顔見せんなよ!!」


「いたっ……!」



 朝。 正面玄関・靴箱の前でクラスのクソ野郎から勢いよく背中を押されて尻餅をつく。

 こいつ、男の分際でオレに手を出そうとは……いずれ殺す。



「なんだその反抗的な目は」

 

「……いや、なんでもない」


「さっさと失せろバーカ!!」



 オレを押した男は上履きに履き替えた後に他クラスの男子と合流。 馬鹿高い笑い声を上げながら教室に向かっていった。



「ーー……ったくガキの分際で舐めやがって」



 オレはため息をつきながらも上履きに履き替えて体を教室のある方向へと向ける。

 しかしその途中……ふと視界に何かが映った気がしたので振り返ってみると、他クラスの下駄箱前で女の子が地面に座り込んでいるのを見つけた。


 あれは確か……前にハンカチ落として拾ってあげた子だよな。

 もしかしたらお腹とか痛くて動けないのかも知らない。 オレは静かに女の子に近寄ると「どうしたの?」と話しかける。



「ーー……」



 オレの声は聞こえているはずだが女の子は何も喋らず無視。 ずっと一定の方向……下駄箱の中に視線を向けていた。


 

「ん? おーい、さっきから何を見て……うわっ!」



 視線を女の子と同じ方向へと向けてみると、その先には上履き。 その中にはびっしりと水を多く含ませた土……泥が詰め込まれているではないか。


 これは間違いなくイジメ……しかも上履きにするとはまたなんとも典型的で幼稚な方法なのだろう。

 オレは「うわー、こりゃヤベーな」と呟きながら泥を上履きから落としていると、女の子は小さく口を開いた。


 

「どうしよう、教室……いけない」



 そう声に出した女の子の目には薄っすらと涙。


 はぁ……、てかなんでこれくらいの年のガキって、こういうバカないたずらが好きなのかねぇ。

 それにそこの少女よ。 上履きが汚されただけで教室いけないって絶望してるのも考えが浅はかすぎるぞ。



「はぁ……こっちきて」


「え」



 オレは女の子の手を取り立ち上がらせるとそのまま保健室へ。

 保健室には予備の上履きがいくつか常備されてるからな。 そこでオレは保健医に簡単に事情を説明し、女の子は貸出用ではあるが無事上履きを手に入れることができたのだった。

 


「ほら、これで靴下を汚すことなく教室行けるな」


「うん……ありがとう」



 女の子があの時と同じようにペコリと頭を下げる。

 その時にオレは偶然にも彼女の名札に視線がいったのだが……


 苗字、『結城』っていうんだ。



 ◆◇◆◇



 その後三好たちにその子のことを聞いてみたところ、あの結城って子は4組。 どうやら少し前に引っ越してきた子らしい。



「あー、結城桜子さんね。 結城さんもいじめられてたと思うよ」



 昼休み、階段の踊り場から多田が4組を覗きながら呟く。



「そうなんだ」


「いや福田、覚えてないとか最悪じゃん」



 何も知らない小畑の気持ちのいい蹴りが背後からオレの下半身に炸裂。

 うん! 最高! ちょっと痛いくらいが絶妙に心地いい!!!



 オレがそんな快感の酔いしれていると、多田が「そういや結城って誰にいじめられてんの?」と三好に尋ねた。



「えーと……、確か西園寺さんだったかな」


「うわぁ、西園寺さんに目を付けられたら終わりだわ」



 多田が再び4組に同情の目を向ける。



 ーー……ん? 西園寺? だれ?



「えっと……西園寺さんって?」


「福田ほんとバカだね! 西園寺さんっていったらめっちゃお金持ちの一人娘で、取り巻きはみんな西園寺さんの味方。 逆らった子は痛い目に遭わされて不登校になってんじゃん!」


「そ、そうなんだ。 ありがとう小畑さん」


「いや知らないとかどんだけー?」



 バシィ!!


 あん気持ちいい!!!



 しかしなるほどな、お金持ちの一人娘・西園寺か。

 聞く限り自分の思い通りにならないと気が済まないわがままな女の子……こういううるさそうなメスガキを服従させる漫画とか昔よく読み漁ったよなぁ。



 これは、やるしかない。


 

 その日の放課後。 オレは下駄箱付近で三好を見かけたのですれ違いざまに声をかける。



「なぁ三好」


「え、なに?」



「西園寺さん狙うわ。 手伝ってね」

 

 


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