129 突然の出来事【挿絵有】
百二十九話 突然の出来事
とある平日の夕方……それは突然だった。
「だいき! だいき!!」
優香がまだ帰ってきていないのでリビングでのんびりしていると外から金髪天使エルシィちゃんの声。
どうやらオレを呼んでるようだが……
「だいき、だいき、だいき!!」
なんだ、めちゃめちゃオレの名前呼ぶじゃないか。
もしかしてこれは恋愛フラグか何かなのかな。
そんなことを考えながらオレは玄関へと向かい、ゆっくりと扉を開ける。
「んー、どうしたのかなエルシィちゃん」
「だいき! くる!」
「ん?」
エルシィちゃんがすかさずオレの腕を掴む。
顔を見ると目からは大量の涙。 その表情から焦りと緊張がビシビシと伝わってくる。
「え、エルシィちゃん、何かあった?」
「エマおねーたん、バターン!!」
「ええええええええ!?!?!?!?」
◆◇◆◇
エマ宅。
エルシィちゃんとともに向かったオレがリビングで目にしたのは全身から大量の汗をかきながら床で仰向けに倒れているエマの姿だった。
「だいき、どーすう!? エマおねーたん、だいじょぶ!?」
後ろからエマがオレの服の裾を力強く何度も引っ張る。
「お、おい大丈夫かエマ!」
オレはエマの隣にしゃがみ込み身体を揺する。
「ん、ダ……イキ?」
意識が朦朧としているエマが細く目を開く。
「お前どうしたんだ!」
「ーー……」
おいおいこれやばいんじゃないか!?
額に手を添えて見るとかなりの熱だ。
オレはこのまま寝かせるべきか一瞬迷うも後ろで心配そうにしているエルシィちゃんを見てすぐにポケットからスマートフォンを取り出して救急車を呼ぶ。
「だいき! エマおねーたん……どーなう!?」
「わからない、とりあえず救急車来るからそれまで待ってようか」
ぱしっ
オレがエルシィに伝えているとエマが力なくオレの手首を掴む。
「お、エマ大丈夫か!? 動けるか!?」
「ダイキ……救急車呼んで……くれたんだ」
「あぁ! だからもうちょっとの辛抱だ頑張ってくれ!」
「エマおねーたん!!」
エルシィが号泣しながらエマに覆いかぶさるように抱きつく。
「あのさ……ダイキ……」
「なんだ!?」
「エマ……今パンツ履いてないからさ、救急車来るまでに履かせてくれない……?」
「ーー……は?」
こうしてオレはエマの下着入れからパンツを拝借。
言われた通り救急車が来るまでにパンツを履かせ、エルシィちゃんとともに到着した救急車に乗り込んで病院へと向かったのだった。
◆◇◆◇
「いやー、ごめんねダイキ、心配させちゃって!」
病室内。
すっかり元気になったエマがベッドの上からいつもの笑顔でオレとエマに微笑む。
「エマおねーたん! だいじょぶだたぁ!?」
「うんめちゃめちゃ大丈夫だよ、ありがとうエルシィ」
「エマおねーたーん!!」
ベッドに乗り込んでエマに抱きつくエルシィちゃんの頭をエマが優しく撫でる。
かなり心配していたのだろう……エルシィちゃんはエマに抱きついてしばらくすると、安心からかその場でスヤスヤと寝息を立て始める。
「それで……結局なんだったんだろうな」
エルシィちゃんが眠ったのを確認したオレはエマが倒れた原因がなんだったのか尋ねる。
「うん、お医者さんが言うには、身体にはどこも異常なかったんだって」
「マジか」
「そう。 だから様子見で数日入院しないかだってさ」
「へぇー、入院か」
「でもなぁ……エマ、断ろうか迷ってるんだよなーー」
エマは唇を尖らせながら天井を見上げる。
「なんでだ?」
「だってその間エルシィのお世話出来なくなっちゃうしさー」
エマは視線を下ろし優しい表情でエルシィちゃんを見つめる。
「いや、そこはその期間中オレがやるぞ?」
「でもなー、ダイキめちゃめちゃエッチだからなぁー!」
「は!? 流石にこんなちっちゃい子には同意のないセクハラはやらねーよ!」
実際はやらないけどな。
「あははは、冗談だって」
オレとエマが話していると病室の扉がノックされ、後から駆けつけて医師と話をしていた優香が中に入ってくる。
「あ、エマちゃん。 もう大丈夫?」
「優香さん、うん、エマもう元気だよありがとう!」
「さっきお医者さんと話したんだけどね、もしかしたらエマちゃん、疲れやストレスが溜まってるのが原因じゃないかなーって言ってたよ」
「そっかーー。 ごめんなさい優香さんにまで迷惑かけちゃって」
エマが優香にぺこりと頭を下げる。
「あー、いいのいいの! それよりもエマちゃん入院するんでしょ? エルシィちゃんのことは私とダイキでちゃんとお世話しとくから、エマちゃんはゆっくりここで療養するんだよ」
優香が優しい微笑みと言葉をエマに向ける。
「優香さん……。 うん、優香さんがそう言ってくれたらエマ安心しちゃった。 じゃあちょっとの間、エルシィをお願いします」
「うん、任せてエマちゃん」
エマと優香がオレを挟んでお互いに微笑み合う。
「なぁエマ、それさっきオレも言ったぞ? なんでお姉ちゃんの場合はすぐお願いするんだ?」
「それこそが信用度だよダイキ。 エマ、優香さんのことめちゃめちゃ信用してるもん!」
「わぁ、エマちゃんにそう言ってもらえて嬉しいな」
「へへへ」
「えへへへ」
ーー……。
「あのねお姉ちゃん、救急車が来るまでの間にエマ、オレになんて言ったと思う? パンーー……」
「うわああああ!! エマ、ダイキのことも信用してるよ当たり前じゃんーー!!!」
こうして数日間エマの入院が決定。
その間オレと優香でエルシィちゃんの面倒を見ることとなったのであった。
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いやぁエマちゃんもやはり可愛いですねぇ。描いててキュンキュンしちゃいました 笑