109 天国からの!?
百九話 天国からの!?
ここはまさか……天国なのか?
風呂から上がってリビングに入ったオレの視界に広がっている光景を未だ信じられられていないオレは生唾をゴクリと飲む。
だってさ……信じられるかよ、こんな!!!
リビングの中心に敷布団が2枚連結。
その中心で金髪天使のエルシィちゃんが楽しそうに遊んでいた。
え、どうしてそうなったかって?
それは少し前に遡る……
◆◇◆◇
夕方に起きた黒い生物・Gの大捜索で疲れたオレたちはエルシィちゃんを含めた4人で夕食を食べていたのだが……。
「あ、エマ。 食器は私が洗っとくからあとは任せてよ」
三好が食べ終えた食器をキッチンに運びながら声をかける。
「え、いいノ?」
「うん、だってあとはお皿洗ってお風呂入るだけだしさ」
「あー、じゃあお言葉に甘えようカナ」
エマがエルシィちゃんの手を引いて家に帰るため、玄関へと向かっていた……その時だった。
「んーーー?」
突然リビングを出たエルシィちゃんが奥の廊下を見つめながら大きく首をかしげる。
「どうしたのエルシィ」
「んーー」
エルシィちゃんが一点をじっと見つめて動かないので不思議に思ったオレと三好も2人のもとへ。 エルシィちゃんが向けていた先に視線を向ける。
「え、どうしたのエルシィちゃん。 何もないけど……」
「んーー、なんもなー」
「そっか、ならいいんだけど」
エルシィちゃんはくるりと回転して体を玄関の方へ。 その後エマを見上げる。
「ん?」
「エマおねーたん、エッチーなんかあそこでまっくろでおっきな……」
「「「!!!???」」」
その言葉にオレと三好、エマが同時に固まる。
「ーー……え、エルシィなに言ってんの?」
三好が声を震わせながらエルシィに尋ねる。
「かな、エッチーの、みまちがい。 だりじょぶー」
「大丈夫じゃないよっ!! え、ねぇエマ、エルシィって視える子なの!?」
三好が若干青ざめた顔でエマに尋ねる。
「いや……今までそんなこと言ってたことはないんだケド……」
「ええええ、じゃあ今日初めて視えちゃったってやつかもしんないじゃん!!」
三好はショックのあまり床に膝をつき頭を抱えながらオレを見上げる。
「ねぇ福田」
「なんだ?」
「今日さ、一緒に寝よ?」
「え、あ、うん。 ーー……ん、え?」
「「ええええええええ!!??」」
三好の言葉に驚いたオレとエマの声がシンクロする。
「ちょ、ちょっと待って佳奈! 今何言ったかわかってるの!?」
エマがかなり動揺しながら三好の肩を揺する。
「だって仕方ないじゃんかー!! 1人で寝てて目の前に出てきたらそれこそおしまいだしっ!」
「だったらもう帰ればいいじゃない!」
「無理! あんなの聞いて1人で帰れない!」
三好が隣に立っていたオレの足にしがみつく。
そうだった……三好って怖いものかなり苦手だったんだ。
「で、でもいくら安全なダイキって言ったって一緒に寝たりしたら……!」
「じゃあエマも一緒に寝ようよみんなでーー!!!」
「「えええええええ!?!?!?」」
「やたー! エッチーみんなでねたーー!!」
……ということがあったのだ。
◆◇◆◇
そして就寝時間。
ここでとある問題が生じる。
そう、誰がどこでねるのか……だ。
エマは言う。
「ダイキとエルシィは絶対に隣にしたらだめ」
三好は言う。
「ねぇエマ、福田の扱い上手いっぽいし福田を監視できる場所にしてよ」
エルシィちゃんは言う。
「エッチー、エマおねーたんの隣がいいー!」
この皆の要望を混ぜ込んだ結果、上から見て左端から三好・オレ・エマ・エルシィちゃんという順で布団の上で寝ることになったのだが……
「ちょっと福田、私の方に寄りすぎだって。 もうちょっとあっち行ってよ」
「へい」
「きゃあっ、もうダイキ、エマのお尻に足当たった! もうちょっとあっち」
「ウヘヘ、はい」
「あー!! 今わざと触ったっしょ!!」
「いやいや暗くてよく分かんないな。 どこ触ってた?」
「しらばっくれんな! 今私のおっ……」
ぐひゃひゃひゃひゃあああーーーーー!!!!! なんだこの天国はあああああ!!!!
右に行っても左に行っても最高のシチュエーションじゃねえかああああ!!!
その後もオレは右に回転・左に回転を繰り返し、知らない間に眠くなり寝落ちしてしまっていたのだが……
「ーー……んっ」
夜中、足に違和感を感じたオレはふと目を覚ます。
視線を向けるとそこには何故かオレの両足……膝のあたりに抱きつきながら眠っているエマの姿。
ーー……こいつ寝相悪かったのかよ。
結構体が密着していて気持ちいいのだが、起きた時に何を言われるか分からないと感じたオレは名残惜し見ながらもその拘束から離れるように足を数回よじる。
うおぉ……膝を動かすたびに色々と当たって最高の気分だぜ。
しかしこの感覚を味わい続けていたらオレの方も色々と危ない。
オレは仕方なく上半身を起こしてエマの腕を掴み力づくで離そうと試みた。
「あーんエルシィ……ちゃんとお風呂入らなきゃだめだよぉーー……」
「ーー……!?!?」
あと少しのところでエマが寝言を口に出しながら再びしがみついてくる。
「ちょっ……こらエマ!」
これによりエマの抱きついた位置が少し上へとずれる。
このままでは……マズいっ!!
「おいエマ、起きろ離せ!」
オレが小声でエマに話しかけるもエマはまったく起きず。
「……んもぉー、だから、一緒にエマとお風呂入るのー」
なんという夢だ。
できればオレもその夢を映像として見てみたい……が。
「おいエマ、それはマズい。 非常にマズいぞ」
夢の中でエルシィちゃんの服を脱がせようとでもしているのだろうか……エマの手がオレのズボンのウエスト部分に手をかける。
「もーー、ワガママはめーっだよエルシィ……」
「おいエマ、それは嬉しいけどダメだ。 おい起きろエマ」
オレはエマの手を掴んでそれを阻止。 必死にエマとは反対の方向に力を加える。
「あーーもうー! エルシィ、ちゃんとエマおねーたんの言うこと聞きなさーー……」
ボフッ
「ーー……!!!」
お、おおおおおお!!!!
どことは言わないがエマがオレの下半身のとある部分に顔を埋める。
「エーーマあああーーーー!!!」
「エールシィー、おねーたんの言うこと……」
顔を埋めたままのエマがブツブツと呟く。
いーーーやああああああああ!!!!
エマ……エマ、エマあああああああああ!!!!!
翌日の朝。
「んー、おはよダイキ。 早いんだね」
スッキリ目覚めたエマが背伸びをしながらリビングの隅で三角座りしていたオレに微笑みかける。
「お……おはよう」
「なんか昨日はあんまり寝れないって思ったけど結構ぐっすり寝られたわ。 もしかしてこの枕がエマと相性良かったのかしら」
エマが近くにあった枕に視線を向ける。
「そ……そうかもな。 それは良かった」
エマよ、お前が枕にして寝ていたのはその枕ではないぞ。
……と、そんなこと言えるわけもなくオレは一足先に部屋へと向かい制服に着替えて準備を終わらせたのだった。
そして朝食時。
外が明るいこともあり三好が勇気を出してエルシィちゃんに尋ねる。
「ねねエルシィ、エルシィが昨日見た黒くて大っきな……の続きなんだったの? やっぱりおばけ?」
三好の質問にオレとエマの視線もエルシィちゃんへと注がれる。
「ううん、ちがー」
エルシィちゃんは首を左右に振って否定。
「え、じゃあ何だったの?」
「エッチー、まっくろでおっきなアリみたー」
「「「ーー……アリ?」」」
オレたちは互いに顔を合わせる。
「んー、くろくてせなかがピカーってなってて、かさかさーってうごいてたー」
「「「ーー……!!!!」」」
この証言にオレたちは絶句。
「な、なぁエマ。 エルシィちゃんってG見たことあるのか?」
「そういえばない……かも。 だからアレを大きなアリって思ったのかな」
「えええええええ!?!?!?」
「な……なんだってえええええええ!?!?!?!?」
朝のリビング内。
オレと三好の叫び声が響き渡っていた。
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