127 コネコネナデナデ☆オレピンチ!
百二十七話 コネコネナデナデ☆オレピンチ!
「な……なんということだ」
オレは自分用の仮装衣装をダンボールの中から取り出して愕然とする。
「え、ダイキそれ選んだんだ……」
「福田くん……」
オレの持っている衣装を見た優香と結城が静かにオレに視線を向ける。
そうーー……オレが適当にポチッと選んだ衣装……それは股間の場所から白鳥の首がグインと伸びているいわゆる白鳥パンツ。
なんでこんなものを押してしまってたんだオレえええ!!!
値段の場所だけを見て割と安価なものを選んだ結果がこれだよ!!
「あの……いや、違うんだよお姉ちゃん、結城さん。 多分だけど何かの手違いで間違えて押してしまったものかと……!」
オレは必死に言い訳をしながらこの白鳥パンツを履かなくてもいいような方向へ持って行こうと試みる。
しかしーー……
「んーー、でもハロウィン明日だし今から頼んでも間に合わないもんね」
優香が苦笑いをしながら白鳥ヘッドに視線を移す。
「あの……出来ればオレだけ仮装なしとか」
「それは誘ってくれたエマちゃんたちに申し訳ないからダーメ。 いいじゃない、ムードメーカーになって盛り上げたら」
「ええええ……」
「その、福田……くん。 嫌だったら私の幼稚園の服と交換……する?」
結城が幼稚園児衣装を持ちながらオレの顔を覗き込む。
「いや、結城さんそれは申し訳ないからいいよ」
「え……でも」
ぶっちゃけこれ履いてる結城を見たくない……と言ったらウソになるが、どちらかというと結城には幼稚園児の服を着て欲しい。 だって可愛いし……。
だから結城……そんな慈愛に満ちた顔でオレを見つめないでくれ。
「あ、私いいこと思いついちゃった!」
突然優香が両手をパンと叩いてオレを見る。
「え、なに?」
「ダイキさ、それは履くの恥ずかしいんでしょ?」
「うん」
「だったら今から履いて慣れちゃえばいいんだよ!」
「ーー……え」
優香の顔を確認するもその目は本気そのもの。 まったくオレをいじろうとか、そんなことを考えているようには見えない。
「えっと……お姉ちゃん、ガチ?」
「ガチだよガチ! ちょうどさっきお風呂沸いたしさ、夜はパジャマの代わりにそれ履いて過ごしちゃいなよ! そしたら絶対明日気持ち軽くなってるはずだから」
優香はオレを立たせて半ば強制的にお風呂場へ。
「これってパンツ……なんだよね。 じゃあ上はいつものパジャマと、下はこの白鳥さんだけで良さそうかな」
「え」
「ちゃんと履いて出ないとダイキ変態さんになっちゃうから気をつけてね」
「え」
「それじゃ、お風呂ごゆっくりー」
「ええええええええ!?!?!?!?」
◆◇◆◇
「やべえ……これマジでやべえぞ」
お風呂から上がって白鳥パンツを履いたオレはその違和感に困惑する。
詳しく説明するのは避けるのだが、少し動くだけで白鳥さんの頭が上下左右に傾いてブラブラ揺れるのでその振動がダイレクトに伝わってくるのだ。
分かる人なら分かるであろう……これが何を意味するのかを!! 振動が刺激となりどうなるのかを!!
「はぁ……あの時もっと自分の衣装にも気を使ってれば」
オレは深いため息を吐きつつも重い足取りでリビングへ。
するとちょうど晩御飯の食器を並べていた優香と結城がオレに気づく。
「「ーー……」」
2人とも無言でオレの白鳥ヘッドを見た後にそのまま視線をあげてオレを見る。
そしてーー……
「ーー……っぷくく」
「え」
「あははははははは!!! ダイキ、それ面白いよ!!!」
笑いを堪えれなくなった優香がオレの白鳥ヘッドを指差しながらお腹を抱えて笑いだす。
「……っくく、、ゆ、優香さん……福田……くんが、かわいそう……っぷくく」
結城もオレから顔を逸らしてはいるが、細かく震えていることと耳が真っ赤になってることからかなり面白がっていることは想像に容易い。
「ほら! やっぱりこうなるって思ったから履くの躊躇してたのにいい!!!」
「大丈夫だよダイキ……っぷくく、ほら、よく見たらこの白鳥さん可愛いじゃん。 ねぇ桜子ちゃん」
オレのもとに寄ってきた優香が涙を指でぬぐいながらオレの白鳥ヘッドの頭を撫でるようにこねくり回す。
「ほぁ!! ちょっとお姉ちゃん!! 何してんの!!」
「え、何ってダイキの相棒に挨拶してるんだよ。 ほら、可愛い可愛いねぇー」
コネコネコネコネ
「ホアゥアアアアアーー!!!」
白鳥ごしに優香の愛がダイレクトに伝わってくるぜ!!!
もちろんどこにとは言わないぞ……あえて言うならそう、魂にだ!!
優香の愛がオレの相方・白鳥ヘッドを伝ってオレの魂に直接注ぎ込まれていく。
これは……これはまさしく合法電気あん……ゲフンゲフン!!!
「ーー……ん、どうしたのダイキ、なんか息荒いよ」
優香が興奮しているオレに気づいて顔を覗き込む。
「いや、恥ずかしいだけ。 どうせならもっと白鳥を撫でて欲しいかも」
「え? うん。 それはいいけど……なんで?」
「たくさん近くで触ってもらった方が慣れてくるかなって」
オレはそれっぽいことを言って優香をその気にさせる。
「そういうことか。 うん、じゃあ明日はダイキをよろしくね白鳥さんーー!!」
コネコネコネコネコネ!!!
ふぉああああああああああ!!!
優香の白鳥ヘッドなでなでによりオレの体温が一気に上昇していく。
それにしても優香の愛情伝達の上手いこと……!
これによりオレの体がガクガクと震え始める。
ーー……あ、先に言っておくが優香の白鳥に対する愛に感動して体が震えてるだけダカラナ。
うむ……しかし西園寺と同じだな。
緊張と興奮でオレも汗をかいてきたようだ。 そろそろ休んでクールダウンしないといけないっぽいぜ。
「あの、お姉ちゃん、もういいよありがとう」
オレは一歩下がって優香の手から白鳥ヘッドを離して力なく頭をぺこりと下げる。
「そうなの? なら良かったよ。 じゃあご飯もう用意出来るから椅子に座ってて」
優香は優しくオレに微笑むと再びキッチンに向かう。
「あ、じゃあちょっとオレは先にトイレに……」
助かった……と思いながらもオレは息を整えながらトイレのある方向に体を向ける。
その時だった。
「福田くん……私もちょっと撫でる」
「え」
突然パタパタと結城がオレのもとへ駆け寄ってきて白鳥ヘッドを掴む。
ムムッ!!
「えっと……結城さん? なんで?」
オレは額から割と大量の汗を流しながら結城に尋ねる。
「だって……私も撫でて福田くんに慣れて欲しいから。 ーー……だめ?」
俯き加減の結城が上目遣いでオレを見上げる。
ふっ……こんな顔されて断れる男がどこにいるんだ。
結構色々と限界だけど結城よ。 オレの相棒の白鳥ヘッド……撫でてやってくれ。
オレはこくりと頷いてどうぞと言わんばかりに白鳥ヘッドを結城に突き出す。
結城はその白鳥ヘッドの頭に手を添え……そして……
「白鳥さん、明日は福田くんを……お願いね」
ポンポンポンッ
「ーー……!!!!!!」
ゆ、結城よ!!! 今までの流れだとそこはヨシヨシかナデナデだろう……!!
なのにここにきて……何故この状態の時にまさかのポンポン!!!
そりゃあないですぜ結城さん!!!!!
今までで一番の愛が白鳥からオレの魂へと伝わる。
ーー……あぁ、愛って素敵だぜ。
優香と結城の愛にたくさん触れたオレはトイレに向かった後に再びシャワー。
そこで普通のパジャマに着替え直してリビングへと向かったのだった。
え? オレの相棒の白鳥ヘッドはどうなったのかって?
あいつも汗かいてたからな。 夜な夜なお風呂場で洗ってドライヤーで乾かしてやったさ。
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次回がハロウィン回本番!
挿絵なんとか間に合うよう頑張りますねっ
その次から話が進んでいくので是非ご覧ください!




