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105 地獄の5日間の始まり


 百五話  地獄の5日間の始まり




 「ーー……え、それは……どういうこと?」



 ある日の朝。

 オレは声を震わせながら優香に尋ねる。



 「前にも言ってたじゃん。 じゃ、今日から5日間、ダイキ1人で頑張ってね。 行ってきまーす」


 

 大きめのトランクを持った優香が玄関を出て行く。



 「ーー……マジか」



 オレはその場で崩れ落ちて四つん這いに。

 



 「そういやそんなことも言ってた気もするが……まさか優香が……優香が今日から修学旅行で5日間も家にいないなんてえええええ!!」



 

 ◆◇◆◇




 ずーーーん



 オレはダークなオーラを纏いながらランドセルを背負って家を出る。

 これから5日間……優香の声を聞けず優香のご飯も食べれず、優香の履いたパンツの匂いを嗅ぐこともできなくなってしまうなんて……。



 「地球が滅んだのと同じじゃねぇか……」



 あまりのショックから心の声が口から漏れる。

 そしてそれとほぼ同じタイミングでエマとその妹エルシィちゃんが仲良く手を繋ぎながら階段から降りてきた。



 「おはよーダイキ」

 「だいき、はーよ!」



 「ーー……」



 オレは視線をエルシィちゃんに向けて力なく手を振る。



 「ってエマの挨拶は無視か!!」


 「あぁ……エマ」


 「ちょっとどうしたの元気ないじゃない。 風邪でもひいた?」



 エマが少し心配そうな表情でオレの顔を覗き込む。



 「風邪の方が数千倍良かったぜ……」


 「え、本当に大丈夫?」


 「あぁ……エマがパンツ見せてくれたら大丈夫」


 「えー、でも今日エマ履いてないしなぁ……ってなんでそうなるのよ!!」



 エマがオレの二の腕の当たりをパシンと叩いてツッコミ。

 しかし優香ショックが大きすぎてあまり痛みを感じない。



 「だいき、どったー? からだ、あちゅいー?」



 エルシィちゃんがオレの目の前に来て純粋な目でオレを見上げる。



 「ーー……エルシィちゃん」


 「エッチー、だいき、いいこいこ、したえるー」



 そう言うとエルシィちゃんはオレの腕を下に引っ張って中腰にさせ、少し背伸びをしてオレの頭を撫でる。



 「エルシィちゃん!!!」


 

 やはりこの子は天使だ。

 オレは少しでも癒しを吸収したい一心でエルシィちゃんをギュッと抱きしめる。



 「きゃーっ。 だいき、エッチーのことしゅきみたいー」


 「あーもう好き好き大好きエルシィちゃん!!」



 オレは頬をエルシィちゃんの頬に合わせて高速スリスリ。

 優香ショックで暗く闇に染まりかけていたオレの心に一筋の光が射し始める。



 「ちょ……はい、終わりーー!!!」



 くそ……やはりそうなるか。

 エマがオレとエルシィちゃんの間に入り引き剥がす。



 「何すんだよエマ」


 「もう、エルシィにあんま手を出さないでよ。 それよりほら、早く行かないと遅刻するよ」



 「だいき、エッチーとがっこー、いくー?」


 「行くよもちろんだよエルシィちゃん」



 やはり心がどん底にあるときに道を照らしてくれるのは天使なんだな。

 エルシィちゃんのおかげで少しだけ心が回復して自分を取り戻すことができたオレは3人で学校へ。

 その途中、オレはエマにどうしてあんなに落ち込んでいたのかを話した。



 「え、お姉さん修学旅行なんだ」


 「そうなんだよ、もうオレどうしたらいいか」


 「あ、ご飯とか作れないから悩んでたの?」



 エマが人差し指を立てながら尋ねる。



 「ちげーよ。 食べ物なんてこのご時世冷凍食品やら出前やらでなんでもあるだろ。 問題は……」


 「問題は?」


 「オレの愛しきお姉ちゃんが5日間もいないってことなんだよおおおお!!!!」



 オレは頭を抱えながら控えめに叫ぶ。



 「ていうかさ、前ダイキの家行ったときからちょっと思ってたんだけど……ダイキってお姉ちゃん好きだよね」


 「そりゃそうだ! オレはお姉ちゃんが大好きだ!」


 「ちょっとそれシスコンじゃんー!」


 「なぁエマ、5日間だけエルシィちゃん貸してくれよ。 癒しがないとオレ生きてけないんだよ」



 オレは先頭をルンルンで歩いているエルシィちゃんに視線を向ける。



 「は? 絶対嫌だし。 エマだってエルシィいないと死んじゃうもん」


 「だったらどうすりゃいいんだよー」


 

 オレはがくりと肩を落として視線をエマに戻す。



 「まさかダイキの弱点がお姉さんだったとはねー。 まぁ元気だしなって、エルシィは貸さないけどこの中身JKのエマお姉ちゃんが家事とか色々手伝ってあげるから」


 「ーー……なんで?」


 「だってダイキ、結局はお姉さんに甘えたいんでしょ? だからお姉さんがいない時だけエマがお姉さんになってやるって言ってんの」



 エマがドヤ顔で自身の胸に手を当てる。

 


 「エマが?」


 「そう! エマお姉ちゃんが」


 「ーー……なるほど」



 オレはまじまじとエマを観察。

 確かにエマは見た目こそ幼いが中身は優香と同じJK……優香には及ばないがオレの寂しさを埋めてもらえるには1番ベストなのかもしれない。

 


 「じゃあ……頼むわ」


 「まかせなさい!」



 エマが優越感に満ちた顔をオレに近づけニコッと笑う。

 その後オレの頭を数回ナデナデ。


 ーー……おや、なんかいいぞ?


 今まではあまり気にしてなかったが、エマも綺麗な目をしているなぁ。

 こんな透き通った青眼で見つめられたら……



 「エマおねーたん!!」



 オレはエマをギュッと抱きしめる。


 

 「は、はぁ!? ちょっと誰がそこまでしていいって言ったの! 離れろっての!」


 

 少し顔を赤くしたエマが全力でオレのハグ拘束を解いて1歩下がる。



 「なんで逃げんだよー。 エルシィちゃんだってやってんだろー」


 

 そうオレが文句を言うと前を歩いていたエルシィちゃんがクルッと振り返る。



 「だいき、エッチーといっしょ?」


 「ん? なにが?」


 「エマおねーたん、しゅきー?」


 「そりゃあもう! エルシィちゃんと同じくらいしゅきー!」


 「やたーー! エッチーもだいき、しゅきー!!」


 

 エルシィちゃんが両手を上げてぴょんぴょん跳ねる。

 あぁ……ガチでかわええ……!!!



 「なぁエマ、やっぱりエルシィちゃんをオレに……」


 「だめって言ってるでしょ!」


 「じゃあせめてオレに最大限甘えさせてくれ」


 「なんでそうなるの?」


 「ならいいよ。 その間オレはエルシィちゃんと……」


 「だあああもう!! 分かった! 甘えさせてあげるからエルシィに変なことしないで!」


 

 エマが顔を赤らめつつも大きくため息をつきながらオレとエルシィちゃんの手を握る。



 「ほら、もうちょっと早く歩かないと遅刻するから、急ぐよエルシィ、ダイキ」


 

 「わかたー!」


 「オレもわかたー!」



 これはなかなかの感覚。

 これなら優香がいない5日間を乗り切れるかもしれないと感じたオレは、これからエマにたくさん甘えまくることを決意したのであった。

 


 

お読みいただきありがとうございます! 下の方に☆マークがありますのでよろしければ評価していってくださると嬉しいです!

感想やブックマークもお待ちしております♪


次回リクエスト頂いた金髪天使エルシィちゃんの挿絵描きます宣言!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] ワイもエマねーたまのバブみにオギャりたい
[良い点] エルシィちゃん。 天使だ……かわいい。 心が洗われるようだ……!!
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