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118 願いは刻を超えて【挿絵有】


 百十八話  願いは刻を超えて



 朝早く起床し出発。

 優香とギャルJK星に連れられてオレたちが辿り着いた場所……そこは……。



 「ーー……おぉ」



 オレたちの目の前には大きな建物。

 その外壁は青っぽく、所々に魚のイラストが描かれている。

 そう、水族館。

 見たところなかなかに新しそうな感じはするけどどうなんだろう。



 「うわあああ!! 優香ちゃん美咲ちゃん、陽奈ここ来たかったところやー!!」



 結城が目を大きく開いて眺めている横で陽奈がテンション高めで優香とギャルJK星の手を握ってぴょんぴょん飛び跳ねる。



 「え、陽奈ちゃんここ知ってるの?」


 「うん! 陽奈が2年生になってすぐだったかな、新しい水族館が出来たってテレビでやってたの見たもん!」


 「ってことは3年前くらい? うん、ここ出来たのそれくらいだから陽奈ちゃんが覚えてたのであってるよ」


 「やったぁあーー!! ありがとーー!!」



 こうしてオレたちは入場券を購入後、中へと入っていったのだった。



 ーー……遊園地じゃなくてちょっとホッとしたオレがいるぜ。

 陽奈と一緒だったらお化け屋敷に連行されるの目に見えてたからな。



 ◆◇◆◇



 「あ、優香さん見てあれ! クラゲ!」


 「ほんとだねー。 桜子ちゃんはクラゲ好きなの?」


 「うん、綺麗だから好き!」



 クラゲコーナーで結城と優香が楽しそうに水槽内のクラゲを眺めている。

 ほんとあの距離もう姉妹じゃねえか。


 

 「あはははっ、そんなこと言ったら桜子ちゃんもクラゲ買ってんじゃん」

 


 結城の後ろから水槽を眺めていたギャルJK星が結城の肩をツンツンつつく。



 「え?」


 「ほら、ここ」


 

 そう言ってギャルJK星が次につついたのは結城の髪のお団子部分。



 「なんで?」


 「ほら。 このお団子が頭でさ、その周りからはみ出てる髪の毛が足っぽくない?」


 「あ、ほんとだ」


 「あははははは」


 「えへへへ」



 え、なにこれギャルJK星と結城の絡みって実はそこまで見てなかったんだけど、これはこれで尊いぞ。

 ぶっちゃけオレ的には水族館内の魚たちよりも今の結城や優香、ギャルJK星の絡みの方が興味あるんだが……。


 ーー……と、そんなことを考えながら3人のやりとりを眺めていると陽奈がいないことに気づく。


 

 「あれ、陽奈どこ行ったんだ迷子か?」



 周囲を簡単に見渡しても見当たらないので少し戻ることに。

 するとクラゲエリアの前エリア……エイや他の魚たちが泳ぐ大水槽エリアの目の前で静かに見上げている陽奈を発見。 オレは声をかけようと陽奈のもとへ近寄ったのだが……



 「ーー……え」



 近くに寄ってみて気づく。

 陽奈の目からは一筋の涙……泣いている?



 「お、おいどうした陽奈大丈夫か!?」



 迷子になり困っていたのかと思ったオレは慌てて陽奈に駆け寄り腕を掴む。



 「え、あぁ……ダイきち?」


 「お前……泣いてんの?」


 「あ、うん。 ごめんね、ちょっと陽奈、色々と思い出してたけん」


 「思い出してた?」


 「うん、お姉ちゃんのこと……」



 そう言うと陽奈はおもむろに愛莉さんノートを取り出してページをめくり、オレに見せる。



 「このページはダイきちも優香ちゃんも桜子にも見せてなかったところなんやけど……」


 

 受け取って見てみると確かに一昨日オレが見たところとは別のページ……結構後ろの方に書いてたんだな。

 途中から空白のページになってたからあれで全部だと思ってたぜ。


 ページの上部には『元気になったら陽奈ちゃんとやりたいこと』と書かれている。

 そしてその内容はーー……



 ・陽奈ちゃんとまた川で遊びたい


 ・陽奈ちゃんにお勉強教えたい


 ・陽奈ちゃんが五年生になったら肝試しをしたい

 

 ・陽奈ちゃんとお買い物に行きたい


 ・陽奈ちゃんと一緒にテレビを見て一緒に笑いたい


 ・陽奈ちゃんとテレビで見た水族館に一緒に行きたい



 「ーー……あ、これか」



 オレは最後の文章、水族館に行きたいと言う項目を指差して陽奈に尋ねる。



 「うん」


 「だから陽奈、ここがそういう場所だって知ってたんだな」


 「そうだよ。 これがテレビでやってるときはちょうどお姉ちゃん入院してて、一緒に病室で見てたけん覚えてるの」

 

 「そうか」


 「うん。 それで陽奈、お魚好きだから行きたいなーって言ってたら、お姉ちゃんが私が元気になったら一緒に行こうねって言ってくれてこのノートに書いてくれたんだよ」


 「なるほどな」



 そう言われてみれば、最後の水族館の文章だけ少し楽しそうな筆跡で書かれているように見えるし……陽奈の前で書いたからってのもあるのかな……そこだけピンクのペンが使われている。



 「じゃあよかったなここ来れて」


 「うん、お姉ちゃんもしかして分かってたのかな……」



 陽奈がポケットから出したハンカチで涙を拭いながら、自身の着ている服……青いワンピースに視線を落とす。



 「ん、なんでだ?」


 「このワンピースね、お姉ちゃんのやけん」


 「え」


 「陽奈ね、ダイきちの家に行こうとする準備をしてる時は入れてなかったんやけどね……行くちょっと前になんか分からないんやけど、これも持っていかないとって思ったんだ」



 あー、愛莉さんならやりそうだな。

 陽奈の禁断動画をエラーで見れなくしたりするくらいだし。



 「でもそのおかげで陽奈、お姉ちゃんと水族館来れた……」



 陽奈は優しい視線を愛莉さんの青いワンピースへと向けて上から優しく撫でる。



 「陽奈……」


 「ねぇダイきち、お姉ちゃんもどこかで見てると思う?」


 「それは……お前が分かってんじゃないのか?」


 「え?」


 

 陽奈がゆっくりと視線を上げてオレを見つめる。



 「あれだぞ、肝試ししてたら心配して来るくらい妹大好きの姉なんだぞ? だったら今は視えてないだけでそこに……隣にいるんじゃねーの?」


 

 オレは陽奈の隣を指差しながら笑う。



 「うん、そうだよね。 陽奈がお姉ちゃん大好きなように、お姉ちゃんも陽奈のこと大好きだもんね!」


 「その通りだ。 だから陽奈、今日は愛莉さんと来た気分で存分に楽しめばいいんだ。 お姉ちゃんたちにはオレから陽奈とゆっくり見てるって連絡入れとくから……時間とか気にしなくていいからな」


 「うん……ありがとうダイきち」



挿絵(By みてみん)



 その後陽奈はオレが後ろから見守っている中、エリア1つ1つをじっくり堪能。

 陽奈は愛莉さんノートをギュッと大切に胸に抱きしめ……たまに隣にまるで愛莉さんがいるかのように小さく話しかけながら2人の願い……念願の水族館の時間を楽しんでいたのであった。



 そして水族館の最終地点、お土産コーナーで優香たちと合流。

 それは陽奈を含めたオレ以外の4人が楽しそうに何を買うかで盛り上がっていた時のことだった。

 オレは別に買いたいものもなかったため、お土産コーナー出口付近で4人の様子を眺めていたのだが……



 『ありがとね。 ダイきちくん』



 「ーー……え」



 オレの後ろは壁……なのに明らかに後ろからオレの名を呼ぶ声が聞こえて来る。

 それも聞いたことのある声。 これはやはりーー……



 「愛莉さん?」


 『正解ー』


 「やっぱいたんですねー。 陽奈と話さなくていいんですか?」


 『いいの。 私たち今日いっぱいお話してたでしょ?』


 

 オレの脳内で陽奈が愛莉さんノートを持ちながら誰もいない隣に小さく話しかけていた場面を思い出す。



 「え、あの時本当にいたんすか?」


 『いたよ。 陽奈ちゃんには私の声聞こえなかったけど、楽しかったなぁ……ありがとう』


 「いえいえ。 連れてきたのオレじゃないんで」


 『それで……なんだけどさ』


 「なんでしょ」



 突然愛莉さんの声が詰まる。



 「ーー……愛莉さん?」


 『その……これ言うのどうかなって思うんだけど』


 「この際です。 こんな機会あんまりないかもですし言っちゃってくださいよ」


 『え、うん。 じゃあ……』


 「なんです?」



 オレは陽奈への伝言か何かだろうかと予想しながら愛莉の次の言葉を待っていたのだが……



 『手前にさ、サメのちっちゃなぬいぐるみあるでしょ?』


 「はい」


 『あれ私へのお土産として買って欲しいなって』



 「ーー……は?」



 オレはあまりにも唐突なお願いに気の抜けた声を口から漏らす。

 なんだこいつ突然子供ぶりやがって!



 「えっと……なんでオレが?」


 『だって私の声聞けるのダイきちくんだけなんだもんー! いいでしょ、ね? 買って陽奈ちゃんに渡してよ! 私へのお土産ってことにしてさ!』


 「えーーー」


 『あーれー欲しいーー!』



 う……うぜえ!!



 『ねぇねぇ、ダイきちくんダイきちくんってばーー!』


 「あーもうわかりましたよ! 買えばいいんでしょ買えば!」


 『やった!』



 こうしてオレは愛莉の駄々に負けてサメのぬいぐるみを購入。

 途中で陽奈と2人になるタイミングを見計らって愛莉さんにってことでそれを渡す。



 「ーー……え、これお姉ちゃんに? いいのダイきち」


 「あぁ、多分……てか絶対愛莉さん気にいるはずだから」



 だって本人チョイスだし……。



 「ありがとうダイきち! 陽奈、ダイきちのこと大好きになっちゃった!」


 「え」



 そう言うと陽奈はオレに抱きつきほっぺにキス。

 柔らかくも瑞々しい唇がオレの頬に触れる。



 「えっと……陽奈?」


 「えへへ……」



 うーーーわああああああああああああ!!! 最高なんじゃあああああああ!!!!



 オレはこの陽奈のキスによりこの日のテンションは寝る寸前までMAX状態に。

 女性経験皆無だったオレは陽奈が視線に入る度にドキドキして他のことが手につかないほどになっていたのだった。

 しかしその日の夜のこと……



 「ーー……っはぁ!! くっそ、またかよ!」



 オレは何度も軽い金縛りに遭い目を覚まし続ける。 

 おそらくこれは陽奈がオレにキスしたことで嫉妬した愛莉さんの仕業なのだろうが……

 

 まぁでもあれだ、どんな形であれ願いが叶ってよかったな!!!



挿絵(By みてみん)



めちゃめちゃ今回ガチりましたがいかがでしたでしょうか!

挿絵2枚と本日間に合うかギリギリのところでしたがどうしても載せたかったのでなんとか間に合って良かったです!

もし良かったじゃねえかと思っていただけましたら下の方に☆マークがありますのでよろしければ評価していってくださると嬉しいです!


感想やブックマークもお待ちしております♪

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― 新着の感想 ―
[一言] 陽奈と愛莉のイラスト見て涙腺うるうる(ToT) ブクマと評価入れました!!
[一言] なんだよ。神回やん。挿絵見た瞬間感動して泣いてもうたやん。ありがとう
[良い点] 愛莉ちゃんカワイイ陽菜ちゃんカワイイ尊いたまらん好き_:( _ ́ཫ`):_ [一言] 変態じゃない話も書けるなんてズルいですwww とてもホッコリ癒されました(*´艸`*) 愛莉ち…
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