112 新たな扉!?
百十二話 新たな扉!?
思い出すだけでニヤけてしまう結城の『ダイキ』ボイスをいただいたその後、ようやくオレたちは電気を消して就寝タイムに入ったのだが……。
「くそ……浮かれすぎてて忘れていたぜ」
途中目を覚ませば前日の夜と同様……オレの足には寝相の悪いエマが熱い抱擁。 むにゃむにゃと何かを呟きながらオレの太ももの間に顔を埋めて眠っている。
この場合逃げようとするとまた上へ上へと上がってくるやつなのでオレは動かずにジッと天井を凝視。
……ダメだ。 気にしないように頑張ってみても、エマと密着している箇所にどうしても神経が集中してしまう。
ここはなんとか気を紛らわせるようなものを見つけないと。
そう思ったオレは視線をエマとは逆の方向に向ける。
これで安全だと思ったんだけどなぁ……
「ーー……!!!!」
オレの視界に入ってきたのは西園寺の熟睡姿。
西園寺は少しダボダボワンピース型のパジャマを着ているのだが、横を向き……更には体を少し曲げて眠っているためワンピースの足の間から中の景色がちょうどいい角度で見えている。
なのでオレの瞳に映し出されているものは全世界の男の夢が詰まった新境地なわけで……
あかーーーーん!!
下半身のエマだけでも神経使って眠れないのにそんな素晴らしいものを見せつけられたらもう!!
邪念を振り払うために頭を振って壁に掛けられている時計をみると午前3時。
もちろん身体は眠たくてあくびは出るのだがやはりエロの力は偉大らしい……少し力を抜いて目を閉じれば眠れるはずなのにエマの感触をもっと楽しみたいと足がオレに訴え、もっと新境地を眺めていたいと目が休憩するのを拒む。
結城を見て癒されたいと思うのだが西園寺の奥で眠っているためよく見えない。
「仕方ねぇなぁオレの肉体よ。 とことん付き合ってやるぜ」
それから外が明るくなり始まるまでの約2時間。
オレはその場を微動だにすることなくエマの感触と西園寺の絶景を魂に刻んだのであった。
翌朝。
「えへへ……なんか昨日の服とかパジャマを学校に持っていくのちょっと恥ずかしいね」
登校前、結城が少し照れながらエマと西園寺に微笑みかける。
「そっか、エマは上の階が家だから置いていけるけど、桜子とノゾミは持っていかないとダメなんだもんね。 え、でも恥ずかしいかな?」
エマが西園寺に尋ねる。
「いや、私は別に恥ずかしくはないんだけど……桜子、なんで?」
西園寺とエマの視線が結城へと向けられる。
「だってさ、この袋の中、パジャマとか以外にもパンツとかも入ってるんだよ。 もし何かあって落としちゃったらパンツ履いてないんじゃないかって思われたりしないかな……なんて、えへへ」
「「ーー……」」
おいそこの2人、わかるけど黙り込むのは違うだろ。
◆◇◆◇
登校中。
オレは金髪天使エルシィちゃんと結城の3人で昨日のお泊まり会についての感想で盛り上がっていたのだが……
「ねぇ本当に良かったの? 私たちの着替えとか家に置かせてもらってて」
結城が申し訳なさそうにオレに尋ねる。
「うん。 学校で何かあってもいやでしょ? だったら帰りついでに取りにきてくれたら構わないよ」
「そっか、ありがとう福田くん」
「えっ」
ーー……『福田くん』!?
「ん? どうかした?」
「あ、いや……なんでも」
え、なんで? 名前で呼んでくれるんじゃなかったの?
オレは分かりやすく肩をガクリと落とす。
「だいき、どしたぁー??」
エルシィちゃんがオレの隣にピタリとくっつき、可愛く小さな手でオレの人差し指をキュッと握る。
「なになにどうしたのダイキー」
後ろで西園寺と話していたエマもオレの肩に手を当てて後ろから覗き込んできた。
「べ……別になにもないけど」
「ほんとー? じゃあなんでエルシィと手を繋いでんのよー。 桜子、なにか知らない?」
エマが結城に視線を移しながら尋ねる。
「ううん、私にもわからないの。 急に福田くんのテンションが下がっちゃって」
「へぇーー。 ……ってあれ、『福田くん』?」
気づいたエマが結城に聞き返す。
「うん」
「え、桜子昨日の夜に『ダイキ』って……』
「あ……そうなんだけどさ」
結城は頬を指で掻きながらオレに視線を向ける。
「?」
「やっぱりそのちょっと……男の子を名前で呼ぶのは恥ずかしいかなって、えへへ」
か……かわいすぎるぜええええええ!!!!!
もしかしたらオレのことを名前で呼ぶに値しないとか思われてたらどうしようとか思ってたけど、そうかそれなら仕方ない!!!
やはり少しは残念だが結城が軽い女の子ではないことが証明された瞬間とも言える……これはこれで喜ばしい発見だったといえよう!!
「あーらら、そうなんだってさダイキ。 まぁ元気出しなさいよ!」
エマがクスクスと笑いながら背中をバシンと叩いてオレを励ます。
「お、おう」
「そうだよ福田くん。 今は家族以外に名前で呼ぶのはエマだけかもしれないけど、もうちょっと距離が縮まったら私が代わりに呼んであげるから」
「西園寺」
「うん」
「ーー……お前、制服のスカート部分ランドセルに引っかかってめくれてんぞ」
オレは西園寺の後ろ……お尻を指差す。
「えぇ!?」
ギリギリ全部は見えてはいないが膝くらいまである裾の長さがランドセルに巻き込まれていたこともあり、股下数センチというギリギリ見えない長さに。
「きゃああああっ! ちょっと福田くん、なんで教えてくれなかったの!?」
西園寺は急いでスカートを引っ張りながら顔を真っ赤に染め、半分嬉しそうな表情をオレに向ける。
「いや、そもそもオレ西園寺の前歩いてて気づかなかったし」
「ごめーん、エマも話に夢中で気づかなかった!」
エマが両手を合わせながら西園寺に謝る。
「だ……だから後ろから追い越していくおじさんたち、追い越す寸前に私のこと見てたんだ」
西園寺がボソッと呟く。
「え、西園寺なんて?」
「ううん、なんでもない。 ほら、早く行こ」
「あ、あぁ」
西園寺のやつ……これがきっかけで露出趣味に走ったりとか……いや、ないか。
そんなことを心配していると背後からエマがこっそりと呟く。
「なるほど……それありかも」
ーー…おい。
お読みいただきありがとうございます! 西園寺は新しい扉を開いてしまったのでしょうか!笑
次回大事件発生!?
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