106 天使の太もも!【挿絵有】
百六話 天使の太もも!
優香が4泊5日の修学旅行へと向かった1日目の夕方。
「ーー……なぁ、なにやってんの?」
オレは家のキッチンに立っているエマに話しかける。
「なにってこのエマお姉ちゃんがダイキのためにわざわざ夕食を作りに来てやってんじゃない。 ありがたく思いなさいよ」
エマが鍋の中身をかき混ぜながらため息をつく。
「ーー……なんで?」
「はぁ? そりゃそうでしょ。 あんたはどうせ自分で作らないんだから」
「まぁそうだけど……でもほら、朝にも言ったけど冷凍食品とか出前とかあるし……」
「それがダメだって言ってんの!」
エマがさっきまで鍋の中身を混ぜていたお玉でオレを指す。
いい香りだ……これはシチューか。
「あのね、冷凍食品でもなんでも基本そういった類いのものって栄養が偏ってんの。 あんた優香さんが帰ってきたときに体調崩して寝込んでたらどうすんの?」
「そ……それはそれで看病してもらえるからラッキーかなぁと」
「はぁ……ダイキ、あんた少しは優香さんに楽させてあげなさいよ」
エマが深いため息をつきながら再びお鍋の中身……シチューを混ぜ始める。
な……なんも言えねぇ!!!
「あのね、エマも前の体……JKの小山楓だった頃はそりゃあ色々してたから、勉強に部活に大変だったよ?」
「はい」
ーー……色々って何?
「優香さん、部活はしてるか分からないけど家事を全部やりながらダイキの世話までしてそこから勉強とかしてるんでしょ? 絶対しんどいはずだよ?」
「はいすみません」
オレはエマに深く頭を下げる。
「まぁ……別にエマが優香さんいない間はやってあげるから気にしないでいいけどね。 ほら、味見して」
エマが軽く掬ったシチューを小皿に入れてオレに渡す。
「あ、うん」
エマが作ったシチュー……どんな味なのだろうか。 オレはおそるおそるシチューを口の中に流し込む。
ーー……!!!
「うんめええええええええ!!!!」
味がちゃんと引き締まっていて風味も濃厚!! 口の中に幸せの味が広がっていくのがわかる。
「そ、そう。 よかった……じゃあこれで完成ね」
「エマおねーたん!!!!」
オレは耐えきれずにエマに抱きつく。
「だあああもう!! だからなんでそうなるのよ!!」
「分からん! ただもうこの幸せな味のする料理を作ってくれたエマが愛しくて愛しくて!!」
「ーー……あんた本当に小学生なの? まぁいいわ。 褒め言葉として受け取っておいてあげる」
エマはオレの熱い抱擁から離れるとお茶碗にご飯を装っていく。
「もうできるけど……エルシィはどこ?」
「あれどこだろ。 さっきまでそこにいたんだけど」
オレはリビングの方を見渡してみるもそこに姿はない。
「多分部屋の中を探検でもしてんだろ。 探して連れてくるわ」
「うんお願い」
オレはリビングを出て他の部屋を探していく。
脱衣所、物置、優香の部屋、お風呂場、トイレ。 どこを探してもエルシィちゃんの姿が見当たらない。
ということは残るは……
◆◇◆◇
「はい、エルシィちゃんみーつけた!!」
思った通り、エルシィちゃんがいたのはオレの部屋。
制服姿のエルシィちゃんがオレのベッドの上でぴょんぴょん座りながら跳ねて遊んでいる。
「あー、だいきー。 エッチー、かくれんぼしてたぁ?」
エルシィちゃんがキョトンとした顔で首を傾げる。
か……可愛い!!
「あれおかしいな、オレだけしてたのかもしれない」
「そかぁー、エッチー、かくれんぼしてたのかぁー。 みちゅかたー!」
エルシィちゃんがはしゃぎながらベッドの上でそのまま仰向けに倒れる。
ーー……!!! クマさんぱんちゅ!!!
エルシィちゃんの足の間から可愛い絵柄のクマさんパンツがこんにちは。
オレの今の心の状態と同じ……クマさんがニッコリと笑っている。
オレは少しの間クマさんと見つめあっていたのだが……
「あ、そうだ思い出した。 エマおねーたんがご飯できたって」
「ごはんー?」
「そうご飯。 だから一緒にリビング行こっか」
「うんいくー!」
そう言ったエルシィはぴょんと体を起こす。
「ねー、だいきー」
「ん? どした?」
「これ、かあいいーー」
エルシィちゃんが後ろの壁に貼ってあった2枚のポスターを指差す。
1枚はオレの大学時代から好きだった作品『絆創膏をアソコに貼った私が無双して世界を救う!?』のポスター。
そしてもう1枚は先日工藤から譲り受けた新たな作品『パンツを叩こうパンパンパン☆』のポスターだ。
まだ内容は触りしか知らないが……中に何かを入れてパンツを叩くと、中に入れたものが増えるらしい。
ーー……にしてもエルシィちゃん、これらの作品のコスプレさせたら絶対似合うよなぁ。
オレは目を瞑り、脳内でコスプレをしたエルシィちゃんを想像する。
うん、いい。
「だいきー、どしたー? おねむー?」
エルシィちゃんが頭上にはてなマークを浮かべながらオレを見上げる。
「あ、いやちょっと妄想してて……」
「だいきおねむー。 だたら、エッチーのここ、まくらすうーー?」
エルシィちゃんはベッドの上に再び座り込んで太ももをパンパン叩く。
な、なん……だと!!!!
オレはエルシィちゃんの太ももを凝視。
白いなぁ細いなぁ、可愛いなぁ……。
「だいき、どーすう? やめうー?」
エルシィが両太ももを出した状態でオレに微笑む。
そんなの……そんなの決まってるじゃないか!!
「行きます!!」
オレは水泳選手のようにベッドにダイブ。
エルシィちゃんの太ももに迷いなく顔を埋める。
「きゃあっ! だいきー、くしゅぐたー!!」
ふぉああああああああああ!!! 天使の太もも天使の太もも天使の太ももおおおおおお!!!!
細いんだけどちゃんと弾力があって柔らかくてきめ細かくていい匂いで……もう!!!
天使の太ももに魅了されたオレは夕飯のことも忘れてエルシィちゃんの太ももに没頭する。
「ちょっとなんか楽しそうな声聞こえてきたけど、ご飯できてるよー?」
ーー……!!!
リビングの方からエマの声。
足音が少しずつこっちに近づいてきている。
このままでは危険だと思ったオレは即座に反応。
エルシィちゃんの太ももから離れようとした……のだが。
「だいきー、よちよちー」
ズギャアアアアアン!!!!
オレの心に巨大な雷が落ちる。
「ーー……!!!」
まさに今エルシィちゃんの手がオレの頭をわしゃわしゃ。
しかも膝枕をしてくれながらのわしゃわしゃ!!!
天使はやはり実在したんだ……こんなの抗えるわけねえだろうがああああああ!!!!
ーー……もう、どうにでもなれ。
結果ちゃんとエマに見つかったオレは助走をつけた飛び蹴りを下半身にくらい悶絶。
3人での食事を終えた後、オレは未だ続く鈍い痛みに苦しみながらお皿洗いに勤しんだのであった。
エマたちが帰宅した後、喉が乾いたオレはジュースを飲もうと冷蔵庫を開ける。
くそぅ、蹴られた箇所がまだ痛むぜ……エマのやつ少しは加減しろっての。
「ーー……ん?」
そこには1つのタッパー。
その上には小さなメモ用紙が置かれている。
「なになに……『これは明日の朝食用だからこれを夜に見つけても食べないようにね。 エマ』?」
ーー……なにこれツンデレ?
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今回の挿絵エルシィちゃん高画質VERは後ほど作者ツイッター:よすぃ@小説投稿挑戦中(@mikosisaimaria)に載せるのでよろしければ見にきてやってください♪